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  • 平成24年度 |
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  • (3) 工事の設計が適切でなかったなどのもの

防風ネットの設計が適切でなかったもの[関東農政局](354)


(1件 不当と認める国庫補助金 8,872,000円)

部局等 補助事業者等 間接補助
事業者等
補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
千円 千円 千円 千円
(354) 関東農政局 静岡県 静岡市
新丹谷土地改良区
(事業主体)
農業・食品産業強化対策整備交付金 21 19,341 8,872 19,341 8,872

この交付金事業は、新丹谷土地改良区(静岡市所在)が、同市清水区新丹谷地内において、果樹を栽培している農地における強風による農作物への被害を防止することを目的として、防風ネットを延長計1,461m設置したものである。

この防風ネットは、高さ3.2mの鋼管製の支柱を3.0m間隔に設置した上で、支柱を背面から支えるための控柱を設置して、化学繊維製のネットを装着するものであり、それぞれの支柱及び控柱はコンクリート基礎(縦0.4m、横0.4m、高さ0.8m)に固定されている。

本件防風ネットの設計は、土地改良事業計画指針防風施設(農林水産省構造改善局計画部監修)等に基づいて行われている。これらによると、控柱を設置する場合は、防風ネットに加わる風圧により控柱が設置された支柱にコンクリート基礎を持ち上げようとする上向きの鉛直力(以下、支柱1本当たりの鉛直力を「上向き鉛直力」という。)が生ずることから、コンクリート基礎の自重による下向きの鉛直力(以下、コンクリート基礎1個当たりの鉛直力を「下向き鉛直力」という。)がこれよりも大きければ安全とされている。そして、同土地改良区は、本件防風ネットの設計に当たり、当初は全ての支柱に控柱を設置することとしていて、この場合の上向き鉛直力は最大で2.94kNであり、下向き鉛直力2.95kNを下回ることなどから、構造計算上安全であるとしていた。

その後、同土地改良区は、防風ネットを設置する農地の所有者から農作業の支障にならないように控柱の本数を減らすよう要望があったことから、全ての支柱に設置するとしていた控柱を支柱2本につき1本設置(6.0m間隔)することとして工事を発注し、これにより施工していた(参考図参照)。

しかし、上記のように、同土地改良区は、防風ネットの構造を変更したことから、防風ネットの構造計算を改めて行う必要があったのに、これを行っていなかった。

そこで、実際の施工状況に基づくなどして改めて構造計算を行ったところ、上向き鉛直力は最大で5.39kNとなり、下向き鉛直力2.95kNを大幅に上回っていて、構造計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。

したがって、本件防風ネット(工事費19,341,000円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金8,872,000円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同土地改良区において防風ネットの構造を変更するに当たり構造計算を改めて行う必要性に対する理解が十分でなかったこと、静岡県及び静岡市において本件交付金事業に係る審査及び確認並びに同土地改良区に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

(参考図)

防風ネットの概念図(実際の施工)