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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第28 独立行政法人科学技術振興機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

敷金等の返戻を受けたことにより法人内部に留保されている資金について、国庫納付することとなるよう改善させたもの


 敷金等の返戻を受けたことにより法人内部に留保されている資金について、国庫納付することとなるよう改善させたもの

科目 (一般勘定) 現金及び預金
部局等 独立行政法人科学技術振興機構本部
不要財産の概要 独立行政法人が保有する財産のうち、将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる財産
平成24年3月末現在の現金及び預金の額 73億6249万余円
上記のうち不要財産として国庫納付すべき額 3億1961万円  

1 制度の概要

(1) 法人の概要

 独立行政法人科学技術振興機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人科学技術振興機構法(平成14年法律第158号)に基づき、平成15年10月に、新技術の創出に資することとなる科学技術に関する基礎研究等を行う業務等に関し、科学技術振興事業団(以下「事業団」という。)の有する権利及び義務を承継して設立された法人である。
 そして、機構は、経理を一般勘定及び文献情報提供勘定に分けて整理しており、このうち一般勘定には、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)第46条の規定に基づき、業務運営の財源に充てる資金として、毎事業年度(以下、事業年度を「年度」という。)、国から運営費交付金が交付されている。

(2) 不要財産の国庫納付

 独立行政法人は、22年の通則法の改正により、中期目標期間の途中であっても、同法第8条第3項の規定により、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、当該財産(以下「不要財産」という。)を処分しなければならないこととされ、同法第46条の2の規定により、不要財産であって政府からの出資又は支出(金銭の出資に該当するものを除く。)に係るものについては、遅滞なく、主務大臣の認可を受けて、これを国庫納付するものとされている。
 そして、政府は、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月閣議決定。以下「基本方針」という。)において、各独立行政法人が、幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行い、保有する必要性があるかなどについて厳しく検証して、不要と認められるものについては速やかに国庫納付を行うことなどを掲げている。
 また、基本方針において、機構が個別に講ずべき措置として、事務所の集約化等を実施することが掲げられている。

2 検査の結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、独立行政法人における不要財産の認定等の状況について、23年12月に参議院から国会法(昭和22年法律第79号)第105条に基づく検査要請を受け、その検査結果を24年10月に会計検査院長から参議院議長に対して報告している(「独立行政法人における不要財産の認定等の状況に関する会計検査の結果について」 )。そして、当該要請に係る会計検査の一環として、有効性等の観点から、機構が保有する資産のうち、不要財産となっているものがないかなどに着眼して、機構本部において、財務書類等の関係書類、不要財産の認定等の状況について提出を求めた調書等により会計実地検査を行った。

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 機構は、設立の際に、事業団が事務所及び宿舎を借り上げる際に民間業者等に差し入れていた敷金、保証金等(以下「敷金等」という。)を一般勘定において政府出資見合いの資産として承継していた。また、機構は、運営費交付金を設立後に新たに借り上げた事務所及び宿舎に係る敷金等の支出に充てていた。
 一方、機構は、前記の基本方針に基づく集約化等を図るために事務所を廃止したり、職員の退去に伴い貸与していた宿舎を解約したりなどしており、15年10月から24年3月末までの間に、これらの事務所及び宿舎に係る敷金等の返戻金として、計3億1961万余円を受け取っていた。そして、機構は、これらの返戻金を機構内部に預金等として留保していた。
 しかし、この機構内部に留保されている資金については、第3期中期目標期間(24年度から28年度まで)に係る中期計画において、今後の使用に係る計画が定められておらず、予算にも組み込まれていないこと、また、法人設立後に差し入れられている敷金等については、毎年度、国からの運営費交付金が充てられていることなどから、機構において、当該資金を業務の財源に充てることは想定されていないと認められた。
 したがって、このように将来にわたり機構の業務を確実に実施するために必要な財産とは認められない資金を保有していることは、前記通則法の改正の趣旨及び基本方針等にのっとっていないものとなっていて適切とは認められず、通則法に基づき国庫納付する必要があると認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、機構において、通則法の改正の趣旨及び基本方針等にのっとって資産の見直しを行い、将来にわたり機構の業務を確実に実施する上で必要がないと認められる資金を不要財産と認定することについての認識が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、機構は、24年7月に、文部科学大臣に対して、不要財産の国庫納付に係る認可申請書を提出し、機構内部に留保されている資金3億1961万余円について、国庫納付することとなるよう処置を講じた。