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  • 平成25年9月

裁判所における会計経理等に関する会計検査の結果について


第2 検査の結果

3 検察審査会の運営に伴う公費の支出状況

(1) 検察審査会の運営に関する予算等

ア 「(項)検察審査費」の歳出予算現額等の推移

一般会計「(組織)裁判所」には、検察審査業務に必要な経費として「(項)検察審査費」が計上されている。この「(項)検察審査費」の22年度から24年度までの歳出予算現額及び支出済歳出額は、図表2-3-1のとおりとなっており、支出済歳出額は毎年度3億円程度となっている。

図表2-3-1 「(項)検察審査費」の歳出予算現額及び支出済歳出額

(単位:千円)

予算科目 平成22年度 23年度 24年度
歳出予算現額 支出済歳出額 歳出予算現額 支出済歳出額 歳出予算現額 支出済歳出額
(項)検察審査費 377,783 314,258 359,370 297,057 366,543 279,620
(目)委員手当 19,339 1,651 6,994 1,228 6,007 1,226
(目)職員旅費 972 972 972
(目)委員等旅費 777 7 268 8 262 11
(目)検察審査員旅費 277,043 263,484 284,625 251,396 296,888 239,833
(目)証人等旅費 138 21 138 138 8
(目)庁費 79,514 49,094 66,373 44,423 62,276 38,539

イ 平成21年度予算における計上方法の変更

検察審査会に係る予算は、平成20年度予算まで一般会計「(組織)検察審査会(項)検察審査会」として、「(組織)裁判所」とは区分して計上されていた。事務局職員の人件費等についても、裁判所職員の人件費等とは区分されて「(組織)検察審査会」に計上されていた。しかし、平成21年度予算においては、この計上方法が見直され、「(組織)裁判所(項)検察審査費」として引き続き裁判所の他の経費と区分して計上されるものと、地方裁判所等の経費と合わせて「(組織)裁判所(項)下級裁判所」として計上されるものとに分けられた(図表2-3-2参照)。

図表2-3-2 検察審査会に係る平成20年度予算と平成21年度以降の予算との比較イメージ

検察審査会に係る平成20年度予算と平成21年度以降の予算との比較

事務局職員の人件費の予算は、平成20年度予算まで「(組織)検察審査会(項)検察審査会(目)職員基本給」等として計上されていたが、平成21年度予算以降には、地方裁判所等の職員の人件費の予算と一括して「(組織)裁判所(項)下級裁判所(目)職員基本給」等に計上されている。この計上方法の変更の経緯は、次のとおりである。

すなわち、従前は裁判所職員定員法(昭和26年法律第53号)で定められていた検察審査会事務官の定員が、19年の検審法及び裁判所職員定員法の改正により、最高裁判所が定めることとされた。これは、最高裁判所によると、司法制度改革の円滑な実施を図るための法整備の一環として、検察審査会の機能の強化等を図るために検審法が改正され、これに伴い事務局が行う事務の内容が大幅に変わることになったこと、事務局の事務量に大きな影響を与える検察審査会への事件審査の申立件数は、年間を通じての予測が困難であり、年度中に申立件数が急増するなどの事態が生じても適切に対応できるようにする必要があったこと、また、事務局の事務量は年間を通じて繁閑が生ずるために、閑散な時期については裁判所の事務を行わせるなど、その事務量に応じて機動的な人員配置を可能とすることからこのような方式とされたとのことである。そして、上記の法改正による定員に関する規定の弾力化の趣旨を予算面においても反映させるために、事務局職員の人件費について、地方裁判所等の職員の人件費と一括して予算に計上することとされたとのことである。

一方、審査員等や証人等に支給される旅費等に関する予算については、独立性を持った検察審査会の職権行使に必要な経費であることから、「(組織)裁判所(項)検察審査費」として引き続き裁判所の他の項の経費とは区分して計上されている。

また、庁費については、審査員等に対する招集状発送のための通信費といった独立性を持った検察審査会の職権行使に直接に必要な経費については、上記の旅費等と同様に、「(組織)裁判所(項)検察審査費(目)庁費」として引き続き裁判所の他の項の経費とは区分して計上され、事務局で使用する備品の購入経費といったそれ以外の経費については、事務局職員の人件費と同様に、地方裁判所等の庁費と一括して、「(組織)裁判所(項)下級裁判所(目)庁費」として計上されている。以上のことから、現在は、予算の計上方法が変更されたことにより、検察審査会の事務局職員の人件費や庁費の規模を決算上から把握することはできない状況になっている。

なお、平成20年度予算における「(組織)検察審査会」の歳出予算現額及び支出済歳出額を示すと、図表2-3-3のとおりである。

図表2-3-3 平成20年度予算における「(組織)検察審査会」の歳出予算現額及び支出済歳出額

(単位:千円)

予算科目 歳出予算現額 支出済歳出額

(組織)検察審査会

(項)検察審査会

5,867,750 5,787,706
(目)職員基本給 3,515,128 3,502,235
(目)職員諸手当 1,804,578 1,786,699
(目)超過勤務手当 70,571 57,963
(目)短時間勤務職員給与 1,151
(目)児童手当 12,445 11,755
(目)職員旅費 5,712 3,748
(目)検察審査員旅費 245,028 234,100
(目)証人等旅費 194
(目)庁費 212,943 191,204

(2) 会議の開催状況

165検察審査会における22年度から24年度までの会議の開催状況は、図表2-3-4のとおりとなっており、会議開催回数は、22年度は2,212回、23年度は2,145回、24年度は2,083回となっている。

このうち、会計実地検査の対象とした42検審では、22年度は803回、23年度は765回、24年度は734回の会議が開催されていた。

図表2-3-4 165検察審査会における会議の開催状況

年度 会議開催回数(回) 流会等
(回)
(B)

(C)=
(A)+(B)
(A) うち事件審
査を行った
会議
うち事件審
査を行わな
かった会議
(A)に占め
る割合
(A)に占め
る割合
平成22 2,212 1,649 74.50% 563 25.50% 27 2,239
23 2,145 1,566 73.00% 579 27.00% 15 2,160
24 2,083 1,507 72.30% 576 27.70% 15 2,098

また、開催された会議を事件審査の有無によって分類すると、事件審査を行わなかった会議が各年度とも会議開催回数の4分の1程度を占めている。第1の2(3)記載のとおり、検審法において、年4回の会長を互選するための会議及び年4回の定例の会議を開催することとされている(図表1-3-2参照)こともあり、多くの検察審査会では、審査すべき事件がない場合でも会議を開催している。

(3) 審査員等に係る旅費等の支出状況

審査員等に対して支給される旅費等については、「(項)検察審査費(目)検察審査員旅費」から支出されており、その支出済歳出額は22年度2億6348万余円、23年度2億5139万余円、24年度2億3983万余円となっている。そして、42検審において支給された旅費等の額は、22年度1億0040万余円、23年度9366万余円、24年度8774万余円となっている。

審査員等に対して支給される旅費等の支払までの手続は図表2-3-5のとおりである。審査員等は、旅費、日当等の支払を受けるために、出頭に要した旅費の額等を記載した請求書を提出する。この請求書は、会長の決裁を経て地方裁判所の会計担当部局に提出される。検察審査会には会計機関が設置されていないため、支出の決定等の会計法令上の手続は、地方裁判所に設置されている官署支出官等が行っている。なお、会計法令上の手続については、官庁会計システムを使用して処理されており、各地方裁判所、財務省(センター支出官)及び日本銀行がその手続に関与している。

図表2-3-5 審査員等に支給する旅費等の支払までの手続

審査員等に支給する旅費等の支払までの手続

審査員等への旅費等の支払に関して、計算証明規則に基づいて各地方裁判所の官署支出官から会計検査院に提出される証拠書類は、「請求書」及び「支出負担行為即支出決定決議書」(複数の審査員等への旅費等の支払についてまとめて支出負担行為決議等を行っている場合には、それぞれの審査員等への支払額を記載した「債主内訳書」が添付される。)となっている。また、官署支出官からは、「支出済みの通知に関する書類」が支出計算書(官署分)の添付書類として会計検査院に提出される。支出済みの通知は、個々の支出が決定のとおり行われたかを官署支出官が確認するためにセンター支出官から官庁会計システムを使用して通知されているもので、支払1件ごとに予算科目、債主、金額、振込金融機関、振込口座番号等が記録されている。

また、センター支出官から、証拠書類として「日本銀行の支払済書」、「支払指図書の交付の内容を明らかにした決議書の類」等が会計検査院に提出されている。

なお、これらの証拠書類等のうち、「支出済みの通知に関する書類」については、オンラインにより会計検査院に提出されている。

ア 審査員等に対する旅費等の振り込みの状況

42検審の会計事務を行っている25地方裁判所において、22、23両年度における審査員等への旅費等の支払について確認したところ、42検審の延べ24,510人の審査員等に支払われた旅費等は全て金融機関の口座へ振り込まれていた。そして、請求書と支出済みの通知に関する書類とを突合するなどしたところ、38検察審査会では、振込先は全て審査員等の氏名と同一の名義の口座となっていた。

審査員等の氏名と異なる名義の口座へ振り込みが行われていたのは、4検察審査会の5人の審査員等への振り込み計21回(計153,268円)であった。このうち、3検察審査会における4人への振り込み計20回(計144,234円)については、審査員等本人からの申出によるもので、当該審査員等と同じ名字である他人名義の口座への振り込みであり、3検察審査会によると、振込先口座の名義人は、いずれも審査員等の同居の親族とされていた。また、残る1検察審査会における1人への22年度の振り込み1回(9,034円)については、同年度に裁判員候補者として当該検察審査会が所在する地方裁判所に出頭して同裁判所から旅費等の支払を受けていた別人の口座へのものであり、同裁判所が、氏名が同じ漢字であったことから、別人とは気付かずに誤って振り込んでいたものであった。なお、同裁判所は、25年7月までに、誤って振り込んでいた旅費等について返納を受けて、正しい支払先に支払っている。

イ 審査員等に対する本人確認等

(ア) 検察審査会による本人確認の実施状況

事務局が把握している審査員等に係る情報は、氏名、住所及び生年月日のみであるため、出頭してきた者が選定された審査員等本人であることの確認を行うこと(以下「本人確認」という。)が必要になる。各検察審査会での本人確認の方法は、主として審査員等が最初に出頭する際に本人宛てに郵送した招集状を持参させ、これを確認するというものであった。招集状については、審査員等本人に確認した後に返却されるため、審査員等が持参した招集状を会計実地検査の際に確認することはできなかった。

(イ) 会計検査院による審査員等の実在確認

各検察審査会における本人確認の方法は、上記のように主として持参した招集状を確認するものであるが、会計実地検査の際には当該招集状を確認できなかったことから、会計検査院は次の調査方法により審査員等が実在の人物であったのかという点について確認した。

すなわち、会計検査院は、当事者である検察審査会及び裁判所を介在させずに調査するため、11検察審査会の会議に23年5月から7月までに出頭したとして旅費等が支払われている189人に調査票を直接郵送した。この結果、146人から回答があり、この146人全員から、検察審査会に出頭した実績があり、旅費等の振り込みを受けている旨の回答がなされた。また、11検察審査会全てについて、所属した検察審査会に出頭した実績がある旨の回答がなされている。

なお、第1の3(1)に記載のとおり、検察審査会については、特定の事件についての議決に関与した審査員の平均年齢を公表したことに関して、その値が2回にわたり訂正されたり、最終的に公表された平均年齢の値が別の議決に関与した審査員の平均年齢として公表された値と同一の値であったりしたことを端緒として、当該特定の事件についての議決に関与した審査員が実在の人物であったのかという点について疑義があるといった内容の質疑が国会で行われるなどした。そこで、この点についても、会計検査院法第26条に基づき、当該議決を行った検察審査会に対して、関係する選定録及び会議録の提示を求めて、会計検査院に提出された証拠書類と対照するなどしたところ、証拠書類に記載された氏名と選定録等に記載された審査員等の氏名とが異なるなどの事態は見受けられなかった。また、併せて選定録に記載されている当該事件についての議決に関与した審査員の生年月日を確認したところ、最終的に公表された平均年齢の値は選定録に記載されている生年月日から算出した平均年齢の値と一致した。

ウ 出頭の事実を記録する書類の作成状況及び保存状況

審査員等に対する旅費等については、前記のとおり、審査員等が提出する請求書を基に支払が行われるが、請求書の記載内容について確認するために、会議の開催状況及び審査員等の出頭の事実を記録した書類についてみたところ、会議録の様式中に審査員等の出頭状況を記録する欄が設けられていた。また、各事務局では、会議に際しては、審査員等の座席をあらかじめ指定して名札を置くなどしており、着席状況によって出欠を確認するなどしていた。

会議録については、「検察審査会における会議録及び選定録の様式等について」(平成21年5月7日刑一第000070号検察審査会事務局長宛て刑事局長通達)において、事件審査を行った会議の会議録は保存期間が10年とされているものの、事件審査を行わなかった会議の会議録は、当該年度の審査員等の任期終了後速やかに廃棄することとされていた。このような事件審査を行わなかった会議は、図表2-3-4のとおり、各年度とも会議開催回数の4分の1程度を占めており、実際に、42検審のうち、22、23両年度に事件審査を行わなかった会議の実績があった22検察審査会でも、事件審査を行わなかった会議の会議録は上記の通達を根拠として一部を除いて廃棄されていた。

また、第1の2(3)に記載のとおり、検察審査会は、出頭した審査員等が11人に満たない場合には、会議を開き議決することができない。このように出頭した審査員等が11人に満たなかったことが、22年度27回、23年度15回、24年度15回あった。このような場合の各検察審査会の対応をみると、会議を流会にしたり、出頭した審査員等だけで審査の対象となっている事件の資料を調べるなどしたりしていた。このように、流会になるなどした場合については、審査員等の出頭状況を記録する会議録は作成することとはされていない。

以上のように、事件審査を行わなかった会議等の開催状況及び個々の審査員等の出頭状況の記録については、請求書を除いて、事後的な検証に備えて保存される仕組みとはなっていない。

前記のとおり、旅費等の支出済歳出額は22年度2億6348万余円、23年度2億5139万余円、24年度2億3983万余円となっている。このうち、事件審査を行わなかった会議に係る旅費等の額は、22年度6017万余円、23年度6074万余円、24年度5987万余円となっていて、また、流会等の際の出頭に係る旅費等の額は、22年度146万余円、23年度93万余円、24年度86万余円となっている。

なお、検査した範囲では、出頭状況の記録が残されていた会議について、出頭状況の記録に記載されている日付等と請求書の記載内容との整合性が取れていなかったり、出頭状況の記録が残されていなかった会議について、所在する地方裁判所が保存していた会議室の使用簿等に検察審査会が会議室を使用したと記録されていた日と請求書記載の出頭日とが一致していなかったりする事態は見受けられず、請求書の記載内容について特に問題と認められる事態はなかった。

エ 旅費等の額の算定等の状況

(ア) 旅費及び宿泊料

旅費については、「検察審査員等の旅費、日当及び宿泊料を定める政令」(昭和24年政令第31号。以下「旅費政令」という。)において、鉄道賃、船賃、路程賃及び航空賃の4種類とされている。このうち、航空賃の額は、現に支払った旅客運賃によることとされている。

また、宿泊料については、出頭等に必要な夜数に応じて、地域により1夜当たり8,700円以内又は7,800円以内の額で会長が決定することとされている。

42検審では、地方裁判所の会計担当部局の確認を受けるなどして、旅費を算定していた。また、航空賃について、22、23両年度に支給した実績があった10検察審査会はいずれも航空会社の領収書等により審査員等の支払額を確認しており、宿泊料についても、支給した実績があった13検察審査会はいずれも宿泊施設の領収証により宿泊の事実を確認するなどしていた。

(イ) 日当
a 支給基準

日当については、旅費政令において、出頭等に必要な日数に応じて、1日当たり8,000円以内の額で会長が決定することとされている。最高裁判所は、日当の額の決定の便宜を考慮して、「検察審査員等の日当の支給基準等について」(平成12年刑一第169号検察審査会事務局長宛て刑事局長・経理局長依命通達。以下「支給基準」という。)を発している。そして、各検察審査会に対して、支給基準を参考にして、適正な日当額の決定に資するとともに、予算の執行上支障を生ずることのないように十分配慮するように求めている。支給基準において定められている具体的な日当の基準額は図表2-3-6のとおりとなっていて、会議に関与した日の関与時間(以下「関与時間」という。)に応じて、基準額が設けられている。

図表2-3-6 審査員等に対する日当の支給基準(抜粋)

区分 基準値
関与時間 1時間以内 4,370円
1時間を超え2時間以内 4,370円を超え4,710円以内
2時間を超え3時間以内 4,710円を超え5,110円以内
3時間を超え4時間以内 5,110円を超え5,740円以内
4時間を超え5時間以内 5,740円を超え6,730円以内
5時間を超え6時間以内 6,730円を超え7,310円以内
6時間を超えるもの 7,310円を超え8,000円以内
b 関与時間を記録する書類の作成状況

日当の額は、支給基準において、審査員の会議への関与時間等を勘案して額を決定するように求めており、支給基準で示されている基準額も関与時間に応じたものとされている。また、42検審では、おおむね、会議終了時に会長と事務局職員とで関与時間を確認した上で会長が具体的な日当の額を決定しているとのことであった。これらのことから、日当の額を決定するに当たっては、関与時間が重要な要素となっている。しかし、会議録の記載事項を定めた検察審査会法施行令においては、会議の開始時刻や終了時刻について会議録に記載することとはされていないこともあり、支給基準においても、審査員等の会議への関与時間について、記録を作成し保存することとはされていなかった。

一方で、検察審査会は、事件審査の記録としては、「検察審査会における事件関係の帳簿の備付け、保存及び廃棄について」(平成21年5月7日刑一第000037号検察審査会事務局長宛て刑事局長通達)において期日簿を作成することとされていて、その様式は、審査した事件ごとに審査の開始時刻及び終了時刻を記載するものとなっており、実際の開始時刻等を期日簿に記録していた会議については、事件審査が行われた会議に要した時間が記録として保存されていた。

しかし、期日簿に記録する開始時刻等については、上記の通達に詳細な説明が記載されていないため、検察審査会によって、会議の実際の開始時刻等を記録していたり、予定の開始時刻等を記録していたりと区々となっていた。また、期日簿は、審査する事件ごとに作成することとされているため、事件審査を行わなかった会議については、自主的に期日簿に当該会議の時間を記録するなどしていた一部の検察審査会を除いて、会議に要した時間が記録として保存されていなかった。

また、会議に遅刻したり、早退したりした審査員等については、関与時間が他の審査員等より短いことなどから、日当の額についても他の審査員等より少額にする調整が行われている。42検審のうち上記日当の額の調整が行われている35検察審査会における遅刻及び早退に係る記録についてみたところ、自主的に具体的な遅刻や早退の時間を記録し保存していたのは、一部の検察審査会のみであった。

このように、検察審査会が作成している会議録、期日簿等の書類だけでは、関与時間を事後的に検証できる仕組みとはなっていなかった。

(4) 証人等及び審査補助員に対する旅費等の支出状況

ア 証人等及び審査補助員に対して支給される旅費等の概要

証人等及び審査補助員に対する旅費、日当及び宿泊料の支給の基準等については、審査員等に対して支給される旅費等と同様に、旅費政令等に規定されている。

また、審査補助員に対して支給される手当の額については、「審査補助員に支給すべき手当の額について」(平成21年4月8日最高裁刑一第000305号地方裁判所長宛て最高裁判所事務総長通達)等により図表2-3-7のとおり定められている。なお、手当を支給する日については、日当は支給しないこととされている。

図表2-3-7 審査補助員に対する手当の額

図表2-3-7 審査補助員に対する手当の額
支給区分 平成21年5月
から22年3月
まで
22年4月か
ら23年3月
まで
23年4月か
ら24年3月
まで
24年4月以
A 審査事件について執務をしたと
き(Bに該当する場合を除く。)
31,700円 31,600円 31,500円 28,200円
B 審査事件について執務をした時
間が1時間以下のとき
15,800円 15,800円 15,700円 14,100円
C 登庁したものの、審査員の不出
頭等の事由により、審査事件に
ついて執務をしなかったとき
7,900円 7,900円 7,900円 7,100円

イ 証人等に対する旅費等の支出状況

第1の2(3)に記載のとおり、検察審査会は、審査を行う際に、証人を呼び出したり、相当と認める者の出頭を求めたりすることができることとされている。これらの証人等に対して支給される旅費等については、「(項)検察審査費(目)証人等旅費」から支出されており、その支出済歳出額は22年度2万1195円、24年度8,666円となっている(23年度は支出がない。)。42検審のうち、22年度に証人等に対する旅費等の支給があったのは1検察審査会で2人(旅費等の支給額計1万6740円)である。この2人から提出された請求書と関係書類とを突合するなどしたところ、関係書類の記録と請求書記載の出頭日とは一致していた。

ウ 審査補助員に対する手当等の支出状況

審査補助員については、「審査補助員に対する手当の支給手続について」(平成21年4月8日最高裁人給B第000374号地方裁判所長宛て最高裁判所事務総局人事局長依命通達)に基づき、出勤簿を作成することとされている。出勤簿には執務日、時間等を記入して、当該審査補助員及び勤務時間管理員(同通達において事務局長が指名することとされている。)が押印することとされている。そして、勤務時間管理員は、出勤簿に基づいて月ごとに勤務時間報告書を作成することとされている。

審査補助員に対して支給される手当については、「(項)検察審査費(目)委員手当」から支出されており、支出済歳出額は22年度165万余円、23年度122万余円、24年度122万余円となっている。また、旅費については、「(項)検察審査費(目)委員等旅費」から支出されており、支出済歳出額は22年度7,380円、23年度8,828円、24年度11,990円となっている。42検審における審査補助員に対する手当等の支給額は22年度142万余円、23年度91万余円、24年度63万余円である。

これらの手当等のうち、22、23両年度分の上記の出勤簿等と関係書類とを突合したところ、検査した範囲では、出勤簿に記載されている執務日等と関係書類の記録との整合性が取れていない事態は見受けられなかった。

(5) 検察審査会に係る庁費の支出状況

ア 「(項)検察審査費(目)庁費」の支出状況

前記のとおり、独立性を持った検察審査会の職権行使に直接に必要な経費については、「(項)検察審査費(目)庁費」に計上される。その支出済歳出額は、22年度4909万余円、23年度4442万余円、24年度3853万余円となっていて、検察審査会の会計事務を行っている地方裁判所のほかに、最高裁判所等においても支出がある。

(ア) 地方裁判所における支出状況

全国の地方裁判所における「(項)検察審査費(目)庁費」の支出済額は、22年度1733万余円、23年度1672万余円、24年度1608万余円となっている。

このうち、会計実地検査を行った25地方裁判所における「(項)検察審査費(目)庁費」の支出状況(注2)は、図表2-3-8のとおりとなっている。各検察審査会では、審査員等や検察審査員候補者との連絡のための郵便物を発送するなどしており、支出の内訳として、通信運搬費が大部分を占めている。

(注2)
「(項)検察審査費(目)庁費」の支出状況 管内に複数の検察審査会が所在する地方裁判所の場合、「(項)検察審査費(目)庁費」の額を検察審査会ごとに区分することができないため、ここでは42検審以外の同一管内に所在する56検察審査会に係る支出についてもまとめて計上してある。

図表2-3-8 25 地方裁判所における「(項)検察審査費(目)庁費」の支出状況

(単位:千円)

年度 支出済額
(A) 通信運搬費 (B/A) その他の経費 (C/A)
(B) (C)
平成22 10,784 9,956 -92.30% 827 -7.70%
23 9,943 9,833 -98.90% 110 -1.10%
24 9,664 9,635 -99.70% 28 -0.30%
(イ) 高等裁判所における支出状況

高等裁判所における「(項)検察審査費(目)庁費」の支出状況をみると、22年度には6高等裁判所において「(項)検察審査費(目)庁費」からの支出があり、支出済額は計84万余円となっていて、いずれも複写機の購入等のための支出であった。これは、高等裁判所が管内の地方裁判所等で使用する事務機器の一部を一括して調達しており、検察審査会で使用する複写機についても地方裁判所等で使用する分と合わせて調達していることによるものである。

なお、裁判所では、22年度までは、一括調達であっても検察審査会で使用する備品の購入等に要する経費は裁判所で使用する備品の購入等に要する経費とは区分して「(項)検察審査費(目)庁費」から支出していたが、23年度からは全て「(項)下級裁判所(目)庁費」から支出することにしたため、23、24両年度については、高等裁判所における「(項)検察審査費(目)庁費」からの支出はない。

(ウ) 最高裁判所における支出状況

最高裁判所における「(項)検察審査費(目)庁費」の支出状況をみると、図表2-3-9のとおり、22年度3089万余円、23年度2766万余円、24年度2240万余円と地方裁判所等と比べると多額になっている。これは、165検察審査会に共通する経費を支出していることによるものである。

図表2-3-9 最高裁判所における「(項)検察審査費(目)庁費」の支出状況

(単位:千円)

支出の内訳 平成22年度 23年度 24年度
① 検察審査員候補者通知関係 15,735 16,251 14,645
② 検察審査員候補者名簿管理システム関係 6,219 4,938 1,609
③ 裁判員候補者等コールセンター関係 3,898 3,615 3,606
④ 印刷製本関係 2,785 2,192 1,873
⑤ その他 2,252 668 668
30,891 27,667 22,403

図表2-3-9のうち、①検察審査員候補者通知関係の支出は、検察審査員候補者として選定された者に対する通知書等の印刷及び発送業務の委託契約に係る経費等である。②検察審査員候補者名簿管理システム関係の支出は、同システムの改修、保守等に係る経費である。③裁判員候補者等コールセンター関係の支出は、検察審査員候補者に選定された者に対する通知書の発送後、通知を受け取った者からの検察審査会制度等に対する問合せに対応するために、裁判員候補者に対する問合せへの対応業務と併せて委託している契約のうち、検察審査員候補者に係る分を案分して負担している経費である。

イ 他の予算科目からの支出状況

前記のとおり、平成21年度予算から、庁費のうち、独立性を持った検察審査会の職権行使に必要な経費以外のものについては、地方裁判所等の庁費と一括して、「(項)下級裁判所(目)庁費」に計上されており、検察審査会及び事務局で使用する備品、消耗品等の購入経費や光熱水料といった経費は、地方裁判所等の経費と区別なく支出されている。このため、決算上、これらの経費について検察審査会の運営に伴う公費の支出分を把握することはできない状況となっている。そこで、25年4月現在で165検察審査会において使用している備品の購入等に要した経費を物品管理のデータ等に基づいて集計したところ、22年度499万余円、23年度423万余円、24年度603万余円となっていた。

また、「(項)下級裁判所(目)情報処理業務庁費」から、事務局で使用するパーソナルコンピュータの借入等に要する経費を支出しており、その額は23年度9万余円、24年度52万余円となっている(22年度は支出がない。)。

(6) 事務局職員の人件費の支出状況

事務局職員の定員については、前記のとおり、最高裁判所が定めることとされており、21年4月以降は165検察審査会で865人となっていて、定員の最も多い検察審査会で11人、最も少ない検察審査会で2人となっている。

事務局職員の人件費は、前記のとおり、平成21年度予算から、「(項)下級裁判所(目)職員基本給」等の予算科目に地方裁判所等の職員の人件費と一括して計上されることとなった。このため、決算上、事務局職員の人件費の額を把握することができない状況となっている。

そこで、22、23、24各年度の事務局職員の給与簿を基に集計したところ、事務局職員に係る人件費(注3)の額は、図表2-3-10のとおり、22年度47億3925万余円、23年度48億3661万余円、24年度44億8661万余円となっていた。

(注3)
人件費  今回の集計に際しては、対象年度に支払われた給与の額等を集計しているため、例えば超過勤務手当については前年度3月分の超過勤務の実績により当該年度4月分の給与として支払われている分についても当該年度分とするなどして集計している。

図表2-3-10 事務局職員に係る人件費の額

(単位:百万円、人)

年度 人件費の額 併任発令を受けていな
い事務局職員の分
併任発令を受けている
事務局職員の分
平成22 4,739 (911) 836 (103) 3,902 (808)
23 4,836 (890) 817 (101) 4,019 (789)
24 4,486 (902) 734 (99) 3,752 (803)

注(1) ( )内は人件費集計の対象とした事務局職員の数である。なお、これには、対象年度の途中で異動するなどした者も含めており、当該年度中に事務局に所属したことがある事務局職員の延べ数となっている。

注(2) 対象年度の途中で異動するなどした者については、在籍期間に対応した人件費のみを計上している。

注(3) 育児休業等により当該年度中に給与の支払を受けていなかった事務局職員は、集計に含めていない。

このうち、裁判所への併任発令を受けていない事務局職員に係る人件費は、22年度8億3670万余円、23年度8億1701万余円、24年度7億3409万余円となっている。

また、裁判所への併任発令を受けている事務局職員に係る人件費は、22年度39億0255万余円、23年度40億1960万余円、24年度37億5252万余円となっている。

最高裁判所の説明によると、事務局職員については、各検察審査会の業務量が想定され得る最大のものとなっても業務の遂行に支障がない職員数を確保できるように事務局を本務とした発令を行っているとのことである。このため、通常時には、多くの職員は併任発令を受けている裁判所の業務に従事することになるとしている。