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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
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  • 平成24年7月

地方債の元利償還金に係る普通交付税の算定に当たり、公的資金の補償金免除繰上償還実施後の実態を反映した利子支払額により公債費等の経費に係る財政需要の額を算定することにより基準財政需要額の合理的な算定を行うよう総務大臣に対して改善の処置を要求したもの


2 本院の検査結果

 (検査の観点及び着眼点)

 交付税は地方団体の財源の均衡化を図るなどの目的で交付されるものであるから、その算定には合理性、公平性が求められる。また、実額償還方式により財政需要の額に算入されている地方債の元利償還金は毎年度多額に上っており、補償金免除繰上償還の実施額も多額に上っている。
 そこで、本院は、効率性、有効性等の観点から、補償金免除繰上償還が実施された前後において利子支払額が変動することを踏まえて、地方団体の財政需要が合理的に算定されているかなどに着眼して検査した。

 (検査の対象及び方法)

 補償金免除繰上償還は、前記のとおり、19年3月の地方財政法の改正により、19年度から21年度までの間について実施されている。また、各年度の地方債の元利償還金は、その翌年度の財政需要の額の算定の基礎となる。そこで、本院は、20年度から22年度までの3年間に補償金免除繰上償還に係る地方債の元利償還金を基に実額償還方式により算入して各地方団体の公債費等の経費に係る財政需要として算定した額(以下、公債費等の経費に係る財政需要として算定した額を「公債費等に係る財政需要の額」という。)を対象として検査を実施することとし、貴省本省並びに10県(注3) 及び管内の131市町村において、普通交付税算出資料等の書類によるなどして、会計実地検査を行った。

 10県  富山、山梨、岐阜、静岡、愛知、三重、鳥取、香川、高知、大分各県

 (検査の結果)

 検査の対象とした上記の県及び管内市町村のうち、19年度から21年度までの間に10県及び123市町村で補償金免除繰上償還を総額5930億3428万余円実施していて、これらの県及び市町村において、20年度から22年度までの3年間に、補償金免除繰上償還に係る地方債の元利償還金を基に実額償還方式により算入した公債費等に係る財政需要の額は計1兆3389億2447万余円となっていた。
 そして、10県及び123市町村は、5%から8.5%までの金利で借り入れていた公的資金に係る地方債の補償金免除繰上償還を実施した後、当該償還額の大半について、新たに地方債を発行し、0.1%から2.45%までのより低い金利で市中金融機関等から借り換えており、借入れに係る金利が大幅に低くなっていて、全体として利子支払額は補償金免除繰上償還実施前と比較して低減していた。
 そこで、補償金免除繰上償還に係る地方債について、借換えなどが行われないものとして従前の金利により算定した元利償還金と、実際に支払われる元利償還金とをそれぞれ計算して比較すると、表1 のとおり、20年度から22年度までの合計額は1409億8711万余円と1221億1123万余円とになり、その差額は188億7588万余円となっていた。さらに、23年度以降で償還が終了するまでの期間についてみても、2489億9385万余円と1967億9503万余円とになり、その差額は521億9882万余円と多額に上る状況となっていた。

表1  借換えなどが行われないものとして従前の金利により算定した元利償還金、実際に支払われる元利償還金及びその差額
  (単位:千円)
年度
地方団体

平成20

21
22
20〜22合計
23以降
富山県及び管内
15市町村
2,978,347
5,106,302
6,404,591
14,489,241
40,879,435
2,608,121
4,358,463
5,413,541
12,380,126
32,103,205
370,226
747,838
991,049
2,109,115
8,776,229
山梨県及び管内
9市町
2,984,603
3,511,709
3,592,454

10,088,767

19,674,276

2,666,188
3,108,658
3,169,624
8,944,471
14,796,293
318,415
403,050
422,829
1,144,296
4,877,983
岐阜県及び管内
12市

2,762,764

3,510,263

3,977,921

10,250,950

21,675,454
2,282,487

3,109,990

3,600,900
8,993,377
16,610,162
480,277
400,273
377,021

1,257,572

5,065,291

静岡県及び管内
12市町
6,734,984
8,684,960
9,410,663
24,830,608
51,970,098
6,039,802
7,517,046
7,931,801
21,488,651
40,860,945
695,181
1,167,913
1,478,861
3,341,957
11,109,152
愛知県及び管内
9市町
12,149,273
11,218,459
9,497,850
32,865,582
26,560,888
9,990,272
10,225,214
8,154,263
28,369,749
21,835,462
2,159,001
993,244
1,343,587
4,495,833
4,725,425
三重県及び管内
14市町
4,094,617
5,319,151
6,529,418
15,943,187
37,721,716
3,844,447
4,712,935
5,416,663
13,974,046
29,564,469
250,170
606,216
1,112,754
1,969,141
8,157,246
鳥取県及び管内
11市町村
499,976
685,855
887,544
2,073,376
5,683,413
439,713
582,262
751,331
1,773,307
4,569,461
60,262
103,593
136,212
300,068
1,113,951
香川県及び管内
11市町
2,575,527
3,416,122
3,066,054
9,057,703
11,958,471
2,307,016
2,932,759
2,700,686
7,940,463
9,396,139
268,510
483,362
365,367
1,117,240
2,562,332
高知県及び管内
15市町村
3,407,725
5,007,241
5,205,650
13,620,618
17,206,855
3,132,836
3,966,846
4,574,915
11,674,5981
14,471,584
274,889
1,040,395
630,734
1,946,019
2,735,271
大分県及び管内
15市町
2,114,461
2,583,667
3,068,952
7,767,080
15,663,249
1,850,365
2,184,150
2,537,926
6,572,442
12,587,307
264,095
399,517
531,025
1,194,638
3,075,941
合計
10県及び123
市町村
40,302,282
49,043,734
51,641,101
140,987,118
248,993,859
35,161,251
42,698,328
44,251,655
122,111,235
196,795,033
5,141,030
6,345,405
7,389,446
18,875,882
52,198,825
注(1)  上段:借換えなどが行われないものとして従前の金利により算定した元利償還金(A)
 中段:実際に支払われる元利償還金(B)
 下段:元利償還金の差額(C)=(A)-(B)
注(2)
 償金免除繰上償還実施後の実際に支払われる元利償還金を計算するに当たっては、借り換えて償還している場合については、借換え後の元利償還金を基に計算している。また、自己資金により償還している場合については、補償金免除繰上償還実施前の元利償還金を基にして元金はそのままとし、利子支払額はゼロとして計算している。


 そのため、補償金免除繰上償還が行われないものとして算定した元利償還金に基づいた公債費等に係る財政需要の額を、補償金免除繰上償還実施後の実態を反映した利子支払額による元利償還金に基づいて計算した公債費等に係る財政需要の額の相当額と比較すると、20年度から22年度までのそれらの開差の合計額は、表2 のとおり、82億0868万余円となり、地方団体ごとの開差の状況を示すと表3 のとおりとなる。この開差は、普通交付税の交付額の算定の基礎となる公債費等に係る財政需要の額について、省令等に基づき算定した場合と、補償金免除繰上償還に伴う借換えなどにより利子支払額が低減された実態を反映して算定した場合との差額を示しており、23年度以降で償還が終了するまでの期間においてもこの開差は多額に上ると認められる。

表2
補償金免除繰上償還が行われないものとして算定した元利償還金に基づいた公債費等に係る財政需要の額、補償金免除繰上償還実施後の実態を反映した利子支払額による元利償還金に基づいて計算した公債費等に係る財政需要の額の相当額及びそれらの開差額

(単位:千円)
年度
平成20
21
22
合計
地方団体
富山県及び管内
15市町村

44,319,542

50,729,644
55,866,669
150,915,855
44,135,180
50,377,454
55,380,241
149,892,875
184,362
352,190
486,428
1,022,980

山梨県及び管内
9市町

26,023,579
25,091,229
29,860,082
80,974,890
25,935,090
24,997,423
29,779,317
80,711,830
88,489
93,806
80,765
263,060
岐阜県及び管内
12市
27,580,524
25,861,318
28,223,507
81,665,349
27,335,987
25,669,132
81,129,733
28,124,614
244,537
192,186
98,893
535,616
静岡県及び管内
12市町
80,377,875
81,167,835
97,303,221
258,848,931
80,109,109
80,606,788
96,658,827
257,374,724
268,766
561,047
644,394
1,474,207
愛知県及び管内
9市町
108,956,958
110,626,036
120,713,575
340,296,569
107,930,120
110,247,655
120,112,241
338,290,016
1,026,838
378,381
601,334
2,006,553
三重県及び管内
14市町
50,204,200
51,547,243
55,613,273
157,364,716
50,096,724
51,323,031
55,167,894
156,587,649
107,476
224,212
445,379
777,067
鳥取県及び管内
11市町村
15,981,067
15,253,910
19,345,270
50,580,247
15,951,023
15,202,028
19,277,615
50,430,666
30,044
51,882
67,655
149,581
香川県及び管内
11市町
31,557,083
33,132,940
38,257,184
102,947,207
31,439,995
32,910,761
38,099,661
102,450,417
117,088
222,179
157,523
496,790
高知県及び管内
15市町村
12,399,162
33,905,493
38,144,601
84,449,256
12,284,882
33,402,672
37,864,808
83,552,362
114,280
502,821
279,793
896,894
大分県及び管内
15市町
6,838,950
10,691,769
13,350,737
30,881,456
6,713,249
10,503,262
13,079,009
30,295,520
125,701
188,507
271,728
585,936
合計
10県及び
123市町村
404,238,940
438,007,417
496,678,119
1,338,924,476
401,931,359
435,240,206
493,544,227
1,330,715,792
2,307,581
2,767,211
3,133,892
8,208,684
注(1)  上段:補償金免除繰上償還が行われないものとして算定した元利償還金に基づいた公債費等に係る財政需要の額(A)
 中段:補償金免除繰上償還実施後の実態を反映した利子支払額による元利償還金に基づいて計算した公債費等に係る財政需要の額の相当額(B)
 下段:開差額(C)=(A)-(B)
注(2)
 補償金免除繰上償還実施後の公債費等に係る財政需要の額を計算するに当たっては、借り換えて償還している場合については、借換え後の元利償還金を基に計算している。また、自己資金により償還している場合については、補償金免除繰上償還実施前の元利償還金を基にして元金はそのままとし、利子支払額はゼロとして計算している。


表3 公債費等に係る財政需要の額の地方団体ごとの開差の状況(20年度〜22年度計)

(単位:地方団体)

開差
地方団体
1億円以上
1000万円以上
100万円以上
100万円未満
開差なし
富山県及び管内
15市町村
2
9
2
1
2
山梨県及び管内
9市町
0
8
1
1
0
岐阜県及び管内
12市
3
5
3
2
0
静岡県及び管内
12市町
3
7
2
1
0
愛知県及び管内
9市町
3
3
0
3
1
三重県及び管内
14市町
2
5
4
1
3
鳥取県及び管内
11市町村
0
4
5
1
2
香川県及び管内
11市町
1
5
2
3
1
高知県及び管内
15市町村
2
5
6
3
0
大分県及び管内
15市町
1
7
4
1
3
合計
10県及び123市町村
17
58
29
17
12
(注)
 岐阜県及び管内12市の100万円未満のうち1地方団体については、補償金免除繰上償還実施後の公債費等に係る財政需要の額が補償金免除繰上償還実施前の公債費等に係る財政需要の額を上回っている。

 そして、10県及び123市町村のうち、20年度から22年度までの間に財源不足額が発生せず普通交付税が交付されない年度があった地方団体が14あり、当該地方団体の普通交付税が交付されなかった年度に係る開差額は16億7717万余円となっている。
 したがって、この額を前記の82億0868万余円から控除した開差額は65億3150万余円となり、10県及び123市町村における普通交付税が交付されていた年度の公債費等に係る財政需要の額を改めて前記のように補償金免除繰上償還実施後の実態を反映した利子支払額による元利償還金に基づいて算定すると、65億3150万余円減少することになることから、実態を反映した合理的な算定を行って地方団体間の普通交付税の配分を適切に行う必要があると認められる。

 (改善を必要とする事態)

 前記のとおり、補償金免除繰上償還が行われないものとして算定した元利償還金に基づいた公債費等に係る財政需要の額を算定することは、実態として発生していない利子支払額に基づく元利償還金を基準財政需要額に算入していることになり、地方団体の財政需要を合理的に算定していないことから地方団体間の普通交付税の配分が適切ではなく、改善の要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴省において、補償金免除繰上償還実施後の実態を反映した利子支払額による元利償還金ではなく、補償金免除繰上償還実施前の利子支払額による元利償還金を基準財政需要額に算入するよう省令等で定めていることによると認められる。