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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成24年10月

消費税の簡易課税制度について


4 所見

 簡易課税制度は、中小事業者の事務負担に配慮して、事務の簡素化を図るために設けられたものである。そして、消費税に対する国民の信頼性等を向上させるために、これまでも簡易課税制度の適用対象となる基準期間における課税売上高の上限額の引下げによる適用範囲の見直しやみなし仕入率の事業区分の細分化によるみなし仕入率の水準の見直しが行われてきたところである。しかし、みなし仕入率が課税仕入率を上回ってかい離している場合には、価格を通じて消費者が負担している消費税相当額のうち国庫に納付されない部分が事業者に残ることとなり、いわゆる益税が発生すると言われている。そして、このような益税の発生は、消費税に対する国民の信頼性を損ねることとなる。
 消費税に関する国民の関心が高い中で、会計検査院は、簡易課税制度が有効かつ公平に機能しているかなどに着眼して検査したところ、次のような状況となっていた。

ア 簡易課税制度適用者について事業区分ごとにみなし仕入率と課税仕入率の平均を比較すると、みなし仕入率が全ての事業区分において課税仕入率の平均を上回っていた。その中でも第5種事業の課税仕入率の平均は、みなし仕入率との開差が顕著な状況となっていた。また、同じみなし仕入率を適用している事業区分においても、課税仕入率がみなし仕入率を上回っている事業者もいるが、課税仕入率がみなし仕入率を下回っている事業者の方が多数となっていた。

イ 同一の事業者について比較しても、多くの簡易課税制度適用者において、簡易課税制度を適用した課税期間の消費税納付率の方が、本則課税を適用した課税期間の消費税納付率より低くなっていた。

ウ 納付消費税額が低額となっている簡易課税制度適用者の中には、多額の課税売上高を有するような規模の大きな事業者も含まれていた。

 アからウまでの分析により、多くの簡易課税制度適用者において、簡易課税制度の適用により事務負担に配慮され事務の簡素化が図られた上に、納付消費税額が低額となっていて、いわゆる益税が生じている状況となっていた。そして、消費税率の引上げが行われれば、いわゆる益税は増大していくことが懸念されるところである。
 財務省は、前記のとおり、みなし仕入率に関して、消費税の課税事業者における課税仕入率の更なる実態調査を行っているとしており、その調査結果を踏まえて、みなし仕入率の水準について、必要な措置を講ずる改正が行われれば、いわゆる益税の問題は一定の改善が図られることとなるが、会計検査院の検査によって明らかになった状況を踏まえて、今後、財務省において、簡易課税制度の在り方について、引き続き、様々な視点から有効性及び公平性を高めるよう不断の検討を行っていくことが肝要である。
 会計検査院としては、今後とも簡易課税制度を含む消費税全般について、引き続き注視していくこととする。