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  • 平成24年10月

公共建築物における耐震化対策等に関する会計検査の結果について


2 耐震改修の状況

(1) 耐震改修の概要

 府省等は、耐震診断の結果を踏まえ、建築物の耐震改修等が必要と判断した場合には、診断改修基準に基づき、施設の位置・配置等、構造体、建築非構造部材及び建築設備の診断結果を総合的に勘案し、最も効果的な方法により耐震改修を実施することとされている。そして、図表2-1 のとおり、施設の機能性確保、施工性、経済性等の面から所要の耐震性能を確保する耐震改修が可能か検討し、耐震改修が困難な場合には、施設の用途変更の可否も含めて判断し、用途変更も不可能な場合には、建替え等により施設の耐震化を図ることとされている。このように、府省等の建築物の耐震改修は、既存建築物の耐震改修工事を行うことだけではなく、建替え等を含めた効果的な改修方法を検討することとされている。

図表2-1  耐震改修等の流れ

図表2-1耐震改修等の流れ

 また、独立行政法人等は、建替え等を含めた改修方法を検討し施設の耐震化を図ることにしている。

(2) 耐震改修の実施状況

 官庁施設、教育施設、医療施設等の建築物の延床面積200m 以上(木造は同500m 以上)の建築物を対象として、耐震改修の実施状況をみると、次のとおりである。

ア 官庁施設の耐震改修の実施状況

(ア) 耐震改修工事の実施状況

a 構造体の耐震改修工事

 構造体の耐震診断の結果、計画基準に基づく耐震性能を確保していないため耐震改修等が必要とされた官庁施設の建築物に対する耐震改修工事の実施状況は、図表2-2 のとおりである。

図表2-2  官庁施設における耐震改修工事の実施状況(構造体)
区分 耐震安全性の分類 耐震診断により耐震改修等が必要とされた建築物(A) 耐震改修工事が実施されていた建築物(B) 耐震改修率
(B)/(A)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(%)
延床面積
(%)
検査対象の建築物 I 444 1,803 182 886 41.0 49.1
II 1,212 2,572 682 1,201 56.3 46.7
III 1,049 2,149 370 894 35.3 41.6
2,705 6,525 1,234 2,981 45.6 45.7
  うち、特定建築物規模相当の建築物 I 233 1,545 97 802 41.6 51.9
II 609 2,118 311 939 51.1 44.3
III 479 1,667 227 766 47.4 46.0
1,321 5,332 635 2,508 48.1 47.0

 構造体の耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされた官庁施設の建築物(図表1-11 参照)2,705棟に対して、耐震改修工事が実施されていた官庁施設の建築物は1,234棟であり、その割合(以下「耐震改修率」という。)は、棟数で45.6%となっている。
 耐震安全性の分類別に耐震改修率をみると、I類の特定建築物規模相当の建築物は、棟数では41.6%であるが、延床面積では51.9%と10.3ポイント上回っていることから、1棟当たりの延床面積が大きい、大規模な合同庁舎等の建築物の耐震改修工事を優先的に実施している傾向が見受けられる。一方、II類の建築物は、特定建築物規模相当の建築物より検査対象の建築物全体の方が棟数、延床面積共に耐震改修率が高く、検査対象の建築物全体の耐震改修率は、棟数では56.3%であるが、延床面積では46.7%と9.6ポイント低くなっていることから、I類とは逆に比較的小規模な単独庁舎等の建築物の耐震改修工事を多く実施している傾向が見受けられる。
 また、耐震改修工事後も計画基準に基づく耐震性能を確保していない建築物が、16年度報告においては耐震改修工事が実施されていた棟数の約3割で見受けられたが、今回は耐震改修工事が実施されていた棟数の約3%、38棟で見受けられた。耐震改修工事後も計画基準に基づく耐震性能を確保していない主な原因は、計画基準に基づく耐震性能の確保を目標とした場合、施設の機能性が確保された耐震改修工事の実施が困難と判断されたり、耐震改修工事後に建築物の耐震安全性の分類が変更されたりなどしたことによるものである。
 計画基準に基づく耐震性能の確保を目標とした場合、施設の機能性が確保された耐震改修工事の実施が困難と判断された事例は、次のとおりである。

<事例-改修1>
建物名 所在地 分類 建築年次 構造・規模
構造 地上 地下 延床面積
中部経済産業総合庁舎 愛知県名古屋市 I類 昭和35年 RC 4階 1階 9,312m2
 中部経済産業総合庁舎は、平成9年度に行った耐震診断の結果(I類、構造体の評価a、評価値0.08)、耐震改修等が必要とされたが、以下の理由から、計画基準に基づきI類の耐震性能(1.5)の確保を目標とした耐震改修工事は困難と判断したため、17年度に、建築基準法に基づく耐震性能(1.0)の確保を目標とする耐震改修工事が実施されていた。
 計画基準に基づきI類の耐震性能の確保を目標とした耐震改修工事の実施が困難と判断した理由は、耐震壁の数が多くなるなどして入居官署の業務に支障をきたすことになること、工事実施当時、国土交通省が策定した第4次官庁施設整備10箇年計画において、同庁舎が建替整備対象の施設に位置付けられていたことなどを踏まえ、建替整備までの期間における施設の機能性の確保を考慮するなどしたためである。
 このように、同庁舎の耐震改修工事後の耐震性能(構造体の評価c、評価値1.00)は、I類の施設として計画基準に基づく耐震性能が確保されていない。
(注)
 評価値は、建築基準法上必要とされる耐震性能を1.0としたものである(以下同じ。)。

 耐震改修工事後に建築物の耐震安全性の分類が変更されたため、計画基準に基づく耐震性能が確保されていない官庁施設となった事例は、次のとおりである。

<事例-改修2>
建物名 所在地 分類 建築年次 構造・規模
構造 地上 地下 延床面積
湯島地方合同庁舎 東京都文京区 II類 昭和46年 RC 5階 5,797m2
 湯島地方合同庁舎は、東京財務事務所等が入居しており、平成12年度に耐震改修工事が実施されていた。
 この耐震改修工事は、工事実施当時、財務事務所等が入居する庁舎はIII類に分類されていたことから、III類の官庁施設としての計画基準に基づく耐震性能(1.0)を確保する改修(III類、構造体の評価d、評価値1.00)として行われたものである。
 その後、19年4月の位置規模構造基準の改正に伴い、財務事務所が入居する庁舎はII類に分類されたため、同庁舎は、II類の官庁施設としての計画基準に基づく耐震性能(1.25)が確保されていない官庁施設(II類、構造体の評価c、評価値1.00)となっている。

b 建築非構造部材及び建築設備の耐震改修工事

 建築非構造部材及び建築設備の耐震診断の結果、計画基準に基づく耐震性能を確保していないため耐震改修等が必要とされた官庁施設の建築物に対する耐震改修工事の実施状況は、図表2-3 のとおりである。

図表2-3  官庁施設における耐震改修工事の実施状況(建築非構造部材及び建築設備)
区分 耐震安全性の分類 耐震診断により耐震改修等が必要とされた建築物(A) 耐震改修工事が実施されていた建築物(B) 耐震改修率
(B)/(A)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(%)
延床面積
(%)
建築非構造部材 検査対象の建築物 A 987 2,502 350 740 35.5 29.6
B 775 1,333 139 315 17.9 23.6
1,762 3,835 489 1,056 27.8 27.5
  うち、特定建築物規模相当の建築物 A 402 2,055 605 39.1 29.4
B 301 992 69 252 22.9 25.5
703 3,048 226 858 32.1 28.2
建築設備 検査対象の建築物 1,026 2,706 305 765 29.7 28.3
1,069 1,936 190 424 17.8 21.9
2,095 4,642 495 1,190 23.6 25.6
  うち、特定建築物規模相当の建築物 416 2,238 131 637 31.5 28.5
433 1,483 109 357 25.2 24.1
849 3,722 240 995 28.3 26.7
(注)
 耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされた全ての箇所について耐震改修工事が実施されていた建築物を集計している。

 建築非構造部材の耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされた官庁施設の建築物(図表1-11 参照)1,762棟に対して、耐震改修工事が実施されていた官庁施設の建築物は489棟であり、耐震改修率は棟数で27.8%となっている。
 建築設備の耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされた官庁施設の建築物(図表1-11 参照)2,095棟に対して、耐震改修工事が実施されていた官庁施設の建築物は495棟であり、耐震改修率は棟数で23.6%となっている。
 このように、建築非構造部材及び建築設備の耐震改修率が、構造体の耐震改修率に比べて低くなっているのは、建築非構造部材及び建築設備は、模様替えや耐用年数経過による機器等の更新工事に合わせて順次耐震化を行う場合があるなど、構造体と異なり、耐震診断により耐震改修等が必要とされた箇所を全て一度に改修するとは限らないことが要因の一つと考えられる。特定建築物規模相当の建築物についてみると、建築非構造部材A類の耐震改修率は39.1%、また、建築設備甲類の耐震改修率は31.5%となっていて、検査対象の建築物全体の耐震改修率と比べて高くなっており、災害応急対策活動の拠点等となる特定建築物規模相当の建築物は、他の建築物より建築非構造部材及び建築設備に係る耐震改修工事が優先的に実施されている傾向が見受けられる。

(イ) 耐震改修工事を実施していない理由等

a 耐震改修工事を実施していない理由

 官庁施設の建築物の耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされたのに、耐震改修工事を実施していない理由は、図表2-4 のとおりである。

図表2-4  官庁施設における耐震改修工事未実施の理由
区分 耐震安全性の分類 耐震改修工事未実施の理由(複数回答)
移転、建替え又は廃止の予定があるため 倉庫等の用途として使用しており常時職員がいないため 予算化されていないため(予算要求の見送りを含む。) 24年度以降に改修工事を予定しているため 施設の構造上や執務環境上の要因から改修が困難と判断したため 改修の必要性がないと判断したため(他の理由との重複を除く。) その他
(件) (件) (件) (件) (件) (件) (件)
構造体 I 73 4 54 57 5 10 54
II 155 11 149 98 7 36 48
III 193 20 213 181 19 7 39
421 35 416 336 31 53 141
建築非構造部材 A 106 13 170 97 10 56 122
B 99 11 130 145 4 136 37
205 24 300 242 14 192 159
建築設備 118 11 207 103 11 68 101
105 12 184 232 4 178 89
223 23 391 335 15 246 190

 構造体の耐震改修工事を実施していない理由は、「移転、建替え又は廃止の予定があるため」が421件と最も多く、建築物の耐震化は建替え等を含めて総合的に判断して実施されることから、耐震改修工事を実施していないと考えられる。次に多い理由は、「予算化されていないため(予算要求の見送りを含む。)」で416件、その次に多い理由は、「24年度以降に改修工事を予定しているため」で336件となっている。
 また、建築非構造部材及び建築設備の耐震改修工事を実施していない理由は、「予算化されていないため(予算要求の見送りを含む。)」がそれぞれ300件及び391件と最も多く、次に多い理由は、「24年度以降に改修工事を予定しているため」の242件及び335件となっている。

b 使用調整による耐震化

 建築基準法に基づく耐震性能が確保されていない官庁施設について、当該官庁施設に入居している官署を計画基準に基づく耐震性能が確保されている別の既存官庁施設に移転させることなどにより、耐震性能が確保されていない当該官庁施設を廃止することは、官庁施設の耐震化を図るだけではなく、既存官庁施設の有効活用を図る点からも効果的な方策であると認められる。
 既存官庁施設の有効活用に関する方策としては、「国の庁舎等の使用調整等に関する特別措置法」(昭和32年法律第115号。以下「庁舎法」という。)第4条に基づき、財務大臣が定める庁舎等の使用調整に関する計画(以下「庁舎等使用調整計画」という。)による使用調整等がある。使用調整とは、庁舎等を適正かつ効率的に使用するため、所管換、所属替、用途の変更その他の方法により、その使用につき必要な調整をすることで、その対象には、建築基準法に基づく耐震性能が確保されていない官庁施設も含まれている。
 そこで、建築基準法に基づく耐震性能が確保されていない官庁施設に入居する官署を計画基準に基づく耐震性能が確保されている別の官庁施設に移転させ、建築基準法に基づく耐震性能が確保されていない官庁施設を廃止することで、耐震改修工事を実施することなく官庁施設の耐震化が図られることとなる庁舎等使用調整計画について検査したところ、次のような事例が見受けられた。

<参考事例-改修1>
建物名 所在地 分類 建築年次 構造・規模
構造 地上 地下 延床面積
一関税務署庁舎 岩手県一関市 III類 昭和36年 RC 2階 609m2
 一関税務署庁舎(III類、構造体の評価b、評価値0.66)は、建築基準法に基づく耐震性能が確保されていない。
 そして、同庁舎は、平成22年6月に決定された庁舎等使用調整計画において、一関税務署等を他の入居官署の統合・移転に伴い空きスペースが生じる一関法務総合庁舎(III類、構造体の評価d)に移転させた後、廃止することとされた(同計画の実施は、東日本大震災の影響で延期されている。)。
 すなわち、同計画は、その実施により、計画基準に基づく耐震性能が確保された既存官庁施設(一関法務総合庁舎)を有効活用することで、耐震改修工事を実施することなく官庁施設の耐震化を図ることとしている。

 このように、建築基準法に基づく耐震性能が確保されていない官庁施設の中には、庁舎等使用調整計画の実施により廃止されるものが含まれており、財務省が行う使用調整は、官庁施設の耐震化の促進にも資するものとなっている。

c 合同庁舎の整備による耐震化

 官庁施設の建替えは、合同庁舎又は単独庁舎を建て替える場合や複数の単独庁舎を取り壊して合同庁舎を建設する場合等があり、これら官庁施設の整備は、前記のとおり、官公法第10条に基づき、原則として国土交通省が行うこととなっている。
 そして、国土交通省は、官庁施設の整備に関して、官庁施設の耐震化を図るために必要性があると判断された合同庁舎のうち、国の出先機関が入居予定の合同庁舎の整備について、政府において国の出先機関改革の検討が進められていることを踏まえ、21年10月の平成22年度予算概算要求の見直しにより、耐震性に問題がある現庁舎の割合が高く整備の緊急性が真に高い事業であって、入居官署の見直しにより無駄を生じさせないよう対応できる事業以外の合同庁舎の整備については実施を見送ることとした。その後、国土交通省は、東日本大震災の被災状況を踏まえ、上記の条件に加え、強化地域等に所在し指定地方行政機関等が集約される合同庁舎等であって、防災機能の強化のために整備が必要なものを優先的に整備することとした。その結果、国土交通本省の会計実地検査を実施した24年6月時点において、国土交通省は、17か所の合同庁舎の整備を見送っている。
 そこで、建替え等の予定があるため耐震改修工事を実施していないとしている官庁施設の入居官署の中には、上記の整備が見送られている合同庁舎に入居する予定となっている官署もあることから、整備が見送られている合同庁舎に入居予定となっている官署が現在入居している官庁施設の状況等について検査したところ、次のように耐震化が図られていない事例が見受けられた。

<事例-改修3>
建物名 所在地 分類 建築年次 構造・規模
構造 地上 地下 延床面積
四国財務局庁舎 香川県高松市 I類 昭和42年 RC 5階 1階 2,548m2
四国管区警察局庁舎 香川県高松市 I類 昭和40年 RC 4階 1階 4,766m2
高松第2地方合同庁舎 香川県高松市 I類 昭和48年 RC 6階 1階 6,540m2
 四国財務局庁舎(I類、構造体の評価b、評価値0.79)、四国管区警察局庁舎(I類、構造体の評価c、評価値1.25)及び高松第2地方合同庁舎(I類、構造体の評価c、評価値1.28)は、指定地方行政機関が入居するI類の官庁施設であるが、I類の官庁施設として計画基準に基づく耐震性能が確保されておらず、その中でも四国財務局庁舎は、建築基準法に基づく耐震性能も確保されていない。
 四国財務局庁舎に入居している四国財務局等、四国管区警察局庁舎に入居している四国管区警察局、高松第2地方合同庁舎に入居している四国運輸局等は、高松市内に点在する老朽化や耐震性等の問題がある庁舎を集約合同化することなどを目的に整備する高松地方合同庁舎(II期)の入居予定官署となっている。そして、各庁舎は、高松地方合同庁舎(II期)に集約合同化することで耐震化が図られることから、耐震改修工事が実施されていなかった。
 一方、高松地方合同庁舎(II期)の整備は、平成21年度から実施される予定(事業期間21年度〜25年度、総事業費89億8200万円)であったが、21年10月に国の出先機関改革の状況等を踏まえ整備を検討する必要があるものとされて、その後の実施が見送られている。
 このため、四国財務局庁舎等は、現在まで耐震化が図られていない。

 そして、上記の整備が見送られている17か所のうち15か所は、庁舎法第5条に基づく特定国有財産整備計画によるものであることから、特定国有財産整備計画による合同庁舎の整備状況について検査したところ、次のような状況となっていた。
 特定国有財産整備計画は、国有財産の使用の効率化及び配置の適正化を図るため、財務大臣が国有財産の取得及び処分について定めるもので、次の〔1〕 から〔3〕 までに掲げる事業を対象とした計画である。

〔1〕 耐火構造の高層な建物の取得に伴い不用となる庁舎や敷地等を処分して得られる収入をその取得費用に充てることで、庁舎等の集約立体化を図るもの(集約立体化事業)

〔2〕 市街地に設置することが必要でないなど他の用途に供することが適当な庁舎や敷地等を処分して得られる収入をこれに代わる施設の取得費用に充てることで、庁舎等の移転再配置を図るもの(移転再配置事業)

〔3〕 地震防災機能を発揮するために必要な合同庁舎の取得に伴い不用となる庁舎や敷地等を処分して得られる収入をその取得費用に充てることで、庁舎等の地震防災機能強化を図るもの(地震防災機能強化事業)

 上記のうち、〔3〕 に該当する地震防災機能強化事業は、建築物の耐震化緊急対策方針(平成17年9月中央防災会議決定)において、災害時の拠点施設としての機能確保の観点から強力に公共建築物等の耐震化の促進に取り組むとされたことなどを背景として、18年4月の庁舎法改正により新たに特定国有財産整備計画の対象とされた事業である。
 そこで、官庁施設の耐震化を図る手段の一つとなる地震防災機能強化事業に係る特定国有財産整備計画に基づく合同庁舎の整備のうち、24年6月現在で整備を見送っている合同庁舎についてみると、図表2-5 のとおり、8件となっている。

図表2-5  整備が見送られている地震防災機能強化事業に係る合同庁舎
番号 整備対象庁舎名 入居予定官署 計画策定年度 当初の事業計画期間 整備を見送っている理由
1 武生地方合同庁舎 福井地方検察庁武生支部・区検察庁、福井地方法務局武生支局、武生税務署、武生労働基準監督署、武生公共職業安定所 平成20年度 平成20年度
〜22年度
出先機関改革の状況等を踏まえ整備を検討する必要があるものとして、概算要求を見送っているため。
2 広島地方合同庁舎5号館 中国管区警察局 中国総合通信局 、広島東税務署、広島労働局 中国地方整備局(八丁堀庁舎、建政部、港湾空港部) 平成20年度 平成20年度
〜22年度
出先機関改革の状況等を踏まえ整備を検討する必要があるものとして、概算要求を見送っているため。
3 鹿児島港湾合同庁舎 福岡検疫所鹿児島支所、門司植物防疫所鹿児島支所、鹿児島運輸支局、鹿児島海上保安部 平成20年度 平成20年度
〜21年度
21年度に地中障害物が確認されたことから工事契約を解除し、また、建設予定地を変更して、24年度の概算要求を行ったものの、予算計上されなかったため。
4 長崎第2地方合同庁舎 長崎財務事務所、長崎労働局 平成20年度 平成20年度
〜22年度
出先機関改革の状況等を踏まえ整備を検討する必要があるものとして、概算要求を見送っているため。
5 帯広第2地方合同庁舎 帯広財務事務所、帯広税務署、帯広開発建設部 平成21年度 平成21年度
〜26年度
出先機関改革の状況等を踏まえ整備を検討する必要があるものとして、概算要求を一時見送っており、さらに24年度の概算要求を行ったものの、予算計上されなかったため。
6 福島第2地方合同庁舎 自衛隊福島地方協力本部、東北公安調査局福島駐在官室、福島財務事務所、福島地方気象台、福島労働局 平成21年度 平成21年度
〜24年度
出先機関改革の状況等を踏まえ整備を検討する必要があるものとして、概算要求を見送っているため。
7 鹿児島第3地方合同庁舎 鹿児島地方検察庁、鹿児島保護観察所、鹿児島地方法務局、鹿児島行政評価事務所、鹿児島財務事務所、九州地方整備局鹿児島営繕事務所 平成21年度 平成21年度
〜25年度
出先機関改革の状況等を踏まえ整備を検討する必要があるものとして、概算要求を見送っているため。
8 唐津港湾合同庁舎 伊万里税関支署唐津出張所、福岡検疫所唐津出張所、唐津労働基準監督署、佐賀運輸支局(唐津庁舎)、唐津海上保安部 平成21年度 平成21年度
〜23年度
出先機関改革の状況等を踏まえ整備を検討する必要があるものとして、概算要求を見送っているため。
(注)
 入居予定官署欄において、斜体字 となっている官署は指定地方行政機関である。

 24年6月現在、地震防災機能強化事業に係る特定国有財産整備計画で、合同庁舎の整備が見送られている上記8件のうち7件は、出先機関改革の状況等を踏まえ整備を検討する必要があるものとされている事業であり、その中には、災害時に防災拠点となる指定地方行政機関が入居予定官署に含まれている合同庁舎の整備事業も見受けられる。
 移転、建替え又は廃止の予定があるため耐震改修工事を実施していない官庁施設のうち、出先機関改革の状況等を踏まえ整備を検討する必要があるものとされていて、地震防災機能強化事業に係る特定国有財産整備計画による合同庁舎の整備が見送られるなどしているため、耐震化が図られていない事例は、次のとおりである。

<事例-改修4>
建物名 所在地 分類 建築年次 構造・規模
構造 地上 地下 延床面積
中国総合通信局庁舎 広島県広島市 I類 昭和40年 RC 2階 1,764m2
 中国総合通信局庁舎(I類、構造体の評価b、評価値0.68)は、指定地方行政機関である中国総合通信局が入居するI類の官庁施設であるが、建築基準法に基づく耐震性能が確保されていない。
 同庁舎に入居する中国総合通信局は、地震防災機能強化事業に係る特定国有財産整備計画において、同計画により整備される広島地方合同庁舎5号館(以下「5号館」という。)の入居予定官署となっている。そして、同庁舎は、同局が5号館に移転した後に廃止される予定となっており、耐震改修工事が実施されていなかった。
 一方、5号館の整備は、平成20年度に一度着手(工期20年度〜22年度、総事業費73億9400万円)されたものの、21年10月に国の出先機関改革の状況等を踏まえ整備を検討する必要があるものとして、それ以降の実施が見送られている。
 このため、同庁舎は、現在まで耐震化が図られていない。

 このように、合同庁舎の整備が見送られているなどしているため、耐震化が図られていない官庁施設がある一方、次のように、建替え等の計画を取りやめ、既存官庁施設を耐震改修工事により耐震化し、災害時の機能確保を図る対応を執ることとした事例も見受けられた。

<参考事例-改修2>
建物名 所在地 分類 建築年次 構造・規模
構造 地上 地下 延床面積
財務省庁舎 東京都千代田区 I類 昭和18年 SRC 5階 1階 56,304m2
中央合同庁舎第4号館 東京都千代田区 I類 昭和46年 SRC 12階 2階 53,496m2
 財務省庁舎(I類、構造体の評価b、評価値0.79)及び中央合同庁舎第4号館(I類、構造体の評価b、評価値0.83)(以下「財務省庁舎等」という。)は、財務本省等の指定行政機関が入居するI類の官庁施設であるが、建築基準法に基づく耐震性能が確保されていない。
 財務省庁舎等は、平成21年に策定された庁舎等の移転再配置に係る特定国有財産整備計画において、建替整備を行うこととなっていたため、耐震改修工事を実施しない一方で、財務省庁舎等の建替えは、現下の厳しい経済財政事情等を踏まえ整備を検討する必要があるものとされていて建替整備が見送られている。
 しかし、財務省は、歳出削減の姿勢を明確にするため、当面の間、財務省庁舎等の建替えを見合わせることとし、24年4月、上記の特定国有財産整備計画から、本件建替計画を除外した。
 これを受け、財務省庁舎等は、耐震改修工事による耐震化を行うことにより災害時の機能確保を図る対応を執ることとされている。

 以上のように、合同庁舎の整備が見送られるなどして耐震化が図られていない場合には、官庁施設の耐震化を図るため、状況に応じて耐震改修工事により既存の官庁施設の耐震化を図るなどの方法を検討する必要がある。

(ウ) 耐震化の状況

 官庁施設の建築物の耐震化を図るためには、前述のとおり、耐震性能が確保されていない官庁施設の耐震改修工事を実施するほか、当該官庁施設に入居する官署を所要の耐震性能が確保されている別の官庁施設に移転させたり、耐震性能が確保されていない官庁施設を建て替えたり、廃止したりなどする方法がある。
 官庁施設に関する耐震化率の目標は、18年1月の基本方針によると、多数の者が利用する建築物等の耐震化率について、現状の75%を27年までに少なくとも9割(棟数ベース)にすることとされ、18年から27年までの10年間で15ポイント増加させるとされている。
 これを踏まえ、官庁施設について、基本方針における耐震化率の目標に対する進捗状況等を把握するため、耐震化率(新耐震水準)を検査するとともに、計画基準に基づく耐震性能を基準とした耐震化率も検査した。検査の対象とした官庁施設の建築物は19,288棟であり、このうち、基本方針において耐震化率の目標の対象としている特定建築物規模相当の建築物は4,012棟である。
 官庁施設の建築物における構造体、建築非構造部材及び建築設備の全てを対象とした耐震化率(新耐震水準)は、図表2-6-1 及び図表2-6-2 のとおりである。
 なお、建築基準法に基づく耐震性能を確保していない建築物とは、耐震診断の結果、新耐震設計手法に基づく耐震性能の水準を満たしていないことが確認されたものの同水準を満たす耐震改修工事が完了していない建築物及び新耐震設計手法の導入以前に建設され耐震診断が実施されていない建築物である。

図表2-6-1  官庁施設における耐震化率(新耐震水準)
区分 対象建築物
(A)
建築基準法に基づく耐震性能を確保している建築物 耐震化率
(新耐震水準)
(B)/(A)
新耐震設計手法の導入後に建設された建築物 耐震診断により建築基準法に基づく耐震性能を確保していることが確認された建築物 耐震改修工事により耐震化された建築物
(B)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数(%) 延床面積(%)
検査対象の建築物 19,288 32,834 10,307 19,574 109 79 548 1,231 10,964 20,885 56.8 63.6
    (構成比) (100%) (100%) (53.4%) (59.6%) (0.6%) (0.2%) (2.8%) (3.8%) (56.8%) (63.6%)
  うち、特定建築物規模相当の建築物 4,012 18,727 2,183 11,399 12 19 254 1,022 2,449 12,441 61.0 66.4
  (構成比) (100%) (100%) (54.4%) (60.9%) (0.3%) (0.1%) (6.3%) (5.5%) (61.0%) (66.4%)

図表2-6-2  官庁施設における耐震化率(新耐震水準)

図表2-6-2官庁施設における耐震化率(新耐震水準)

 官庁施設における耐震化率(新耐震水準)は、特定建築物規模相当の建築物では、棟数で61.0%となっており、基本方針において目標としている27年までに9割(棟数ベース)の耐震化率とは29ポイントの開きがある。
 次に、構造体、建築非構造部材及び建築設備の別に、建築基準法に基づく耐震性能を確保している建築物の割合(以下、それぞれ「構造体耐震化率(新耐震水準)」、「非構造部材耐震化率(新耐震水準)」、「設備耐震化率(新耐震水準)」という。)をみると、図表2-7 のとおりである。

図表2-7  官庁施設における耐震安全性の分類別の耐震化率(新耐震水準)
区分 耐震安全性の分類 対象建築物
(A)
建築基準法に基づく耐震性能を確保している建築物 耐震化率
(新耐震水準)
(B)/(A)
新耐震設計手法の導入後に建設された建築物 耐震診断により建築基準法に基づく耐震性能を確保していることが確認された建築物 耐震改修工事により耐震化された建築物
(B)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数(%) 延床面積(%)
構造体 検査対象の建築物 I 3,519 8,155 2,042 4,962 134 451 151 802 2,327 6,216 66.1 76.2
II 7,618 12,449 4,154 7,659 517 839 595 1,033 5,266 9,532 69.1 76.6
III 8,151 12,229 4,423 7,768 826 854 369 890 5,618 9,513 68.9 77.8
19,288 32,834 10,619 20,390 1,477 2,145 1,115 2,725 13,211 25,262 68.5 76.9
  うち、特定建築物規模相当の建築物 I 496 4,570 247 2,832 36 352 87 743 370 3,928 74.6 85.9
II 1,762 7,076 983 4,499 194 615 264 798 1,441 5,913 81.8 83.6
III 1,754 7,079 1,067 4,751 108 407 226 762 1,401 5,921 79.9 83.6
4,012 18,727 2,297 12,083 338 1,375 577 2,303 3,212 15,763 80.1 84.2
建築非構造部材 検査対象の建築物 A 7,055 14,167 3,835 8,101 269 484 341 724 4,445 9,310 63.0 65.7
B 12,232 18,666 6,564 11,712 417 636 138 314 7,119 12,663 58.2 67.8
19,287 32,834 10,399 19,814 686 1,121 479 1,038 11,564 21,973 60.0 66.9
  うち、特定建築物規模相当の建築物 A 1,617 8,831 793 5,046 81 366 149 590 1,023 6,003 63.3 68.0
B 2,395 9,895 1,426 6,556 127 437 68 251 1,621 7,246 67.7 73.2
4,012 18,727 2,219 11,602 208 804 217 842 2,644 13,249 65.9 70.8
建築設備 検査対象の建築物 6,272 12,418 3,386 6,945 122 125 295 749 3,803 7,820 60.6 63.0
13,014 20,415 6,948 12,653 250 249 189 423 7,387 13,326 56.8 65.3
19,286 32,834 10,334 19,599 372 375 484 1,172 11,190 21,147 58.0 64.4
  うち、特定建築物規模相当の建築物 1,305 7,512 598 4,142 28 71 124 625 750 4,838 57.5 64.4
2,707 11,214 1,591 7,268 52 121 108 356 1,751 7,746 64.7 69.1
4,012 18,727 2,189 11,410 80 193 232 981 2,501 12,585 62.3 67.2

 官庁施設における構造体耐震化率(新耐震水準)は、特定建築物規模相当の建築物では、棟数で80.1%となっており、基本方針において目標としている27年までに9割(棟数ベース)の耐震化率まであと約10ポイントとなっている。同様に、非構造部材耐震化率(新耐震水準)は棟数で65.9%、設備耐震化率(新耐震水準)は棟数で62.3%となっている。
 府省等別の構造体耐震化率(新耐震水準)は、図表2-8-1 及び図表2-8-2 のとおりである。

図表2-8-1  官庁施設における府省等別の構造体耐震化率(新耐震水準)
府省等 構造体耐震化率(新耐震水準)
検査対象の建築物 左のうち、特定建築規模相当の建築物
棟数(%) 延床面積(%) 棟数(%) 延床面積(%)
内閣 92.3 73.1 83.3 62.7
内閣府 88.1 92.3 89.1 93.7
総務省 78.8 82.4 89.7 84.5
法務省 63.8 75.9 77.9 84.0
外務省 78.6 93.4 90.0 97.8
財務省 82.7 85.5 83.9 86.6
文部科学省 92.1 99.4 100 100
厚生労働省 84.0 84.4 88.3 85.5
農林水産省 53.8 60.7 52.2 64.6
経済産業省 93.9 99.4 100 100
国土交通省 79.1 85.7 84.2 90.6
環境省 84.7 90.7 100 100
防衛省 60.2 69.7 75.6 79.5
国会 74.5 86.4 88.0 87.5
裁判所 68.2 74.9 77.9 79.0
会計検査院 87.5 55.4 100 100
68.5 76.9 80.1 84.2
(注)
 色つきは、16府省等全体の構造体耐震化率(新耐震水準)(80.1%)を下回っているものである。


図表2-8-2  特定建築物規模相当の建築物の府省等別の構造体耐震化率(新耐震水準)(棟数ベース)

図表2-8-2特定建築物規模相当の建築物の府省等別の構造体耐震化率(新耐震水準)(棟数ベース)

 特定建築物規模相当の建築物について府省等別の構造体耐震化率(新耐震水準)を棟数でみると、法務省等4府省等の構造体耐震化率(新耐震水準)は、官庁施設全体より低く、特に農林水産省の構造体耐震化率(新耐震水準)は52.2%と他府省等よりも低くなっている。構造体耐震化率(新耐震水準)が他府省等より相対的に低い府省等は、所管施設数が多かったり、新耐震設計手法の導入以前に建設された建築物の割合が高かったりする府省等である。
 また、官庁施設における構造体、建築非構造部材及び建築設備の全てを対象とした計画基準に基づく耐震性能を確保している建築物の割合(以下「耐震化率(官庁水準)」という。)は、図表2-9-1 及び図表2-9-2 のとおりである。
 なお、計画基準に基づく耐震性能を確保していない建築物とは、耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされたものの計画基準に基づく耐震性能の水準を満たす耐震改修工事が完了していない建築物及び計画基準以外により建設され耐震診断が実施されていない建築物である。

図表2-9-1  官庁施設における耐震化率(官庁水準)
区分 対象建築物
(A)
建築基準法に基づく耐震性能を確保している建築物 耐震化率
(官庁水準)
(B)/(A)
計画基準に基づいて建設された建築物 耐震診断により改修不要とされた建築物 耐震改修工事により耐震化された建築物
(B)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数(%) 延床面積(%)
検査対象の建築物 19,288 32,834 8,564 17,420 164 160 527 1,217 9,255 18,798 48.0 57.3
    (構成比) (100%) (100%) (44.4%) (53.1%) (0.9%) (0.5%) (2.7%) (3.7%) (48.0%) (57.3%)
  うち、特定建築物規模相当の建築物 4,012 18,727 1,923 10,368 27 80 251 1,014 2,201 11,463 54.9 61.2
  (構成比) (100%) (100%) (47.9%) (55.4%) (0.7%) (0.4%) (6.3%) (5.4%) (54.9%) (61.2%)
(注)
 「計画基準に基づいて建設された建築物」には、計画基準制定以前の計画標準等で建設された建築物も含まれている。


図表2-9-2  官庁施設における耐震化率(官庁水準)

図表2-9-2官庁施設における耐震化率(官庁水準)

 官庁施設における耐震化率(官庁水準)は、特定建築物規模相当の建築物でみると、棟数で54.9%となっており、耐震化率(新耐震水準)の61.0%を6.1ポイント下回っているが、これは、建築基準法上必要とされる構造体の耐震性能に施設の種類により重要度係数(1.0、1.25又は1.5)を乗じて構造体の耐震性能の基準としていることなどのためである。
 構造体、建築非構造部材及び建築設備の別に、計画基準に基づく耐震性能を確保している建築物の割合(以下、それぞれ「構造体耐震化率(官庁水準)」、「非構造部材耐震化率(官庁水準)」、「設備耐震化率(官庁水準)」という。)をみると、図表2-10 のとおりである。

区分 耐震安全性の分類 対象建築物
(A)
計画基準法に基づく耐震性能を確保している建築物 耐震化率
(官庁水準)
(B)/(A)
計画基準に基づいて建設された建築物 耐震診断により改修不要とされた建築物 耐震改修工事により耐震化された建築物
(B)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数(%) 延床面積(%)
構造体 検査対象の建築物 I 3,519 8,155 1,911 4,511 132 589 167 809 2,210 5,910 62.8 72.5
II 7,618 12,449 3,675 7,034 516 717 660 1,164 4,851 8,915 63.7 71.6
III 8,151 12,229 4,360 7,676 889 946 369 890 5,618 9,513 68.9 77.8
19,288 32,834 9,946 19,222 1,537 2,253 1,196 2,863 12,679 24,340 65.7 74.1
  うち、特定建築物規模相当の建築物 I 496 4,570 221 2,439 25 523 84 727 330 3,690 66.5 80.7
II 1,762 7,076 876 4,132 147 468 300 910 1,323 5,511 75.1 77.9
III 1,754 7,079 1,050 4,696 125 463 226 762 1,401 5,921 79.9 83.6
4,012 18,727 2,147 11,268 297 1,454 610 2,400 3,054 15,123 76.1 80.8
建築非構造部材 検査対象の建築物 A 7,055 14,167 3,437 7,658 343 602 341 724 4,121 8,985 58.4 63.4
B 12,232 18,666 5,127 9,761 481 842 138 314 5,746 10,918 47.0 58.5
19,287 32,834 8,564 17,420 824 1,445 479 1,038 9,867 19,904 51.2 60.6
  うち、特定建築物規模相当の建築物 A 1,617 8,831 719 4,782 103 455 149 590 971 5,828 60.0 66.0
B 2,395 9,895 1,204 5,586 157 616 68 251 1,429 6,454 59.7 65.2
4,012 18,727 1,923 10,368 260 1,072 217 842 2,400 12,283 59.8 65.6
建築設備 検査対象の建築物 6,272 12,418 3,057 6,616 138 138 295 749 3,490 7,504 55.6 60.4
13,014 20,415 5,507 10,803 294 331 189 423 5,990 11,559 46.0 56.6
19,286 32,834 8,564 17,420 432 470 484 1,172 9,480 19,064 49.2 58.1
  うち、特定建築物規模相当の建築物 1,305 7,512 545 3,964 30 76 124 625 699 4,666 53.6 62.1
2,707 11,214 1,378 6,403 69 182 108 356 1,555 6,943 57.4 61.9
4,012 18,727 1,923 10,368 99 259 232 981 2,254 11,609 56.2 62.0
(注1)  「計画基準に基づいて建設された建築物」には、計画基準制定以前の計画標準等で建設された建築物も含まれている。
(注2)  府省等別については別表2-1別表2-2 及び別表2-3 を参照。

 官庁施設における構造体耐震化率(官庁水準)は、特定建築物規模相当の建築物では、棟数で76.1%となっている。同様に、非構造部材耐震化率(官庁水準)は棟数で59.8%、設備耐震化率(官庁水準)は棟数で56.2%となっている。
 このように、官庁施設の建築物は、建築非構造部材及び建築設備の耐震化率に比べ構造体の耐震化率が高くなっており、その理由は、建物の倒壊又は崩壊による人命・財産への被害を防ぐため、構造体の耐震化を優先的に図ってきたことが挙げられる。

イ 教育施設の耐震改修の実施状況

(ア) 耐震改修工事の実施状況

 構造体、建築非構造部材及び建築設備の耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされた教育施設の建築物に対する耐震改修工事の実施状況は、図表2-11 のとおりである。

図表2-11  教育施設における耐震改修工事の実施状況
区分 耐震診断により耐震改修等が必要とされた建築物(A) 耐震改修工事が実施されていた建築物
(B)
耐震改修率
(B)/(A)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(%)
延床面積
(%)
構造体 検査対象の建築物 2,454 7,119 1,563 4,856 63.7 68.2
  うち、特定建築物規模相当の建築物 1,711 6,356 1,171 4,412 68.4 69.4
建築非構造部材 検査対象の建築物 749 2,113 596 1,684 79.6 79.7
  うち、特定建築物規模相当の建築物 477 1,839 400 1,481 83.9 80.5
建築設備 検査対象の建築物 670 1,861 596 1,656 89.0 89.0
  うち、特定建築物規模相当の建築物 476 1,629 431 1,451 90.5 89.1
(注)
 建築非構造部材及び建築設備については、耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされた全ての箇所について耐震改修工事が実施されていた建築物を集計している。

 構造体の耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされた教育施設の建築物(図表1-14参照 )2,454棟に対して、耐震改修工事が実施されていた建築物は1,563棟であり、耐震改修率は棟数で63.7%となっている。同様に、建築非構造部材及び建築設備の耐震改修率は、棟数で79.6%及び89.0%となっており、前記の官庁施設の耐震改修率より構造体は18.1ポイント、建築非構造部材は51.8ポイント、建築設備は65.4ポイントそれぞれ高くなっている。
 このように、教育施設の建築非構造部材及び建築設備の耐震改修率が官庁施設より特に高いのは、教育施設の場合、長期休暇の期間を利用して構造体の耐震改修工事に合わせて、建築非構造部材及び建築設備の耐震改修工事を同時に実施できることが要因と考えられる。

(イ) 耐震改修工事を実施していない理由

 教育施設の建築物について、耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされたのに、耐震改修工事を実施していない理由は、図表2-12 のとおりである。

図表2-12  教育施設における耐震改修工事未実施の理由
区分 耐震改修工事未実施の理由(複数回答)
移転、建替え又は廃止の予定があるため 倉庫等の用途として使用しており常時職員がいないため 予算化されていないため(予算要求の見送りを含む。) 24年度以降に改修工事を予定しているため 施設の構造上や執務環境上の要因から改修が困難と判断したため 改修の必要性がないと判断したため(他の理由との重複を除く。) その他
(件) (件) (件) (件) (件) (件) (件)
構造体 117 15 114 494 3 23 106
建築非構造部材 0 0 29 5 0 1 2
建築設備 0 0 36 21 1 4 0

 構造体の耐震改修工事を実施していない理由は、「24年度以降に改修工事を予定しているため」が494件と最も多く、次に多い理由は、「移転、建替え又は廃止の予定があるため」で117件、その次に多い理由は、「予算化されていないため(予算要求の見送りを含む。)」で114件となっている。このように、検査対象とした教育施設の大半を占める国立大学法人が、建替え等を含めた効果的な改修方法を検討していて、順次、耐震改修工事、建替え等を実施しようとしていることがうかがえる。また、建築非構造部材及び建築設備の耐震改修工事を実施していない理由は、「予算化されていないため(予算要求の見送りを含む。)」が29件及び36件とそれぞれ最も多いが、構造体の耐震改修工事に合わせて建築非構造部材及び建築設備の耐震改修工事の実施を検討していることが要因の一つとなっている。

(ウ) 耐震化の状況

 教育施設に関する耐震化率の目標は、前記の基本方針のほか、第3次国立大学法人等施設整備5か年計画(23年度〜27年度)を文部科学省が定めており、これによると、国立大学法人等の建築物の構造体については、27年度までに耐震化を完了させるとされている。
 これを踏まえ、教育施設について、基本方針における耐震化率の目標に対する進捗状況等を把握するため、耐震化率(新耐震水準)を検査するとともに、教育施設のうち国立大学法人等の建築物について、建築構造設計指針に基づく耐震性能を基準とした耐震化率も検査した。検査の対象とした教育施設の建築物は9,425棟であり、このうち、基本方針において耐震化率の目標の対象としている特定建築物規模相当の建築物は4,179棟である。
 教育施設の建築物における構造体、建築非構造部材及び建築設備の全てを対象とした耐震化率(新耐震水準)は、図表2-13-1 及び図表2-13-2 のとおりである。

図表2-13-1  教育施設における耐震化率(新耐震水準)
区分 対象建築物
(A)
建築基準法に基づく耐震性能を確保している建築物 耐震化率
(新耐震水準)
(B)/(A)
新耐震設計手法の導入後に建設された建築物 耐震診断により建築基準法に基づく耐震性能を確保していることが確認された建築物 耐震改修工事により耐震化された建築物
(B)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(%)
延床面積
(%)
検査対象の建築物 9,425 18,808 4,372 8,983 16 26 547 1,589 4,935 10,598 52.4 56.3
    (構成比) (100%) (100%) (46.4%) (47.8%) (0.2%) (0.1%) (5.8%) (8.5%) (52.4%) (56.3%)
  うち、特定建築物規模相当の建築物 4,179 14,854 1,984 7,197 6 18 391 1,416 2,381 8,632 57.0 58.1
  (構成比) (100%) (100%) (47.5%) (48.5%) (0.1%) (0.1%) (9.4%) (9.5%) (57.0%) (58.1%)

図表2-13-2  教育施設における耐震化率(新耐震水準)

図表2-13-2教育施設における耐震化率(新耐震水準)

 教育施設における耐震化率(新耐震水準)は、特定建築物規模相当の建築物では、棟数で57.0%となっており、基本方針において目標としている27年までに9割(棟数ベース)の耐震化率とは33ポイントの開きがある。
 次に、構造体耐震化率(新耐震水準)は、図表2-14 のとおりである。

図表2-14  教育施設における構造体耐震化率(新耐震水準)
区分 対象建築物
(A)
建築基準法に基づく耐震性能を確保している建築物 構造体耐震化率
(新耐震水準)
(B)/(A)
新耐震設計手法の導入後に建設された建築物 耐震診断により建築基準法に基づく耐震性能を確保していることが確認された建築物 耐震改修工事により耐震化された建築物
(B)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数(%) 延床面積(%)
検査対象の建築物 9,425 18,808 4,372 8,983 1,834 2,766 1,479 4,647 7,685 16,397 81.5 87.2
  うち、特定建築物規模相当の建築物 4,179 14,854 1,984 7,197 615 1,730 1,112 4,239 3,711 13,168 88.8 88.6
(注)
 法人別については別表2-5 及び別表2-7 を参照。

 教育施設における構造体耐震化率(新耐震水準)は、特定建築物規模相当の建築物では、棟数で88.8%となっており、基本方針において目標としている27年までに9割(棟数ベース)の耐震化率とほぼ同水準となっている。このように、構造体耐震化率(新耐震水準)は、上記の構造体、建築非構造部材及び建築設備の全てを対象とした耐震化率(新耐震水準)の57.0%より31.8ポイント高くなっており建築非構造部材及び建築設備の耐震改修工事は、構造体の耐震改修工事に比べて進捗に遅れが見受けられる。
 また、教育施設のうち国立大学法人等の建築物における構造体についての建築構造設計指針に基づく耐震性能を確保している建築物の割合(以下「構造体耐震化率(指針水準)」という。)は、図表2-15 のとおりである。
 なお、建築構造設計指針に基づく耐震性能を確保していない建築物とは、耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされたものの建築構造設計指針に基づく耐震性能の水準を満たす耐震改修工事が完了していない建築物及び建築構造設計指針以外により建設され、耐震診断が実施されていない建築物である。

図表2-15  国立大学法人等の建築物における構造体耐震化率(指針水準)
区分 対象建築物
(A)
建築構造設計指針に基づく耐震性能を確保している建築物 構造体耐震化率
(指針水準)
(B)/(A)
建築構造設計指針により建設された建築物 耐震診断により改修不要とされた建築物 耐震改修工事により耐震化された建築物
(B)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(%)
延床面積
(%)
検査対象の建築物 9,359 18,678 4,314 8,893 1,560 2,145 1,520 4,677 7,394 15,715 79.0 84.1
  うち、特定建築物規模相当の建築物 4,154 14,765 1,968 7,144 445 1,208 1,133 4,241 3,546 12,594 85.4 85.3
注(1)  教育施設のうち、国立大学法人等が所有する建築物を対象としている。
注(2)  「建築構造設計指針により建設された建築物」には、計画基準により建設されるなどして建設当初から所要の耐震性能が確保されている建築物が含まれている。

 国立大学法人等における構造体耐震化率(指針水準)は、棟数で79.0%、特定建築物規模相当の建築物では、棟数で85.4%となっており、27年度までに耐震化を完了させるとする国立大学法人等の耐震化目標まであと約15ポイントとなっている。

ウ 医療施設の耐震改修の実施状況

(ア) 耐震改修工事の実施状況

 構造体、建築非構造部材及び建築設備の耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされた医療施設の建築物に対する耐震改修工事の実施状況は、図表2-16 のとおりである。

図表2-16  医療施設における耐震改修工事の実施状況
区分 耐震診断により耐震改修等が必要とされた建築物(A) 耐震改修工事が実施されていた建築物(B) 耐震改修率
(B)/(A)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(%)
延床面積
(%)
構造体 検査対象の建築物 329 1,903 169 958 51.4 50.4
  うち、特定建築物規模相当の建築物 230 1,726 122 881 53.0 51.0
うち、災害拠点病院 72 710 38 368 52.8 51.8
建築非構造部材 検査対象の建築物 33 192 21 144 63.6 74.9
  うち、特定建築物規模相当の建築物 18 181 13 137 72.2 75.6
うち、災害拠点病院 13 117 13 117 100 100
建築設備 検査対象の建築物 24 157 16 132 66.7 83.9
  うち、特定建築物規模相当の建築物 14 151 11 128 78.6 84.8
うち、災害拠点病院 12 110 12 110 100 100
(注)
 建築非構造部材及び建築設備については、耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされた全ての箇所について耐震改修工事が実施されていた建築物を集計している。

 構造体の耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされた医療施設の建築物(図表1-17 参照)329棟に対して、耐震改修工事が実施された建築物は169棟であり、耐震改修率は棟数で51.4%となっている。同様に、建築非構造部材及び建築設備の耐震改修率は棟数で63.6%及び66.7%となっている。
 また、医療施設のうち災害拠点病院の耐震改修率は、構造体については棟数で52.8%となっており、医療施設全体と大きな差異はないが、建築非構造部材及び建築設備については共に100%となっており、医療施設全体より建築非構造部材で36.4ポイント、建築設備で33.3ポイント、それぞれ高くなっている。

(イ) 耐震改修工事を実施していない理由

 医療施設の建築物のうち、構造体の耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされたのに、耐震改修工事を実施していない理由は、図表2-17 のとおりである。

図表2-17  医療施設における耐震改修工事未実施の理由
区分 耐震改修工事未実施の理由(複数回答)
移転、建替え又は廃止の予定があるため 倉庫等の用途として使用しており常時職員がいないため 予算化されていないため(予算要求の見送りを含む。) 24年度以降に改修工事を予定しているため 施設の構造上や執務環境上の要因から改修が困難と判断したため 改修の必要性がないと判断したため(他の理由との重複を除く。) その他
(件) (件) (件) (件) (件) (件) (件)
構造体 72 3 0 30 36 11 21

 構造体の耐震改修工事を実施していない理由は、「移転、建替え又は廃止の予定があるため」が72件と最も多く、次に多い理由は、「施設の構造上や執務環境上の要因から改修が困難と判断したため」で36件となっている。
 このように、医療施設において、耐震改修工事を実施していない理由について、構造上・執務環境上等の要因から改修が困難なためとするものの割合が官庁施設及び教育施設に比べて高いのは、騒音等の問題から入院患者を受け入れたままの状態での耐震改修工事が困難であることなど、医療施設特有の事情によるものである。

(ウ) 耐震化の状況

 医療施設に関する耐震化率の目標は、前記の基本方針のほか、災害拠点病院等の構造体について、26年度末までに耐震化率を81.2%とする目標を厚生労働省が定めている。
 これを踏まえ、医療施設について、基本方針等における耐震化率の目標に対する進捗状況等を把握するため、医療施設全体及び災害拠点病院の耐震化率(新耐震水準)を検査した。検査の対象とした医療施設の建築物は2,859棟であり、このうち、基本方針において耐震化率の目標の対象としている特定建築物規模相当の建築物は905棟、災害拠点病院の建築物は522棟である。
 医療施設の建築物における構造体、建築非構造部材及び建築設備の全てを対象とした耐震化率(新耐震水準)は、図表2-18-1 及び図表2-18-2 のとおりである。

図表2-18-1  医療施設における耐震化率(新耐震水準)
区分 対象建築物
(A)
建築基準法に基づく耐震性能を確保している建築物 耐震化率
(新耐震水準)
(B)/(A)
新耐震設計手法の導入後に建設された建築物 耐震診断により建築基準法に基づく耐震性能を確保していることが確認された建築物 耐震改修工事により耐震化された建築物
(B)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(%)
延床面積
(%)
検査対象の建築物 2,859 10,110 1,331 6,535 - - 17 134 1,348 6,669 47.1 66.0
    (構成比) (100%) (100%) (46.6%) (64.6%) - - (0.6%) (1.3%) (47.1%) (66.0%)
  うち、特定建築物規模相当の建築物 905 8,300 546 5,924 - - 11 128 557 6,053 61.5 72.9
  (構成比) (100%) (100%) (60.3%) (71.4%) - - (1.2%) (1.5%) (61.5%) (72.9%)
うち、災害拠点病院 522 4,202 330 3,188 - - 12 110 342 3,298 65.5 78.5
  (構成比) (100%) (100%) (63.2%) (75.9%) - - (2.3%) (2.6%) (65.5%) (78.5%)

図表2-18-2  医療施設における耐震化率(新耐震水準)

図表2-18-2医療施設における耐震化率(新耐震水準)

 医療施設における耐震化率(新耐震水準)は、特定建築物規模相当の建築物では、棟数で61.5%となっており、基本方針において目標としている27年までに9割(棟数ベース)の耐震化率とは約28ポイントの開きがある。同様に、災害拠点病院では、棟数で65.5%となっており、医療施設全体に比べ高くなっている。
 次に、医療施設における構造体耐震化率(新耐震水準)は、図表2-19 のとおりである。

図表2-19  医療施設における構造体耐震化率(新耐震水準)
区分 対象建築物
(A)
建築基準法に基づく耐震性能を確保している建築物 構造体耐震化率
(新耐震水準)
(B)/(A)
新耐震設計手法の導入後に建設された建築物 耐震診断により建築基準法に基づく耐震性能を確保していることが確認された建築物 耐震改修工事により耐震化された建築物
(B)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数(%) 延床面積(%)
検査対象の建築物 2,859 10,110 1,331 6,535 235 658 166 920 1,732 8,115 60.6 80.3
  うち、特定建築物規模相当の建築物 905 8,300 546 5,924 74 423 119 843 739 7,192 81.7 86.6
うち、災害拠点病院 522 4,202 330 3,188 54 314 35 331 419 3,834 80.3 91.2
(注)
 法人別については別表2-9 及び別表2-11 を参照。

 医療施設における構造体耐震化率(新耐震水準)は、特定建築物規模相当の建築物では、棟数で81.7%となっており、基本方針において目標としている27年までに9割(棟数ベース)とする耐震化率まであと約8ポイントとなっている。同様に、災害拠点病院では、棟数で80.3%となっており、26年度末までに災害拠点病院等の構造体の耐震化率を81.2%とする目標とほぼ同水準まで耐震化が進捗している。

エ 独立行政法人の建築物における耐震改修の実施状況

(ア) 耐震改修工事の実施状況

 構造体、建築非構造部材及び建築設備の耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされた独立行政法人の建築物に対する耐震改修工事の実施状況は、図表2-20 のとおりである。

図表2-20  独立行政法人の建築物における耐震改修工事の実施状況
区分 耐震診断により耐震改修等が必要とされた建築物(A) 耐震改修工事が実施されていた建築物(B) 耐震改修率
(B)/(A)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(%)
延床面積
(%)
構造体 検査対象の建築物 238 524 142 272 59.7 52.0
  うち、特定建築物規模相当の建築物 86 288 48 133 55.8 46.4
建築非構造部材 検査対象の建築物 107 224 15 42 14.0 19.1
  うち、特定建築物規模相当の建築物 50 170 10 32 20.0 19.1
建築設備 検査対象の建築物 63 110 4 31 6.3 28.3
  うち、特定建築物規模相当の建築物 21 53 2 6 9.5 11.8
(注)
 建築非構造部材及び建築設備については、耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされた全ての箇所について耐震改修工事が実施されていた建築物を集計している。

 構造体の耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされた独立行政法人の建築物(図表1-20 参照)238棟に対して、耐震改修工事が実施されていた建築物は142棟であり、耐震改修率は棟数で59.7%となっている。一方、建築非構造部材及び建築設備の耐震改修率は、棟数で14.0%及び6.3%と低くなっており、模様替えや耐用年数経過による機器等の更新工事に合わせて順次耐震化を行う場合があることを考慮しても、独立行政法人における建築非構造部材及び建築設備の耐震改修は、進捗の遅れが見受けられる。

(イ) 耐震改修工事を実施していない理由

 独立行政法人の建築物の耐震診断の結果、耐震改修等が必要とされたのに、耐震改修工事を実施していない理由は、図表2-21 のとおりである。

図表2-21  独立行政法人の建築物における耐震改修工事未実施の理由
区分 耐震改修工事未実施の理由(複数回答)
移転、建替え又は廃止の予定があるため 倉庫等の用途として使用しており常時職員がいないため 予算化されていないため(予算要求の見送りを含む。) 24年度以降に改修工事を予定しているため 施設の構造上や執務環境上の要因から改修が困難と判断したため 改修の必要性がないと判断したため(他の理由との重複を除く。) その他
(件) (件) (件) (件) (件) (件) (件)
構造体 7 3 44 9 2 22 17
建築非構造部材 2 1 16 4 0 46 3
建築設備 0 1 9 1 0 33 3

 構造体の耐震改修工事を実施していない理由は、「予算化されていないため(予算要求の見送りを含む。)」が44件と最も多く、次に多い理由は、「改修の必要性がないと判断したため(他の理由との重複を除く。)」で22件となっている。
 そして、建築非構造部材及び建築設備の耐震改修工事を実施していない理由は、「改修の必要性がないと判断したため(他の理由との重複を除く。)」が46件及び33件と大半を占めている。このように、独立行政法人は、構造体の耐震改修工事については予算上の制約から実施できていないとしているものが多く見受けられるのに対し、建築非構造部材及び建築設備の耐震改修工事については改修工事を実施する必要性についての認識そのものが十分でないものが多く見受けられる。

(ウ) 耐震化の状況

 独立行政法人の建築物に関する耐震化率の目標は、官庁施設と同様、基本方針において、多数の者が利用する建築物等について27年までに少なくとも9割(棟数ベース)とされている。
 これを踏まえ、独立行政法人の建築物について、基本方針における耐震化率の目標に対する進捗状況等を把握するため、耐震化率(新耐震水準)を検査した。検査の対象とした独立行政法人の建築物は4,793棟であり、このうち、基本方針において耐震化率の目標の対象としている特定建築物規模相当の建築物は279棟である。
 独立行政法人の建築物における構造体、建築非構造部材及び建築設備の全てを対象とした耐震化率(新耐震水準)は、図表2-22-1 及び図表2-22-2 のとおりである。

図表2-22-1  独立行政法人の建築物における耐震化率(新耐震水準)
区分 対象建築物
(A)
建築基準法に基づく耐震性能を確保している建築物 耐震化率
(新耐震水準)
(B)/(A)
新耐震設計手法の導入後に建設された建築物 耐震診断により建築基準法に基づく耐震性能を確保していることが確認された建築物 耐震改修工事により耐震化された建築物
(B)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(%)
延床面積
(%)
検査対象の建築物 4,793 4,254 3,068 2,458 4 3 3 5 3,075 2,468 64.2 58.0
    (構成比) (100%) (100%) (64.0%) (57.8%) (0.1%) (0.1%) (0.1%) (0.1%) (64.2%) (58.0%)
  うち、特定建築物規模相当の建築物 279 977 149 527 4 3 1 2 154 533 55.2 54.6
  (構成比) (100%) (100%) (53.4%) (54.0%) (1.4%) (0.4%) (0.4%) (0.2%) (55.2%) (54.6%)

図表2-22-2  独立行政法人の建築物における耐震化率(新耐震水準)

図表2-22-2独立行政法人の建築物における耐震化率(新耐震水準)

 独立行政法人の建築物における耐震化率(新耐震水準)は、特定建築物規模相当の建築物では、棟数で55.2%となっており、基本方針において目標としている27年までに9割(棟数ベース)の耐震化率とは約35ポイントの開きがある。
 次に、構造体耐震化率(新耐震水準)は、図表2-23 のとおりである。

図表2-23  独立行政法人の建築物における構造体耐震化率(新耐震水準)
区分 対象建築物
(A)
建築基準法に基づく耐震性能を確保している建築物 構造体耐震化率
(新耐震水準)
(B)/(A)
新耐震設計手法の導入後に建設された建築物 耐震診断により建築基準法に基づく耐震性能を確保していることが確認された建築物 耐震改修工事により耐震化された建築物
(B)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(%)
延床面積
(%)
検査対象の建築物 4,793 4,254 3,068 2,458 266 244 123 227 3,457 2,931 72.1 68.9
  うち、特定建築物規模相当の建築物 279 977 149 527 19 67 41 113 209 708 74.9 72.5
(注)
 法人別については別表2-13 を参照。

 独立行政法人の建築物における構造体耐震化率(新耐震水準)は、特定建築物規模相当の建築物では、棟数で74.9%となっており、構造体に限ってみても、基本方針において目標としている27年までに9割(棟数ベース)の耐震化率とは約15ポイントの開きがある。

オ 官庁施設、教育施設、医療施設等の耐震化の状況

 検査対象とした官庁施設、教育施設、医療施設等の建築物は、前記のとおり、建築非構造部材及び建築設備より構造体の耐震化が図られている。これらの建築物のうち、特定建築物規模相当の建築物の構造体耐震化率(新耐震水準)は、図表2-24 のとおりである。

図表2-24  特定建築物規模相当の建築物の構造体耐震化率(新耐震水準)
区分 特定建築物規模相当の建築物(A) 左のうち、建築基準法に基づく耐震性能を確保している建築物(B) 構造体耐震化率
(新耐震水準)
(B)/(A)
  強化地域 推進地域(I) 推進地域(II)
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(棟)
延床面積
(千m2
棟数
(%)
延床面積
(%)
官庁施設 4,012 18,727 3,212 15,763 80.1 84.2 86.4 88.8 81.2 84.4 82.8 83.9
教育施設 4,179 14,854 3,711 13,168 88.8 88.6 89.1 89.1 89.8 90.7 93.1 91.3
医療施設 905 8,300 739 7,192 81.7 86.6 81.6 87.5 83.9 83.4 82.2 87.0
独立行政法人の建築物 279 977 209 708 74.9 72.5 73.3 70.7 87.3 87.7 100 100
9,375 42,859 7,871 36,831 84.0 85.9 86.9 88.4 85.9 86.8 87.1 87.2
(注)
 府省等別及び法人別については別表2-4別表2-6別表2-8別表2-10別表2-12 及び別表2-14 を参照。

 構造体耐震化率(新耐震水準)は、棟数で官庁施設は80.1%、教育施設は88.8%、医療施設は81.7%、独立行政法人の建築物は74.9%となっており、教育施設は、官庁施設、医療施設及び独立行政法人の建築物に比べて耐震化率が高くなっている。
 また、これを強化地域等の別にみると、全般的に強化地域等の構造体耐震化率(新耐震水準)が全体の構造体耐震化率(新耐震水準)よりやや高い傾向が見受けられるものの、地域による大きな差異は見受けられない。
 会計検査院は、官庁施設の耐震化対策について、前記のとおり、16年度報告において、特に強化地域及び推進地域でより重要度が高いI類施設等の耐震化対策を実施するなど耐震化対策を確実に推進することが肝要である旨を掲記しており、その後の18年1月に、国土交通大臣は、基本方針を策定するなどしている。
 耐震化の進捗状況について、基本方針策定前の状況(16年度報告における耐震化率)と基本方針策定後の状況(23年12月末時点の耐震化率)とを比較すると、図表2-25 のとおりとなる。

図表2-25  官庁施設における耐震化率の基本方針策定前後の比較
区分 耐震安全性の分類 検査対象棟数 耐震化率(官庁水準) 構造体耐震化率(官庁水準)
16年度報告 23年末 16年度報告(A) 23年末(B) (B)-(A) 16年度報告(C) 23年末(D) (D)-(C)
(棟) (棟) (%) (%) (%ポイント) (%) (%) (%ポイント)
全体 I 161 602 24 51 27 47 71 24
II 805 2,035 34 48 14 64 74 10
966 2,637 32 49 17 61 73 12
  うち、強化地域 I 13 25 0 56 56 8 64 56
II 43 151 42 56 14 77 78 1
56 176 32 56 24 61 76 15
うち、推進地域(I) I 42 149 26 45 19 40 66 26
II 263 511 45 53 8 66 76 10
305 660 42 51 9 63 74 11

 16年度報告は、16年度末までに官庁営繕費等によって整備された延床面積200m 以上のI類及びII類の防災拠点官庁施設966棟を対象にしていたことから、23年末時点では、延床面積200m2 以上の官庁施設のうち、刑務所その他の収容施設、自衛隊の部隊及び機関が使用する建築物並びに倉庫等を除いたI類及びII類の官庁施設2,637棟を対象として、耐震化率(官庁水準)及び構造体耐震化率(官庁水準)の数値を比較した。
 その結果、23年末の耐震化率(官庁水準)は、16年度報告より全体で17ポイント上昇しており、特に強化地域のI類の官庁施設は56ポイントと大幅に上昇している。また、I類とII類の官庁施設を比べると、I類の官庁施設がII類の官庁施設より耐震化率(官庁水準)の上昇幅が大きく、全体でみると、II類が14ポイントの上昇であるのに対してI類は27ポイントの上昇となっており、II類の官庁施設よりI類の官庁施設の耐震化が優先して実施されてきたことがうかがえる。

(3) 業務継続の点からみた建築物の耐震化の状況

 首都直下地震対策大綱(以下「大綱」という。)によると、建築物の耐震化は、その後の火災被害や避難者の発生等にも影響する重要な対策であり、重点的に取り組むとされている。また、大綱によると、首都中枢機能は、特に災害発生後3日間程度の応急対策活動期においても、途絶することなく、継続性が確保されることが求められるとされ、国会、中央省庁等の首都中枢機関は、災害発生時の機能継続性を確保するための計画として、業務継続計画を策定することとされている。このように、大綱において、建築物の耐震化や業務継続計画の策定・実行は、地震からの被害軽減を図るための対策の一つと位置付けられており、建築物の耐震化についてはハード面からの、業務継続計画の策定・実行についてはソフト面からの地震減災対策と位置付けられている。
 そこで、ソフト面からの地震減災対策である業務継続計画の策定状況等を調査し、業務継続の点から、耐震化対策の状況を検査した。

ア 業務継続計画の概要

 大綱において中央省庁等の業務継続計画の策定が施策として位置付けられたことなどを踏まえ、内閣府は、19年6月に、中央省庁が行う業務継続計画の策定作業を支援するため、中央省庁業務継続計画ガイドライン(以下「ガイドライン」という。)を作成した。
 ガイドラインによると、業務継続計画とは、大規模災害等の発生により、ヒト、モノ、情報及びライフライン等の利用できる資源に制約がある状況下において、災害応急対策業務、業務継続の優先度が高い業務等の非常時優先業務を特定するとともに、業務継続のために必要な資源の確保や配分等の必要な措置を定め、災害発生直後の業務立ち上げ時間の短縮や業務レベルの向上に資することにより、適切な業務執行を行うことを目的とした計画とされている。そして、各府省等は、当初、20年度第1四半期を目途に、首都直下地震を対象として本府省の業務継続計画を作成することとされていたが、地震は全国どこでも起こり得るものであることなどから、その後、21年10月の中央省庁業務継続連絡調整会議申し合わせにより、首都圏にある地方支分部局等の業務継続計画は遅くとも一年内を目途に、その他の地方支分部局等の業務継続計画は22年度内を目途に、被害が最も甚大となる地震を対象として作成することとされた。

イ 府省等の状況

 16府省等の本府省等及び地方支分部局のうち、指定行政機関等を中心に抽出した本府省等31機関及び地方支分部局154機関の計185機関の23年12月末における業務継続計画の策定状況は、図表2-26 のとおりである。

図表2-26  各府省等における業務継続計画の策定状況
(平成23年12月末現在)
府省等名 検査対象機関
(A)
業務継続計画策定済機関
(B)
策定率
(B/A)
本府省等 地方支分部局 本府省等 地方支分部局 本府省等 地方支分部局
指定行政機関 左記以外 指定地方行政機関 左記以外 指定行政機関 左記以外 指定地方行政機関 左記以外 指定行政機関 左記以外 指定地方行政機関 左記以外
(機関) (機関) (機関) (機関) (機関) (機関) (機関) (機関) (機関) (機関) (機関) (機関) (%) (%) (%) (%) (%) (%)
内閣 - 1 1 - - - - 1 1 - - - - 100 100 - - -
内閣府 4 - 4 8 - 8 4 - 4 7 - 7 100 - 100 88 - 88
総務省 2 - 2 11 - 11 2 - 2 11 - 11 100 - 100 100 - 100
法務省 1 - 1 - 8 8 1 - 1 - 7 7 100 - 100 - 88 88
外務省 1 - 1 - - - 1 - 1 - - - 100 - 100 - - -
財務省 1 1 2 9 12 21 1 1 2 9 11 20 100 100 100 100 92 95
文部科学省 2 - 2 1 - 1 2 - 2 - - 0 100 - 100 0 - 0
厚生労働省 1 - 1 16 - 16 1 - 1 16 - 16 100 - 100 100 - 100
農林水産省 1 - 1 15 - 15 1 - 1 2 - 2 100 - 100 13 - 13
経済産業省 4 1 5 14 - 14 4 1 5 14 - 14 100 100 100 100 - 100
国土交通省 4 - 4 37 - 37 4 - 4 34 - 34 100 - 100 92 - 92
環境省 1 - 1 7 - 7 1 - 1 1 - 1 100 - 100 14 - 14
防衛省 1 - 1 8 - 8 1 - 1 2 - 2 100 - 100 25 - 25
国会 - 3 3 - - - - - 0 - - - - 0 0 - - -
裁判所 - 1 1 - 8 8 - 1 1 - 3 3 - 100 100 - 38 38
会計検査院 - 1 1 - - - - 1 1 - - - - 100 100 - - -
23 8 31 126 28 154 23 5 28 96 21 117 100 63 90 76 75 76
注(1)  機関別については別表2-15 を参照
注(2)  業務継続計画策定済機関には、業務継続計画を他の機関と共用している機関を含む。

 本府省等においては、ほぼ全ての機関で業務継続計画を策定済みであり、指定行政機関の業務継続計画策定率は100%である。地方支分部局においては、府省等によっては業務継続計画を策定していない機関も多く見受けられており、指定地方行政機関の業務継続計画策定率は76%となっている。
 業務継続計画が未策定の指定地方行政機関について、その理由を検査したところ、〔1〕 前記の申し合わせにより、首都中枢機能の継続性確保を図る観点から、首都圏の地方支分部局等において先行的に業務継続計画の策定を進めるとされているためや〔2〕 当該計画の策定中に東日本大震災が発生し、その対応や被災状況を踏まえて計画内容を見直す必要が生じて、策定に時間を要しているためなどとしている機関が見受けられた。
 一方、業務継続計画を策定済みとしている地方支分部局の中には、業務継続は本省の業務継続計画に基づいて行うとして、所在地域の実情に合わせた被害想定等に基づく業務継続計画を個別に策定しておらず、実効性のある業務継続体制の確保を図る上で、地震減災対策として必ずしも十分ではない機関も見受けられた。その事例は、次のとおりである。

<事例-業務継続1>
 厚生労働省の地方支分部局は、当該部局の業務継続について、厚生労働本省が平成20年8月に策定した「厚生労働省業務継続計画(首都直下型)」に基づいて行っているとして、個別に業務継続計画を策定していなかった。
 しかし、業務継続計画は、機関ごとに被害が最も甚大となる地震を対象として策定するものとされているが、各地方支分部局が所在する地区で想定される地震の規模も入居する建物の耐震性能等の状況も区々となっている。
 このように、厚生労働省の地方支分部局は、それぞれの所在地域や入居する建物の実情に応じた被害想定等に基づく業務継続計画を個別に策定していないため、当該機関における実効性のある業務継続体制の確保を図る上で、地震減災対策として必ずしも十分ではない。

 ガイドラインによると、業務継続のために必要な資源の確保に関して、「業務継続計画作成時点において、首都直下地震が発災した際に自省庁建物が果たして機能を維持できている程度の耐震性を備えているのかを適切に評価しておくことが必要である。例えば、耐震性の評価値が0.5を下回っている官庁施設については、震度6強〜7程度の大規模地震による倒壊、又は崩壊する危険性が高い施設であるとされており、その後も所要の耐震補強が完了していない場合は、庁舎が使用できない状況も想定し、非常時優先業務を実施するためのバックアップ施設を業務継続計画に定めておくことも必要であると考えられる」とされている。そして、官庁施設の中には、前記のとおり、耐震化されていない官庁施設が多数見受けられる。
 そこで、前記185機関のうち、構造体について建築基準法に基づく耐震性能が確保されていないため、震度6強から7程度の大規模地震による倒壊又は崩壊の危険性が高い又は危険性があるとされる官庁施設に入居している機関であって、業務継続計画を策定済みの16機関について、業務継続計画において入居庁舎が被災した場合に非常時優先業務を実施するための代替施設を定めているか検査した。その状況は、図表2-27 のとおりである。

図表2-27  業務継続計画における代替施設の状況

(平成23年12月末現在)

入居官署の種類 構造体について建築基準法に基づく耐震性能が確保されていない官庁施設に入居している業務継続計画策定済みの機関 業務継続計画における代替施設の状況
業務継続計画において建築基準法に基づく耐震性能を確保している建築物を代替施設として定めている機関 業務継続計画において代替施設を定めていない機関
(機関) (機関) (機関)
指定行政機関 1 0 1
指定地方行政機関 5 3 2
上記以外の機関 10 2 8
16 5 11
(注)
 機関別については別表2-15 を参照。

 上記16機関のうち、業務継続計画において建築基準法に基づく耐震性能が確保されている建築物を庁舎が被災した場合の代替施設として定めている機関は、約3分の1の5機関となっている。
 また、業務継続計画における被害想定によっては、代替施設の必要度も変わってくることから、上記16機関のうち、業務継続計画において代替施設を定めていない11機関について、業務継続計画における被害想定等を確認すると、入居庁舎は倒壊等の危険があると想定しているのに代替施設を定めていなかったり、入居庁舎は構造体について建築基準法に基づく耐震性能が確保されていないのに震度6強の大規模地震でも大きな被害はないとして代替施設を定めていなかったりしていて、業務継続の点から、庁舎の現状を踏まえた検討が必要な機関が見受けられた。
 業務継続計画において、入居庁舎は倒壊等の危険があると想定しているのに具体的な代替施設を定めていないため、業務継続の点から庁舎の現状を踏まえた検討が必要な事例は次のとおりである。

<事例-業務継続2>
建物名 所在地 分類 建築年次 構造・規模
構造 地上 地下 延床面積
福岡法務総合庁舎 福岡県福岡市 III類 昭和48年 RC 5階 7,258m2
 福岡法務総合庁舎(III類、構造体の評価a、評価値0.46)は、建築基準法に基づく耐震性能を確保しておらず、震度6強から7程度の大規模地震による倒壊又は崩壊の危険性が高い建物とされており、同庁舎に入居する福岡法務局が平成23年2月に策定した業務継続計画においても、倒壊又は倒壊する危険性が高いと想定されている。
 しかし、同計画では、倒壊等により庁舎が使用できない場合における代替施設の確保について、必要性を検討するとしているが、具体的な代替施設を定めていなかった。
 このため、業務継続の点からみると、福岡法務局は、庁舎の現状を踏まえて業務継続計画に代替施設を定めておくなどの地震減災対策の検討が必要となっている。

 業務継続計画において、入居庁舎は建築基準法に基づく耐震性能が確保されていないのに震度6強の大規模地震でも大きな被害はないとしていて、業務継続の点から庁舎の現状を踏まえた検討が必要な事例は次のとおりである。

<事例-業務継続3>
建物名 所在地 分類 建築年次 構造・規模
構造 地上 地下 延床面積
最高裁判所庁舎(裁判官棟) 東京都千代田区 III類 昭和49年 SRC 4階 1階 9,877m2
最高裁判所庁舎(裁判部棟) 東京都千代田区 III類 昭和49年 RC 4階 1階 8,724m2
最高裁判所庁舎(事務北棟) 東京都千代田区 III類 昭和49年 RC 3階 2階 16,922m2
最高裁判所庁舎(事務西棟) 東京都千代田区 III類 昭和49年 RC 3階 2階 事務北棟に含む
 最高裁判所庁舎裁判官棟(III類、構造体の評価a、評価値0.27)、同裁判部棟(III類、構造体の評価a、評価値0.47)、同事務北棟(III類、構造体の評価a、評価値0.48)及び同事務西棟(III類、構造体の評価a、評価値0.40)は、いずれも建築基準法に基づく耐震性能を確保しておらず、震度6強から7程度の大規模地震による倒壊又は崩壊の危険性が高い建物とされている。
 しかし、これら庁舎に入居している最高裁判所が平成22年7月に策定した業務継続計画では、東京湾北部地震(マグニチュード7.3、最大震度6強)を想定災害としているのに、災害発生時に庁舎は倒壊又は崩壊しないものとしており、庁舎の現状とはかい離したものとなっていた。
 このため、業務継続の点からみると、最高裁判所は、現状を踏まえて庁舎の倒壊を被害想定にするなどの地震減災対策の検討が必要となっている。なお、最高裁判所は、東日本大震災後、業務継続計画の見直し作業を行っており、現在の耐震状況を踏まえた計画の策定を検討しているとしている。

 大綱によると、中央省庁等は、業務継続性を確保するため、衛星通信等の多様な通信手段を確保する必要があるとされている。
 災害時における主要な通信手段としては、内閣府が整備している指定行政機関等を結ぶ中央防災無線網、電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第8条に基づき電気通信事業者が提供する災害時優先電話等がある。
 前記185機関のうち、災害時に災害応急対策を実施する指定行政機関23機関及び指定地方行政機関126機関、計149機関における災害時の通信体制は、図表2-28 のとおりである。

図表2-28  災害時の通信体制

(平成23年12月末現在)

府省等名 検査対象機関
(A)
災害時優先電話の設置状況 中央防災無線及び災害時優先電話以外の災害時通信手段の確保状況
災害時優先電話を設置している機関
(B)
設置率
(B)/(A)
中央防災無線及び災害時優先電話以外の災害時通信手段を確保している機関
(C)
確保率
(C)/(A)
指定行政機関 指定地方行政機関 指定行政機関 指定地方行政機関 指定行政機関 指定地方行政機関 指定行政機関 指定地方行政機関 指定行政機関 指定地方行政機関
(機関) (機関) (機関) (機関) (%) (%) (機関) (機関) (%) (%)
内閣府 4 8 4 8 100 100 3 8 75 100
総務省 2 11 2 11 100 100 2 11 100 100
法務省 1 - 1 - 100 - 1 - 100 -
外務省 1 - 1 - 100 - 1 - 100 -
財務省 1 9 1 9 100 100 1 9 100 100
文部科学省 2 1 2 1 100 100 2 1 100 100
厚生労働省 1 16 1 10 100 63 1 0 100 0
農林水産省 1 15 1 15 100 100 1 15 100 100
経済産業省 4 14 4 14 100 100 4 14 100 100
国土交通省 4 37 4 37 100 100 4 37 100 100
環境省 1 7 1 7 100 100 1 3 100 43
防衛省 1 8 1 8 100 100 1 8 100 100
23 126 23 120 100 95 22 106 96 84
(注)
 機関別については別表2-15 参照。

 149機関における災害時優先電話の設置状況についてみると、指定行政機関の設置率は100%であるが、指定地方行政機関の設置率は95%であり、厚生労働省の一部において、災害時優先電話を設置していない機関が見受けられた。
 中央防災無線及び災害時優先電話以外の災害時通信手段の確保状況についてみると、指定行政機関の96%、指定地方行政機関の84%は、衛星電話、衛星携帯電話等何らかの通信手段を確保しているが、内閣府(消費者庁本庁)並びに厚生労働省の全地方支分部局及び環境省の一部の地方支分部局は、これらの通信手段を確保していない。
 このように、指定行政機関等における災害時の通信体制をみると、特に厚生労働省の一部の機関は、業務継続性の確保の点で通信体制が十分ではなく、災害応急対策活動等に影響が出る可能性が高いと思料される。

ウ 電力設備の状況

 大綱によると、中央省庁等は、業務継続性確保のため、電力供給系統の多重化(注12) を図るほか、最低3日間の非常用電源等を確保することとされている。
 そして、「官庁施設の総合耐震計画基準及び同解説」(建設大臣官房官庁営繕部監修、以下「計画基準解説」という。)によると、官庁施設の商用電力の途絶対策について、建築設備の耐震安全性が甲類の官庁施設、すなわち、指定行政機関等が使用する官庁施設は、原則、自家発電設備を設置するとともに商用電源の受電系統の二重化(注12) を図ることが望ましいとされている。また、自家発電設備の発電容量は、災害応急対策活動等に必要な負荷を賄うことが可能なものとし、その燃料備蓄量は、商用電源の復旧に要する時間又は燃料の補給に要する時間のうち、短い方とし、その想定が困難な場合は72時間程度とすることとされている。
 また、国土交通省は、22年4月、官庁施設の機能確保に関する指針として、「業務継続のための官庁施設の機能確保に関する指針」を公表している。
 同指針によると、業務継続計画を策定する中央省庁及び地方支分部局等が非常時優先業務を行う施設は、災害時に商用電源が途絶した場合に備えて、非常用電源を確保する必要があるとされ、非常用発電設備の発電容量及び連続運転可能時間等は、必要な業務継続の水準に応じて決定することとされている。
 そこで、計画基準において、病院等の救護施設の建築設備の耐震安全性が甲類となっていることなどを踏まえ、前記の指定行政機関等を中心に抽出した185機関のうち指定行政機関又は指定地方行政機関が入居している官庁施設及び医療施設における商用電源の受電系統や業務継続用の自家発電設備の状況について検査した。検査に当たっては、同一敷地内に複数の建築物がある場合に商用電源の受電設備を同一敷地内にある複数の建築物で共用している場合が多いことから、同一の受変電設備を共用している建築物はまとめて1か所と整理した上で、官庁施設68か所及び医療施設287か所を対象とした。

 電力供給系統の多重化、商用電源の受電系統の二重化  変電所からの送電ルートを複数用意したり、異なる2つの変電所から受電できるよう2つの送電ルートを用意したりなどすること

 商用電源の受電系統の二重化の状況及び業務継続用の自家発電設備の設置状況は、図表2-29 のとおりである。

図表2-29  商用電源の受電系統の二重化の状況及び業務継続用の自家発電設備の設置状況

(平成23年12月末現在)

区分 検査対象施設
(A)
受電系統が二重化されている施設 業務継続用の自家発電設備が設置されている施設
箇所数
(B)
検査対象箇所数に対する割合
(B)/(A)
箇所数
(C)
検査対象箇所数に対する割合
(C)/(A)
(箇所) (箇所) (%) (箇所) (%)
官庁施設 68 24 35 58 85
医療施設 287 123 43 280 98
  うち、災害拠点病院 91 63 69 91 100

 商用電源の受電系統が二重化されている施設の割合は、官庁施設で35%、医療施設で43%となっているが、大規模地震等の災害時に重要な役割を果たす災害拠点病院に指定されている医療施設に限定してみると69%となっており、災害拠点病院は、官庁施設及び医療施設全体より受電系統が二重化されている割合が高くなっている。
 業務継続用の自家発電設備が設置されている施設の割合は、官庁施設で85%、医療施設で98%、災害拠点病院では100%となっており、ほとんどの官庁施設及び医療施設には業務継続用の自家発電設備が設置されている。しかし、業務継続用の自家発電設備がない官庁施設が10か所、医療施設が7か所あり、これらの施設は災害応急対策活動等に影響が出る可能性が高く、業務継続の点からも電源対策が必要となっている。
 業務継続用の自家発電設備がないため、災害応急対策活動等に影響が出る可能性が高く、業務継続の点から電源対策が必要な事例は次のとおりである。

<事例-業務継続4>
建物名 所在地 分類 建築年次 構造・規模
構造 地上 地下 延床面積
名古屋農林総合庁舎 愛知県名古屋市 I類 昭和38年 RC 4階 1階 6,636m2
 名古屋農林総合庁舎(I類、構造体の評価c、評価値1.02)は、指定地方行政機関の東海農政局が入居しているが、業務継続用の自家発電設備は設置されていない。
 このため、同庁舎は、災害発生時に商用電源が途絶すると、指定地方行政機関として行う災害応急対策活動等に影響が出る可能性が高く、業務継続の点から外部電源車による給電や可搬型の非常用発電装置の導入等も含めた電源対策が必要となっている。

 また、業務継続用の自家発電設備がある官庁施設58か所及び医療施設280か所についての各施設における業務継続用の自家発電設備の連続運転可能時間は、図表2-30 のとおりである。

図表2-30  業務継続用自家発電設備の連続運転可能時間

(平成23年12月末現在)

区分 業務継続用の自家発電設備が設置されている施設 自家発電設備の連続運転可能時間
24時間以下 24時間超
48時間以下
48時間超
72時間以下
72時間超
(箇所) (箇所) (箇所) (箇所) (箇所)
官庁施設   58 6 8 10 34
(構成比) (100%) (10%) (14%) (17%) (59%)
医療施設   280 79 28 40 133
(構成比) (100%) (28%) (10%) (14%) (48%)
  うち、災害拠点病院 91 15 6 23 47
  (構成比) (100%) (16%) (7%) (25%) (52%)

 業務継続用の自家発電設備を複数台設置している施設は、自家発電設備の中で一番長い連続運転可能時間を対象として、各施設における自家発電設備の連続運転可能時間をみると、72時間超となっている施設が最も多く、官庁施設の59%、医療施設の48%を占める一方で、24時間以下となっている施設も見受けられる。
 業務継続計画を策定することとなっている指定行政機関等が入居する官庁施設68か所について、各施設に入居している機関の業務継続計画で想定している商用電源の復旧までに要する時間(以下「電源復旧想定時間」という。)は、図表2-31 のとおりである。

図表2-31  業務継続計画における電源復旧想定時間

(平成23年12月末現在)

検査対象施設 業務継続計画に電源復旧想定時間がある施設 電源復旧想定時間がない施設
  (内訳)電源復旧想定時間
24時間以内 24時間超
48時間以内
48時間超
72時間以内
72時間超
箇所数(箇所) 68 50 3 31 10 6 18
構成比(%) 100 74 4 46 15 9 26

 官庁施設の約4分の3の50か所は業務継続計画に電源復旧想定時間があり、このうち半数以上の31か所は電源復旧想定時間が24時間超48時間以内となっている。また、業務継続計画が策定されていないなど電源復旧想定時間がない官庁施設は18か所で全体の約4分の1となっている。
 そして、前記の自家発電設備の連続運転可能時間が、電源復旧想定時間以上となっているなど業務継続の点で必要な時間を満たしているかについてみると、業務継続の点からみた自家発電設備の連続運転可能時間の過不足状況は、図表2-32 のとおりである。

図表2-32  業務継続の点からみた自家発電設備の連続運転可能時間の過不足状況

(平成23年12月末現在)

区分 検査対象施設
(A)
業務継続の点で必要な連続運転可能時間を満たしている施設 業務継続の点で必要な連続運転可能時間を満たしていない施設
箇所数
(B)
検査対象箇所数に対する割合
(B)/(A)
箇所数
(C)
検査対象箇所数に対する割合
(C)/(A)
(箇所) (箇所) (%) (箇所) (%)
官庁施設 58 44 76 14 24
医療施設 280 148 53 132 47
  うち、災害拠点病院 91 54 59 37 41
(注)
 電源復旧想定時間がない施設については、72時間以上を業務継続の点で必要な連続運転可能時間とした。

 電源復旧想定時間がない施設は、計画基準解説において、自家発電設備の燃料備蓄量は、商用電源の復旧に要する時間又は燃料の補給に要する時間の想定が困難な場合は72時間程度とされていることなどから、72時間を電源復旧想定時間と仮定した。そして、この条件により自家発電設備の連続運転可能時間をみると、図表2-32 のとおり、電源復旧想定時間以上となっていて業務継続の点で必要な連続運転可能時間を満たしていると考えられる施設の割合は、官庁施設で76%、医療施設で53%、災害拠点病院で59%となっている。
 このように、業務継続用の自家発電設備が設置されていても、その連続運転可能時間が、電源復旧想定時間に満たない施設は、官庁施設の2割強、医療施設の5割弱、災害拠点病院の約4割を占めており、業務継続の点で必要な連続運転可能時間を満たしておらず、燃料備蓄量を増やすなどの地震減災対策が必要な官庁施設や医療施設が多数見受けられた。
 自家発電設備の連続運転可能時間が短いため、災害時における医療活動等に影響が出る可能性が高く、自家発電設備の燃料備蓄量を増やすなどの地震減災対策が必要な医療施設の事例は次のとおりである。

<事例-業務継続5>
 国立病院機構名古屋医療センター(所在地:愛知県名古屋市)は、大規模地震等の災害時に重要な役割を果たす災害拠点病院に指定されており、業務継続用の自家発電設備が設置されているが、その連続運転可能時間は14時間程度となっている。
 一方、愛知県が平成21年11月に公表した「愛知県庁業務継続計画[想定東海・東南海地震連動編]」における被害想定によると、同センターを含む県庁周辺地域の商用電源は3日間程度停止するとされている。
 このため、同センターの電源設備については、災害拠点病院として、自家発電設備の燃料備蓄量を増やすなどの地震減災対策が必要となっている。