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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
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  • 第42 独立行政法人奄美群島振興開発基金 |
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

求償権損害金を求償権時効管理簿において管理することなどにより、同損害金の納入督励、時効中断の措置等が適切に行われるよう適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたもの


科目
損害金収入
部局等
独立行政法人奄美群島振興開発基金本部、2事務所
事務の概要
債務者等から徴収する求償権損害金について、納入督励、時効中断の措置等を行う事務
適切に債権管理等が行われていなかった求償権損害金の額
1億8867万円(平成24年度末)
【適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたものの全文】 独立行政法人奄美群島振興開発基金における求償権損害金の債権管理について

(平成25年10月18日付け 独立行政法人奄美群島振興開発基金理事長宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。

1 制度の概要

(1) 求償権の取得及び求償権損害金の確定

貴基金は、奄美群島振興開発特別措置法(昭和29年法律第189号)に基づき、奄美群島(鹿児島県奄美市及び大島郡の区域)における産業の振興開発を促進するため、奄美群島振興開発計画に基づく事業を行う中小規模の事業者その他の者又は奄美群島に住所若しくは居所を有する者が、銀行等の金融機関から資金の貸付け等を受ける場合、上記中小規模の事業者等の金融機関に対する債務の保証(以下、この債務の保証に係る金融機関の貸付金を「信用保証付債権」という。また、この債務の保証の対象者を「債務者等」という。)を行っている。そして、平成24年度末の保証債務残高は456件、計47億6362万余円に上っている。

貴基金は、債権管理マニュアル等に基づき、信用保証付債権について、債務者等が最終履行期限までに債務を履行せず、最終履行期限から90日を経てなお債務を履行しない場合には、金融機関の請求に基づき、保証債務の履行として債務者等に代わり債務を弁済(以下、この弁済を「代位弁済」という。)することとしており、代位弁済の範囲は、未償還元金、未収利息等となっている。そして、貴基金は、代位弁済を行ったときは、債務者等に対する求償権を取得することとなり、その後、当該求償権に係る債権が全て回収された場合には、取得した求償権に係る債権の額に対し、代位弁済した日の翌日から全て回収された日までの日数に応じて年14.5%以内の割合で計算した損害金(以下「求償権損害金」という。)を確定し、徴収することとしている。

(2) 求償権に係る債権の管理

求償権を取得した場合、貴基金は、債権管理マニュアル等に基づき、次のように求償権に係る債権の回収金の納入督励、時効中断の措置等の債権管理を行うこととしている。

すなわち、貴基金は、債務者等に対して、代位弁済通知書及び督促状により、代位弁済に係る債務の履行を求める旨を通知するとともに、債務者等の資産及び負債の状況、営業状況等の実態を把握して、回収計画を立案し、検討した上で同計画に沿って回収を実行する。また、回収計画に対して弁済が遅れがちな債務者等に対しては、実情に即した内容の督促状を作成して送付し、必要に応じて、電話、文書又は面接による返済の督促を行い債務者等の実態を十分把握して、これら督促の事実を督促記録簿に記録する。そして、上記の手続によってもなお債務者等が債務を履行せず、求償権に係る債権の回収上必要があると認められる場合には、債務者等に対して、強制執行等の法的手続をとる旨を通知して督促を行う。

求償権の消滅時効は、原則として、代位弁済した日の翌日から5年とされており、貴基金は、求償権に係る債権の管理を適切に行うため、必要に応じて、債務の承認、仮差押え、調停申立て等によって時効中断の措置を講じて、毎年度、当該措置の実施等を記録した管理簿(以下「求償権時効管理簿」という。)を作成し、具体的な時効中断のための方針を検討して、当該方針どおりに時効中断の措置が講じられているかを毎月チェックする。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性等の観点から、貴基金において求償権及び求償権損害金を適切に管理し、貴基金が必要な徴収を行っているかなどに着眼して、貴基金本部及び全2事務所において求償権に係る債権の回収状況等を記載した求償権元帳等を精査するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

貴基金は、求償権に係る債権の残高がある債務者等に対しては、当該残高等を記載した督促状等の送付、電話、文書又は面接による弁済の督促等の納入督励を行うなどしていたが、求償権に係る債権が全て回収された場合に確定する求償権損害金に係る債権については、債権管理マニュアル等において、管理の方策等を十分に定めておらず、求償権時効管理簿において管理していないなどしており、当該求償権損害金に係る債務者等に対して督促状の送付等を一切行っていないものがあるなど、十分な納入督励が行われていなかったり、債務の承認等の時効中断の措置が講じられていなかったりなどしていた。そして、この結果、会計実地検査時点(25年6月)に貴基金本部において保管されていた求償権元帳等の関係書類によれば、上記のように、適切な債権管理が講じられていないと認められる求償権損害金は24年度末で42件、計1億8867万余円となっていた。また、求償権損害金の消滅時効は、求償権に係る債権が全て回収された日の翌日から5年とされているが、上記の求償権損害金のうち22件、計9552万余円については、24年度末時点で5年が経過していて、債務者等が時効を援用できるものとなっていた。

(是正及び是正改善を必要とする事態)

上記のように、貴基金において、求償権損害金が求償権時効管理簿において適切に管理されておらず、十分な納入督励が行われていなかったり、時効中断の措置が講じられていなかったりなどしていて、適切な債権管理が行われていない事態は適切とは認められず、是正及び是正改善の要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴基金において、求償権損害金を求償権に係る債権と同様に適切に管理することについての理解が十分でないこと、債権管理マニュアル等において、求償権損害金を求償権時効管理簿において管理することとされていなかったこと、求償権損害金を適切に管理するための方策が明確に定められていなかったことなどによると認められる。

3 本院が要求する是正の処置及び求める是正改善の処置

貴基金においては、保証債務残高が多額に上っており、今後も多額の求償権損害金を管理することが見込まれることから、求償権に係る債権が全て回収された場合の当該求償権に係る求償権損害金について、既に確定しているものについては、その全容を把握した上で、求償権時効管理簿により管理し、納入督励及び時効中断の措置を行うなどの是正の処置を要求するとともに、今後発生するものに対しては、求償権時効管理簿における管理、納入督励、時効中断の措置等を行うための債権管理マニュアル等を見直して適切に管理できるようにするなど是正改善の処置を求める。