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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第2節 団体別の検査結果 |
  • 第32 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

鉄道施設の建設工事等に係る借地料の積算に当たり、近傍において取得した土地の取引価格を用いる際に地価の変動を適切に反映させたり、公租公課相当額を重複して計上しないこととしたりして、借地料の積算を適切に行うよう改善させたもの


科目
(建設勘定) (項)業務経費(項)受託経費
部局等
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構本社、2支社、5建設局
借地料の概要
鉄道施設の建設工事等のために必要な仮設の工事用道路等の用地のうち、工事の受注者において賃借が必要な用地に係る借地料
平成22年度から24年度までの間に実施した建設工事等
198工事
上記に係る借地料の積算額
17億0713万余円
低減できた借地料の積算額
1億2270万円

1 工事用地に係る借地料の概要

独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「機構」という。)は、鉄道施設の建設工事等の一環として、高架橋、トンネル等の土木構造物の築造、駅や車両基地等の建築物の建設、軌道スラブ及びレールの敷設等を実施している。

機構の東京、大阪両支社及び5建設局(注)(以下、これらを合わせて「支社等」という。)は、これらの建設工事等に係る予定価格を、機構本社が制定した建設工事等に係る積算要領(以下「積算要領」という。)に基づいて算定している。

(注)
5建設局  北海道新幹線、青森新幹線(平成23年5月31日以前は東北新幹線)、北陸新幹線、北陸新幹線第二、九州新幹線各建設局

そして、建設工事等のために必要な仮設の工事用道路等の用地のうち、工事の受注者において賃借が必要な用地(以下「工事用地」という。)に係る借地料については、積算要領において、その積算を行い予定価格を算定することとされているが、その積算方法については、具体的に明示されていない。

一方、支社等が、自ら鉄道施設の建設等に必要な用地を地権者等から直接賃借する場合の借地料については、その算定を適切に行うことなどを目的として、機構本社において定めた「用地取得価格等評定基準取扱細則」(平成15年10月機構規程第145号。以下「取扱細則」という。)等により算定することとされている。そして、取扱細則によれば、支社等が、用地を地権者等から直接賃借する場合の借地料は、土地の正常な取引価格に所定の算定率を乗じて算定することとされており、また、算定した借地料には、公租公課相当額を含むとされている。

支社等は、前記のとおり、工事用地に係る借地料の積算方法については積算要領において具体的に明示されていないことから、取扱細則の規定を参考にして、工事用地の近傍において支社等が取得した土地の取引価格を正常な取引価格であるとして、工事用地に係る借地料を積算している。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

機構は、鉄道施設の建設工事等を毎年度多数実施していることから、工事費に含まれる借地料の積算額も多額に上っている。

そこで、本院は、経済性等の観点から、借地料の積算が適切に行われているかなどに着眼して、支社等において、平成22年度から24年度までの間に実施した建設工事等198工事(契約額計5565億5650万余円、契約を締結した年度は15年度から24年度まで)の工事用地(約140万㎡)に係る借地料の積算額計17億0713万余円を対象として、契約関係書類、予定価格の積算内訳書等により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、上記198工事のうち141工事において、次のとおり借地料の積算が適切でない事態が見受けられた。

(1) 地価の変動を適切に反映することなく借地料の積算を行っていたもの

支社等が積算した前記198工事の工事用地に係る借地料のうち、130工事の借地料計11億9791万余円については、借地料の積算を行った時期から1年から10年程度前に支社等が取得した近傍の土地の取引価格を積算に用いていた。そして、地価はその時々の経済状況等を反映して変動することから、支社等は、当該近傍の土地を取得した時期から借地料の積算を行った時期までの間の地価の変動を適切に反映すべきであるのに、これを考慮することなく、上記の土地の取引価格を正常な取引価格としてそのまま用いて、工事用地に係る借地料の積算を行っていた。

(2) 公租公課相当額を重複して計上していたもの

大阪支社及び北海道新幹線建設局は、前記198工事のうち38工事の工事用地に係る借地料を積算しており、このうち、21工事の借地料の積算額計2億2692万余円については、同支社及び同建設局において取得した土地の取引価格に所定の算定率を乗じた額とは別に公租公課相当額を計上していた。

しかし、前記のとおり、取扱細則で定める所定の算定率を乗じて算定した借地料には、公租公課相当額を含むとされていることから、上記の21工事については、公租公課相当額を重複して計上する必要はなかった(このうち(1)の事態にも該当しているものが10工事ある。)。

以上のように、土地を取得した後の地価の変動を適切に反映することなく工事用地に係る借地料の積算を行ったり、公租公課相当額を重複して計上したりしている事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。

(低減できた積算額)

前記141工事の工事用地に係る借地料の積算額について、近傍において取得した土地の取引価格を用いる際に取得後の地価の変動を適切に反映させたり、重複して計上していた公租公課相当額を差し引いたりして修正計算すると、計11億7271万余円となり、前記の積算額12億9551万余円を約1億2270万円低減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、機構本社において工事用地に係る借地料の積算を行う場合の具体的な算定方法を積算要領に明示していなかったこと、支社等において土地を取得した後の地価の変動を適切に反映して借地料の積算を行うことについての理解が十分でなかったり、公租公課相当額の取扱いについての理解が十分でなかったりしていたことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、機構は、25年8月に、地価の変動を適切に反映するとともに、公租公課相当額を重複して計上しないこととするよう積算要領を改定し、同年9月から工事用地に係る借地料の積算に適用することとして、支社等に対して周知徹底を図る処置を講じた。