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浮函(かん)換装工事の前払金の支払に当たり、契約相手方が会計法令等により支払要件とされている保証事業会社との前払金の保証契約を締結していないのに、これを看過して支払っていたもの


(306) 浮函(かん)換装工事の前払金の支払に当たり、契約相手方が会計法令等により支払要件とされている保証事業会社との前払金の保証契約を締結していないのに、これを看過して支払っていたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本省 (項)東日本大震災復旧・復興施設整備費
部局等 海上自衛隊横須賀地方総監部  
契約名 浮函(かん)換装工事  
契約の概要 東日本大震災復興関連事業の一環として、老朽化した浮函を換装するもの
契約の相手方 ゼニヤ海洋サービス株式会社  
契約 平成24年3月 一般競争契約  
契約額 108,032,400円  
前払金支払 平成24年3月  
前払金の額 69,000,000円

会計法令等に違背して支払っていた前払金の額

69,000,000円(平成23年度)

1 契約等の概要

(1) 浮函(かん)換装工事契約の概要

 海上自衛隊横須賀地方総監部は、平成23年度第3次補正予算による東日本大震災復興関連事業の一環として、平成24年3月23日に、浮函換装工事に係る工事請負契約を一般競争入札によりゼニヤ海洋サービス株式会社(以下「会社」という。)と契約金額108,032,400円で締結している。この工事は、東日本大震災と同様な震災が再び発生した場合に支援船等を使用した災害派遣の円滑な実施を図ることを目的として、横須賀地区に係留している老朽化した浮函(注) を換装するものであり、履行期限は、25年3月29日とされている。
 同総監部は、本件契約において、前払金69,000,000円を支払う旨の特約条項を付しており、24年3月26日に会社から前払金の支払請求を受けたことから、同月29日に同額の前払金を支払っている。

 浮函  浮桟橋の本体である箱状の浮体。浮桟橋は、海岸等に設置して潮位の干満に合わせて自在に上下するようにした桟橋であり、浮函、連絡橋、係留設備品等から成る。

(2) 前金払制度について

 前金払は、会計法(昭和22年法律第35号)により、経費の性質上前金をもって支払をしなければ事務に支障を及ぼすような経費で政令で定めるものについて行うことができるものとされている。そして、本件工事のような公共工事における前金払については、予算決算及び会計令臨時特例(昭和21年勅令第558号。以下「臨時特例」という。)等において、公共工事の前払金保証事業に関する法律(昭和27年法律第184号)に規定する保証事業会社により前払金の保証がなされている場合に前金払をすることが認められている。また、この場合の前払金の割合については、臨時特例等に基づき、請負代価の10分の4以内とされている。
 そして、本件契約書において、会社は、保証事業会社と前払金の保証に関する契約(以下「保証契約」という。)を締結し、その保証証書を同総監部に寄託することなどにより、前払金の支払を請求することができるとされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、同総監部において、合規性等の観点から、本件契約について、前金払に関する事務手続は適切に行われているかなどに着眼して、契約書、仕様書、支払決議書等の書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。
 すなわち、同総監部は、前記のとおり、24年3月26日に会社から特約条項で定められた前払金の全額である69,000,000円の支払請求を受けた。
 しかし、会社は、臨時特例等で前払金の支払の要件とされている保証事業会社との保証契約を締結していなかった。そして、同総監部は、保証証書の寄託を受けるなどすることなく、同月29日に同額の前払金を支払っていた。なお、本件契約の特約条項で定められていた前払金の額69,000,000円は、契約額108,032,400円の63.8%に相当し、仮に、会社が保証事業会社と保証契約を締結していたとしても、前払金として支払可能な額の上限割合である40%を著しく超過していた。
 したがって、本件契約における前払金が、会計法令等に規定されている支払要件を満たしていないのに支払われていたことは適切ではなく、その支払額69,000,000円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、同総監部において、前払金の支払に当たり関係書類の確認等を適切に実施すること及び契約事務の実施に当たり会計法令等を遵守することについての基本的な認識が欠けていたことなどによると認められる。