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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第40 独立行政法人海洋研究開発機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

地球深部探査船の運用業務委託契約について、対象経費の範囲を精算対象年度に発生したものに限るとともに、将来、委託先に返還されることとなる敷金等の経費が機構に対して確実に返還されるよう改善させたもの


 地球深部探査船の運用業務委託契約について、対象経費の範囲を精算対象年度に発生したものに限るとともに、将来、委託先に返還されることとなる敷金等の経費が機構に対して確実に返還されるよう改善させたもの

科目 経常費用
部局等 独立行政法人海洋研究開発機構本部
契約名 地球深部探査船「ちきゅう」運用業務委託
契約の概要 地球深部探査船「ちきゅう」の運航及び掘削作業の管理を行うもの
契約の相手方 日本マントル・クエスト株式会社
契約 平成20年9月、21年4月 随意契約
上記に係る委託費のうち確定済の額(1) 201億8753万余円(平成20年度〜22年度)
(1)のうち精算対象年度に発生していなかった経費に係る委託費の額(2)      5155万円  
(1)のうち返還された場合の取扱いが明確となっていなかった委託費の額(3)      3430万円  
(2)及び(3)の計      8585万円  

1 運用業務委託契約等の概要

(1) 地球深部探査船「ちきゅう」の運用業務の概要

 独立行政法人海洋研究開発機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人海洋研究開発機構法(平成15年法律第95号)に基づき、海洋に関する基盤的研究開発等を行っており、その一環として、日米を中心とした国際的な枠組みの下、海底下深部を掘削し、地球環境変動、地球内部構造等の解明を目指す統合国際深海掘削計画(Integrated Ocean Drilling Program。以下「IODP」という。)の主要機関として、地球深部探査船「ちきゅう」(以下「ちきゅう」という。)の運用を行っている。

(2) 運用業務委託契約の概要

 機構は、ちきゅうを運用するため、平成20年9月に、契約期間を20年9月から21年3月までとする運用業務委託契約を38億2399万余円で、また、21年4月に、契約期間を21年4月から24年1月までとする運用業務委託契約を217億5420万余円及び624万米ドルの合計額(21年度80億8284万余円、22年度82億8069万余円並びに23年度53億9067万余円及び624万米ドル)で、随意契約により日本マントル・クエスト株式会社(以下「マントル社」という。)と締結している。
 上記の運用業務委託契約は、IODPの科学掘削プログラムに基づき行う掘削等について機構が策定した運用計画に基づいて、ちきゅうを安全かつ効率的に運用することを目的としている。そして、機構は、運用計画によって必要となる費用が変動することから当該契約を概算契約としており、契約書において運用業務委託契約の対象となる経費(以下「対象経費」という。)を定め、契約期間内における各年度を精算の対象期間(以下「精算対象年度」という。)として精算し、精算対象年度ごとに委託費の額の確定を行っている。

2 検査の結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、合規性等の観点から、契約の内容が適切なものとなっているか、対象経費の精算は適正に行われているかなどに着眼して、運用業務委託契約において額の確定が終了している20年度から22年度までの委託費計201億8753万余円を対象として、機構本部において、精算関係書類等を確認するとともに、マントル社に赴いて総勘定元帳等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 事務所の設備等に係るリース料金について

 機構は、マントル社がリース契約により調達している事務所の設備等について、リース契約を締結した各年度に翌年度以降を含む全リース期間に係るリース料金の総額を支出したものとみなして、20年度3561万余円、21年度1582万余円、22年度81万余円、計5225万余円を対象経費として算定し、マントル社に委託費を支払っていた。
 しかし、マントル社は、リース契約の締結時にリース料金の総額を一括して支払ってはおらず、毎月、支払時期が到来する都度、当該月分を支払っていることから、機構が、精算対象年度にはいまだ発生していないリース料金に係る委託費20年度3595万余円、21年度1484万余円、22年度75万余円、計5155万余円を支払っていたことは、適切でないと認められた。

(2) 事務所の賃貸借契約に係る敷金等について

 機構は、マントル社が事務所等を賃借する際に必要となった敷金20年度2822万余円、21年度96万円、計2918万余円及びちきゅうの運用のために使用するガス容器の保証金21年度370万余円、22年度142万余円、計512万余円、合計3430万余円を対象経費として算定し、マントル社に委託費を支払っていた。
 敷金及びガス容器の保証金(以下「敷金等」という。)については、機構が、契約書においてマントル社に対して本契約の業務遂行に必要な経費については自己資金の提供を求めないこととしていることから、対象経費としていたものである。
 しかし、敷金等は賃貸人等に預けているものであり、賃貸借契約の終了時等に返還されることとなる経費であるにもかかわらず、マントル社に返還された場合の取扱いが契約書等において定められていなかったことから、マントル社に敷金等が返還された場合に、機構にマントル社から同額が返還されることが確実とはなっておらず、契約の内容が適切でないと認められた。
 このように、機構において、委託費の精算対象年度に発生していない経費を対象経費として算定して委託費を支払っていた事態及び将来返還されることとなる敷金等の経費を対象経費としながら返還された場合の取扱いについて契約書等に定めるなどしていなかった事態は、いずれも適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、機構において、対象経費の範囲についての認識が十分でなかったこと、委託費として支払った経費が返還された場合の取扱いについての検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、機構は、次のような処置を講じた。

ア 24年7月に、精算対象年度にはいまだ発生していないリース料金に係る前記の委託費5155万余円のうち23年度末までに発生した分を除く911万余円及び敷金の全額をマントル社から返還させることとするとともに、ガス容器の保証金が機構に対して確実に返還されるようマントル社との間で覚書を締結した。
イ 24年7月及び8月に、関係部署に通知文書を発して、対象経費の範囲を精算対象年度に発生したものに限ること及び将来、委託先に返還されることとなる敷金等の経費が機構に対して確実に返還されるよう契約書等に定めるなどすることを周知した。