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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果|第2節 団体別の検査結果|第45 独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構|不当事項|工事

空気調和設備の冷却塔の更新工事に当たり、条例の騒音規制を考慮した設計となっていなかったため、設置した設備が稼働できず工事の目的を達していなかったもの[独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構本部](437)


科目
(健康保険勘定) 経常費用
部局等
独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構本部
工事名
社会保険大宮総合病院外壁改修等整備工事
工事の概要
建物の地震被害修復工事を含む外壁補修、非常用自家発電設備の更新、空気調和設備の冷却塔等の更新等
請負人
伸明建設株式会社
契約
平成23年11月 一般競争契約
契約金額
105,886,200円
設置目的どおり稼働していない冷却塔に係る工事費相当額
7,413,929円

1 外壁改修等整備工事等の概要

独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(以下「機構」という。)は、社会保険大宮総合病院(以下「大宮病院」という。)の建物の地震被害修復工事を含む外壁補修、非常用自家発電設備の更新、空気調和設備の冷却塔(注)(病院敷地東側に設置)等の更新等を、平成23年5月に株式会社アライ設計(以下「設計業者」という。)と設計・監理業務委託を契約額5,386,500円で、また、同年11月に伸明建設株式会社と外壁改修等整備工事を契約額110,250,000円(24年5月変更後の契約額105,886,200円)で、それぞれ契約を締結して実施している。

(注)
冷却塔  事務室等の送風装置へ冷却水を循環させ室内に冷風を送ることにより冷房を実施する方式において、循環させた冷却水の熱を外気に放出させる装置

大宮病院が所在するさいたま市は、さいたま市生活環境の保全に関する条例(以下「条例」という。)等に基づき、事業場等から発生する騒音及び振動に対して規制を行っている。条例によれば、規制地域内の事業場等に冷却塔等の騒音に係る指定施設を設置しようとする者等は、その指定施設の設置の工事等の30日前までに、指定施設の種類ごとの数、公害防止の方法等を市長に届け出なければならないこととされている。また、その届出をした者は、その届出に係る事項を変更しようとするときは、あらかじめ、市長に届け出なければならないこととされている。

そして、大宮病院は、昭和52年に冷却塔1基、61年に冷却塔1基を指定施設として大宮市(平成13年5月1日以降はさいたま市)に届け出ている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、有効性等の観点から、工事の設計は適切か、更新された機械装置等は設置目的どおり稼働しているかなどに着眼して、前記の設計・監理業務委託契約及び外壁改修等整備工事契約を対象として、機構本部及び大宮病院において、これらの契約書、仕様書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

(1) 空気調和設備の設計

機構が締結した設計・監理業務委託の契約書によれば、発注者及び受注者は、この契約書に基づき、公共建築設計業務委託共通仕様書、設計監理業務委託仕様書等に従いこの契約を履行しなければならないこととされており、公共建築設計業務委託共通仕様書によれば、受注者は、設計業務の実施に当たっては、関連する法令、条例等を遵守しなければならないこととされている。

しかし、設計業者は、更新される冷却塔が既存の冷却塔と同様の機能であり、設置場所についても既存の冷却塔を撤去して同じ場所に設置することから、冷却塔の更新工事の設計に当たり、指定施設である冷却塔について条例の騒音に関する規制基準を確認せず、騒音規制を考慮した設計を実施していなかった。

また、大宮病院は、既存の冷却塔を指定施設として大宮市へ届け出ていること、今回の工事でこの届出に係る事項の変更を届け出る必要があること及び既存の冷却塔について付近の住民から騒音及び振動について苦情を受けていることを、機構及び設計業者に知らせていなかった。

そして、機構は、設計業者との打合せの際に実施した工事箇所の現地確認、空気調和設備の設計書及び工事図面、冷却塔の設置現場の状況等から、騒音及び振動に対する調査及び検討を要することについて、大宮病院及び設計業者に確認していなかった。

(2) 外壁改修等整備工事で設置した冷却塔

大宮病院は、24年5月末頃、外壁改修等整備工事のうち、更新工事が終了した空気調和設備の冷却塔を稼働させたところ、付近の住民から冷却塔の始動時の重低音の振動と連続運転中の騒音及び振動の軽減を求める申入れがあり、これを受けて騒音及び振動調査を実施したところ、騒音が条例に定める規制基準55デシベル(8時から19時まで)を上回る56.3デシベルから71.6デシベルに達していることが判明した。その後、大宮病院は、同年7月及び8月に、仮設防音パネルの設置工事等を実施したが、冷却塔が発する騒音が解消されなかったため、同年8月に空調設備業者から新たに冷却塔を購入し、同年10月に冷却水の配管等を新設された冷却塔へ切り替えた。

そして、機構が前記の工事で設置した冷却塔は、新設された冷却塔へ配管を切り替えた後も、病院の敷地内に設置されたままで、25年5月の会計実地検査時においても稼働していない状況であった。

したがって、外壁改修等整備工事のうち冷却塔の更新工事は、騒音及び振動対策を考慮した設計となっていなかったため、冷却塔が設置目的どおり稼働できず、外壁改修等整備工事の変更後契約額105,886,200円のうち、当該冷却塔に係る工事費相当額7,413,929円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、設計業者が条例の騒音に関する規制基準を確認せずに冷却塔の設計を実施していたこと、大宮病院が機構及び設計業者に対して、騒音及び振動について対策を執るよう申入れを行わなかったことなどにもよるが、機構において、設計業者との打合せの際に実施した工事箇所の現地確認、空気調和設備の設計書や工事図面、冷却塔の設置現場の状況等から騒音及び振動に対する調査及び検討を要することについての認識が欠けていたことなどによると認められる。