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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
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  • 平成24年10月

東日本大震災等の被災者を救助するために設置するなどした応急仮設住宅の供与等の状況について


東日本大震災等の被災者を救助するために設置するなどした応急仮設住宅の供与等の状況について

検査対象 厚生労働省、7県
事業の根拠 災害救助法(昭和22年法律第118号)
検査の対象とした事業 東日本大震災等の被災者を救助するために平成22、23両年度に供与された応急仮設住宅に係る設置事業等
災害救助に係る国庫負担の概要 災害に際して都道府県が応急的に設置するなどした応急仮設住宅の供与や食品の給与等の災害救助法による救助に要した費用の一定額を国が負担するもの
応急仮設住宅の供与等の災害救助法による救助に要した費用に係る国庫負担金交付額
20億5090万円
(平成22年度)

4262億0130万円
(平成23年度)

1 検査の背景

(1) 応急仮設住宅の供与の経緯

 平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による災害及びこれに伴う原子力発電所事故による災害並びに同月12日に長野県北部で発生した地震による災害(以下、これらを合わせて「東日本大震災等」という。)により、多くの被災者が住居を失うなどして、避難所等での避難生活を余儀なくされることになった。このため、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、千葉及び長野の7県(以下「被災7県」という。)は、住居を失うなどした被災者が自ら住居を手当するなどするまでの当面の仮の住居として、災害救助法(昭和22年法律第118号)に基づく応急仮設住宅を供与することとした。
 同法による救助は、都道府県知事が行うこととされており、救助を迅速に行う必要があると認めたときは、事務の一部を市町村長が行うことができることとされている。そして、同法による救助の種類は、避難所及び応急仮設住宅の供与、食品の給与、飲料水の供給等とされており、国は、被災都道府県が救助に要した費用に対して、当該費用が当該都道府県の普通税に係る収入の見込額の一定割合額を超える程度等に応じて、100分の50から100分の90までの負担率により災害救助費等負担金を交付することとされている。
 そして、厚生労働省は、被災7県が応急仮設住宅の設置等に要した費用について、災害救助費等負担金を、22年度の事業に対して20億5090万余円、23年度の事業に対して4262億0130万余円(概算交付額)それぞれ交付している。

(2) 応急仮設住宅の供与の概要

 「災害救助法による救助の程度、方法及び期間並びに実費弁償の基準」(平成12年厚生省告示第144号)等によると、応急仮設住宅は、住家が全壊、全焼又は流失し、居住する住家がない者であって、自らの資力では住家を得ることができない者等を収容するものとされている。そして、災害発生の日から20日以内に着工し、速やかに設置しなければならず、1戸当たりの規模は29.7m を標準とし、その設置のために支出できる費用の上限(以下「基準額」という。)は1戸当たり2,387,000円、供与できる期間は原則として2年以内(東日本大震災等における応急仮設住宅については、恒久住宅の整備に時間を要することを理由として1年間延長されている。)とされている。また、応急仮設住宅の設置に代えて、民間賃貸住宅等の居室の借上げを実施し、これらに被災者を収容することができることとされている(以下、応急仮設住宅のうち、設置によるものを「建設仮設住宅」、民間賃貸住宅の借上げによるものを「民間賃貸仮設住宅」という。)。
 ただし、上記の基準等によっては救助の適切な実施が困難な場合には、都道府県知事は、厚生労働大臣に協議し、その同意を得た上で、救助の程度、方法及び期間を定めることができるとされている。そして、これにより被災都道府県が基準額を超える費用を建設仮設住宅の設置のために支出した場合には、その全額が災害救助費等負担金の対象になるとされている。
 また、同法によると、都道府県知事が必要と認めた場合は、救助を要する者に対し、金銭を支給して救助を行うことができることとされている。しかし、この運用については、「災害救助法の運用に関する件」(昭和22年厚生省発社第135号内閣官房長官、厚生事務次官連名依命通知。以下「運用通知」という。)により、救助は現品によって行うことを原則とし、金銭の支給は真にやむを得ない場合において、しかも金銭の支給によって救助の実効を期し得る場合に限るべきであるとされている。