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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第11 農林水産省 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(4) 水土里情報利活用促進事業により整備した地図情報等について、利活用に係る目標を設定するなどした上で関係機関による利活用の促進及び更新体制の構築が図られるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農地等整備・保全推進費(平成18、19両年度は、(項)農村振興費)
部局等
農林水産本省
補助の根拠
予算補助
補助事業者
(事業主体)
41道府県土地改良事業団体連合会
補助事業
水土里情報利活用促進事業
補助事業の概要
関係機関が相互に利用することにより農地の有効利用の促進に資することなどのため、農地筆・区画に係る農地面積等の各種情報をデータベース化するもの
事業費
179億3078万余円(平成18年度〜22年度)
上記に対する国庫補助金交付額
178億3311万余円
水土里情報の更新体制が適切に構築されていないなどの団体数
29道県土地改良事業団体連合会
上記の団体において支出された事業費
133億2375万余円(平成18年度〜22年度)
上記に対する国庫補助金相当額
132億3587万円(背景金額)

1 事業の概要

農林水産省は、水土里情報利活用促進事業実施要綱(平成18年17農振第2015号農林水産事務次官依命通知。以下「実施要綱」という。)等に基づき、45道府県(注1)に所在する土地改良事業団体連合会(以下「土連」という。)が事業主体となって平成18年度から22年度までの5年間を事業実施期間として実施した水土里情報利活用促進事業に対して国庫補助金(補助率は定額)を交付しており、その交付額は5年間で202億5905万余円となっている。

本事業は、農地、農業水利施設等に関する地図情報及び農地情報(以下、これらを「水土里情報」という。)を国や地方公共団体、土地改良区等の関係機関共通のデータベースとして整備して、これらの関係機関が相互に利用できるようにすることにより農地の有効利用の促進に資することなどを目的としている。

注(1)
 45道府県  北海道、大阪府、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本事業は、18年度から22年度までの5年間を要して多額の国費が投じられて実施されたものである。そして、上記の事業目的を達成するためには、本事業で整備された水土里情報が事業実施期間終了後においてもできるだけ多くの関係機関により継続して利活用されるようにすることが求められ、農林水産省においても、水土里情報の具体的な利活用方法の普及を行うなどの取組を実施しているところである。また、農地等の形状はほ場整備事業の実施等によって変化することがあるが、こうした変化により利活用に支障が生ずることのないよう、水土里情報が現況を反映して適時適切に更新されていくことが、継続的な利活用のために必要である。

そこで、本院は、有効性等の観点から、水土里情報が関係機関により十分利活用されているか、適時適切に更新されるための体制は構築されているかなどの点に着眼して、41道府県土連(注2)が実施した本事業(事業費計179億3078万余円、国庫補助金計178億3311万余円)を対象として検査を実施した。検査に当たっては、農林水産本省及び上記の41道府県土連において、実績報告書等の関係書類や整備された水土里情報の内容を確認するなどして会計実地検査を行った。

注(2)
 41道府県土連  北海道、大阪府、青森、秋田、山形、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県土連

(検査の結果)

検査したところ、29道県土連(注3)が実施した本事業(事業費計133億2375万余円、国庫補助金計132億3587万余円)について、次のような事態が見受けられた。

注(3)
 29道県土連  北海道、青森、秋田、山形、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、富山、石川、福井、山梨、静岡、三重、滋賀、兵庫、鳥取、広島、山口、徳島、香川、高知、福岡、佐賀、長崎、宮崎、鹿児島、沖縄各県土連

(1) 水土里情報の利活用状況について

本院において、24年5月末時点における、水土里情報を利活用することが想定される主要な関係機関(注4)の全数に対する、水土里情報を既に利活用している関係機関及び水土里情報を利活用するための利用契約を既に締結するなどしていて24年度末までに利活用を開始する見通しとなっている関係機関の数の割合(以下「利活用率」という。)を求めることにより、土連ごとの水土里情報の利活用状況について検査した。その結果、41道府県土連における平均の利活用率は44.1%となっており、このうち7県土連(注5)(事業費計32億0021万余円、国庫補助金計31億9084万余円)においては利活用率が30%未満となっており、各土連は個別に関係機関に赴いて水土里情報の利便性について説明を行うなどの取組を行っているとしているものの、関係機関による利活用が必ずしも進んでいない状況となっていた。

<事例>

福岡県土連は、平成18年度から22年度までの間に本事業を事業費計6億5297万余円、国庫補助金計6億4950万円で実施し、これにより整備した水土里情報を23年6月から提供している。そして、関係機関が利活用を希望するに当たっては、福岡県土連と利用契約を締結することとされている。しかし、水土里情報を利活用することが想定される主要な関係機関数184に対し、水土里情報を実際に利活用している関係機関等の数は25にとどまっており、利活用率は13.6%となっていた。

注(4)
 主要な関係機関  水土里情報を整備した地域に所在する国の機関、道府県、市町村、農業共済組合、土地改良区、土地改良区連合及び土連(土地改良区及び土地改良区連合については、常勤職員が所在し、かつ、事務所を有するものに限る。)
注(5)
 7県土連  青森、群馬、静岡、福岡、長崎、宮崎、沖縄各県土連

(2) 水土里情報の更新について

検査した41道府県土連のうち、水土里情報の提供が試行段階にあった長崎県土連を除く40道府県土連における更新体制についてみたところ、28道県土連(注6)(事業費計126億0866万余円、国庫補助金計125億2589万余円)においては、土連が関係機関から必要なデータを入手したり、関係機関が自ら水土里情報を更新してこれを土連に提供したりすることなどについての取決めなどが整備されておらず、水土里情報が適時適切に更新されるための体制が構築されていない状況となっていた。

注(6)
 28道県土連(注3)で示した29道県土連から長崎県土連を除いたもの

(3) 水土里情報の利活用に関する目標設定の状況について

水土里情報の利活用状況を評価するためには、事業主体である各土連が、地域の実情に応じた目標をあらかじめ設定しておくことが必要である。これにより、各土連は、目標に対する利活用の達成状況を適切に把握することができ、そして、この達成状況に応じて利活用促進のための効果的な取組を行うことで、結果として事業効果の早期発現に寄与することが期待できる。

しかし、各土連においては、水土里情報の利活用に関する目標を明確に設定していなかった。

以上のとおり、関係機関による水土里情報の利活用が必ずしも進んでいなかったり、水土里情報が適時適切に更新されるための体制が構築されていなかったり、利活用に関して目標設定を行っていなかったりしている事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。

ア 土連において、
  • (ア) 関係機関による水土里情報の利活用を促進させることについての土連に対する指導が十分でなかったこと
  • (イ) 本事業の事業効果を発現させるための前提として水土里情報が適時適切に更新されるための体制を構築する必要があることについて、理解が十分でなかったこと
イ 農林水産省において、
  • (ア) 利活用機関数に係る地域の実情に応じた目標を明確に設定していないなど、水土里情報の利活用の促進のための取組が十分でなかったこと
  • (イ) 水土里情報が適時適切に更新されるための体制を構築することについての土連に対する指導が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省は、25年2月に通知を発して、各土連に対して、利活用に関する目標を設定した上で当該目標の達成に向けた具体的な取組を行うことにより関係機関による利活用を促進させるよう指導するとともに、関係機関に対して、水土里情報の更新に必要なデータを土連に提供するよう協力を要請する処置を講じた。