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  • 平成24年10月

郵便事業株式会社の経営状況について


3 検査の状況

(1) 特別会計時代の収支状況

 特別会計においては、前記のとおり、郵便業務を実施していたほか、郵便貯金や簡易生命保険の取扱いに関する業務等を実施していたが、特別会計に属していた権利及び義務は、他の会計に属したものを除き郵政公社が承継して、特別会計は15年4月1日に廃止された。
 特別会計時代の郵便業務の実施における昭和51年以降の郵便料金の値上げは、表1 のとおり、郵便料金への消費税の課税による平成元年の値上げを除き、継続的な損失を解消して収支を改善するために昭和51年、56年及び平成6年に実施された。

表1 郵便料金の値上げ状況
年月 第1種(封筒) 第2種
(はがき)
定形(25gまで) 定形(50gまで)
昭和 51年1月   50円 60円 20円
  56年1月   60円 70円 30円
  56年4月   60円 70円 40円
平成 元年4月   62円 72円 41円
  6年1月   80円 90円 50円

 そして、この間の郵便物の引受物数は、図1のとおり、郵便料金を値上げした当該年度等に一時的に減少しているものの、13年度までは増加傾向にあったこともあり、特別会計の収支は郵便料金の値上げに伴って改善されていた。

図1 特別会計時代の引受郵便物数の推移
(単位:百万通)

図1特別会計時代の引受郵便物数の推移

 しかし、10年度以降の特別会計の収支状況を年度ごとにみると、表2 のとおり、13年度を除いて収支が赤字となっていたが、郵便料金の値上げは行っていなかった。

表2 特別会計の郵便業務損益状況
(単位:百万円)

年度
科目
平成10年 11年 12年 13年 14年
郵便業務収入 2,059,057 2,060,448 2,055,216 2,020,662 1,958,158
郵便費 1,772,666 1,778,615 1,737,842 1,700,371 1,680,758
利益金(△欠損金) △ 62,550 △ 55,300 △ 9,998 8,004 △ 22,491
累積利益金 187,921 132,621 122,623 130,627 108,136

(2) 郵政公社時代の収支状況

 15年4月1日から19年9月30日までの郵政公社時代の郵便業務に係る収支状況は、表3 のとおりとなっており、郵政公社においては、業務科目が特定できるものはその業務科目に整理するとともに、二つ以上の業務科目に関するものは基準によりそれぞれの業務科目に整理して、業務区分別の財務諸表を作成していた。そして、郵便業務については、15年度から18年度までの間、営業損益、経常損益及び純損益のいずれも利益を確保していたが、年度途中で民営分社化された19年度においては、営業損失、経常損失、当期純損失を計上していた。
 なお、17、18両年度における特別損失が増加しているのは、17年度からの減損会計の導入により、一部の固定資産についての減損損失を特別損失に計上したことによるものであり、19年度に特別損失が増加しているのは、退職給付債務の算定方法を変更したことにより将来の費用負担を見積ることができるようになったことから、財務諸表の透明性を高めるために当該退職給付債務である整理資源負担金を一括処理額として計上したことによるものである。

表3 郵政公社の郵便業務の区分に係る損益計算書
(単位:百万円)

科目 平成15年度 16年度 17年度 18年度 19年度
営業収益 1,966,693 1,924,851 1,909,003 1,913,444 854,481
営業原価 1,813,662 1,794,185 1,792,324 1,785,994 833,154
 人件費 1,351,335 1,369,563 1,369,430 1,370,543 632,748
(うち賞与引当金繰入額) 69,864 69,945 67,452 63,377 61,713
(うち退職給付費用) 100,008 98,826 95,372 90,692 46,863
 燃料費 5,935 6,514 7,723 8,690 4,531
 車両修繕費 5,690 5,441 6,235 5,873 3,227
 切手・はがき類購買経費 14,335 12,088 10,995 10,659 2,784
 減価償却費 85,381 74,847 67,729 62,861 33,274
 施設使用料 29,136 29,336 27,078 25,410 10,558
 租税公課 369 1,432 2,123 1,905 1,751
 集配運送委託費 184,572 169,842 184,412 180,694 82,560
 取扱手数料 33,509 30,273 29,076 28,913 13,018
 その他 103,397 94,845 87,517 90,442 48,698
  営業総利益 153,030 130,665 116,679 127,449 21,327
販売費及び一般管理費 92,524 99,893 101,928 99,460 53,655
  営業利益(△営業損失) 60,506 30,772 14,751 27,989 △ 32,327
営業外収益 5,560 8,133 9,319 8,179 4,656
営業外費用 20,557 12,703 8,903 7,313 4,594
  経常利益(△経常損失) 45,509 26,202 15,167 28,856 △ 32,265
特別利益 4,366 6,867 12,945 6,023 1,868
特別損失 23,549 4,733 25,432 33,006 784,283
  当期純利益(△当期純損失) 26,326 28,337 2,680 1,873 △ 814,680
(注)
 平成19年度は、19年4月1日から19年9月30日までである。

(3) 民営分社化後の収支状況

ア 事業会社の損益計算書等

 事業会社の損益計算書等についてみると、表4 のとおり、郵政公社時代と同一の科目名が存在していたが、郵政公社時代は、郵便業務のほか郵便貯金業務及び簡易生命保険業務も含めて発生した費用を事業区分別に案分して算定していたため、同一科目であっても、その推移を単純には比較できないものとなっていた。
 また、郵政公社は、郵便業務について、郵政公社の子会社及び関連会社を含めた損益計算書等を作成していたが、事業会社は、法令等の定めがないことから郵政公社と同様の損益計算書等を作成していなかったため、事業会社単独の損益計算書等により事業会社の経営状況について分析した。

表4  営業損益等の推移
(単位:百万円)

科目 平成19年度(19年10月〜) 20年度 21年度 22年度 23年度
A 営業収益 1,053,676 1,865,282 1,813,048 1,779,870 1,764,861
B 営業原価 893,647 1,724,671 1,675,174 1,783,128 1,696,324
   人件費 582,961 1,132,456 1,098,671 1,127,509 1,089,298
    (うち賞与引当金繰入額) 51,854 52,242 51,004 38,199 37,844
     (うち退職給付費用) 32,952 64,133 61,674 59,950 59,081
   経費 310,685 592,214 576,503 655,619 607,025
    燃料費 5,655 11,213 9,119 10,366 11,723
    車両修繕費 4,051 7,530 9,279 9,210 9,588
    切手・はがき類購買経費 7,950 11,676 12,353 13,017 13,007
    減価償却費 31,515 59,011 53,800 55,611 55,459
    施設使用料 11,807 17,577 17,978 20,385 18,447
    租税公課 437 10,552 10,205 10,809 10,255
    集配運送委託費 90,286 171,160 171,057 226,953 216,887
    郵便局株式会社委託手数料 103,066 213,185 209,348 203,535 183,250
    取扱手数料 15,379 26,749 25,006 23,843 23,297
    その他 40,535 63,556 58,352 81,885 65,108
  営業総利益(△営業総損失) 160,028 140,611 137,873 △ 3,258 68,537
C 販売費及び一般管理費 56,254 95,722 95,093 100,215 90,891
   人件費 14,913 30,481 32,546 35,219 34,763
      (うち賞与引当金繰入額) 1,645 1,819 1,871 1,420 1,563
      (うち退職給付費用) 1,036 2,087 2,163 2,733 2,346
   経費 41,341 65,241 62,547 64,995 56,128
     減価償却費 2,795 6,619 7,828 11,526 13,679
     広告宣伝費 7,999 8,852 6,617 7,411 3,709
     租税公課 3,622 3,536 5,166 3,324 4,011
     支払手数料 11,724 25,506 23,319 20,636 17,915
     その他 15,199 20,726 19,615 22,097 16,812
     営業利益(△営業損失) 103,773 44,888 42,779 △ 103,473 △ 22,354
D 営業外収益 14,670 22,211 21,956 23,340 22,399
   受取配当金 - - - 1,460 3,431
   受取賃貸料 13,269 19,610 19,915 18,716 16,388
   その他 1,401 2,601 2,041 3,163 2,580
E 営業外費用 4,680 8,125 7,738 8,959 10,052
   賃貸原価 3,971 6,888 6,591 6,314 7,952
   その他 709 1,236 1,147 2,645 2,099
    経常利益(△経常損失) 113,763 58,974 56,997 △ 89,093 △ 10,007
F 特別利益 211 1,822 1,615 5,972 12
   前期損益修正益 - 1,122 - - -
   貸倒引当金戻入益 - 292 - 5,453 -
   和解金 - - 1,264 - -
   ふみカード払戻引当金戻入益 207 284 264 - -
   その他 4 121 86 518 12
G 特別損失 1,379 4,099 81,935 5,277 2,633
   前期損益修正損 - 3,118 - - -
   固定資産処分損 1,271 977 3,047 3,204 2,085
   貸倒引当金繰入額 - - 40,963 - -
   関係会社株式評価損 - - 37,570 - -
   災害による損失 - - - 1,252 -
   リース解約損 - - - - 320
   その他 107 3 352 820 227
  税引前当期純利益(△税引前当期純損失) 112,595 56,697 △ 23,321 △ 88,398 △ 12,627
  法人税、住民税及び事業税 43,108 23,353 24,171 △ 52,962 △ 8,102
  過年度法人税等 - 3,530 - - -
  当期純利益(△当期純損失) 69,487 29,812 △ 47,493 △ 35,435 △ 4,525
(注)
 平成21年度は、特別損失819億円、特別利益16億円が発生しており、これらの差により求められる特別損益は803億円の赤字となる。

 事業会社は、表4 のとおり、21年度に特別損失を819億円計上したことから特別損益が803億円の赤字となっており、22、23両年度には営業損益でそれぞれ1034億円、223億円の赤字を生じていて、3か年度にわたって当期純損失を計上していた。これは、後述のとおり、郵便物の引受物数が減少したことにより目的内業務に係る収益が減少したことに加えて、JPEXの設立や宅配便事業の経営不振によるものであると考えられる。

イ 株主資本の推移

 事業会社は、表5 のとおり、事業会社の株主である日本郵政に、一部上場企業の一般的な配当性向に準じた配当をするとして、19、20両年度の当期純利益の概ね25%に相当する金額をそれぞれ翌年度に配当していた。

表5 株主資本等変動計算書の推移
(単位:億円)

年度 株主資本
  資本金 資本剰余金 利益剰余金
資本準備金   繰越利益剰余金(△繰越欠損金)
期首残高 剰余金の配当 当期純利益
(△当期純損失)
平成 19年度 2,694 1,000 1,000 694 - - 694
  20年度 2,819 1,000 1,000 819 694 △ 173 298
  21年度 2,269 1,000 1,000 269 819 △ 74 △ 474
  22年度 1,915 1,000 1,000 △ 84 269 - △ 354
  23年度 1,870 1,000 1,000 △ 129 △ 84 - △ 45

 しかし、21年度から23年度にかけては、上記アのとおり、当期純損失を計上したことから、事業会社は、日本郵政への配当を行わなかった。
 事業会社は、21年度に特別損失を計上した後、22、23両年度に営業損失を計上したことにより、株主資本の減少が続いており、20、21両年度に日本郵政に対してそれぞれ173億円、74億円、計247億円の配当を行っているものの、23年度末時点においては、129億円の繰越欠損金を計上していた。
 上記の繰越欠損金を早期に解消することは、商号変更後に事業会社を吸収合併して設立した日本郵便にとって、ユニバーサルサービスである郵便事業を実施するための安定的な経営基盤の確立のためにも必要である。

(4) 21年度以降の収支悪化要因について

 事業会社は、前記1(3) のとおり、20年6月に日通との共同出資によりJPEXを設立し、その後、22年7月にJPEXの宅配便事業を承継したが、上記3(3) のとおり、21年度以降、事業会社の収支は悪化しており、その要因を分析すると、目的内業務のうち、郵便物の引受物数が減少したことにより目的内業務に係る収益が減少したことに加えて、次のとおり、JPEXの設立及び宅配便事業の統合の経緯が大きな要因になっており、上記の目的外業務の実施について、前記1(1)ア のとおり、目的内業務の遂行に支障のない範囲内で営むことができるとされていた郵便事業株式会社法の趣旨を損ないかねない状態となっていた。

ア 特別損失の発生状況

 JPEXは、事業会社と日通の1年当たり平均引受物数の合計個数を処理することを前提として設立されており、21年度には、1年分に相当する日通由来の宅配荷物と、21年10月からの半年分に相当する事業会社由来の宅配荷物との合計となる3億6000万個を引き受けることとして、営業収益(売上高)を2007億円、当期純損失を207億円とする事業計画を策定していた。
 しかし、JPEXは21年4月に日通から宅配便事業を承継して業務を開始したが、前記1(3) のとおり、21年10月に予定していた事業会社からJPEXへの宅配便事業の承継は実施できなかった。
 上記のため、21年度のJPEXの実際の引受物数は1億9218万個で、表6 のとおり、売上高は1075億円にとどまり、21年7月の事業計画変更後はその費用の削減に努めたものの売上原価に1537億円を要したため、販売費及び一般管理費を含めた営業損失は587億円、当期純損失は599億円となり、事業計画における当期純損失の額を大幅に上回るものとなった。
 JPEXの経営状況は22年度も同様の状況が継続したため、表6 のとおり、解散した同年8月時点で売上高227億円に対して売上原価は352億円を要しており、販売費及び一般管理費を含めた営業損失は178億円、当期純損失は235億円となっていた。

表6  JPEXの売上原価、営業損失及び当期純損失
(単位:億円)

年度 売上高 売上原価 営業損失 当期純損失
平成 21年度 1,075 1,537 587 599
  22年度 227 352 178 235

 事業会社は、21年4月に、JPEXの第三者割当増資として327億円を追加で出資したが、21年11月にJPEXの資金繰りに問題が生じ、JPEXから運転資金の借入れの申込みがあったことを受けて、表7 のとおり、21年11月から22年8月までの間に延べ1458億円の融資を行って1058億円の返済を受けた結果、融資残高が400億円となり、JPEXの解散時点でそのうち354億円が回収不能となった。

表7 事業会社によるJPEXへの融資状況
(単位:億円)

年度 融資 返済 残高
平成 21年度 620 290 330
  22年度(4月〜8月) 838 768 400
1,458 1,058
(注)
 融資は全て貸付契約により行われており、貸付期間は最短で1か月、最長で6か月である。

 また、事業会社は、前記1(3) のとおり、宅配便事業のJPEXへの承継の時期を21年4月から同年10月に変更した後、大臣認可を得られなかったため、事業会社の宅配便事業をJPEXに承継させることができず、20年8月に締結した契約を履行できなかったことから、日通から21年10月に日通が保有するJPEX株式の買取請求を受けた。
 事業会社は、この請求に対して、21年9月末日時点でのJPEXの貸借対照表に記載された純資産241億円から、事業会社が選定した不動産鑑定士に時価評価を依頼して確認したJPEXの保有不動産の評価損13億円を控除した金額をJPEXの全発行済株式数100万株で除することで1株当たりの金額を22,853円として、同年12月に、日通から20万株を45億7060万円で買い取った。
 以上のとおり、JPEXの経営状況が悪化しており、JPEXによる債務の返済に重大な問題が生じる可能性が高かったことから、事業会社は、21年度決算において、JPEXへの融資額及びJPEXから事業会社に支払われるべき業務委託費等を含むJPEXに対する債権全額である409億円に対して貸倒引当金を計上し、貸倒引当金繰入額として特別損失に計上した。また、事業会社が宅配便事業をJPEXに承継させることができなかったことにより、JPEXの財政状態が悪化して、JPEXの株式の実質価額が著しく低下したため、事業会社が保有しているJPEXの全株式の価額に相当する375億円全額を減損処理して関係会社株式評価損として特別損失に計上した。以上のことなどから、特別損益の合計額は803億円の赤字となり、事業会社の21年度決算は当期純損失474億円を計上していた。

イ 収益について

(ア) 引受物数と収益との関係について

 目的内業務である郵便物の引受物数は、13年度までは増加していたものの、図2 のとおり、14年度以降、毎年度減少して23年度は191億通となっており、13年度の263億通に比べて27.3%減少していた。
 郵便物の引受物数が減少している主な理由は、14年度から数年間は、電子化の影響や他事業者のメール便への移行のほか、企業等による通信費及び販売促進費の削減等によるものであった。また、20年度以降は、リーマンショックによる景気悪化の影響を受けているが、ここ数年は、事業者等から顧客に送付される各種明細書等をインターネットを活用して閲覧することが普及したことなどの影響を受けており、同様の傾向は、図3 のとおり、欧米の主要国でもみられている。
 上記のような傾向がみられることから、郵便料金の値上げは、インターネットを活用したサービスへの移行を一層促進させ、郵便物をより減少させることになりかねない状況となっている。

図2  郵便引受物数の推移
(単位:百万通)

図2郵便引受物数の推移

図3  欧米主要国における郵便物数の推移

図3欧米主要国における郵便物数の推移

郵便事業株式会社の経営状況についての図1

(注)
 万国郵便連合郵便統計等による。

 そして、民営分社化後の事業会社における目的内業務である郵便物、目的外業務である宅配荷物等の合計引受実績及び収益は、表8 及び表9 のとおりであり、郵便物の引受物数の減少により減収となっており、営業収益は、表10 のとおり、前年度に比べて22年度は331億円、23年度は150億円それぞれ減少していた。
 特に22年度において営業収益が331億円減少した要因は、郵便物の収益が事業計画上の収益よりも182億円小さく、前年度に比べても618億円減少したことによるものであった。

表8  郵便物、宅配荷物等の引受状況
(単位:百万通、%)

区別 平成19年 20年度 21年度 22年度 23年度 平均値
  対前年度増減率   対前年度増減率   対前年度増減率   対前年度増減率
総計 24,522 23,929 △ 2.4 23,387 △ 2.2 22,780 △ 2.5 22,363 △ 1.8 △ 2.2
〔1〕 郵便物 21,994 21,227 △ 3.4 20,582 △ 3.0 19,812 △ 3.7 19,107 △ 3.5 △ 3.4
  内国郵便物 21,921 21,158 △ 3.4 20,521 △ 3.0 19,757 △ 3.7 19,058 △ 3.5 △ 3.4
  第一種(封書) 10,729 10,332 △ 3.7 9,915 △ 4.0 9,319 △ 6.0 8,912 △ 4.3 △ 4.5
第二種
(はがき)
6,946 6,867 △ 1.1 6,851 △ 0.2 6,796 △ 0.8 6,647 △ 2.1 △ 1.0
第三種
(雑誌、新聞)
532 449 △ 15.6 346 △ 22.9 297 △ 14.1 274 △ 7.6 △ 15.0
第四種
(通信教育等)
27 25 △ 6.1 24 △ 3.3 24 △ 3.6 23 △ 1.9 △ 3.7
年賀 2,979 2,900 △ 2.6 2,856 △ 1.5 2,812 △ 1.5 2,677 △ 4.7 △ 2.5
選挙 102 11 △ 88.8 59 422.0 50 △ 15.3 61 22.2 85.0
特殊
(書留、速達等)
604 571 △ 5.4 467 △ 18.2 458 △ 1.9 460 0.4 △ 6.2
国際郵便物 72 69 △ 4.7 61 △ 11.4 54 △ 11.6 49 △ 8.6 △ 9.0
〔2〕 宅配荷物 271 277 1.9 233 △ 15.8 343 47.3 382 11.4 11.2
〔3〕 エクスパック - -   31 - 3 △ 88.6 0 △ 79.6 △ 84.1
〔4〕 ゆうメール 2,256 2,424 7.4 2,540 4.7 2,621 3.1 2,872 9.5 6.1

表9  郵便事業、宅配荷物等の収支の状況
(単位:億円、%)

種類別 平成19年度
(19年10月〜)
20年度      
21年度 対前年度比較増減率 22年度 対前年度比較増減率 23年度 対前年度比較増減率
郵便物 営業収益(A) 8,665 15,023 14,411 △ 4.0 13,793 △ 4.2 13,343 △ 3.2
営業費用(B) 7,618 14,518 13,822 △ 4.7 13,504 △ 2.3 12,665 △ 6.2
営業利益(A-B) 1,047 504 589 16.8 288 △ 51.1 678 135.4
  内国郵便物 営業収益(A) 8,227 14,203 13,655 △ 3.8 13,087 △ 4.1 12,656 △ 3.2
営業費用(B) 7,213 13,766 13,120 △ 4.6 12,915 △ 1.5 12,109 △ 6.2
営業利益(A-B) 1,015 437 535 22.4 172 △ 67.8 547 218.0
  第一種
(封書)
営業収益(A) 4,050 7,780 7,484 △ 3.8 7,035 △ 5.9 6,774 △ 3.7
営業費用(B) 3,292 6,976 6,796 △ 2.5 6,668 △ 1.8 6,226 △ 6.6
営業利益(A-B) 758 804 688 △ 14.4 366 △ 46.8 548 49.7
第二種
(はがき)
営業収益(A) 2,898 4,145 4,142 0.0 4,084 △ 1.4 3,948 △ 3.3
営業費用(B) 2,554 4,213 4,214 0.0 4,283 1.6 3,956 △ 7.6
営業利益(A-B) 343 △ 67 △ 73 8.9 △ 199 172.6 △ 8 △ 95.9
第三種
(雑誌、新聞)
営業収益(A) 112 199 173 △ 13.0 145 △ 16.1 131 △ 9.6
営業費用(B) 179 304 262 △ 13.8 234 △ 10.6 198 △ 15.3
営業利益(A-B) △ 67 △ 105 △ 89 △ 15.2 △ 89 0.0 △ 67 △ 24.7
第四種
(通信教育等)
営業収益(A) 5 10 9 △ 10.0 9 0.0 8 △ 11.1
営業費用(B) 15 28 31 10.7 23 △ 25.8 20 △ 13.0
営業利益(A-B) △ 9 △ 18 △ 21 16.6 △ 14 △ 33.3 △ 11 △ 21.4
特殊取扱
(速達、書留等)
営業収益(A) 1,162 2,069 1,847 △ 10.7 1,816 △ 1.6 1,795 △ 1.1
営業費用(B) 1,173 2,246 1,818 △ 19.0 1,707 △ 6.1 1,710 0.1
営業利益(A-B) △ 10 △ 177 29 △ 116.3 108 272.4 85 △ 21.2
  国際郵便物 営業収益(A) 438 819 756 △ 7.6 706 △ 6.6 686 △ 2.8
営業費用(B) 405 752 702 △ 6.6 589 △ 16.0 556 △ 5.6
営業利益(A-B) 33 68 54 △ 20.5 116 114.8 130 12.0
宅配荷物、ゆうメール等 営業収益(A) 1,481 2,919 3,000 2.7 3,385 12.8 3,721 9.9
営業費用(B) 1,486 2,956 3,126 5.7 4,569 46.1 4,495 △ 1.6
営業利益(A-B) △ 5 △ 36 △ 127 252.7 △ 1,185 833.0 △ 774 △ 34.6

表10 営業収益の推移
(単位:億円)

科目 平成19年度(19年10月〜) 20年度 21年度 22年度 23年度
  前年度増減額   前年度増減額   前年度増減額
営業収益 10,536 18,652 18,130 △ 522 17,798 △ 331 17,648 △ 150

(イ) 換算業務量による分析

 事業会社は、21年度から、目的内業務と目的外業務の双方の実施に当たって必要となる引受け、仕分、配達等の作業が、定形郵便物、定形外郵便物、特殊郵便物、宅配荷物等の種類ごとにそれぞれどれだけ行われたかについて把握するために、郵便物等の種類ごとに処理に要した時間を集計して、それを定形郵便物1通の引受処理に要すると見込まれる時間で除するなどして、定形郵便物の引受処理通数に換算した業務量を示す数値(以下「換算業務量」という。)を社内における業務管理を推進するための指標として算出していた。
 そして、表8 及び表9 のとおり、目的内業務と目的外業務の合計引受物数は減少傾向にあり、営業収益も減少していたのに対して、換算業務量は、21年度以降、毎年度増加し、これに伴って22年度においては処理に要する人件費等の営業原価も前年度に比べて増加していた。
 このように換算業務量により把握される業務量が増加していた要因についてみると、表8 のとおり、JPEXから宅配便事業を承継したことにより、定形郵便物に比べて1個当たりの処理に多くの時間を要する宅配荷物の引受物数が、22年度は前年度に比べて47.3%増加したことによると認められる。一方で、22年度には、後述のとおり、人件費等の営業原価が増加していたことから、JPEXからの宅配便事業の承継後に、事業会社の収益性が低下し、収支が悪化したと認められる。

(ウ) 宅配荷物の配達遅延について

 事業会社は、22年7月にJPEXから宅配便事業を承継した際に宅配荷物の配達遅延を発生させたが、その主な原因は次のようなものであると認められた。

〔1〕 JPEXから宅配荷物のみを取り扱うこととして承継した統括支店であるターミナル支店の一部において、宅配荷物の仕分に用いる区分機の機能・特性の理解が十分でなかったことから宅配荷物の仕分作業を迅速に行えなかったこと

〔2〕 上記〔1〕 により、宅配荷物が滞留して、作業場所を占有したことにより、さらなる仕分作業の遅延を招いたこと

〔3〕 上記〔1〕 及び〔2〕 による仕分作業の遅延により、宅配荷物を積載するための運送便を運行ダイヤの発車時刻を超過して支店に留めなければならなかったことなどから、運行ダイヤの混乱が全国に波及したこと

 上記のとおり、宅配荷物の配達について大幅な遅延が生じたことにより、事業会社は差出人等に対して約8億円の損害賠償金を支払ったとしているほか、それを契機として一部の顧客を失ったことも想定され、その影響額は確定できないものの、事業会社の収益に影響を与えることになったと思料される。

ウ 費用について

 民営分社化後の事業会社の営業費用を営業原価と販売費及び一般管理費に分けて推移をみると、表11 のとおりであり、22年度に前年度に比べて1079億円増加した営業原価が、当該年度の営業損益における巨額な赤字を発生させた大きな要因の一つであり、このうちの大半を人件費、集配運送委託費、その他費用が占めていた。

表11  営業原価、販売費及び一般管理費の推移
(単位:億円)

科目 平成19年度(19年10月〜) 20年度 21年度 22年度 23年度
営業原価 8,936 17,246 16,751 17,831 16,963
  人件費 5,829 11,324 10,986 11,275 10,892
  (うち賞与引当金繰入額) 518 522 510 381 378
(うち退職給付費用) 329 641 616 599 590
経費 3,106 5,922 5,765 6,556 6,070
  燃料費 56 112 91 103 117
車両修繕費 40 75 92 92 95
切手・はがき類購買経費 79 116 123 130 130
減価償却費 315 590 538 556 554
施設使用料 118 175 179 203 184
租税公課 4 105 102 108 102
集配運送委託費 902 1,711 1,710 2,269 2,168
郵便局株式会社委託手数料 1,030 2,131 2,093 2,035 1,832
取扱手数料 153 267 250 238 232
その他 405 635 583 818 651
販売費及び一般管理費 562 957 950 1,002 908
  人件費 149 304 325 352 347
  (うち賞与引当金繰入額) 16 18 18 14 15
(うち退職給付費用) 10 20 21 27 23
経費 413 652 625 649 561
  減価償却費 27 66 78 115 136
広告宣伝費 79 88 66 74 37
租税公課 36 35 51 33 40
支払手数料 117 255 233 206 179
その他 151 207 196 220 168

(ア) 人件費

 事業会社の支店、集配センターにおいて実施していた業務は、郵便物、宅配荷物等の引受け、集荷、発送、発送先支店ごとの仕分、配達の各業務に加えて、上記各業務の管理業務であり、これらの業務を実施するために多額の人件費を要していた。そして、前記の換算業務量を労働時間で除して、22年度の労働時間1時間当たりの業務量を21年度と比較すると5.3%減少していて、郵便物の引受物数が減少したことなどにより生産性が低下していたことから、換算業務量1通当たりの人件費は4.2%上昇していた。
 人件費がこのような状況となっていたのは、次のような要因によるものであったと認められる。

〔1〕  JPEXから宅配便事業を承継したことで増加した宅配荷物を既存の統括支店のみでは仕分けられなかったことから、JPEXから宅配荷物の取扱いのみを行う21ターミナル支店を承継し、当該ターミナル支店の運用のために、JPEX時代から当該支店で雇用されていた期間雇用社員の一部を事業会社において雇用したことにより、要員数が増加したこと

〔2〕  22年7月にJPEXから宅配便事業を承継した際に、前記(4)イ(ウ) のとおり、宅配荷物の配達について大幅な遅延が発生したことから、その混乱を収拾するための要員を増員したこと、また、その後、同様の事態を生じさせないために手厚く要員の配置を行ったこと

〔3〕  統括支店においては、JPEXから宅配便事業を承継する以前は、起点となる統括支店を22時に出発する運送便に積載する宅配荷物を他の統括支店宛てに仕分ける作業は、主に19時から22時までの間に行うことで足りていた。これに対して、JPEXから宅配便事業を承継した後は、宅配荷物の翌日午前中の配達区域をそれ以前に比べて大幅に拡大することになったことから、21時に起点となる統括支店を出発する運送便に積載しなければならないこととなり、承継により前年度比で47.3%増加していた宅配荷物を1時間短い19時から21時までの間に仕分けなければならなくなり、必要な要員数が増加したこと

〔4〕  統括支店においては、同様に、JPEXから宅配便事業を承継する以前は、2時に終点となる統括支店に到着する運送便から荷下しした宅配荷物を配達を担当する支店及び集配センター(以下「集配支店」という。)宛てに仕分ける作業は、主に2時から7時までの間に行うことで足りていた。これに対して、JPEXから宅配便事業を承継した後は、終点となる統括支店に到着する運送便から荷下しする時刻が5時と大幅に遅くなり、承継により前年度比で47.3%増加した宅配荷物を3時間短い5時から7時までの間に仕分けなければならなくなり、必要な要員数が増加したこと

 上記のことから、多数の要員を配置する必要が生じたことにより、これらに係る人件費が前年度に比べて315億円増加していた。

(イ) 集配運送委託費

 事業会社は、郵便物等運送委託法(昭和24年第248号)に基づき、郵便物等の取集、運送及び配達業務を運送業者等に委託しており、これらの委託に要した集配運送委託費の金額は、表11 のとおりであり、近年は2000億円を超える状況となっていた。
 集配運送委託費には郵便物の取集業務及び宅配荷物等の配達業務に係る集配委託業務と、郵便物、宅配荷物等の運送業務に係る運送委託業務があり、それぞれの委託費の推移は表12 及び表13 のとおりであった。

表12  集配業務等に係る委託費の推移
(単位:百万円)

区別 平成19年度 20年度 21年度 22年度 23年度
専用自動車・軽四輪取集委託費 19,414 18,727 18,365 17,179 14,871
荷物等集配委託費 13,195 13,497 17,090 32,773 36,302
集荷委託費 - 41 638 3,104 2,901
集配・速達配達委託費 8,141 7,547 7,821 7,922 6,684
借上自動車費 3,667 3,304 4,064 7,425 2,782
その他 2,735 3,045 2,595 3,696 2,969
47,153 46,164 50,575 72,101 66,513
(注)
 宅配荷物等の配達に係る集配委託業務は、荷物等集配委託費に含まれている。

〔1〕  集配委託業務

 集配委託業務のうち、表12 の荷物等集配委託費を要する業務は、統括支店から集配支店に運送された宅配荷物の配達及び差出しを希望する顧客の指定場所での引受けを行うものなどで、各支店が運送業者と契約を締結して実施していた。
 そして、事業会社は、JPEXからの宅配便事業の承継に当たって、自らの社員及び既存の委託先だけでは増加した宅配荷物の配達、集荷が行えなかったことから、新たな委託先との契約を行うこととした。その際、事業会社は、JPEXを利用していた顧客への対応を重視して、主に従来JPEXと締結していた運送業者と新たに契約を締結することとした。
 上記の契約を締結したことにより、22年度は21年度に比べて荷物等集配委託費が156億円増加した。
 また、事業会社は、本件契約に係る料金の算定方法を全ての運送業者について見直し、引受数量にかかわらず一定の金額である基本料金に、宅配荷物の数量に従って加算される従量料金を加えることとした。しかし、JPEXからの宅配便事業の承継に伴って増加すると見込んだ引受物数が、21年度事業計画の変更認可の際に想定した宅配荷物の引受物数4億1500万個を下回る3億4300万個であったことから、運送業者との契約では、宅配荷物1個当たりの費用が割高となり、このことも22年度の収支の悪化要因となった。

〔2〕  運送委託業務

 運送委託業務のうち、トラックに係る運送委託費は、統括支店相互間又は統括支店と集配支店との間において、宅配荷物等を運送するもので、事業会社が21年2月にその株主資本の全額である365億円を出資して設立し、日本郵政の連結対象子会社である日本郵便輸送株式会社(以下「輸送会社」という。)と各事業会社支社との間で、23年度以降、運送委託に係る契約を締結していた。

表13  運送委託業務に要する費用の推移
(単位:百万円)

区分 平成19年度 20年度 21年度 22年度 23年度
トラック 72,321 75,781 75,817 114,924 112,071
軽四輪 1,862 1,517 191 14 4
船舶 1,299 1,422 1,470 1,956 2,235
鉄道 2,799 2,763 2,613 2,285 2,190
航空 21,380 18,223 17,297 15,052 15,247
その他 175 152 228 317 19
99,840 99,860 97,617 134,551 131,767

 運送委託業務に要する費用は、JPEXからの宅配便事業の承継により、郵便物と宅配荷物とで異なる送達日数等をそれぞれ確保するため、郵便物と宅配荷物等を同一運送便に積載できない場合が多く発生したこと、宅配荷物の引受物数が22年度は前年度に比べて47.3%増加したことに伴って運送便数が増加したことにより、22年度は1149億円となり、前年度に比べて391億円増加していた。

(ウ) その他の費用

 事業会社が7月及び12月に引き受けた宅配荷物は、それ以外の月の2倍以上に上っていたことから、事業会社は、22年7月にJPEXから宅配便事業を承継した際に、既存の統括支店及び承継した前記21ターミナル支店だけでは両月の宅配荷物の仕分作業を行えないと判断して、22年度に、JPEXにおける統括支店業務を実施していた日通の複数のターミナルに仕分作業の委託を行った。このことなどから、22年度の営業原価の作業委託費は、前年度に比べて83億円増加していた。
 また、事業会社は、JPEXから宅配便事業を承継する以前から、宅配荷物を引き受けたり、集配支店及び統括支店を通過したり、届け先に配達したりする都度、事業会社の携帯端末によりコンピュータシステムに宅配荷物の登録をして、当該宅配荷物の追跡などが行えるようにしていた。しかし、JPEXから宅配便事業を承継した際、JPEXが独自で行っていたサービスに対応するためにJPEXのコンピュータシステムを併用することとしたことから、JPEXで用いていた携帯端末を宅配荷物の配達を行う担当者に配備することなどが必要になった。こうしたことに伴い、22年度の営業原価の機械化関係経費は、前年度に比べて51億円増加していた。

(5) 収支改善策の実施状況

 事業会社は、前記のとおり、22年度に営業損失を生じたため、総務大臣から22年11月にその要因分析、収支改善策等に関する報告徴求が出されたことに対して、23年1月に報告書を作成して総務大臣に提出した。当該報告書において、事業会社は、短期的な収支改善策として、〔1〕 業務量に応じた要員の適正配置の徹底、〔2〕 集荷体制の見直し及び集配作業の生産性の向上、〔3〕 運送便の見直し、〔4〕 集配委託契約の見直し及び〔5〕 顧客との取引条件の見直しにより、収支改善を行うこととしていたが、その実施状況について検査したところ、次のような状況となっていた。

ア 人件費について

 23年度においては、営業損失が前年度に引き続き生じたことから、日本郵政が労働組合と交渉を行った結果、人件費のうち賞与を1.3か月分削減したことなどにより人件費を前年度に比べて348億円節減していた。
 また、23年8月に、宅配荷物の翌日午前中配達区域を、JPEXから宅配便事業の承継を受ける以前の状態に戻して、ターミナル支店の大半を廃止したことに伴い、上記〔1〕 及び〔2〕 を実施して、増員が必要となった要員の配置を改めたことなどによって、非正規社員に要する人件費を前年度に比べて137億円節減していた。

イ 集配運送委託費について

 22、23両年度の収支悪化要因の一つとなった集配運送委託費の増加については、統括支店相互間で宅配荷物等を運送する運送便(以下「地域間便」という。)において、積載率を常時把握できるようになったこと、23年8月以降、JPEXから宅配便事業を承継する以前と同様に、郵便物と宅配荷物を同一運送便に積載できるようにしたことなどにより、上記〔3〕 を実施して、23年度においては主に地域間便に係る運送委託費を前年度に比べて28億円節減していた。
 そして、会計検査院は、統括支店と集配支店間における運送便については、事業会社に対して24年6月に、会計検査院法第36条に基づき「宅配便事業等に係る運送便の経済的かつ効率的な運用について 」において、宅配便事業等の実施に当たって、宅配荷物等の運送を行うため委託契約により運行している運送便のうち、統括支店と集配支店間を運行する運送便の積載率を常時把握するなどして、運送委託費の節減を図るとともに、その余積を活用して運送便を効率的に運用するよう意見を表示した。そして、事業会社は、これに対する処置を講ずる取組を進めていた。
 また、事業会社は、23年度に、上記〔4〕 を実施して、荷物等集配委託契約の大半を完全な従量制とした料金体系に切り替えることなどにより集配委託費を節減する取組を実施していた。その結果、23年度の荷物等集配委託費と顧客から荷物等の集荷を行うための集荷委託費の合計は前年度に比べて33億円増加していたが、これは、集配委託を行った期間が、22年度はJPEXから宅配便事業を承継した7月から3月までの9か月分であったものが、23年度は通年になったためであり、1か月当たりで換算すると16.9%減少していた。

ウ 取引条件等の見直し

 事業会社は、22年7月にJPEXから移行した顧客の一部の取引条件が採算性の面で問題があったり、22年度上半期に宅配荷物1個当たりの収益が以前に比べて10.5%低下したりしたことを受けて、23年度以降、上記〔5〕 を実施して、順次取引条件の見直しを行った。

 そして、上記の取引条件の見直しにより、事業会社の宅配便事業に係る顧客が他の宅配便事業者に移行することが想定されたため、23年度の事業計画においては、宅配荷物の引受物数を22年度実績の3億4300万個に対して3億1600万個としていた。しかし、他の宅配便事業者への移行は想定よりも少なかったため、事業会社における23年度の宅配荷物の引受物数は3億8300万個となり、宅配荷物については計画を上回る収益を計上していた。

エ その他の費用

 事業会社は、宅配荷物の引受物数の増加に伴って、日通のターミナルに委託していた仕分作業をできる限り自ら実施したことなどにより、作業委託費を前年度に比べて27億円節減していた。
 また、前年度に必要となった携帯端末の配備等費用は、23年度には既に配備済みであり、新規に費用が発生することはないことから、23年度の営業原価の機械化関係経費は、前年度増加額51億円にほぼ相当する43億円が減少していた。

オ 子会社からの配当

 事業会社は、子会社である輸送会社から配当を受けていたが、輸送会社の配当性向は、22年度は、21年度の当期純利益の25%で、受取配当金は14億円であったが、23年度は、22年度の当期純利益の50%で34億円となっていた(表4 参照)。
 そして、事業会社は、輸送会社の23年度の配当性向が前年度よりも高くなっていたのは、22年度の輸送会社の当期純利益が事業会社からの受託収入の増加により68億円と前年度に比べて増益であったことによるとしていた。

(6) 平成24年度の収支見通し

 事業会社は、前記(5)の23年1月の郵便事業株式会社法に基づく総務大臣に対する報告において、24年度の事業会社全体の営業損益の黒字化、27年度の宅配便事業の営業損益の黒字化を目指すこととして、上記のとおり、様々な施策を実施していた。そして、24年度事業計画において、24年度の収支見通しを次のとおりとしていた。

ア 収益

 目的外業務である宅配荷物等の引受物数の増加による増収を100億円程度見込んでいるものの、目的内業務である郵便物数を全体で3.7%の減少と見込んでいた。特に最も収支に影響を与え、常時一定の通数の引受けが見込める第一種郵便物の引受物数が各企業の通信費削減対象となっているほか、より低額である第二種郵便物に移行することなどにより6.4%減少して500億円程度の減収を想定していたことから、前年度実績に比べて411億円の減少を見込んでいた。

イ 費用

 費用面についての見通しは、次のとおりとしていた。

(ア) 人件費

 前年度実績に対して433億円の節減を見込んでいたが、この内訳としては、主に次のとおりとしていた。

〔1〕 前年度末に、収支改善に係る施策の進捗状況が計画を上回ったことから、社員に支給した給与0.2か月分相当の特別報奨金80億円分を24年度は計画に織り込まなかった。

〔2〕 目的外業務のうち宅配荷物の翌日午前中配達区域を従前に戻し、郵便物の翌日午前中配達区域と一致させたことなどにより要員の適正配置を実施するほか、新規社員の採用を抑制したことなどにより300億円以上の節減を図るとしていた。

(イ) 集配運送委託費

 集配委託業務等に係る委託費については、前記のとおり、契約の見直しを進めることに加えて、社員自らが業務を行うことなどにより、30億円の節減を図るとしていた。
 また、運送委託業務については、郵便物と宅配荷物等を混載することで積載率を向上させるとともに、常時積載率を管理し、配達日数等に影響を与えない範囲で運送ダイヤの見直しを図って運送便数を減少させるとしたことなどにより、120億円の節減を図るとしていた。

(7) 局会社と事業会社の合併の影響

ア 合併後の経営形態について

 事業会社は、前記1(5) のとおり、24年10月1日に日本郵便に吸収合併されたが、事業会社及び局会社は、同月以降、民営分社化により低下した利便性の回復を行うとしていた。
 具体的には、一部の事業会社支店等が併設された郵便局(以下「併設郵便局」という。)において、顧客が保有しているゆうちょ銀行株式会社の銀行口座から現金引き出しの依頼を受けて当該顧客から貯金通帳を郵便配達を行う支店の社員が預かることができるようにして、当該貯金通帳をゆうちょ銀行株式会社又は局会社の渉外社員に引き渡し、当該渉外社員が依頼をした顧客に現金を届ける業務を改めて行えるようにするとしていた。
 また、事業会社及び局会社は、組織統合の準備のために帳票、行政手続、規程類の整備・対応を行うとともに、局会社が作成した日本郵便の事業計画について大臣認可を受けることとなっていた。
 そして、局会社は、合併後の収支を含めた事業計画を申請して大臣認可を受けたが、合併後のサービス改善の検討及び実施、本格的な組織の統合とそれによる収支改善策の実現については、合併後も引き続き検討及び実施を行うとしている。そのため、検討中の収支改善策による収益の向上、費用の節減効果については明確ではないが、将来的にはその成果が期待される。

イ 局会社の郵便局窓口の営業時間

 局会社が郵便局において実施している郵便窓口業務は、前記のとおり、事業会社の郵便事業、宅配便事業等の一部となっていて、事業会社は、表4 のとおり、毎年度1800億円以上の郵便局株式会社委託手数料を局会社に支払ってきた。そこで、局会社における郵便窓口業務の実施状況を確認したところ、次のようになっていた。
 すなわち、局会社は、事業会社との前記委託契約の締結に当たり、事業会社との協議の上で、事業会社及び局会社の収益の確保などのために、一部の郵便局で通常の郵便窓口業務の取扱時間(平日の9時から17時まで)を延長したり、土曜日又は休日においても郵便窓口業務を実施したりしていた。
 そして、ゆうゆう窓口が設置された併設郵便局で1時間当たりの平均来客数が10人未満であるなどの基準(以下「窓口時間短縮基準」という。)に該当する場合、局会社は、事業会社と調整の上、延長された郵便窓口営業時間や土曜日又は休日における郵便窓口営業時間を短縮することとして、その時間は事業会社が郵便窓口業務をゆうゆう窓口で行う取扱いとしていた。
 24年6月現在、併設郵便局における郵便窓口の営業時間は、表14 及び表15 のとおりとなっており、平日に時間延長を行っている併設郵便局が945局、土曜、休日に郵便窓口の営業を行っている併設郵便局がそれぞれ375局、113局となっていた。

表14 併設郵便局の窓口営業時間
区分 郵便局数(局)
変更なし 131
1時間延長 3
2時間延長 927
3時間延長 6
4時間延長 9
時間延長局計 945
1,076

表15 併設郵便局における土曜・休日の窓口営業時間
区分 郵便局数(局)
土曜日営業 6時間 255
7時間 1
8時間 109
9時間 1
10時間 7
12時間 2
小計 375
休日営業 3時間30分 94
6時間 1
8時間 12
10時間 4
12時間 2
小計 113

 これに対して、窓口時間短縮基準に該当するなどしていることから、24年度中に郵便窓口の営業時間を短縮するとしている併設郵便局数は49局で、当該併設郵便局における窓口時間短縮基準に該当する時間は1日当たり49時間、24年度分で年間1万2000時間であり、上記の取扱いが履行されれば相当程度の費用の節減が見込まれていた。
 また、同一の時間帯に郵便局の郵便窓口と事業会社のゆうゆう窓口が営業を行っていた時間は、上記1,076併設郵便局において年間326万時間となっていたが、局会社が事業会社を合併して設立された日本郵便の業務においては、これらの分担を整理して、同一時間帯に双方の窓口が営業を行っている時間を削減することで、郵便事業等の収支の改善に寄与することが可能になることが見込まれる。

ウ 郵便事業の今後の収支

(ア) 目的内業務の収益

 目的内業務である郵便物の引受物数をみると、表8 のとおり、20年度から23年度まで年平均3.4%減少しており、20年度から23年度までの対前年度増減率をみると、全種別とも減少傾向であった。これは、前記(4)イ(ア) のとおり、景気の悪化により、企業等の通信費や販売促進費の削減等の動きが続いていること、インターネットを活用した各種請求書等の閲覧等が普及しつつあることなどによると思料される。
 また、郵便物のうち、特に第一種郵便物の減少幅が年平均4.5%と大きいが、これは請求書やダイレクトメール等が第一種郵便物より低額である第二種郵便物に移行していることなどによると思料される。
 そのため、現時点において、目的内業務である郵便物の引受物数が下げ止まる傾向はまだ見込めない状況である。

(イ) 目的外業務の収益

 目的外業務である宅配荷物の引受物数は、22年度に前年度比47.3%、1億1030万個、23年度も11.4%、3927万個増加しているが、顧客ごとの差出条件や個数に応じて設定する個別相対運賃を適用した契約(以下「特約契約」という。)の契約件数は、23年度に前年度の契約件数を上回っており、順調に新規の顧客を獲得していた。
 また、「ゆうメール」についても伸長の鈍化は見られるものの、依然として、22年度に8094万通(前年度比3.1%)、23年度も2億5057万通(同9.5%)増加しているが、同様に、特約契約の件数が、23年度に前年度の契約件数を上回る状態となっており、宅配荷物同様、新規の顧客を獲得していた。
 宅配便市場は、現在、図4のとおり、他事業者2社による寡占状態となっているが、このような中で事業会社は、宅配便事業等を引き続き成長が見込める事業として、特約契約の締結のために、営業担当者を中心に外務社員による情報や局会社が顧客から同意を得た上で提供された情報を基に積極的な営業を展開していた。上記の特約契約による宅配荷物等の増加は、これらの取組などの成果と認められた。また、事業会社は、23年10月には宅配荷物の当日配達サービスを一部支店で開始し、その後、同サービスの実施支店を増やすなど、新たな商品開発も実施していた。

 上記のことから、25年度以降も、目的外業務に係る収益は増収であっても目的内業務に係る収益は減収が見込まれることから、事業会社は、顧客のニーズに対応した新規のサービスの開発による収益の増加に加えて、生産性の向上による更なる費用の節減を図る必要があるとしていた。そのため、事業会社は、生産性の向上に当たっては、25年以降に順次導入を予定している次世代のコンピュータシステムの活用や、郵便物、宅配荷物等の運送拠点の見直しなどによるネットワークの再編を検討するとしていた。

図4 宅配便引受物数市場占有率の推移

図4宅配便引受物数市場占有率の推移

 国土交通省調べ