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  • 平成24年10月

消費税の簡易課税制度について


3 検査の状況

(1) みなし仕入率と課税仕入率の状況

 簡易課税制度は、前記のとおり、課税期間の課税売上げに係る消費税額に事業区分に応じたみなし仕入率を乗じて計算した金額を課税仕入れに係る消費税額とみなして控除することができることとされている。
 そして、財務省は、みなし仕入率に関して、消費税の課税事業者における課税仕入率の実態を把握するための調査を実施し、「平成20年度分課税仕入率の実態調査について」として、政府税制調査会に提出している。調査対象者は簡易課税制度適用者330,067事業者(全国の税務署から抽出した4,969法人及び325,098個人事業者)及び本則課税適用者60万5千事業者(国税庁の課税事績による売上1000万円超から5000万円以下の28万2千法人及び32万2千個人事業者)、調査対象期間は法人が20年4月決算期から21年3月決算期まで、個人事業者が20年分である。
 現行のみなし仕入率について、財務省は、5年度分の本則課税適用者及び簡易課税制度適用者の双方を含むサンプル調査により把握した業種別の課税仕入率を基に設定したとしているが、財務省の20年度分の調査結果によれば、全ての業種において、本則課税適用者と簡易課税制度適用者を合わせた全体の課税仕入率より簡易課税制度適用者の課税仕入率が下回っているなどの状況となっていた(表4 参照)。

みなし仕入率及び課税仕入率(財務省調査)

業種(事業区分)
区分
卸売業 小売業 農林水産業 鉱業 建設業 製造業
(第1種事業) (第2種事業) (第3種事業)
みなし仕入率(%) 90 80 70
簡易課税制度適用者課税仕入率(%)
(調査対象者数)
82.9
(10,578)
77.4
(36,475)
64.3
(63,089)
60.9
(42)
59.9
(57,867)
58.8
(28,293)
本則課税適用者課税仕入率(%)
(調査対象者数)
93.7
(36,113)
85.1
(135,324)
87.2
(25,607)
97.8
(319)
71.9
(116,272)
71.8
(50,828)
本則課税適用者と簡易課税制度適用者を合わせた全体の課税仕入率(%) 87.9 81.4 69.2 77.1 65.0 62.9

業種(事業区分)
区分
料理飲食業 金融保険業 運輸・通信業 サービス業 不動産業
(第4種事業) (第5種事業)
みなし仕入率(%) 60 50
簡易課税制度適用者課税仕入率(%)
(調査対象者数)
60.0
(45,154)
33.8
(1,365)
44.1
(3,730)
38.9
(77,850)
32.0
(5,624)
本則課税適用者課税仕入率(%)
(調査対象者数)
70.0
(60,616)
90.1
(3,560)
78.4
(11,090)
67.6
(139,029)
76.1
(25,888)
本則課税適用者と簡易課税制度適用者を合わせた全体の課税仕入率(%) 64.2 47.8 59.5 49.3 42.5
注(1)  簡易課税制度適用者の課税仕入率の試算に当たっては、決算書等の売上原価、販売費及び一般管理費等の必要経費額から、課税仕入れに該当しない額を控除する方法で課税仕入額を把握し、課税仕入れ、非課税仕入れ及び不課税仕入れが混在する可能性のある費目については、一定の基準により案分して試算している。
注(2)  固定資産の取得費は課税仕入れに加算していないが、減価償却費を課税仕入れに加算している。
注(3)  本則課税適用者の課税仕入率は、国税庁の申告事績に基づくものである。

 会計検査院においては、検査の効率性を勘案して、直近の課税期間(法人については22年2月から23年1月までの間に終了する課税期間、個人事業者については22年分の課税期間。以下同じ。)を対象として、実際に簡易課税制度を適用している事業者ごとに、その課税仕入率の状況を検査した。そして、複数の事業を行っている事業者の兼業による影響を排除するために、全体の課税売上高のうち、一つの事業の課税売上高の割合が90%超となっている事業者を対象として、1,040法人、991個人事業者、計2,031事業者について、決算書等を基に課税仕入率の平均を試算したところ、事業区分ごとにみなし仕入率と課税仕入率の平均を比較すると、みなし仕入率が全ての事業区分において課税仕入率の平均を上回っていた。その中でも第5種事業(運輸・通信業、サービス業及び不動産業)の法人と個人事業者を合わせた課税仕入率の平均は32.4%となっていて、みなし仕入率50%との開差が顕著な状況となっていた(表5 参照)。

簡易課税制度適用者に係るみなし仕入率及び課税仕入率(会計検査院検査)

事業区分
区分
第1種事業 第2種事業 第3種事業 第4種事業 第5種事業
みなし仕入率(%) 90 80 70 60 50
法人
(1,040事業者)
課税仕入率(%)
(事業者数)
80.4
(141)
70.9
(133)
60.5
(141)
45.4
(137)
34.6
(488)
個人事業者
(991事業者)
課税仕入率(%)
(事業者数)
85.2
(129)
76.4
(131)
64.0
(129)
52.5
(140)
29.3
(462)

(2,031事業者)
課税仕入率(%)
(事業者数)
82.3
(270)
73.5
(264)
62.1
(270)
48.7
(277)
32.4
(950)
注(1)
 簡易課税制度適用者については、申告事績から課税仕入税額を把握することができないため、決算書等の売上原価、販売費及び一般管理費等の必要経費額から、課税仕入れに該当しない非課税仕入れ及び不課税仕入れの額を控除して課税仕入高を把握する方法等により、課税仕入率を試算した。

注(2)
 固定資産の取得費は課税仕入れに加算していないが、使用可能期間が1年未満のもの又は取得価額が10万円未満等の少額減価償却資産について、取得価額相当額が必要経費等として把握できる場合には、当該金額を課税仕入れに加算している。

 そして、事業者ごとの課税仕入率について、事業区分ごとにみなし仕入率との開差を分析したところ、同じみなし仕入率を適用している事業区分においても、課税仕入率がみなし仕入率を上回っている事業者もいるが、課税仕入率がみなし仕入率を下回っている事業者の方が67.0%から84.9%と多数となっており、第5種事業においては課税仕入率がみなし仕入率を20ポイント超下回っている事業者が全体の49.4%となっていた(表6 参照)。

課税仕入率の分布状況

事業区分
区分
第1種事業 第2種事業
みなし仕入率(%) 90 80
課税仕入率の範囲(%) 70未満 70以上80未満 80以上90未満 90以上 60未満 60以上70未満 70以上80未満 80以上
法人数 〔1〕 25 35 59 22 18 35 45 35
個人事業者数 〔2〕 8 24 57 40 8 22 49 52
計(〔1〕+〔2〕 ) 〔3〕 33 59 116 62 26 57 94 87
割合(%) (〔3〕/〔4〕 ) 12.2 21.8 42.9 22.9 9.8 21.5 35.6 32.9
みなし仕入率未満の事業者の割合(%) 77.0 67.0
事業区分ごとの事業者数 〔4〕 270 264

事業区分
区分
第3種事業 第4種事業 第5種事業
みなし仕入率(%) 70 60 50
課税仕入率の範囲(%) 50未満 50以上60未満 60以上70未満 70以上 40未満 40以上50未満 50以上60未満 60以上 30未満 30以上40未満 40以上50未満 50以上
法人数 〔1〕 37 43 28 33 50 29 36 22 211 112 76 89
個人事業者数 〔2〕 34 19 28 48 23 25 39 53 259 94 55 54
計(〔1〕+〔2〕 ) 〔3〕 71 62 56 81 73 54 75 75 470 206 131 143
割合(%) (〔3〕/〔4〕 ) 26.2 22.9 20.7 30.0 26.3 19.4 27.0 27.0 49.4 21.6 13.7 15.0
みなし仕入率未満の事業者の割合(%) 70.0 72.9 84.9
事業区分ごとの事業者数 〔4〕 270 277 950
注(1)
 割合は、少数点第2位以下を切り捨てているため、各項目を合計しても100にならない場合がある。

注(2)
 検査の過程で第5種事業の課税仕入率の平均とみなし仕入率との開差が顕著であることが判明したことから、その傾向をより的確に把握するため第5種事業の事業者を重点的に検査した。

 これらの1,040法人、991個人事業者、計2,031事業者について、簡易課税制度を適用して計算した納付消費税額が、本則課税を適用したとして試算した推計納付消費税額(注6) に対して、低額となっている事業者数及び金額は1,583事業者で5億0352万余円、高額となっている事業者数及び金額は448事業者で6753万余円となっていた(表7 参照)。

 1,040法人、991個人事業者、計2,031事業者について、簡易課税制度を適用した課税期間において本則課税を適用したとして納付消費税額を推計する方法は、次のとおりとした。
〔1〕 税抜経理方式を採っていて消費税等差額を計上している事業者は、消費税差額と簡易課税制度を適用して計算した納付消費税額の合計額
〔2〕 税抜経理方式を採っているが消費税等差額を計上しているかどうか明確ではない事業者及び税込経理方式を採っている事業者は、損益計算書等の売上原価、販売費、一般管理費等の必要経費額から、課税仕入れに該当しない非課税仕入れ及び不課税仕入れの額を控除して課税仕入高を把握するなどして試算


表7  簡易課税制度を適用して計算した納付消費税額と推計納付消費税額の比較
区分 法人 個人事業者
事業者数 金額(千円) 事業者数 金額(千円) 事業者数 金額(千円)
簡易課税制度を適用して計算した納付消費税額の方が推計納付消費税額より低額となっている事業者数及び金額 推計納付消費税額 〔1〕 840 841,203 743 631,952 1,583 1,473,155
納付消費税額 〔2〕 549,312 420,317 969,629
差引(〔1〕 -〔2〕 ) 〔3〕 291,891 211,634 503,526
簡易課税制度を適用して計算した納付消費税額の方が推計納付消費税額より高額となっている事業者数及び金額 推計納付消費税額 〔4〕 200 99,855 248 84,115 448 183,970
納付消費税額 〔5〕 138,859 112,647 251,507
差引(〔4〕-〔5〕 ) 〔6〕 △39,004 △28,532 △67,537
計(〔3〕+〔6〕 ) 1,040 252,886 991 183,102 2,031 435,989
(注)
 簡易課税制度を適用して計算した納付消費税額の方が高額となっているものについては、金額をマイナスとしている。

 このように、多くの簡易課税制度適用者において、みなし仕入率が課税仕入率を上回っており、簡易課税制度の適用により事務負担に配慮され事務の簡素化が図られた上に、簡易課税制度を適用して計算した納付消費税額が本則課税を適用したとして試算した推計納付消費税額に対して低額となっていて、いわゆる益税が生じている状況となっていた。
 なお、財務省は、消費税法改正法に定められたみなし仕入率の水準についての必要な見直しの検討のために、みなし仕入率に関して、消費税の課税事業者における課税仕入率の更なる実態調査を行っている。

(2) 過去に本則課税を適用してその後簡易課税制度を適用している事業者の状況

 (1)のとおり、多くの簡易課税制度適用者において、みなし仕入率が課税仕入率を上回っている状況となっていた。そこで、同一の事業者について、簡易課税制度を適用した課税期間の納付消費税額の課税標準額(注7) に対する割合(以下「消費税納付率」という。)と本則課税を適用した課税期間の消費税納付率とを比較するために、直近の課税期間において簡易課税制度を適用していて、法人の場合は過去4年以内に、個人事業者の場合は過去2年以内にそれぞれ本則課税を適用したことがある2,023法人、633個人事業者、計2,656事業者の各課税期間における消費税納付率を分析したところ、法人及び個人事業者とも簡易課税制度を適用した課税期間の消費税納付率の方が、本則課税を適用した課税期間の消費税納付率より低くなっていた(表8 及び表9 参照)。

 課税標準額  税額計算の基礎となるべき金額で、これに税率を乗じて課税売上げに係る消費税額を算出する。


表8  2,023法人の申告状況
(単位:千円)

課税期間 直近-4の課税期間
直近-3の課税期間
直近-2の課税期間
直近-1の課税期間
直近の課税期間
法人数
区分
計算方法
課税標準額の平均〔1〕
納付消費税額の平均〔2〕
本則
40,523
868
簡易
40,876
618
簡易
41,489
632
簡易
42,716
654
簡易
43,749
673
266
消費税納付率
(〔2〕 /〔1〕 )
2.14% 1.51%
1.52%
1.53%
1.53%
計算方法
課税標準額の平均〔1〕
納付消費税額の平均〔2〕
 
本則
40,661
811
簡易
41,157
594
簡易
42,169
603
簡易
43,575
630
389
消費税納付率
(〔2〕 /〔1〕 )
  1.99%
1.44%
1.43%
1.44%
計算方法
課税標準額の平均〔1〕
納付消費税額の平均〔2〕
   
本則
42,291
826
簡易
43,591
623
簡易
44,840
634
529
消費税納付率
(〔2〕 /〔1〕 )
    1.95%
1.43%
1.41%
計算方法
課税標準額の平均〔1〕
納付消費税額の平均〔2〕
     
本則
46,027
882
簡易
46,694
685
839
消費税納付率
(〔2〕 /〔1〕 )
      1.91%
1.46%
(注)
 直近の課税期間において簡易課税制度を適用した事業者について、本則課税を適用した課税期間と比較するために、過去に遡り直近に本則課税を適用した課税期間以降の申告状況を示している(表9についても同じ。)。


表9  633個人事業者の申告状況
(単位:千円)

課税期間 直近-2の課税期間
直近-1の課税期間
直近の課税期間
個人事業者数
区分
計算方法
課税標準額の平均〔1〕
納付消費税額の平均〔2〕
本則
38,496
756
簡易
36,237
548
簡易
39,807
599
260
消費税納付率
(〔2〕 /〔1〕 )
1.96%
1.51%
1.50%
計算方法
課税標準額の平均〔1〕
納付消費税額の平均〔2〕
 
本則
41,466
847
簡易
42,855
662
373
消費税納付率
(〔2〕 /〔1〕 )
  2.04%
1.54%
(注)
 個人事業者については、税務署内に保管されている3年分の課税書類により分析した。

 また、前記の2,023法人及び633個人事業者について簡易課税制度を適用した各課税期間と本則課税を適用した課税期間の消費税納付率を事業者ごとに比較すると、簡易課税制度を適用した課税期間の消費税納付率の方が低くなっているのは1,669法人及び475個人事業者であり、高くなっているのは368法人及び161個人事業者(注8) であった。
 これらの2,023法人、633個人事業者、計2,656事業者について、簡易課税制度を適用して計算した納付消費税額が、本則課税を適用したとして試算した推計納付消費税額(注9) に対して、低額となっている事業者数及び金額は2,148事業者で13億1798万余円、高額となっている事業者数及び金額は508事業者で1億5005万余円となっていた(表10 参照)。

  課税期間により簡易課税制度を適用して計算した消費税納付率が、本則課税を適用して計算した消費税納付率より低くなっていたり、高くなっていたりしている事業者が14法人及び3個人事業者ある。

  2,023法人、633個人事業者、計2,656事業者について、簡易課税制度を適用した課税期間において本則課税を適用したとして納付消費税額を推計する方法は、次のとおりとした。
〔1〕 税抜経理方式を採っていて消費税等差額を計上している事業者は、消費税差額と簡易課税制度を適用して計算した納付消費税額の合計額
〔2〕 税抜経理方式を採っているが消費税等差額を計上しているかどうか明確ではない事業者及び税込経理方式を採っている事業者は、簡易課税制度適用時の課税標準額に、本則課税適用時の消費税納付率を乗ずるなどして試算

表10  簡易課税制度を適用して計算した納付消費税額と推計納付消費税額の比較
区分 法人 個人事業者
事業者数 金額(千円) 事業者数 金額(千円) 事業者数 金額(千円)
簡易課税制度を適用して計算した納付消費税額の方が推計納付消費税額より低額となっている事業者数及び金額
推計納付消費税額
〔1〕

1,675 3,310,178 473 634,705 2,148 3,944,883
納付消費税額
〔2〕

2,199,163 427,731 2,626,894
差引(〔1〕-〔2〕)
〔3〕

1,111,014 206,974 1,317,988
簡易課税制度を適用して計算した納付消費税額の方が推計納付消費税額より高額となっている事業者数及び金額
推計納付消費税額
〔4〕

348 320,953 160 85,823 508 406,776
納付消費税額
〔5〕

439,007 117,828 556,835
差引(〔4〕-〔5〕)
〔6〕

△118,054 △32,004 △150,058
計(〔3〕+〔6〕 ) 2,023 992,960 633 174,969 2,656 1,167,930
注(1)
 簡易課税制度を適用して計算した納付消費税額の方が高額となっているものについては、金額をマイナスとしている。

注(2)
 直近の課税期間において簡易課税制度を適用した事業者ごとに、本則課税を適用した課税期間まで過去に遡り、その間の各課税期間について、推計納付消費税額と簡易課税制度を適用して計算した納付消費税額の差額を通算した金額で示している。

 このように、同一の事業者について比較しても、多くの簡易課税制度適用者において、消費税納付率が本則課税を適用した課税期間より低くなっており、簡易課税制度の適用により事務負担に配慮され事務の簡素化が図られた上に、簡易課税制度を適用して計算した納付消費税額が本則課税を適用したとして試算した推計納付消費税額に対して低額となっていて、いわゆる益税が生じている状況となっていた。

(3) 多額の課税売上高を有する法人の簡易課税制度適用状況

 第1期課税期間又は第2期課税期間(注10) において多額の課税売上高(5億円超)を有し、簡易課税制度を適用して申告している法人で、消費税等差額を計上している11法人、消費税等差額の推計が可能な1法人、計12法人について、両課税期間の課税売上高の状況をみたところ、表11 のとおりとなっており、これらの12法人では、後述のとおりいわゆる益税が生じている状況となっていた。

 課税期間  吸収合併に係る合併法人については、合併後最初の課税期間を第1期課税期間、その後の課税期間を第2期課税期間としている。


表11  課税売上高別法人数
課税売上高 5億円超10億円以下 10億円超20億円以下 20億円超30億円以下 30億円超40億円以下 40億円超50億円以下 50億円超60億円以下
法人数 6 1 3 0 1 1 12
(注)
 両課税期間で簡易課税制度を適用した11法人については、大きい方の課税売上高で記載している。

 このように各法人の課税売上高が多額であるのに、簡易課税制度を適用していることから、法人の設立の経緯等について検査したところ、次のとおりとなっていた。

ア 吸収合併又は吸収分割により事業を承継した法人
7法人 

 前記のとおり、吸収合併又は吸収分割があった場合の事業者免税点制度の適用に当たり、当該吸収合併に係る合併法人又は当該吸収分割に係る分割承継法人の基準期間における課税売上高が1000万円を超えるかどうかについては、当該合併法人又は当該分割承継法人の基準期間における課税売上高のみならず、当該吸収合併に係る被合併法人又は当該吸収分割に係る分割法人の課税売上高も考慮して判定することとされている。一方、簡易課税制度の適用に当たり、当該吸収合併に係る合併法人又は当該吸収分割に係る分割承継法人の基準期間における課税売上高が5000万円を超えるかどうかについては、当該合併法人又は当該分割承継法人の基準期間における課税売上高のみによって判定することとされている。
 吸収合併又は吸収分割により事業を承継し、多額の課税売上高を有する課税期間において簡易課税制度を適用して申告している合併法人及び分割承継法人が計7法人あった。これらの吸収合併に係る合併法人と被合併法人及び吸収分割に係る分割承継法人と分割法人は親子会社関係等の密接な関係にあり、簡易課税制度を適用できる規模の小さな合併法人又は分割承継法人が、簡易課税制度を適用できない規模の大きな被合併法人又は分割法人から多額の売上げを有する事業を承継して簡易課税制度を適用していた。

イ 上場企業である法人等が設立した新設法人(アに該当するものを除く。)
5法人

 上場企業である法人等が設立した法人で簡易課税制度を適用して申告している法人が5法人あった。これらの5法人は、新設法人であり、設立当初の両課税期間は基準期間がないことから、簡易課税制度を適用することが可能となったものである。

 これらの12法人が、簡易課税制度を適用して申告している各課税期間の課税標準額、納付消費税額及び消費税差額の状況についてみると、簡易課税制度を適用して申告している上記12法人の課税期間の課税標準額は計342億7698万余円、消費税差額は計3億4542万余円となっていて、特に、吸収分割に係る分割承継法人の場合が多額となっていた(表12 参照)。
 そして、これらのうち11法人は、簡易課税制度の適用により事務負担に配慮され事務の簡素化が図られている上に、消費税差額3億5495万余円を法人税の申告において益金に算入し納付消費税額が本則課税を適用した場合と比較して低額となっていて、いわゆる益税が生じている状況となっていた。また、1法人は、消費税差額として第1期課税期間は830万余円を益金に、第2期課税期間は1783万余円を損金に算入していて、両課税期間でみると納付消費税額952万余円が本則課税を適用した場合と比較して高額となっていた。

表12  多額の課税売上高を有する法人の消費税の状況
(単位:千円)

区分 法人数   第1期課税期間 第2期課税期間
吸収分割に係る分割承継法人 5
注(1)
課税標準額
9,125,143 15,743,968 24,869,111
(同平均)
1,825,028 3,148,793 4,973,822
納付消費税額
159,085 272,268 431,354
(同平均)
31,817 54,453 86,270
消費税差額
104,887 171,727 注(3)  276,615
(同平均)
20,977 34,345 55,323
吸収合併に係る合併法人 2
注(2)
課税標準額
2,623,847 886,139 3,509,986
(同平均)
1,311,923 886,139 1,754,993
納付消費税額
42,645 3,076 45,722
(同平均)
21,322 3,076 22,861
消費税差額
7,898 0 7,898
(同平均)
3,949 0 3,949
上場企業等が設立した新設法人 5
課税標準額
2,440,339 3,457,548 5,897,887
(同平均)
488,067 691,509 1,179,577
納付消費税額
32,848 49,981 82,830
(同平均)
6,569 9,996 16,566
消費税差額
21,860 39,055 60,916
(同平均)
4,372 7,811 12,183
12
課税標準額
14,189,329 20,087,655 34,276,984
(同平均)
1,182,444 1,826,150 2,856,415
納付消費税額
234,579 325,327 559,906
(同平均)
19,548 29,575 46,658
消費税差額
134,645 210,783 345,429
(同平均)
11,220 19,162 28,785
注(1)  消費税等差額の計上金額が不明な1法人については、損益計算書等の必要経費額から推計している。
注(2)  第2期課税期間については、1法人である。
注(3)  1法人は、第1期課税期間は益金に、第2期課税期間は損金に算入していて、合計するとマイナスとなり、他の法人の消費税差額と通算している。

 吸収分割に係る分割承継法人について、事例を示すと次のとおりである。

 <事例>

 A法人は、平成22年3月に、B法人の100%子会社として設立され、同年7月にB法人の事業の一部を吸収分割により承継した分割承継法人である。
 A法人の第1期課税期間(22年3月から22年12月まで)及び第2期課税期間(23年1月から23年12月まで)の両課税期間の課税標準額は、それぞれ10億余円、24億余円となっている。そして、A法人の第1期課税期間及び第2期課税期間の基準期間に対応するB法人の20年1月から20年12月までの課税期間及び21年1月から21年12月までの課税期間の課税売上高はそれぞれ242億余円、312億余円となっていて、消費税の納税義務は吸収分割に係る分割法人であるB法人の課税売上高も考慮して判定するので課税事業者となる。これに対して、簡易課税制度において、A法人の基準期間における課税売上高が5000万円を超えるかどうかについては、分割承継法人であるA法人の基準期間における課税売上高のみによって判定することとなっており、A法人の第1期課税期間及び第2期課税期間に基準期間がないことから簡易課税制度の適用が可能となる。このことから、A法人は、簡易課税制度による申告を行い、消費税差額として第1期課税期間1392万余円、第2期課税期間3053万余円、計4446万余円を益金に算入していた。

 そして、(1)から(3)までの検査の対象とした3,075法人、1,624個人事業者、計4,699事業者の簡易課税制度を適用したことにより納付消費税額が低額となっている事業者数及び納付消費税額の推計額は3,742事業者で21億7647万余円、高額となっている事業者数及び納付消費税額の推計額は957事業者で2億2712万余円となる。