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仮払資金の経理事務が適正に行われず、内部牽(けん)制が適切に機能していなかったことにより、支払の事実が確認できず使途が分からないまま現金を亡失していて会計経理が著しく適正を欠いていたもの


(334) 仮払資金の経理事務が適正に行われず、内部牽(けん)制が適切に機能していなかったことにより、支払の事実が確認できず使途が分からないまま現金を亡失していて会計経理が著しく適正を欠いていたもの

科目 一般勘定
部局等 職業能力開発総合大学校
仮払資金の概要 運営経費等について仮払いを必要とする施設に交付するもの
支払の事実が確認できず使途が分からないまま亡失している仮払資金の額 4,861,853円(平成20年11月〜22年3月)

1 仮払資金の経理事務等の概要

 独立行政法人雇用・能力開発機構(以下「機構」という。)は、職業能力開発総合大学校(以下「総合大学校」という。)の一部門として、大阪市に関西起業・新分野展開支援センター(以下「センター」という。)を置き、センターを平成22年3月に廃止するまでの間、センターにおいて、職業能力の開発及び向上に関する相談等の業務を行っていた。
 機構の会計規程(平成16年規程第12号)、「特定施設における仮払いに係る経理事務の取扱いについて」(平成16年16雇能経発第180号)等によると、センターは、運営経費等の支払のために仮払資金の交付を受ける特定施設とされていた。そして、センターにおける仮払資金の経理事務については、次のとおり処理することとされていた。

〔1〕 仮払資金管理責任者であるセンター長は、総合大学校の経理事務責任者である校長から、毎月仮払資金の交付を受ける。
〔2〕 センター長は、預金口座を設けて仮払資金を保管して、銀行等の口座振り込みなどによりセンターの運営経費等を支払う。ただし、業務上必要な現金は手許現金として保管することができる。
〔3〕 センター長は、仮払資金の受入れ又は支払等を明確にするため、仮払資金収支明細帳等を備え付ける。
〔4〕 センター長は、毎月、仮払資金収支報告書を作成して、これに手許現金残高証明書等を添付の上、校長に提出する(以下、この手続を「月次報告」という。)。
〔5〕 センター長は、センターの職員に上記の経理事務の一部を行わせている(以下、経理事務を担当する職員を「経理事務担当者」という。)。校長は、センターにおけるセンター長と経理事務担当者との牽(けん)制体制を確立し、適正な経理事務が行われるよう指導し監督する。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、機構の職業能力開発業務を承継した独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「現機構」という。)の理事長から24年2月に会計検査院法第27条の規定に基づく報告を受けた。同報告によれば、機構は、22年3月のセンター廃止に伴い書類の整理をしていた際に派遣職員が誤って21年度分の経理関係書類を裁断した事態が発生したことから、センターの取引先銀行及び取引先業者に対して支払の事実確認のための調査を行ったところ、センターの経理事務担当者である嘱託職員(以下「職員A」という。23年1月辞職)が、センターの預金口座から現金を引き出していて、その引き出された現金には、取引先業者等への支払の事実が確認できないものがあったとしている。
 これを受けて、本院は、現機構本部及び総合大学校において、合規性等の観点から、上記の報告内容について確認を行うとともに、センターにおいて会計経理が適正に行われていたか、総合大学校において内部牽制が適切に機能していたかなどに着眼して、20年4月から22年3月までの間に職員Aが取り扱った仮払資金を対象として、総合大学校に保存されていた経理関係書類等により確認を行ったり、総合大学校職員から説明を聴取したり、機構が行った聞き取り調査の結果について聴取したり、現機構が第三者に行わせた調査の結果について確認したりするなどの方法により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、20年11月からセンターが廃止された22年3月までの間のセンターにおける仮払資金の経理事務及び総合大学校における内部牽制について、次のような事態が見受けられた。

ア センターは、取引先業者への発注、支払等の仮払資金の経理事務を職員Aに全て行わせていた。そして、職員Aは、取引先業者等への支払の際に、請求書、取引先業者等別の支払金額を記載した一覧表、この支払金額を銀行口座から払い戻すための払戻請求書等を決裁書類として、センター長の決裁を受けていたが、決裁後、職員Aは、上記の一覧表に記載した支払金額より少ない金額を振込依頼書に記載して、払戻請求書に記載した金額との差額を現金として引き出していたと思料される。そして、職員Aが現金として引き出した仮払資金のうち4,861,853円については、取引先業者から提出された取引状況を示す書類等によっても支払の事実が確認できず、使途が分からないまま亡失していた。

イ センター長は、月次報告の際に、職員Aが作成した手許現金残高証明書、仮払資金収支明細帳に代わる仮払資金支払状況一覧表等を添付した仮払資金収支報告書の決裁を行っていた。しかし、センター長は、仮払資金支払状況一覧表等に記載されている支払の内容を振込依頼書等の書類で確認していなかったり、仮払資金収支報告書に手許現金残高証明書が添付されていない月次報告があるのにこれを看過したりしていた。

ウ 校長は、センター長から提出された仮払資金収支報告書に手許現金残高証明書が添付されていなかったり、仮払資金収支報告書に計算誤りがあったりしていたのにこれらを看過していた。

 また、校長は、20、21両年度にそれぞれ2回ずつ、総合大学校の職員にセンターの経理事務の指導等を行わせていたが、当該職員は経理関係書類の編集についての指導等を行っていた程度であり、請求書と振込依頼書との突合を実施するなどの確認は行っていなかった。
 以上のように、機構において、職員による不適正な仮払資金の経理事務が行われ、支払の事実が確認できず使途が分からないまま現金4,861,853円を亡失している事態は、著しく適正を欠いていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、職員Aが仮払資金の経理事務を適正に行っていなかったこと、総合大学校において、センターに対する指導及び監督を十分に行っていないなど会計経理における内部牽制が適切に機能していなかったことによると認められる。