ページトップ
  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第2節 団体別の検査結果 |
  • 第20 独立行政法人国立環境研究所 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

子どもの健康と環境に関する全国調査に係る印刷業務契約のうち増刷を含む契約の予定価格の積算について、過去の印刷業務契約において作成された版下データを活用することにより経済的なものとなるよう改善させたもの


科目
研究業務費
部局等
独立行政法人国立環境研究所
契約名
子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)各種質問票(OCR)増刷業務等10契約
契約の概要
エコチル調査の参加者等へ配布する質問票等を印刷等するもの
契約の相手方
3会社
契約
平成23年2月〜24年11月 一般競争契約
予定価格の積算額
7622万余円(平成22年度〜24年度)
低減できた予定価格の積算額
980万円(平成22年度〜24年度)

1 エコチル調査に係る印刷業務契約の概要

独立行政法人国立環境研究所(以下「研究所」という。)は、環境要因が子供の健康に与える影響を明らかにすることを目的として、胎児期から13歳に達するまでの子供の健康状態等を継続的に調査する「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」(以下「エコチル調査」という。)を実施している。

エコチル調査は、平成22年度から44年度までを実施期間とし、最初の3年間で調査対象とする約10万組の親子(以下「参加者」という。)の募集及び登録を行った上で、それぞれの子供が13歳に達するまで質問票、面接等による調査を実施するなどのものである。エコチル調査の実施に当たり、研究所は、参加者等へ配布する質問票、説明書、広報用パンフレット等の印刷物(以下、これらを合わせて「質問票等」という。)を作成するために、印刷会社と印刷業務契約を締結している。質問票は、子供の年齢等に応じて、「6か月質問票」、「1歳質問票」等の種類があり、調査期間の経過とともに新しい質問票が必要となることなどから、研究所は、当面必要となる部数を印刷して、その後、在庫に不足が生じる都度、別途契約により同内容の質問票等を増刷している。

研究所は、印刷業務契約の予定価格について、印刷用の版下データを作成する費用(以下「版下作成料」という。)、印刷料、用紙代等の費用を計上するなどして積算している。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、印刷業務契約の予定価格の積算が適切に行われているかなどに着眼して、研究所が22年度から24年度までの間に締結した印刷業務契約のうち増刷を含む16契約(契約金額計1億3156万余円)を対象として、研究所において、契約書、仕様書、予定価格調書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

研究所が前記の16契約で増刷した質問票等については、過去の印刷業務契約において、印刷用の版下データを作成させていた(以下、過去の契約で作成した印刷用の版下データを「作成済版下データ」という。)。一方、研究所は、16契約の仕様書等においては、作成済版下データを活用するために必要な著作権等の権利の帰属について規定していなかったり、契約相手方に作成済版下データを提供することとしていないものがあったりしていて、仕様書等の記載が作成済版下データを活用する内容とはなっていなかった。そして、このうち10契約の予定価格の積算に当たっては、増刷する質問票等についても版下データを新規に作成することとして版下作成料を計上していた。

しかし、上記の作成済版下データは増刷を含む印刷業務契約においても活用することが可能であり、仕様書等の記載内容を適切なものとした上で、作成済版下データを契約相手方に提供して増刷することとすれば、版下データを新規に作成する必要はないと認められた。

このように、印刷業務契約に係る仕様書等の記載が作成済版下データを活用する内容となっておらず、増刷を含む契約の予定価格の積算に当たり、増刷に係る版下作成料を計上している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(低減できた積算額)

増刷に係る版下作成料を計上しないこととして前記の10契約に係る予定価格の積算額を修正計算すると計6632万余円となり、研究所の積算額計7622万余円を約980万円低減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、研究所において、増刷を含む印刷業務契約について、作成済版下データを活用して、経済的な予定価格を積算するための検討が十分でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、研究所は、25年6月に作成済版下データを活用するための仕様書の記載内容を定めるとともに、同年9月に作成済版下データを活用できる増刷については予定価格の積算に当たり版下作成料を計上しないことと定める処置を講じた。