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  • 平成24年1月

特別会計改革の実施状況等に関する会計検査の結果について


2 特定財源等の見直し等の状況

(1) 特定財源等の概要等

 国の歳入の中には、特定の歳出に充てることが法律等において定められているものがある。これらは、税法上特定の経費に充てる目的で課される税による収入、課税根拠となる税法とは別に譲与税法で使途が特定されている税による収入及び特会法等で使途が特定されている税等による収入(以下、これらを合わせて「特定財源等」という。)である。
 特定財源等には、一般会計の歳入に計上され、一般会計で特定の支出の財源として使用されているもの、一般会計の歳入に計上され、特別会計の歳出財源として一般会計から特別会計に繰り入れられて、特別会計で使用されているもの、特別会計の歳入に直接計上され、特別会計で使用されているものがある。
 このうち、一般会計の歳入に計上され、一般会計で特定の支出の財源として使用される特定財源等は、〔1〕 公害の影響による健康被害の補償等のための財源とされている自動車重量税の一部、〔2〕 肉用子牛の生産者に対する生産者補給金の交付や畜産の振興に資するための施策の実施に要する経費の財源とされている牛肉等関税、〔3〕 畜産振興事業や社会福祉事業の振興のために要する経費の財源とされている日本中央競馬会の国庫納付金、〔4〕 電波の適正な利用の確保に関し無線局全体の受益を目的として行う施策の費用である電波利用共益費用の財源とされている電波利用料である。
 また、一般会計から特別会計に繰り入れられ、又は特別会計の歳入に直接計上されて、特別会計で歳出財源として使用される特定財源等は、図表2-1 のとおり、行政改革推進法が施行された18年度時点では、揮発油税、自動車重量税、電源開発促進税等10種類の国税等であり、これらは交付税及び譲与税配付金特別会計等6特別会計における歳入として収納されていた。

図表2-1
 平成18年度特定財源等一覧(特別会計)

特別会計 勘定 特定財源等 使途 受入方法 繰入額の計算
交付税及び譲与税配付金 交付税及び譲与税配付金 地方道路税 道路財源 直入 地方道路税収入額の全額
石油ガス税(地方譲与分) 道路財源 直入 石油ガス税の収入額の1/2に相当する額
自動車重量税(地方譲与分) 道路財源 直入 自動車重量税の収入額の1/3に相当する額
航空機燃料税(地方譲与分) 空港財源 直入 航空機燃料税の収入額の2/13に相当する額
交通安全対策特別交付金 交通反則者納金 交通安全対策財源 直入 反則金に相当する額
国債整理基金 たばこ特別税 国債償還等財源 直入 たばこ特別税収入額の全額
石油及びエネルギー需給構造高度化対策 石油及びエネルギー需給構造高度化 石油石炭税 石油及びエネルギー需給構造高度化対策財源 一般会計から繰入 石油石炭税の一部に相当する額
石炭 原油等関税 石炭対策終了に際し借り入れた借入金の償還等の財源 直入 原油等関税収入額の全額
電源開発促進対策 電源立地・電源利用 電源開発促進税 電源立地対策及び電源利用対策財源 直入 電源開発促進税収入額の全額
道路整備 揮発油税 道路財源 直入 揮発油税収入額の1/4に相当する額
道路財源 一般会計から繰入 揮発油税収入額の3/4に相当する額
石油ガス税 道路財源 一般会計から繰入 石油ガス税の収入額の1/2に相当する額
空港整備 航空機燃料税 空港財源 一般会計から繰入 航空機燃料税収入額の11/13に相当する額
(注)
 上表の特定財源等のほか、自動車重量税については、同税創設の経緯等から平成20年度までは、地方譲与分として交付税及び譲与税配付金特別会計に受け入れた額を除いた税収の約8割相当額を一般会計及び道路整備特別会計(20年度は社会資本整備事業特別会計道路整備勘定)の道路整備の財源に充てられてきた。

 特定財源等については、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(平成13年6月閣議決定)等において、税収を対応する特定の公共サービスに要する費用の財源に充てることが、一定の合理性を持ち得るとしても、一方で、そのような税収の使途を特定することは、資源の適正な配分をゆがめ、財政の硬直化を招く傾向があるなどとされていた。
 これら特定財源等の問題点については、特別会計の在り方の検討の中で併せて検討され、行政改革の重要方針において、法律上道路整備の財源とされている揮発油税及び石油ガス税、税創設の経緯等から道路財源とされている自動車重量税、地方の道路整備財源として譲与される地方道路税等の道路特定財源の見直し、空港整備の進捗状況を踏まえた将来的な航空機燃料税の一般財源化の検討、電源開発促進税が特別会計に直入される構造についての見直しの各方針が示された。
 そして、これらの方針に基づき見直しの検討が行われた結果、19年度に電源開発促進税の税収を全額一般会計に計上した上で必要額を特別会計に繰り入れる仕組みに改められ、また、21年度に道路特定財源が一般財源化された。これらにより、21年度では、特別会計で歳出財源として使用される特定財源等は、航空機燃料税、たばこ特別税、石油石炭税、電源開発促進税及び交通反則者納金の5種類の国税等となっている。
 このため、特別会計で歳出財源として使用される特定財源等の収納済歳入額は、図表2-2 のとおり、21年度に大きく減少している。

図表2-2
 特定財源等の収納済歳入額の推移

図表2-2

(注)
 図表2-1 に記載した特定財源等の収納済歳入額であり、一般会計から特別会計に繰り入れられているものについては、繰入額ではなく、税収額としている。

 前記行政改革の重要方針において見直しの検討を求められた特定財源等についての見直しの状況は以下のとおりである。

(2) 特定財源等の見直し等の状況

ア 電源開発促進税が特別会計に直入される構造についての見直しなど

(ア) 電源開発促進税の状況(エネルギー対策特別会計電源開発促進勘定(18年度までは電源開発促進対策特別会計電源立地勘定及び電源利用勘定))

a 特定財源等の繰入れ

 電源開発促進税は、電源開発促進税法(昭和49年法律第79号)に基づき電源立地対策及び電源利用対策に要する費用に充てるため一般電気事業者の販売電気に課されるものであり、エネルギー対策特別会計電源開発促進勘定に一般会計から繰り入れられている。
 この電源開発促進税の税収の推移は図表2-3 のとおりとなっている。

図表2-3
 電源開発促進税の税収額(収納済歳入額)の推移

図表2-3

 電源開発促進税の税収については、昭和49年度から平成18年度までは、電源開発促進対策特別会計の歳出の動向にかかわらず、全額を直接同特別会計の歳入に組み入れていたが、同特別会計に多額の剰余金が発生するなどしていたため、前記行政改革の重要方針において、電源開発促進税を特別会計に直入する仕組みについて、一般会計から必要額を特別会計に繰り入れる仕組みとすることにより、原子力発電施設の立地・更新等が進展することなどにより財政需要が生ずるまでの間、財政資金の効率的な活用を図るものとするなどの見直しの方針が示された。その結果、行政改革推進法により、電源開発促進税の税収を、一般会計の歳入に組み入れた上で、電源開発促進税法第1条に規定する措置に要する費用の財源に充てるため、毎会計年度、統合された特別会計に必要な金額を繰り入れることとされた(図表2-4 参照)。

図表2-4
 電源開発促進税の税収の繰入れの流れ

図表2-4

 上記行政改革推進法の規定に基づき、特会法第91条の規定により、一般会計からの繰入れは、電源立地対策及び電源利用対策に要する費用の財源に充てるため、毎会計年度、当該年度の電源開発促進税の収入額の予算額と19年度から前年度までの各年度の電源開発促進税の収入額の決算額との合計額から、19年度から前年度までの各年度に一般会計から電源開発促進勘定へ繰り入れた額の合計額を控除した額に相当する金額を、予算の定めるところにより、一般会計から同勘定に繰り入れるものとするとされている。ただし、当該年度における電源立地対策及び電源利用対策に要する費用の額と予算作成時の当該年度の一般会計からの繰入金以外の前年度剰余金受入その他の歳入の見込額との差額に照らして繰入相当額の一部について繰り入れる必要がないと認められる場合には、その金額について繰り入れないことができるとされている。この規定により、電源開発促進税の税収は、毎年度、同勘定に全額繰り入れるのではなく、当該年度に必要な額を繰り入れることで、一部の金額を一般会計に留保することができることとされた。この一般会計に留保された額は、将来電源立地対策等に必要な額に対して当該年度の電源開発促進税の収入額が不足した場合に、それまでに留保された額を限度に同勘定に繰り入れることとされている。また、各年度において留保された額は、当該年度の一般会計の財源として活用されることとなる。
 17年度から22年度までの電源開発促進税の同勘定への繰入状況と一般会計に留保された額の累計は、図表2-5 のとおりであり、22年度末の一般会計に留保された額の累計は1355億円となっている。

図表2-5
 電源開発促進税の電源開発促進勘定への繰入状況と一般会計に留保された額(累計)の状況等
(単位:億円)

区分 平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
電源開発促進税歳入額(a) 3,592 3,629 3,521 3,404 3,292 3,491
電源開発促進勘定への繰入額(b) 3,592 3,629 3,179 3,122 3,445 3,204
差額(a)-(b) 342 282 △152 287
一般会計に留保された額(累計) 595 937 1,220 1,067 1,355
注(1)  電源開発促進税の繰入方法は、平成18年度までは「直入」、19年度以降は「一般会計経由」である。
注(2)  平成18年度の一般会計に留保された額(累計)は、18年度特例法の規定による一般会計への繰入額である。

 なお、21年度は、経済危機対策の一環として「低炭素革命」の推進を図るために必要な経費を補正予算により追加することとされ、一般会計に留保された額のうちの152億円を一般会計から電源開発促進勘定に繰り入れて、その財源に充てている。

b 特別会計の財政状況

 電源開発促進勘定の歳入・歳出の状況は図表2-6 及び図表2-7 のとおりとなっている。歳入は、18年度までは電源立地、電源利用両勘定に直入されていた電源開発促進税が、19年度以降は一般会計からの繰入れが、それぞれその大部分を占めている。特会法により電源開発促進勘定の歳入及び歳出は、電源立地対策及び電源利用対策の区分に従って整理することとされているため、一般会計からの繰入れについても電源立地対策財源分と電源利用対策財源分とに分けられている。また、歳出は、電源立地地域対策交付金等の電源立地対策費、発電技術等の向上に必要な調査研究事業等の委託費等の電源利用対策費、独立行政法人への交付金等となっている。

図表2-6  電源開発促進勘定における歳入
(単位:億円)

勘定・項名称
平成17年度 18年度
当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額
電源立地勘定 2,162 2,680 2,245 2,586
電源開発促進税 1,687 1,706 1,681 1,724
周辺地域整備資金より受入 - - 80 49
雑収入 0 7 0 6
前年度剰余金受入 475 966 483 806
電源利用勘定 2,329 3,098 2,383 2,942
電源開発促進税 1,864 1,886 1,859 1,905
雑収入 6 14 7 12
前年度剰余金受入 458 1,197 516 1,024

勘定・項名称
19年度 20年度 21年度 22年度
当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額
電源開発促進勘定 3,751 4,322 3,714 3,839 3,678 3,912 3,463 3,732
電源立地対策財源一般会計より受入 1,620 1,620 1,671 1,671 1,651 1,651 1,590 1,590
電源利用対策財源一般会計より受入 1,559 1,559 1,451 1,451 1,644 1,794 1,614 1,614
周辺地域整備資金より受入 170 127 200 112 180 101 99 56
独立行政法人原子力安全基盤機構納付金収入 0 13 - - - - - -
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構納付金収入 - - 10 13 - - - 0
独立行政法人日本原子力研究開発機構納付金収入 - - - - - - - 1
雑収入 14 18 16 19 12 20 20 28
前年度剰余金受入 386 983 365 571 190 345 139 442

図表2-7  電源開発促進勘定における歳出
(単位:億円)

勘定・項名称
平成17年度 18年度
当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額
電源立地勘定 2,162 1,818 2,245 2,158
電源立地対策費 1,862 1,531 1,591 1,516
独立行政法人原子力安全基盤機構運営費 148 148 196 196
周辺地域整備資金へ繰入 125 125 136 136
一般会計へ繰入 - - 297 297
(その他の項) 26 13 24 12
電源利用勘定 2,329 2,073 2,383 2,354
電源利用対策費 1,386 1,161 740 731
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構運営費 283 283 157 157
独立行政法人原子力安全基盤機構運営費 88 88 39 39
独立行政法人日本原子力研究開発機構運営費 450 450 998 998
独立行政法人日本原子力研究開発機構施設整備費 51 48 85 87
一般会計へ繰入 - - 298 298
(その他の項) 68 42 64 41

勘定・項名称
19年度 20年度 21年度 22年度
当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額
電源開発促進勘定 3,751 3,716 3,714 3,461 3,678 3,435 3,463 3,176
電源立地対策費 1,691 1,586 1,694 1,479 1,698 1,447 1,638 1,426
電源利用対策費 375 464 387 366 418 438 447 396
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構運営費 174 174 132 132 93 95 48 48
独立行政法人原子力安全基盤機構運営費 228 228 225 225 221 221 206 206
独立行政法人日本原子力研究開発機構運営費 1,044 1,044 1,054 1,054 1,078 1,078 1,044 1,044
独立行政法人日本原子力研究開発機構施設整備費 51 50 50 49 32 31 19 10
周辺地域整備資金へ繰入 110 110 96 96 77 77 - -
(その他の項) 75 56 73 57 59 43 57 43

 収納済歳入額から支出済歳出額を差し引いた剰余金の額の推移をみると、図表2-8 のとおり、電源開発促進税が直入されていた18年度以前に比べて、19年度以降は低額となっており、また、予算の執行状況の調査を行い不用率の高い事業は予算を減額するなどの取組が行われているが、依然として多額に上っている状況である。

図表2-8
 電源開発促進勘定における剰余金の推移
(単位:億円)

勘定名称 平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
電源立地 861 427 /
電源利用 1,024 588
1,886 1,016
電源開発促進 / 606 378 477 555

 これは、前記のとおり、一般会計からの繰入れについては、特会法第91条の規定により、予算の定めるところにより繰り入れることとされていることから、年度途中の予算執行の過程において支出見込額が予算額を下回り不用額の発生が見込まれる場合でも、そのような歳出予算の執行状況にかかわらず毎年度予算額と同額を繰り入れていることが、その一因となっている。
 この電源開発促進勘定における剰余金の状況については、「3財政健全化に向けた剰余金、積立金等の活用等の状況」において詳述している(参照 )。

c 周辺地域整備資金への繰入れ

 電源立地勘定では、原子力発電施設等の立地の遅れなどにより歳出予算の執行が予定を下回ることなどから多額の剰余金が生じ、その額は昭和61年度以降1000億円を超える状況が継続していた。この剰余金が、立地の進展に伴って生ずる将来の財政需要に備えるものであることについての透明性・説得性を高めるためとして、平成15年に周辺地域整備資金が設置された。
 現在では、特会法第92条第1項の規定により、電源開発促進勘定に周辺地域整備資金を置き、発電用施設等の立地の進捗に伴って必要となる交付金等の支出に対応できるよう資金を積み立てることとされている。
 同資金の積立てについては、同勘定からの繰入金及び組入金をもってこれに充てることとされている。そして、繰入金については同条第2項の規定により、予算に定めるところにより繰り入れることとされ、組入金については同条第3項の規定により、同勘定における剰余金のうち周辺地域整備交付金及び原子力発電施設等の周辺の地域における安全対策のための財政上の措置等に要する費用に係る歳出予算における支出残額に相当する金額を限度として政令に定める金額を組み入れることとされている。
 また、同資金の取崩しについては、同条第5項の規定により、周辺地域整備交付金その他の発電の用に供する施設の設置及び運転の円滑化に資するための財政上の措置に要する費用を支弁するために必要がある場合に、予算で定める金額に限り、同資金から同勘定の歳入に繰り入れることができるとされている。
 各年度の予算参照書に添付されている周辺地域整備資金増減計画表及び決算参照書に添付されている周辺地域整備資金増減実績表に基づいて同資金の増減の推移を示すと図表2-9 のとおりである。

図表2-9
 周辺地域整備資金の積立て状況
(単位:億円)

年度   平成15 16 17 18 19 20 21 22 23
前年度剰余金からの組入額 予定額 - - - - - - - - - (-)
実績額 - 91 63 55 32 34 33 35 /
差引 - 91 63 55 32 34 33 35 /
電源開発促進勘定の歳出からの繰入額 予定額 260 530 125 136 110 96 77 - 15 (15)
実績額 260 530 125 136 110 96 77 - /
差引 - - - - - - - - /
電源開発促進勘定の歳入への繰入額 予定額 - - - 80 170 200 180 99 624 (124)
実績額 - - - 49 127 112 101 56 /
差引 - - - △30 △42 △88 △78 △43 /
年度末現在額 予定額 260 790 1,006 1,124 1,119 1,078 1,052 1,075 578 (1,078)
実績額 260 881 1,069 1,211 1,225 1,244 1,252 1,231 /
差引 - 91 63 86 106 165 199 156 /
注(1)  各年度の予定額については、当該年度の予算参照書に添付されている周辺地域整備資金増減計画表の金額を記載しており、前年度剰余金からの組入れは考慮されていない。
注(2)  平成23年度の予定額は、第1次補正予算の予算参照書に添付されている周辺地域整備資金増減計画表の金額を記載しており、()内に当初予算の予算参照書に添付されている周辺地域整備資金増減計画表の金額を記載している。

 同勘定から同資金への繰入れは毎年度予算額が全額繰り入れられているが、同資金から同勘定の歳入への繰入れは、周辺地域整備交付金の必要額が予定を下回ったことから18年度以降毎年度繰入額は予定額を下回る状況にある。また、前年度剰余金からの組入れについては、当該年度の予算参照書の作成時点においては剰余金の額が判明していないため、予定額は計上されていないが、16年度以降毎年度繰入れの実績がある。そして、同資金の年度末残高は21年度までは毎年度増加している。
 22年度は、特会法第92条第3項の規定により21年度の剰余金477億円のうち35億円が同資金に組み入れられたが、同条第2項の規定による同資金への繰入れは同勘定の歳出予算に計上されず、行われなかった。また、同条第5項の規定により周辺地域整備交付金等に要する費用を支弁するための費用99億円が(項)周辺地域整備資金より受入として同勘定の歳入予算に計上されたが、周辺地域整備交付金等の必要額が予定よりも少なかったため、実際には56億円が繰り入れられた。その結果、1231億円が同資金の22年度末の残高となっている。
 なお、23年度においては、東日本大震災対応のために編成された第1次補正予算の財源を確保するため、同資金500億円を活用するとして、一般会計からの繰入れを同額減額補正している。
 また、同勘定における積立金の状況については、「3 財政健全化に向けた剰余金、積立金等の活用等の状況」にも記載している(参照 )。

(イ) 石油石炭税の状況(エネルギー対策特別会計エネルギー需給勘定(18年度までは石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計石油及びエネルギー需給構造高度化勘定))

 石油石炭税については、前記行政改革の重要方針においては特に言及されていないが、前記のとおり、エネルギー対策特別会計の電源開発促進勘定で、特定財源等が特別会計に直入される構造が見直されたのに、剰余金が多額に上っている状況が見受けられたことから、制度発足当時から特定財源等を一般会計から繰り入れることとされていた同特別会計のエネルギー需給勘定についても検査した。その状況は以下のとおりである。

a 特定財源等の繰入れ

 石油石炭税は、石油石炭税法(昭和53年法律第25号)に基づき原油等に対して課されるものであり、一般会計からエネルギー対策特別会計エネルギー需給勘定に繰り入れられ、エネルギー対策の財源として使用されている。
 この石油石炭税の税収の推移は図表2-10 のとおりとなっている。

図表2-10
 石油石炭税の税収額(収納済歳入額)の推移

図表2-10

 石油石炭税の税収については、昭和53年の創設以来、毎年度、全額同勘定に繰り入れるのではなく、一般会計経由で同勘定の財政需要に応じて必要額だけを繰り入れる仕組みとなっており、特会法施行後も特会法第90条の規定により同様の仕組みとなっている(図表2-11 参照)。

 石油石炭税の税収の繰入れの流れ

石油石炭税の税収の繰入れの流れ

 特会法第90条の規定により、一般会計からの繰入れは、燃料安定供給対策及びエネルギー需給構造高度化対策に要する財源に充てるため、毎会計年度、当該年度の石油石炭税の収入額の予算額と前年度までの石油石炭税の収入額の決算額との合計額から前年度までの各年度に一般会計からエネルギー需給勘定へ繰り入れた額の合計を控除した額に相当する金額を、予算の定めるところにより一般会計から同勘定に繰り入れるものとするとされている。ただし、当該年度における燃料安定供給対策及びエネルギー需給構造高度化対策に要する費用の額と予算作成時の当該年度の一般会計からの繰入金以外の前年度剰余金受入その他の歳入の見込額との差額に照らして繰入相当額の一部について繰り入れる必要がないと認められる場合には、その金額について繰り入れないことができるとされている。この規定により、石油石炭税の税収は、毎年度、同勘定に全額繰り入れるのではなく、当該年度に必要な額を繰り入れることで一部の金額を一般会計に留保することができるとされており、制度上、この一般会計に留保された額は、将来燃料安定対策等に必要な額に対して当該年度の石油石炭税の収入額が不足した場合に、それまでに留保された額を限度に同勘定に繰り入れることとされている。また、各年度において留保された額は、一般会計の財源として活用されることとなる。
 平成17年度から22年度までの石油石炭税の同勘定への繰入状況と一般会計に留保された額の累計は、図表2-12 のとおりであり、22年度末の一般会計に留保された額の累計は7683億円となっている。

図表2-12
 石油石炭税のエネルギー需給勘定への繰入状況と一般会計に留保された額(累計)の状況等
(単位:億円)

区分 平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
石油石炭税歳入額(a) 4,931 5,117 5,128 5,110 4,867 5,019
エネルギー需給勘定への繰入額(b) 3,943 3,765 4,538 4,635 5,610 4,352
差額(a)-(b) 988 1,352 590 475 △742 667
一般会計に留保された額(累計) 5,340 6,693 7,283 7,759 7,016 7,683

 なお、21年度は、経済危機対策の一環として「低炭素革命」及び「安全・安心確保等」の推進を図るために必要な経費を補正予算により追加することとされ、一般会計に留保された額のうちの742億円を一般会計からエネルギー需給勘定に繰り入れて、その財源に充てている。

b 特別会計の財政状況

 エネルギー需給勘定の歳入・歳出の状況は、図表2-13 及び図表2-14 のとおりとなっている。歳入は、一般会計からの繰入れのほか、国家備蓄石油の購入及び国家備蓄施設の設置に要する費用の財源に充てるための石油証券及借入金収入が多額に上っている。また、歳出は、国家備蓄石油の取得や国家備蓄石油の管理委託費等の燃料安定供給対策費、非化石エネルギー等の導入促進対策に係る補助金等のエネルギー需給構造高度化対策費のほか、借入金や石油証券の償還のための国債整理基金特別会計への繰入れが多額に上っている。

図表2-13  エネルギー需給勘定における歳入
(単位:億円)

勘定・項名称
平成17年度 18年度
当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額
石油及びエネルギー需給構造高度化勘定 23,474 25,499 21,264 21,934
一般会計より受入 3,943 3,943 3,765 3,765
石油証券及借入金収入 16,087 13,879 15,211 14,124
備蓄石油売払代 192 44 273 49
雑収入 633 3,319 42 304
前年度剰余金受入 2,617 4,312 1,972 3,690

勘定・項名称
19年度 20年度 21年度 22年度
当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額
エネルギー需給勘定 22,741 23,316 22,066 22,888 20,020 22,591 20,299 21,356
一般会計より受入 4,538 4,538 4,635 4,635 4,397 5,610 4,352 4,352
石油証券及借入金収入 16,668 14,327 15,466 14,034 14,627 13,867 14,675 13,976
備蓄石油売払代 383 0 127 96 152 163 350 260
雑収入 8 1,502 8 667 37 419 100 329
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構納付金収入 - - 53 394 - - 23 26
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構納付金収入 - - 17 49 - - - 0
前年度剰余金受入 1,143 2,948 1,757 3,011 806 2,530 796 2,411

図表2-14  エネルギー需給勘定における歳出
(単位:億円)

勘定・項名称
平成17年度 18年度
当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額
石油及びエネルギー需給構造高度化勘定 23,474 21,808 21,264 19,285
石油安定供給対策費 2,761 1,915 3,127 1,716
石油生産流通合理化対策費 471 337 364 272
エネルギー需給構造高度化対策費 1,750 1,332 1,633 1,371
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構運営費 1,022 1,022 1,060 1,060
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構運営費 355 355 349 349
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構出資 811 811 105 105
国債整理基金特別会計へ繰入 16,237 16,002 14,566 14,379
(その他の項) 64 32 56 29

勘定・項名称
19年度 20年度 21年度 22年度
当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額
エネルギー需給勘定 22,741 20,304 22,066 20,358 20,020 20,179 20,299 19,206
燃料安定供給対策費 3,976 2,550 2,845 1,977 2,724 1,913 2,732 1,954
エネルギー需給構造高度化対策費 1,675 1,576 1,800 1,344 2,008 2,863 2,147 2,288
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構出資 134 134 185 399 65 325 115 115
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構運営費 293 293 235 235 205 205 172 172
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構運営費 953 953 913 996 849 911 878 878
国債整理基金特別会計へ繰入 15,660 14,758 16,038 15,374 14,138 13,950 14,225 13,786
(その他の項) 48 37 47 30 28 9 26 9

 収納済歳入額から支出済歳出額を差し引いた剰余金の額の推移は、図表2-15 のとおりとなっている。エネルギー需給勘定において多額の剰余金が発生していることについては、予算の執行状況の調査を行い不用率の高い事業は予算を減額するなどの取組が行われているところであり、また、平成19年度決算検査報告において、「エネルギー対策特別会計エネルギー需給勘定において、過年度の不用額の発生要因を十分に見極め、歳出予算の見積りを行う際に反映させるなどして剰余金を減少させるよう意見を表示したもの」 を掲記し、担当府省において、歳出予算の見積りに当たり当該年度の執行実績を踏まえた積算を行うなどの処置を講じている。
 これらの取組等により、22年度の剰余金は前年度に比べて減少しているが、依然として多額に上っている状況である。

図表2-15
 エネルギー需給勘定における剰余金の推移
(単位:億円)

勘定名称 平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
石油及びエネルギー需給構造高度化 3,690 2,648 /
エネルギー需給 / 3,011 2,530 2,411 2,150

 これは、前記のとおり、一般会計からの繰入れについては、特会法第90条の規定により、予算の定めるところにより繰り入れることとされていることから、年度途中の予算執行の過程において支出見込額が予算額を下回り不用額の発生が見込まれる場合でも、そのような歳出予算の執行状況にかかわらず毎年度予算額と同額を繰り入れていることがその一因となっている。
 また、エネルギー需給勘定における剰余金の状況については、「3財政健全化に向けた剰余金、積立金等の活用等の状況」において詳述している(参照 )。

イ 道路特定財源の見直し(社会資本整備事業特別会計道路整備勘定(19年度までは道路整備特別会計))

(ア) 道路特定財源制度の沿革

 道路特定財源制度は、道路整備を緊急的かつ計画的に行うため、昭和28年に道路整備費の財源等に関する臨時措置法(昭和28年法律第73号)により発足した。この制度は、受益者負担・原因者負担の考え方に基づいて自動車利用者に道路整備事業費の負担を求めることとし、揮発油税の税収が道路整備五箇年計画に基づく道路整備のための財源とされた。そして、これに基づき29年に第1次道路整備五箇年計画が策定され、計画的な道路整備が推進されることとなった。道路整備五箇年計画はその後12次まで策定され、平成15年に国土交通省の事業分野別の長期計画を統合した社会資本整備重点計画に統合された。
 道路特定財源とされる税目及び税率の変遷は次のとおりである。

〔1〕 揮発油税は、制度発足当初の昭和29年4月の税率が13.0円/Lであった。その後、税率については、道路整備五箇年計画等の財源を賄うため五箇年計画と併せて見直され、49年の税制改正で税率の引上げが行われた際に、暫定的な措置として、租税特別措置法(昭和32年法律第26号)により税率の特例措置が講じられ、その後の税率引上げの際にも同法により税率の特例措置として改正されてきた。しかし、平成20年度については、関連法案が成立しなかったため暫定税率は失効し、20年4月は本則税率24.3円/Lが適用されたが、その後の関連法案の成立により、同年5月には暫定税率48.6円/Lの適用となっている。

〔2〕 石油ガス税は、昭和41年に創設され、税収の2分の1が国の道路財源とされ、2分の1が地方の道路整備財源に充てるため石油ガス譲与税として地方に譲与されることとされた。石油ガス税の税率は41年2月から5.0円/kg、42年1月から10.0円/kg、45年1月から17.5円/kgとなっている。

〔3〕 自動車重量税は、46年に創設され、税収の4分の1(平成15年度以降は3分の1)が自動車重量譲与税として地方の道路整備財源に充てることとされ、残りが国の財源とされた。

 道路整備費の財源等に関する臨時措置法が昭和33年に廃止され、これに代わって制定された道路整備緊急措置法(昭和33年法律第34号。平成20年4月以降は「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」)により、揮発油税については税収額の全額を、昭和41年創設の石油ガス税については税収額の2分の1を、それぞれ道路整備事業の実施に当たり国が支弁する経費である道路整備費に充てることとされた。また、自動車重量税については国の財源とされた分の約8割相当額が税創設及び運用の経緯から道路特定財源とされてきた。
 これらの税収の推移は図表2-16 のとおりとなっている。

図表2-16
 道路特定財源(収納済歳入額)の推移

図表2-16

注(1)  自動車重量税については、収納済歳入額の約8割分を記載している。
注(2)  平成21年度については、道路特定財源ではなく一般財源である。

 このように、道路特定財源である揮発油税等の税収が多額に上り、また、道路整備の水準も向上する状況の下、特別会計の在り方の検討の中で、道路特定財源については、全て道路整備に充てるのではなく、納税者の理解が得られる範囲内でできる限り柔軟に対応していく必要があるとされてきた。
 その後、前記行政改革の重要方針で示された方針に基づき、行政改革推進法第20条第3項の規定により、道路特定財源制度については、国の財政状況の悪化をもたらさないよう十分に配慮しつつ、道路特定財源制度に係る税の収入額の使途の在り方について、納税者の理解を得られるよう見直しを行うこととされた。その際に、見直しの基本方針として、道路特定財源制度に係る税の収入額については、一般財源化を図ることを前提とし、平成19年度以降の歳出及び歳入の在り方に関する検討と併せて、納税者の理解を得つつ、具体的な改正の案を作成することなどが示された。
 これらを受けて、18年12月に、道路特定財源の見直しに関する具体策として、道路特定財源の税収の全額を毎年度の予算で道路整備に充てることを義務付けている現在の仕組みを改めることとし、20年の通常国会で所要の法改正を行うとともに、毎年度の予算で、道路歳出を上回る税収は一般財源とすることなどが閣議決定された。
 その後、20年5月に、道路特定財源制度は同年の税制抜本改革時に廃止し、21年度から一般財源化するとした道路特定財源等に関する基本方針が閣議決定された。

(イ) 道路特定財源とその使途

 17年度から20年度までの道路特定財源に該当する国分の税収の当初予算額は、図表2-17 のとおりとなっている。揮発油税及び石油ガス税については、当該年度の税収の歳入予算額のほか前々年度の予算額と決算額の差額を調整した額(以下「決算調整額」という。)を道路整備費の財源に充てることとされていることから、収入額と決算調整額を合わせた額が予算額として計上されている。また、前記のとおり、自動車重量税については、税創設及び運用の経緯から道路特定財源とされている国の財源とされた分の約8割相当額が計上されている。

図表2-17
 道路特定財源の当初予算額
(単位:億円)

区分 平成17年度 18年度 19年度 20年度
揮発油税 29,629 29,573 28,394 27,298
  収入額 29,138 28,953 28,449 27,685
  決算調整額 491 620 △54 △386
石油ガス税 152 143 132 139
  収入額 150 140 140 140
  決算調整額 2 3 △7 △0
揮発油税と石油ガス税の計 29,781 29,716 28,527 27,438
自動車重量税(約8割分) 5,851 5,712 5,549 5,541
合計 35,632 35,428 34,076 32,979
(注)
 国土交通省の予算関係資料を基に作成したものである。

 そして、道路特定財源のうち揮発油税で地方道路整備臨時交付金の交付に要する費用の財源に充てられる額(税収の4分の1相当額)を道路整備勘定の歳入に直接計上することとされており、それ以外は一般会計の歳入に計上した後に、一般会計から道路整備勘定に繰り入れられている。また、自動車重量税は国の一般財源として収納されるため、予算書及び決算書上は自動車重量税を財源とした支出を特定してその状況を把握することができない。
 道路特定財源については、道路整備事業等の財源に充てるために、その大部分が一般会計から道路整備勘定に繰り入れられている。ただし、北海道及び沖縄県における道路整備事業等については、道路整備勘定に繰り入れないで、直接一般会計から支出する方式により、北海道開発局及び沖縄総合事務局に係る道路整備事業等の工事諸費の財源に充てられている。また、15年に道路整備費の財源等の特例に関する法律施行令(昭和34年政令第17号。平成20年5月以降は「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律施行令」)を改正し、有料道路の料金の自動収受システムの普及の促進及び高度化に関する調査を行う事業やディーゼル微粒子除去装置の導入支援を道路特定財源の使途の対象に加え、それ以降、18年までの毎年、使途の対象の拡大を行っている。また、道路関係四公団民営化推進委員会の意見を受けた政府・与党申合せを踏まえて、15年度に一般会計に承継された本州四国連絡橋公団の有利子負債の一部の償還財源にも道路特定財源を充てるなどしている(図表2-18 参照)。

 道路特定財源の流れ(平成18年度)

図表2-18

 このような、道路特定財源の使途の拡大の流れの中、21年度には道路特定財源は全て一般財源化され、使途の制限がなくなった。

(ウ) 特別会計の財政状況

 道路整備勘定の歳入は、図表2-19の とおり、地方道路整備臨時交付金に充てるために直入される揮発油税や、一般会計からの繰入れのほか、地方公共団体工事費負担金、償還金収入等となっている。このうち一般会計からの繰入れについては、20年度までは、当初予算額の財源には道路特定財源のうち使途拡大等に要する額を除いた額が充てられているが、補正予算による追加額の財源には一般財源が充てられている。
 そして、21年度以降は、道路特定財源が全て一般財源化されたことに伴い、一般会計からの繰入れの財源には全額一般財源が充当されることになり、道路特定財源の一部として地方道路整備臨時交付金に充てるため道路整備勘定に計上されていた揮発油税の計上もなくなった。
 また、20年度に創設された地方道路整備臨時貸付金の貸付財源に充てるため、20年度以降は、国債整理基金特別会計からの繰入れが歳入に計上されている。この貸付金が償還された際、償還金は、国債整理基金特別会計に繰り入れることとされている。

図表2-19
 道路整備勘定の歳入
(単位:億円)

項名称 平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額
揮発油税 7,408 7,408 7,393 7,393 7,099 7,099 6,825 6,825
一般会計より受入 22,221 24,574 21,247 22,862 20,597 21,028 19,986 21,969 16,391 21,799 12,218 10,733
改革推進公共投資事業償還金等財源一般会計より受入 437 1,398
産業投資特別会計より受入 534 444 361 463 202 381
国債整理基金特別会計より受入 1,000 1,000 1,000 652 800 508
地方公共団体工事費負担金収入 6,095 6,295 6,058 6,546 6,038 6,384 5,978 5,993 5,232 6,143 3,658 4,181
償還金収入 1,047 1,290 1,092 1,220 1,235 1,304 1,344 1,381 1,341 1,391 1,317 1,350
改革推進公共投資事業資金貸付金償還金収入 85
附帯工事費負担金収入 468 334 411 305 323 242 230 180 209 172 178 148
受託工事納付金収入 436 144 370 181 231 185 253 160 294 315 280 206
独立行政法人土木研究所納付金収入 1 1
前年度剰余金受入 130 7,571 155 8,622 294 9,092 352 7,792 222 8,579 248 7,385
雑収入 153 247 151 268 154 233 130 271 136 196 163 178
38,933 49,794 37,242 47,865 36,177 45,951 36,100 45,575 24,828 39,252 18,865 24,692

 道路整備勘定の歳出は、前記の特別会計に直入した揮発油税を財源とした地方道路整備臨時交付金、一般会計からの繰入れや地方公共団体工事費負担金等を財源とした道路事業費や道路環境整備事業費、財源を国債整理基金特別会計から受け入れて実施している地方道路整備臨時貸付金や過去の貸付金の償還金収入の一般会計への繰入れなどとなっている。
 道路整備勘定における歳出について、地方道路整備臨時交付金を「揮発油税財源分」、一般会計からの繰入れなどが財源となっている経費を「一般会計からの繰入対象経費」、直入される揮発油税、一般会計からの繰入れのいずれも財源となっていない経費を「その他」としてその推移を整理すると図表2-20 のとおりである。

図表2-20
 道路整備勘定における歳出額の推移
(単位:億円)

区分 平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額
揮発油税財源分 7,408 7,462 7,393 7,485 7,099 7,020 6,825 6,582 1,935 17
一般会計からの繰入対象経費 28,974 30,548 27,959 29,550 27,497 29,458 26,928 28,215 22,466 27,967 16,780 19,997
その他 2,550 3,161 1,890 1,736 1,580 1,639 2,347 2,197 2,362 1,963 2,084 1,690
38,933 41,172 37,242 38,772 36,177 38,118 36,100 36,995 24,828 31,866 18,865 21,706
(注)
 平成21、22両年度の揮発油税財源分の支出済歳出額は全て前年度からの繰越分である。

 道路特定財源が一般財源化された21年度以降の歳出合計額は、当初予算、支出済歳出額とも大きく減少しており、21年度に、揮発油税を財源とした地方道路整備臨時交付金が廃止されたことや、22年度に、地方公共団体が行う社会資本整備について、それまでの個別補助金が原則廃止されたことがその大きな要因となっている。
 なお、21年度の地方道路整備臨時交付金の廃止に当たり、都道府県及び市区町村からの要望を踏まえ、同交付金に代わるものとして、道路整備を中心に関連する他のインフラ整備や関連するソフト事業も含め地方の実情に応じて使用できる地域活力基盤創造交付金が一般会計に創設され、9400億円が予算措置された(支出済歳出額6158億円)。また、22年度には、活力創出基盤整備等の基幹となる事業の実施のほか、これと合わせて関連する社会資本整備や基幹事業の効果を高めるための事業を一体的に支援するため、地方公共団体にとって自由度の高い総合交付金として社会資本整備総合交付金が一般会計において創設された。

ウ 将来的な航空機燃料税の一般財源化の検討(社会資本整備事業特別会計空港整備勘定(19年度までは空港整備特別会計))

(ア) 航空機燃料税の状況

 航空機燃料税法(昭和47年法律第7号)に基づき航空機燃料に対して課される航空機燃料税については、収入額の13分の11に相当する額が国の特定財源等として一般会計から社会資本整備事業特別会計空港整備勘定に繰り入れられて空港の緊急的な整備等の財源に充てられ、残りの13分の2に相当する額が、航空機燃料譲与税として地方公共団体の空港対策費用の財源に充てられている。このうち、国の財源とされた分の税収の推移は図表2-21 のとおりとなっている。

図表2-21
 国の財源とされた航空機燃料税の税収額(収納済歳入額)の推移

図表2-21

 航空機燃料税の税率は昭和53年3月以降26,000円/kLとなっており、平成9年に沖縄路線、11年に特定離島路線に対する軽減措置が設けられている。
 なお、航空機燃料税については、23年度からの3年間の集中改革期間には、26,000円/kLから18,000円/kL(沖縄路線13,000円/kLから9,000円/kL、特定離島路線19,500円/kLから13,500円/kL)に減額することとされている。
 航空機燃料税の繰入れについて、前記行政改革の重要方針では、「特別会計の歳出・借入金の抑制の努力を講じつつ、引き続き空港整備に投入していくものとするが、その適否については常に点検を行い、将来的には、空港整備の進捗状況を踏まえ、原則として一般財源化を検討するものとする」などの見直しの方針が示され、行政改革推進法では、「空港の整備に係る歳出及び借入金を抑制するよう努めつつ、これを実施するものとし、将来において、空港の整備の進捗状況を踏まえ、その廃止について検討するものとする」こととされた。
 これについては、22年5月に取りまとめられた国土交通省成長戦略会議の報告書の中で、以下のように記述されている。

3. 航空分野
(略)
戦略3: 「民間の知恵と資金」を活用した空港経営の抜本的効率化
1. 現状の課題・問題点
 空港整備勘定(旧空港整備特会)は、空港の利用者である航空会社が負担する着陸料等の空港使用料や一般会計からの繰り入れ(いわゆる真水)を主な財源とし、国が管理する空港の整備、維持・運営を行うとともに、地方自治体が管理する空港の整備にも補助を行ってきた。この空港整備勘定によって、結果として利用実績が乏しい空港も含め整備を行い、全国で98の空港が供用されている。
 国も最近になって空港政策を「整備」から「運営」へとシフトさせ、平成20年に「空港整備法」を「空港法」と改正したところである。この際、空港を整備の財布である空港整備勘定の在り方についても必要な見直しを行うべきであったが、実際には、空港政策のシフトが不完全な状態のままとなっている。  
(以下略)
2. 課題に対応した政策案
(略)
2-2: 公租公課も含めた空港整備勘定の各歳入・歳出のあり方の見直し
(略)
(2) 課題に対応した政策案
(略)
〔3〕 空港整備勘定の更なる見直し
2-1において先述したとおり、空港関連企業と空港の経営一体化及び民間への経営委託(コンセッション)ないし民営化について検討が進んだ段階で、関係法令の整備等、空港整備勘定においても更なる見直しを実施する。
(以下略)

 この報告を受けて、国土交通省では22年12月に「空港運営のあり方に関する検討会」を立ち上げ、民間への経営委託・民営化についての具体的な手法等についての検討を行っている。

(イ) 特別会計の財政状況

 空港整備勘定の歳入には、図表2-22 のとおり、一般会計からの繰入れのほか、空港使用料収入、借入金等があり、空港使用料収入は主に空港等維持運営費や債務の償還に、一般会計からの繰入れは空港整備事業費や航空路整備事業費にそれぞれ充てられている。
 一方、空港整備勘定の歳出には、空港整備事業費、空港等維持運営費、債務の償還に係る経費の国債整理基金特別会計への繰入れなどがある。このうち空港整備事業費は、16年度に始まった羽田空港の再拡張事業等の実施により21年度までは増加している。

図表2-22
 空港整備勘定歳入、歳出、借入金残高
(単位:億円)

区分 平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
歳入 項名称 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額 当初予算額 収納済歳入額
一般会計より受入 1,651 1,508 1,665 1,484 1,624 1,663 1,532 1,644 1,423 1,857 1,126 1,301
改革推進公共投資事業償還金財源一般会計より受入 21 64
空港使用料収入 2,121 2,154 2,123 2,211 2,170 2,196 2,171 2,118 2,083 1,981 2,044 1,943
地方公共団体工事費負担金収入 68 77 71 77 57 57 59 58 58 62 34 32
借入金 628 497 1,086 689 1,090 1,105 966 956 1,134 1,436 881 984
(その他の項) 481 1,041 773 1,317 718 1,604 699 1,529 599 899 525 712
4,973 5,344 5,721 5,781 5,660 6,626 5,428 6,306 5,300 6,237 4,612 4,973
歳出 項名称 当初予算額 支出済歳出額 当初予算額 支出済歳出額 当初予算額 支出済歳出額 当初予算額 支出済歳出額 当初予算額 支出済歳出額 当初予算額 支出済歳出額
空港整備事業費 1,406 914 2,369 1,332 2,483 2,433 2,120 2,642 2,092 2,828 1,564 1,803
北海道空港整備事業費 66 60 58 73 65 61 98 81 89 115 86 77
離島空港整備事業費 39 38 9 9 15 16 18 17 13 13 4 6
沖縄空港整備事業費 46 41 76 68 77 71 94 85 98 156 67 95
航空路整備事業費 244 266 256 271 268 264 302 301 302 343 235 214
空港等維持運営費 1,567 1,454 1,545 1,479 1,506 1,469 1,488 1,434 1,497 1,353 1,476 1,347
国債整理基金特別会計へ繰入 1,052 1,048 1,056 1,050 1,055 1,043 1,035 1,032 1,038 1,028 1,035 1,026
(その他の項) 549 598 349 353 188 191 270 246 167 154 142 138
4,973 4,423 5,721 4,638 5,660 5,551 5,428 5,841 5,300 5,995 4,612 4,709
借入金残高 9,015 8,919 9,221 9,367 9,973 10,114

 そして、この空港整備事業費の財源には一般会計からの繰入れのほか、空港使用料収入や地方公共団体の負担金が充てられているが、羽田空港の再拡張事業については、整備事業費の2割程度を地方公共団体の無利子貸付金で、残りの事業費のおおむね8分の3を一般会計からの繰入れで、8分の5を財政融資資金からの借入金で賄うこととしている。
 また、空港整備勘定では空港整備事業費の財源として従来、財政融資資金からの借入れを行っており、地方公共団体からの借入れと合わせた借入金残高は、18年度には減少しているが、羽田空港再拡張事業により、その後は増加する傾向にある。羽田空港の整備のための借入金の償還については、空港に係る経費をその収益で負担することを明確化するために、特定財源等ではなく、空港の使用の対価として徴収している空港使用料を財源として充当することとしている。
 国の財源とされた分の航空機燃料税は、空港整備勘定の歳入に一般財源と合わせて「一般会計より受入」として一括して計上されており、その内訳は図表2-23 のとおりである。国の財源とされた分の航空機燃料税については、特別会計の予算書や決算書には記載されていないため、この金額を把握するには、一般会計の予算書や決算書で、「航空機燃料税財源」の記載がある社会資本整備事業特別会計への繰入額を集計する必要がある。

図表2-23
 空港整備勘定の収納済歳入額のうち(項)一般会計より受入の額の推移
(単位:億円)

区分 平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
一般会計より受入 1,508 1,484 1,663 1,644 1,857 1,301
 うち航空機燃料税財源分 919 850 925 924 780 715
 うち航空機燃料税以外の分 589 634 737 719 1,077 585

(3) まとめ

 特定財源等の問題点については、前記行政改革の重要方針において、道路特定財源の見直し、空港整備の進捗状況を踏まえた将来的な航空機燃料税の一般財源化の検討、電源開発促進税が特別会計に直入される構造についての見直しの各方針が示された。
 そして、エネルギー対策特別会計においては、19年度に電源開発促進税の税収を全額一般会計に計上した上で必要額を同特別会計電源開発促進勘定に繰り入れる仕組みに改められた。これにより、特別会計における歳出の動向に関わらず、税収の状況により特別会計の歳入が決まっていた状況から、当該年度の歳出に必要な額を繰り入れることとすることにより、剰余金の額は18年度以前と比べて減少した。
 しかし、同特別会計の電源開発促進勘定及びエネルギー需給勘定への一般会計からの繰入れについては、特会法の規定により予算の定めるところにより繰り入れることとされているため、年度途中で不用額の発生が見込まれる場合でも歳出予算の執行状況を踏まえた繰入れの減額を行うことができないことも要因の一つとなり、なお多額の剰余金が発生している状況である。
 道路特定財源については、前記の見直しの方針に示されたとおりに、21年度に一般財源化されて、使途の制限は一切なくなり、制度上は道路特定財源とされた揮発油税等の歳入が道路整備に充てられるという義務付けがなくなった。そして、21、22両年度の道路整備勘定の歳出額は減少しているものの、道路整備事業等の公共事業費に占める割合は大きいことから、今後もその支出が適切か留意する必要がある。
 航空機燃料税の将来的な在り方については、具体的な方向性が示されていないことから、空港の整備について、配置的側面からの整備はおおむね出来上がっているものの、航空機燃料税が航空機の安全運航の確保に必要な事業等の財源になっていることなども踏まえて、今後の見直しの状況に留意する必要がある。