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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第10 厚生労働省 |
  • 不当事項 |
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介護給付費に係る国の負担が不当と認められるもの[17都府県、2市](314)


会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)介護保険制度運営推進費  (項)介護納付金年金特別会計へ繰入  (平成19年度以前は、 (項)老人医療・介護保険給付諸費  (項)国民健康保険助成費  (項)社会保険国庫負担金  (項)生活保護費)
部局等
17都府県、2市
国の負担の根拠
介護保険法(平成9年法律第123号)、健康保険法(大正11年法律第70号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)
実施主体
市201、区22、町62、村9、一部事務組合4、広域連合6、計304実施主体
事業者
指定居宅介護支援事業者26、指定通所介護事業者27、指定介護療養型医療施設等32、計85事業者
過大に支払われた介護給付費に係る介護サービス等の種類
居宅介護支援、通所介護サービス、介護療養施設サービス等
過大に支払われた介護給付費の件
70,554件(平成17年度〜24年度)
過大に支払われた介護給付費の額
365,296,700円(平成17年度〜24年度)
不当と認める国の負担額
109,574,592円(平成17年度〜24年度)

1 介護給付の概要

(1) 介護保険

介護保険は、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)が保険者となって、市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者及び40歳以上65歳未満の医療保険加入者を被保険者として、被保険者の要介護状態等に関して、必要な保険給付を行う保険である。

(2) 介護サービス及び居宅介護支援

被保険者が、介護保険法(平成9年法律第123号)に基づき受けるサービスには居宅サービス、施設サービス及び地域密着型サービス(以下、これらを「介護サービス」という。)がある。介護サービスのうち、居宅サービスには、通所介護サービス(注1)等が、施設サービスには、介護療養施設サービス(注2)等がある。

また、これらの居宅サービス又は地域密着型サービスの適切な利用等をすることができるよう、利用する居宅サービス等の種類等を定めた計画(以下「居宅サービス計画」という。)を作成等するための居宅介護支援(注3)がある。

そして、被保険者が介護サービスを受けようとする場合の手続は、次のとおりとなっている。

  • ア 要介護者又は要支援者(以下「要介護者等」という。)に該当すること及びその該当する要介護状態区分等について、市町村の認定を受ける。
  • イ 都道府県知事等の指定を受けた居宅介護支援事業者に依頼するなどして、介護サービス計画を作成する。
  • ウ 介護サービス計画に基づいて、都道府県知事等の指定等を受けた居宅サービス事業者、地域密着型サービス事業者又は介護保険施設(以下、これらと居宅介護支援事業者を合わせて「事業者」という。)において介護サービスを受ける。
(注1)
 通所介護サービス  指定通所介護事業所において、在宅の要介護者等に通ってきてもらい行う、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活を送る上で必要となるサービス及び機能訓練
(注2)
 介護療養施設サービス  指定介護療養型医療施設の療養病床等に入院する要介護者等に対する療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護その他の世話及び機能訓練その他必要な医療
(注3)
 居宅介護支援  指定居宅介護支援事業所において、在宅の要介護者が居宅サービス等の適切な利用等をすることができるよう、当該要介護者の依頼を受けてその心身の状況等を勘案し、利用する居宅サービス等の種類等を定めた計画を作成等するもの

(3) 介護報酬の算定

事業者が介護サービス又は居宅介護支援を提供して請求することができる報酬の額(以下「介護報酬」という。)は、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第19号)、「指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第20号)、「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第21号)(以下、これらを「算定基準」という。)等に基づき、介護サービスの種類又は居宅介護支援の別に定められた単位数に単価(10円から11.26円)を乗ずるなどして算定することとなっている。

(4) 介護給付費

市町村は、要介護者等が事業者から介護サービスの提供を受けたときは、当該事業者に対して介護報酬の100分の90に相当する額を、また、居宅介護支援の提供を受けたときは、介護報酬の全額(以下、これらを「介護給付費」という。)をそれぞれ支払うこととなっている

介護給付費の支払手続は、次のとおりとなっている(参考図参照)。

  • ア 介護サービス又は居宅介護支援の提供を行った事業者は、介護給付費を記載した介護給付費請求書等(以下「請求書等」という。)を、市町村から介護給付費に係る審査及び支払に関する事務の委託を受けた国民健康保険団体連合会(以下「国保連合会」という。)に送付する。
  • イ 国保連合会は、事業者から送付された請求書等の審査点検を行い、介護給付費を市町村に請求する。
  • ウ 請求を受けた市町村は、金額等を確認した上で、国保連合会を通じて事業者に介護給付費を支払う。

(参考図)

介護給付費の支払の手続

支払の手続

(注)
利用者は、介護サービスの提供を受けたときは、介護報酬の100分の10に相当する額を負担する。

(5) 国の負担

介護給付費は、100分の50を公費で、100分の50を被保険者の保険料でそれぞれ負担することとなっている。

そして、公費負担については、介護保険法に基づき、介護給付費のうち、施設等分(注4)については国が100分の20、都道府県が100分の17.5及び市町村が100分の12.5(平成17年度以前は国が100分の25、都道府県及び市町村がそれぞれ100分の12.5)を負担し、施設等以外の分については、国が100分の25、都道府県及び市町村がそれぞれ100分の12.5を負担している。

また、国は、健康保険法(大正11年法律第70号)及び国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づき、社会保険診療報酬支払基金が介護保険の保険者に交付する介護給付費交付金等の財源として医療保険者(注5)が同基金に納付する介護給付費納付金に要する費用の額の一部を負担している。

(注4)
 施設等分  施設介護サービス費、指定施設サービス等に係る特定入所者介護サービス費、特定施設入居者生活介護費、介護予防特定施設入居者生活介護費等
(注5)
 医療保険者  医療保険各法の規定により医療に関する給付を行う市町村、全国健康保険協会、国民健康保険組合等

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、介護報酬の算定が適正に行われているかに着眼して、21都府県において、116事業者に対する介護給付費の支払について、介護給付費の請求に係る関係書類等により会計実地検査を行った。そして、介護給付費の支払について疑義のある事態が見受けられた場合には、更に都府県等に事態の詳細な報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 検査の結果

17都府県及び2市に所在する85事業者に対して40都道府県の304市区町村等の実施主体が行った17年度から24年度までの間における介護給付費の支払について、70,554件、365,296,700円が過大となっていて、これに対する国の負担額109,574,592円は負担の必要がなかったものであり、不当と認められる。

これらの事態について、居宅介護支援又は介護サービスの種類の別に示すと次のとおりである。

ア 居宅介護支援

指定居宅介護支援事業所において居宅サービス計画を作成等する居宅介護支援については、算定基準等によると、作成した居宅サービス計画に位置付けられた指定訪問介護、指定通所介護又は福祉用具貸与(以下「訪問介護サービス等」という。)の提供総数のうち、同一の事業者によって提供された訪問介護サービス等の占める割合が100分の90を超える場合(小規模な指定居宅介護支援事業所であるため作成した居宅サービス計画数が少ないなどの正当な理由がある場合を除く。)には、特定事業所集中減算として、所定の1月当たりの単位数から200単位を減算することとなっている。そして、指定居宅介護支援事業所が、専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の主任介護支援専門員等を配置するなどした場合には、1月につき300単位を加算することとなっている。なお、上記減算の適用を受けている場合には、加算は算定できないこととなっている。

また、居宅介護支援の介護報酬については、算定基準等により、当該事業所の介護支援専門員が利用者の居宅を訪問していないなどの場合には、当該居宅サービス計画に係る月から当該状態が解消されるに至った月の前月まで、運営基準減算として、減算開始月については所定単位数の100分の70に相当する単位数を算定し、また、2月目以降については所定単位数の100分の50に相当する単位数を算定することとなっている。

しかし、25指定居宅介護支援事業者は、正当な理由がないのに特定事業所集中減算を行っておらず、さらに、このうち3指定居宅介護支援事業者は、減算となる期間に300単位を加算していた。また、1指定居宅介護支援事業者は、利用者の居宅を訪問していないにもかかわらず、運営基準減算として所定単位数の100分の70又は100分の50に相当する単位数を算定していなかった。

このため、32,577件の請求に対して181市区町村等が支払った介護給付費が105,050,610円過大となっていて、これに対する国の負担額32,797,675円は負担の必要がなかった。

イ 通所介護サービス

指定通所介護事業所において要介護者等に提供する通所介護サービスについては、算定基準等によると、前年度の1月当たりの平均利用延べ人員数による事業所規模が、300人以内の場合は小規模型通所介護費、300人超750人以内(20年度までは300人超900人以内)の場合は通常規模型通所介護費、750人超900人以内の場合は大規模型通所介護費(Ⅰ)及び900人超の場合は大規模型通所介護費(Ⅱ)とし、それぞれの事業所規模ごとに1日のサービスの所要時間の区分に応じて定められた単位数等により介護報酬を算定することとなっている。

しかし、20指定通所介護事業者は、前年度の1月当たりの平均利用延べ人員数が300人を超えていたのに、通常規模型通所介護費の区分によらず小規模型通所介護費の区分により単位数を算定していたり、4指定通所介護事業者は、750人を超えていたのに、大規模型通所介護費(Ⅰ)の区分によらず通常規模型通所介護費の区分により算定していたり、3指定通所介護事業者は、900人を超えていたのに、大規模型通所介護費(Ⅱ)の区分によらず大規模型通所介護費(Ⅰ)の区分により算定していたりしていた。

このため、17,893件の請求に対して85市区町村等が支払った介護給付費が100,789,678円過大となっていて、これに対する国の負担額30,655,123円は負担の必要がなかった。

ウ 介護療養施設サービス

指定介護療養型医療施設(療養病床を有する病院又は診療所)において要介護者等に提供する介護療養施設サービスについては、算定基準等によると、医師等の員数が医療法(昭和23年法律第205号)等に定められている員数に満たない場合には、翌月の介護報酬の算定において所定の1日当たりの単位数から85単位を減算することとなっている。そして、医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第49条の規定が適用されて、医師の員数が3人未満に緩和されている場合には、翌月の介護報酬の算定において所定の1日当たりの単位数から12単位を減算することとなっている。また、多床室に入院させるとその者の著しい精神症状等により同室の他の入院患者の心身の状況に重大な影響を及ぼすおそれがあるとして個室への入院が必要と医師が判断した者であるなどの場合には、個室の単位数より高い多床室の単位数により介護報酬を算定することとなっている。

しかし、4指定介護療養型医療施設は、医師の員数が医療法等に定められている員数を満たしていないのに、85単位を減算していなかった。そして、7指定介護療養型医療施設は、医療法施行規則第49条の規定が適用され、医師の員数が3人未満に緩和されているのに、12単位を減算していなかった。また、6指定介護療養型医療施設は、医師の判断によらず施設の都合で個室を利用した場合においても多床室の単位数により介護報酬を算定していた。

このため、11,791件の請求に対して72市区町村等が支払った介護給付費が95,186,801円過大となっていて、これに対する国の負担額27,952,904円は負担の必要がなかった。

エ その他の介護サービス

アからウまでの介護サービスのほか、訪問介護サービス、通所リハビリテーションサービス、介護福祉施設サービス及び介護保健施設サービスの4介護サービスについて、15事業者は、単位数の算定を誤るなどして介護報酬を過大に算定していた。

このため、8,293件の請求に対して63市区町村等が支払った介護給付費が64,269,611円過大となっていて、これに対する国の負担額18,168,890円は負担の必要がなかった。

このような事態が生じていたのは、事業者が算定基準等を十分に理解していなかったことにもよるが、市区町村、一部事務組合、広域連合及び国保連合会において介護給付費の請求に対する審査点検が十分でなかったこと、都府県等において事業者に対して算定基準等の内容を十分に周知していないなど指導が十分でなかったことなどによると認められる。

都府県等名 実施主体
(事業者数)
年度 過大に支払われた介護給付費の件数 過大に支払われた介護給付費 不当と認める国の負担額 摘要
千円 千円
秋田県 16市町村等(5) 17〜22 4,414 31,796 9,951 イ、ウ、エ
山形県 14市町(2) 20〜23 3,053 8,152 2,639
群馬県 5市区(1) 23、24 1,033 1,543 468
埼玉県 28市区町等(4) 22、23 2,759 18,945 5,139
千葉県 100市区町村等(12) 18〜24 8,376 26,141 6,754 ア、エ
東京都 24市区(7) 19〜24 5,932 25,926 7,116 イ、ウ、エ
山梨県 33市区町村等(6) 17〜24 6,263 19,504 5,974 ア、イ、エ
長野県 15市区町村等(6) 17〜22 4,089 23,641 7,138 イ、ウ、エ
愛知県 6市町等(1) 20〜24 741 2,339 537
京都府 13市町等(5) 22〜24 6,345 13,244 4,098 ア、イ、エ
茨木市 9市町(2) 22、23 813 9,303 2,578
和歌山県 21市町(2) 18〜23 6,109 44,860 13,891 ア、エ
岡山県 17市町村(5) 19〜24 6,825 18,744 6,263
倉敷市 12市町(2) 19〜24 2,040 8,304 2,295 ア、エ
徳島県 32市町村等(9) 17〜21 2,304 55,885 17,345 イ、ウ、エ
愛媛県 15市町(10) 17〜22 6,717 41,252 12,518 イ、ウ、エ
佐賀県 2市等(3) 24 484 5,202 1,449
長崎県 4市町(1) 20〜24 1,046 2,092 634
鹿児島県 4市村(2) 22〜24 1,211 8,417 2,778 ア、イ
304実施主体(85) 17〜24 70,554 365,296 109,574
注(1)
計欄の実施主体数は、都府県等の間で実施主体が重複することがあるため、各都府県等の実施主体数を合計したものとは符合しない。
注(2)
摘要欄のア、イ、ウ及びエは、本文の2(2)検査の結果の居宅介護支援又は介護サービスの種類の別に対応している。