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(3) 国が管理する国道のトンネルに設置したジェットファンについて、新基準に基づくジェットファンの必要性等について検討を行い、不要となったジェットファンを新設トンネル等に転用することにより、有効活用を図るよう是正改善の処置を求めたもの


会計名及び科目
社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定)(項)地域連携道路事業費等
部局等
6国道事務所等
事業の根拠
道路法(昭和27年法律第180号)
ジェットファン設置工事の概要
自動車の排出ガス等によってトンネルの利用者に悪影響を及ぼさないようにすることなどを目的として、トンネル内の空気の流れを促進することにより換気を行う設備を設置する工事
ジェットファンの設置基数及び設置工事費
49基 11億9648万余円(平成22年度〜25年度)
ジェットファンを製作した基数及び製作に係る直接工事費
40基  4億8348万余円(平成22年度〜25年度)
製作する必要がなかったジェットファンの基数及び低減できた直接工事費
40基   2億8340万円(平成22年度〜25年度)
【是正改善の処置を求めたものの全文】

国が管理する国道のトンネルに設置したジェットファンの有効活用について

(平成25年10月24日付け 国土交通大臣宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 トンネル内の換気設備の概要

貴省は、道路交通の安全確保とその円滑化を図るため、道路整備事業を実施しており、その一環として、毎年度トンネル工事等を多数実施し、その際、これらのトンネルの利用者の安全性と快適性及び円滑な交通を確保するため、トンネル換気設備の設置工事等を国道事務所等において実施している。

国が管理する国道のトンネルの換気設備は、「道路トンネル技術基準」(平成元年建設省都街発第10号都市局長、道企発第33号道路局長通達)及びその解説書である「道路トンネル技術基準(換気編)・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「解説」という。)に基づき設置されている。換気設備については、トンネルの延長、勾配、交通条件等を考慮してトンネルの換気が自然換気で十分に対応できるかどうか検討した結果、自然換気では所定の換気量を確保できない場合には、ジェットファン(注1)等で強制的に換気を行う機械換気を行うこととされている。

そして、近年の自動車排出ガス規制等により、自動車から排出されるばい煙量等が大幅に減少したことなどから、平成20年10月に、解説が改訂され、換気設備の設計に用いる自動車から排出されるばい煙量等の設計条件の見直しが行われている(以下、改訂前の解説を「旧基準」、改訂後の解説を「新基準」という。)。

(注)
 ジェットファン  トンネル内の空気の流れを促進することにより換気を行う設備

2 本院の検査結果

(検査の観点及び着眼点)

国が管理する国道のトンネルにおけるジェットファンの設置工事費は毎年度多額に上っている。そこで、本院は、経済性等の観点から、旧基準等に基づいてトンネルに設置しているジェットファンについて、新基準に基づく設置の必要性及び必要基数(以下「必要性等」という。)の検討が行われ、その結果、不要となったジェットファンを新設トンネル等に転用することにより有効活用を図っているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

検査に当たっては、15国道事務所等(注2)において設置している47トンネルにおけるジェットファン221基を対象として、必要性等の検討状況や不要となったジェットファンの転用状況について、トンネル台帳等の書類を確認するとともに、このうち新たにジェットファン49基を設置した工事(10件、設置工事費計11億9648万余円)の設計書、特記仕様書等の書類、現地でのジェットファンの設置状況を確認するなどして会計実地検査を行った。

注(2)
 15国道事務所等  秋田河川、能代河川、郡山、長野、新潟、岐阜、高山、福知山河川、姫路河川、三次河川、広島、徳島河川、長崎河川、鹿児島、北部各国道事務所

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

旧基準等に基づいてジェットファンを設置している11国道事務所等(注3)のうち、8国道事務所等(注4)は、27トンネルのジェットファン139基について、必要性等の検討を行っており、その結果、表1のとおり、ジェットファン139基のうち76基が不要となったが、撤去することなくトンネル内に存置していた。

表1 ジェットファンの必要性等の検討状況及びその結果不要となったもの

地方整備
局等名
国道事務
所等名
必要性等の検討を行っているもの 左のうち、不要となったもの
通常型 高風速型
口径(㎜) 口径(㎜)
630 1030 1250 1530 1030 1250
トン
ネル
基数 トン
ネル
基数 トン
ネル
基数 トン
ネル
基数 トン
ネル
基数 トン
ネル
基数 トン
ネル
基数 トン
ネル
基数
東北 秋田 3 9 1 2 2 4 3 6
関東 長野 5 25 5 19 5 19
中部 岐阜 3 12 1 1 1 4 2 5
高山 5 48 1 2 1 18 2 20
近畿 姫路 2 7 1 4 1 4
四国 徳島 3 15 1 2 2 4 3 6
九州 長崎 1 5 1 2 1 2
鹿児島 5 18 1 4 1 3 2 7 4 14
27 139 2 6 7 23 3 6 1 4 4 11 4 26 21 76

また、残りの3国道事務所等(注5)は、8トンネルのジェットファン28基について、貴省が旧基準等に基づいて設置しているジェットファンについて必要性等の検討を行うよう周知していないこともあり、その検討を行っていなかった。

注(3)
 11国道事務所等  秋田河川、長野、新潟、岐阜、高山、福知山河川、姫路河川、広島、徳島河川、長崎河川、鹿児島各国道事務所
注(4)
 8国道事務所等  秋田河川、長野、岐阜、高山、姫路河川、徳島河川、長崎河川、鹿児島各国道事務所
注(5)
 3国道事務所等  新潟、福知山河川、広島各国道事務所

一方、8国道事務所等(注6)は、22年度から25年度までに、ジェットファン設置工事等(10件、工事費計11億9648万余円)を実施しており、12トンネルにおいてジェットファン49基を設置していた。このうち、3国道事務所(注7)は、当該国道事務所が管理する他のトンネルで不要となったジェットファン6基を撤去し、分解点検を実施するなどした後、当該国道事務所管内のトンネルに転用して有効活用を図っていたが、7国道事務所等(注8)は、新設のトンネル等10トンネルに新たにジェットファン43基を製作して設置していた(表2参照)。

表2 新たに製作したジェットファン

地方整備
局等名
国道事務
所等名
左のうち、不要となったもの
通常型 高風速型
口径(㎜) 口径(㎜)
630 1030 1250 1530 1030 1250
トン
ネル
基数 トン
ネル
基数 トン
ネル
基数 トン
ネル
基数 トン
ネル
基数 トン
ネル
基数 トン
ネル
基数
東北 能代 1 3 1 3
北陸 新潟 1 4 1 4
中部 高山 1 7 1 7
中国 三次 1 3 2 7 2
(注)
10
広島 1 2 1 1 2 3
九州 鹿児島 2 12 2 12
沖縄 北部 1 4 1 4
1 3 3 13 7 27 10 43
(注)
三次河川国道事務所において、1トンネルに2種類のジェットファンを設置していることからトンネル数が重複しており、集計しても計の欄と一致しない。
注(6)
 8国道事務所等  能代河川、郡山、新潟、高山、三次河川、広島、鹿児島、北部各国道事務所
注(7)
 3国道事務所  郡山、高山、広島各国道事務所
注(8)
 7国道事務所等  能代河川、新潟、高山、三次河川、広島、鹿児島、北部各国道事務所

しかし、ジェットファンについては、口径等の仕様が同じであれば、新たに製作することなく、不要となっているジェットファンを転用できることから、7国道事務所等が設置した10トンネルのジェットファン43基のうち、6国道事務所等(注9)の8トンネル、ジェットファン40基は新たに製作する必要がなかったことになると認められる(表3参照)。

表3 新たに製作する必要がなかったことになるジェットファン

通常型 高風速型
口径(㎜) 口径(㎜)
630 1030 1250 1530 1030 1250
①検討の結果、不要となったジェットファンの基数 6 23 6 4 11 26 76
②新たに製作したジェットファンの基数 3 13 27 43
②のうち、①を転用できることから、新たに製作する必要がなかったことになるジェットファンの基数 3 11 26 40

そこで、不要となったジェットファンを転用することとして、24年度に転用した国道事務所が採用している分解点検費等の積算額を基に、ジェットファンの転用に要する費用を試算すると、40基のジェットファンの製作に係る直接工事費4億8348万余円は、2億0005万余円となり、直接工事費を約2億8340万円低減できたと認められる。

注(9)
 6国道事務所等  能代河川、新潟、高山、三次河川、鹿児島、北部各国道事務所

(是正改善を必要とする事態)

旧基準等に基づいて設置しているジェットファンについて、必要性等の検討を行っていなかったり、検討の結果、不要となったジェットファンの有効活用を検討することなく新たにジェットファンを製作したりしている事態は適切とは認められず、是正改善の要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴省において、次のことなどによると認められる。

  • ア 旧基準等に基づいて設置しているジェットファンについて、必要性等の検討を行うことを国道事務所等に周知していなかったこと
  • イ 必要性等の検討の結果、不要となったジェットファンについて、その状況を他の国道事務所等に情報提供して転用を検討するなどのジェットファンの有効活用に対する理解が十分でなかったこと

3 本院が求める是正改善の処置

貴省においては、今後も引き続き多数のトンネル工事等を実施することが見込まれている一方で、公共工事においては、コスト縮減を図ることが求められている。

ついては、貴省において、不要となっているジェットファンについて有効活用を図るよう、次のとおり是正改善の処置を求める。

  • ア 国道事務所等に対して、旧基準等に基づいて設置しているジェットファンについて、必要性等の検討を行うよう周知すること
  • イ 必要性等の検討の結果、不要となったジェットファンのうち、転用可能なものについては、有効活用が図られるよう転用計画を策定し、その情報を国道事務所等に対して提供すること