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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成25年9月

本州四国連絡道路に係る債務の返済等の状況及び本州四国連絡高速道路株式会社の経営状況について


4 所見

(1) 検査の状況の概要

本四公団は、度重なる工事実施計画の追加、変更等により事業費が増加し、また供用後の料金収入の低迷等から、多額の繰越欠損金を抱えていた。このことについて会計検査院は平成10年度決算検査報告に特定検査状況として掲記したが、本年次は本四道路に係る債務の返済等の状況及び本四会社の経営状況について検査を実施した。その状況は以下のとおりである。

  • ア 本四公団は、民営化の方針の下、国による無利子貸付け、国への債務承継といった多額の財政支援の処置が講じられた結果、欠損金が解消され、民営化の際、その資産、負債等は、機構及び本四会社に承継されるなどした。そして、本四道路に係る債務については、機構において、本四会社から支払われる貸付料と国及び10府県市からの出資金等の合計から支払利息、管理費等を差し引いた収支差により返済しており、現在は、計画を上回って債務の返済がなされている。

  • イ 本四会社は、高速道路事業及び関連事業ともに毎年度利益を計上して、承継した債務の返済をほぼ終えるとともに、機構に対してほぼ計画どおりに道路資産賃借料を支払ってきている。そして、本四会社の契約の状況についてみると、本四会社が発注した工事の契約において、多くの契約が一般競争等となっているものの、1者入札となっているものが見受けられたり、1者入札になっている契約の落札率が高くなっていたりなどしていることから、更に競争性を確保して経営の効率化を図る余地がある状況となっている。また、維持修繕及び管理業務についてみると、子会社等との契約割合が高く、子会社の利益剰余金が増加してきている。

  • ウ 本四道路に係る機構への出資については、国土交通省と10府県市との協議の結果、24、25両年度に限り減額の上継続することとされているが、26年度以降の取扱いは未定となっている。

    そこで、会計検査院において、26年度以降の国及び10府県市からの出資が停止又は10府県市からの出資が停止されたとして債務の返済について試算を行ったところ、機構の収支差が減少することにより毎年度の返済額が減少し、増加する支払利息等を収支差で賄うことができなくなった後、収支差がマイナスに転ずることから、以降は債務が増加して、62年度(2050年度)の債務残高は2兆4508億余円又は8169億余円になり、計画どおり債務を返済することは極めて困難になると認められる。また、上記の試算において出資が停止された分を貸付料収入で賄うこととすると、現行の約1.62倍又は約1.21倍の貸付料が必要となる。そして、これを本四会社の料金収入で賄うこととすると、約1.56倍又は約1.19倍の料金収入が必要となり、さらに、これを通行料金に反映させた場合には、約1.88倍又は約1.27倍の料金水準になると想定される。


(2) 所見

本四会社の決算は、民営化以降黒字が続いているが、これは、前記のとおり、本四公団時代に多額の財政支援を受けたことなどによるものである。また、機構の本四道路に係る債務の返済が計画を上回っているのは、機構に対する国及び10府県市からの多額の出資金を債務の返済に充てていることによるものである。しかし、26年度以降に出資が停止された場合、料金水準を変更するなどしない限り、料金収入の増加は見込めず、出資分を料金収入で賄うことはできなくなることから、債務返済計画の見直しが必要となる。

ついては、国土交通省、機構及び本四会社において、本四道路に係る債務の返済等は道路の利用者による受益者負担が基本であることに留意するとともに国の財政状況が一層厳しくなっていることにも留意して、次のような対応を執ることにより、本四道路に係る債務の返済等を確実に行うことが重要である。

  • ア 国土交通省及び機構において、24年2月の10府県市との協議の結果に鑑み、26年度以降に出資が停止された場合には、国民の理解が得られるよう、これに代わる措置を含めた適切な債務返済計画を検討すること

  • イ 本四会社において、今後も管理費用の削減に努めること。また、契約に際しては更なる競争性の確保を図って子会社等を契約の相手方としている業務についても、なお一層のコスト縮減を図ること。さらに、子会社が保有する利益剰余金の取扱いについて検討すること

会計検査院としては、本四道路の債務の返済等の状況及び本四会社の経営状況について、引き続き注視していくこととする。