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国庫補助金等により基金法人に設置造成された基金の状況について


3 検査の状況

(1) 基金の状況等

ア 19年度以前に設置造成された基金の20年度以降の状況

19年度以前に国庫補助金等により設置造成された基金は、20年度の基金基準による見直し対象又は21年報告の検査対象となるなどしているもので、20年4月1日時点において基金保有額があったものは、9省(前記11府省のうち、内閣府及び総務省は該当なし。)所管の152基金(81基金法人、基金保有額1兆0592億円)であった(以下、19年度以前に設置造成された152基金を「既存152基金」という。)。

既存152基金の所管府省別の推移(20年4月1日から25年3月31日まで)は、表1のとおりである。

表1 既存152基金の所管府省別の推移

(単位:法人、基金、百万円)
所轄省名 時点
平成20年4月1日 21年4月1日 22年4月1日 23年4月1日 24年4月1日 25年3月31日
法人数 基金数 法人数 基金数 法人数 基金数 法人数 基金数 法人数 基金数 法人数 基金数
基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
外務省 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2
10,958
(10,958)
8,913
(8,913)
6,938
(6,938)
3,206
(3,206)
1,211
(1,211)
1,134
(1,134)
財務省 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2
33,667
(19,099)
27,677
(15,107)
27,171
(14,772)
11,013
(3,865)
5,584
(3,595)
5,303
(3,421)
文部科学省 1 1 1 1 1 1 0 0 0 0 0 0
823
(823)
699
(699)
663
(663)
-
(-)
-
(-)
-
(-)
厚生労働省 3 3 3 3 2 2 0 0 0 0 0 0
133,289
(133,289)
42,953
(42,953)
35,432
(35,432)
-
(-)
-
(-)
-
(-)
農林水産省 37 94 36 91 33 81 29 56 23 44 19 32
609,338
(573,036)
572,475
(545,980)
530,909
(517,924)
263,100
(245,057)
222,173
(214,862)
220,129
(208,780)
経済産業省 15 19 15 19 13 17 10 14 8 12 8 11
135,180
(118,719)
177,333
(161,624)
194,886
(181,041)
164,924
(151,759)
254,310
(242,170)
230,403
(219,167)
国土交通省 19 25 19 25 19 25 17 23 16 22 16 22
123,112
(89,030)
131,438
(97,707)
126,110
(96,261)
111,186
(83,889)
107,772
(81,143)
115,151
(88,998)
環境省 2 5 2 5 2 5 2 4 2 4 2 4
12,636
(10,213)
18,554
(15,923)
15,584
(12,794)
12,551
(9,602)
10,673
(7,677)
10,074
(7,107)
防衛省 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
244
(244)
245
(245)
245
(245)
248
(248)
251
(251)
254
(254)
81 152 80 149 74 136 62 102 53 87 49 74
1,059,251
(955,415)
980,293
(889,156)
937,942
(866,075)
566,230
(497,629)
601,978
(550,913)
582,452
(528,864)

25年3月31日時点において基金保有額があるものは、7省所管の74基金(49基金法人、基金保有額5824億円)であり、20年4月1日時点と比較すると78基金が廃止されており、基金数及び基金保有額は約半分となっている。また、25年3月31日時点において基金保有額がある74基金の中には、既に新規申請の受付を終了していて、過去に採択した事業の後年度負担に係る事業のみを実施している17基金が含まれている。

所管府省別に基金数をみると、20年4月1日時点で所管する基金数の多かった農林水産省、経済産業省及び国土交通省のうち、農林水産省所管の基金数は約3分の1、経済産業省所管の基金数は約半分となっているが、国土交通省所管の25基金のうち、廃止されたものは3基金となっている。同様に基金保有額をみると、全体として減少傾向にあるが、経済産業省所管の基金は、基金保有額が952億円増加している。また、78基金が廃止された理由は、事業期間の終了、事業仕分けによる評価結果、基金基準による見直しなどによるものであった。

既存152基金及びそのうち25年3月31日時点において基金保有額がある74基金を運営形態、使途別に示すと表2のとおりである。

表2 既存152基金の運営形態・使途別状況

(単位:基金、百万円)
運営形態・使途 時点
152基金(平成20年4月1日時点) 74基金(25年3月31日時点) 廃止数
基金数
(a)
基金保有額 (うち国庫補助金
等相当額)
基金数
(b)
基金保有額 (うち国庫補助金
等相当額)
基金数
(a-b)
取崩型 補助事業 77 383,896 (328,465) 24 260,218 (233,726) 53
利子助成事業 16 125,349 (124,940) 9 24,718 (24,530) 7
調査等事業 3 11,014 (11,014) 2 1,134 (1,134) 1
その他事業 2 170 (170) 1 17 (17) 1
98 520,431 (464,591) 36 286,089 (259,409) 62
回転型 貸付事業 12 314,328 (311,734) 9 155,309 (153,134) 3
その他事業 3 30,489 (30,489) 3 52,881 (52,881) 0
15 344,817 (342,223) 12 208,191 (206,016) 3
保有型 債務保証事業 20 88,517 (61,344) 14 68,883 (46,334) 6
その他事業 1 4,881 (4,881) 1 8,905 (8,905) 0
21 93,398 (66,225) 15 77,789 (55,240) 6
運用型 補助事業 3 57,826 (47,261) 2 5,442 (5,081) 1
利子助成事業 1 244 (244) 1 254 (254) 0
調査等事業 6 39,056 (33,237) 2 2,003 (1,546) 4
その他事業 8 3,476 (1,629) 6 2,682 (1,315) 2
18 100,604 (82,373) 11 10,382 (8,198) 7
合計 152 1,059,251 (955,415) 74 582,452 (528,864) 78
(注)
一つの基金の中に区分経理された複数の事業がある基金は、区分経理された事業ごとに一つの基金として集計している。また、複数の運営形態・使途が併存している基金については、主な運営形態・使途により分類している。

既存152基金の運営形態別基金数は、20年4月1日時点において取崩型98基金、回転型15基金、保有型21基金、運用型18基金となっており、これらのうち、25年3月31日までに廃止された基金数は、取崩型62基金、回転型3基金、保有型6基金、運用型7基金となっていて、他の運営形態に比べて、取崩型の基金は廃止された割合が高くなっている。

運用型の基金については、前記のとおり、21年11月の「事務事業の横断的見直しについて」により、「基金相当額を国に返納し、必要額を毎年度の予算措置に切り替えるべき」とされており、所管府省において見直しが行われている。運用型18基金のうち、25年3月31日時点において、基金事業を継続しているものが8基金、運用元本となる基金(以下「基金本体」という。)は国庫等へ返納して運用益の残余分で基金事業を継続しているものが3基金、基金を廃止しているものが7基金となっている。また、廃止した7基金のうち、基金本体及び運用益の残余分を全て国庫へ返納した基金は1基金のみで、2基金は返納の際に国庫補助金により設置造成された基金本体の額と国庫への返納額に差額が生じており(後述の「(3)個別の基金の状況」の1及び表18を参照)、4基金は基金本体を国庫等へ返納しているが、運用益の残余分のうち、国庫補助金に係る運用益が国庫へ返納されていない事態が見受けられた。

上記の運用型の基金の廃止の際に、運用益の残余分のうち、国庫補助金に係る運用益が国庫へ返納されていない事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

所管府省名 基金法人名 基金名 国庫へ返納されていない額
厚生労働省 財団法人こども未来財団 こども未来基金 25億4552万円

財団法人こども未来財団(以下「未来財団」という。)は、平成6年度に厚生労働省(13年1月5日以前は厚生省。以下同じ。)から国庫補助金の交付を受けて、「こども未来基金」を設置造成している。同基金は、運用型で、デパート等における授乳室の整備等に対する助成等を行うものである。同省から未来財団への国庫補助金は、6年度に300億円が交付された。

そして、同省が定めたこども未来基金管理運営要領によると、運用益については、基金事業に要する経費に充当し、当該年度の精算によって生じた残余は、基金に繰り入れるものとするとされており、また、基金事業の中止又は廃止までに造成された基金の保有額及び保有債券等の売却益等基金事業に係る経理の精算により生じた残余額(以下「基金廃止時保有額」という。)を国庫へ返還しなければならないこととされている。

検査したところ、同省は、21年11月の行政刷新会議による事業仕分けを踏まえ、基金廃止時保有額のうち300億円を国庫に返還させ、基金を廃止することとした。これを受け、未来財団は、23年1月に同省に対して、「こども未来基金の廃止及び返還について」を提出していた。

そして、同省が未来財団に対して返還を命じた額は、国庫補助金分の300億円のみとなっており、23年2月に300億円は返還されたが、基金廃止時保有額から300億円を除いた額である25億4552万円については、未来財団に残されたままとなっていた。この25億4552万円は、基金事業を継続して実施するためのものではなく、同省は、未来財団が基金事業により行っていた事業のうち必要な事業に要する経費については、単年度の国庫補助金を毎年度未来財団に交付しており、所要額を措置することとしていた。

前記の運営要領に記載のとおり、基金を廃止する際に国庫への返還を要する額は、基金廃止時保有額の全額であるが、25億4552万円が未来財団に残ったままとなっている。

事例1と同様の事態があった基金は、表3のとおりであり、この3基金についても、運用益の残余分が国庫へ返納されるべき状況であったと認められるが、返納されなかった運用益の残余分は、結果として基金事業と同様の目的を有する事業のために費消されていた。

表3 事例1と同様の事態があった基金(3基金)

所管府省名 基金法人名 基金名 国庫へ返納されなかった額
国土交通省 一般社団法人海外建設協会 海外建設促進基金 665万円
財団法人淀川水源地域対策基金 水源地域対策事業 1728万円
財団法人紀の川水源地域対策基金 水源地域対策事業 491万円

前記のとおり、既存152基金の中には、基金事業の終了に伴い基金を廃止したり、使用見込みが低いものとして基金規模を縮小したりなどしたために、20年度から24年度までの間に基金保有額の一部又は全部を国庫へ返納した基金があり、その所管府省別の状況は、表4のとおりである。

表4 既存152基金の国庫への返納状況

(単位:基金、百万円)
所轄省名 年度
平成20年度 21年度 22年度 23年度 24年度
基金数 返納額 基金数 返納額 基金数 返納額 基金数 返納額 基金数 返納額 基金数 返納額
外務省 0 - 0 - 2 1,410 0 - 0 - 2 1,410
財務省 0 - 0 - 1 15,786 1 5,000 0 - 1 20,786
文部科学省 0 - 0 - 1 663 0 - 0 - 1 663
厚生労働省 1 86,779 1 6,407 2 34,160 0 - 0 - 3 127,347
農林水産省 11 20,538 20 32,110 42 269,004 19 28,995 20 18,568 74 369,218
経済産業省 2 1,008 4 1,027 8 21,125 2 261 1 3 11 23,425
国土交通省 1 130 3 9,611 7 13,458 4 2,805 2 3,190 10 29,195
環境省 0 - 0 - 1 487 0 - 0 - 1 487
防衛省 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - 0 -
15 108,456 28 49,157 64 356,096 26 37,062 23 21,762 103 572,535
(注)
一つの基金が国庫への返納を複数回にわたり行っている場合があるため、各年度の基金数を合計しても計欄の基金数と一致しないものがある。

既存152基金のうち、国庫への返納を行ったのは8省所管の103基金で、返納額の合計は5725億円となっており、特に22年度は3560億円と多額となっている。主な返納理由は、事業期間の終了、事業仕分けの評価結果、18、20両年度の基金基準による見直し等によるものである。

一方で、基金の積増しを行っているものもあり、20年度から24年度までの間に、既存152基金へ国庫補助金等の交付による基金の積増しを行ったものの所管府省別の交付状況は、表5のとおりである。

表5 既存152基金への国庫補助金等の交付状況

(単位:基金、百万円)
所轄省名 年度
平成20年度 21年度 22年度 23年度 24年度
基金数 交付額 基金数 交付額 基金数 交付額 基金数 交付額 基金数 交付額 基金数 交付額
外務省 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - 0 -
財務省 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - 0 -
文部科学省 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - 0 -
厚生労働省 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - 0 -
農林水産省 28 74,490 14 25,396 9 5,388 5 10,126 5 15,218 28 130,621
経済産業省 4 57,208 1 104,000 1 30,800 1 132,400 1 3,900 4 328,308
国土交通省 5 8,624 5 7,751 2 1,001 1 76 2 11,041 5 28,495
環境省 2 11,170 1 170 1 170 1 170 1 170 2 11,850
防衛省 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - 0 -
39 151,493 21 137,318 13 37,360 8 142,772 9 30,330 39 499,274
(注)
一つの基金に対して、複数回にわたり国庫補助金等の交付による積増しを行っている場合があるため、各年度の基金数を合計しても計欄の基金数と一致しないものがある。

既存152基金のうち、基金の積増しを行ったのは4省所管の39基金で、積増し額の合計は4992億円となっており、このうちの6基金については毎年度、積増しを行っている。そして、4省が積増しした4992億円のうち、当初予算によるものが936億円、補正予算又は予備費(以下「補正予算等」という。)によるものが4056億円となっており、既存152基金へ交付された国庫補助金等の約8割が補正予算等によるものとなっている。

イ 20年度から24年度までに新規に設置造成された基金の状況

20年度から24年度までに、7府省(前記11府省のうち、外務省、財務省、文部科学省及び防衛省は該当なし。合同事業(注4)を含む。)が国庫補助金等を交付するなどして、161基金(54基金法人)が新規に設置造成された(以下、20年度から24年度までに新規に設置造成された161基金を「新規161基金」という。)。54基金法人のうち、新たに基金法人となったものは、39基金法人であった。そして、新規161基金のうち、基金の事業間の配分変更のみで設置造成された厚生労働省所管の1基金を除く160基金に係る所管府省別の20年度から24年度までの国庫補助金等の交付状況は、表6のとおりである。

(注4)
合同事業  複数の府省が一つの基金の設置造成のために、それぞれ国庫補助金を交付し、それらを原資として一つの基金を設置造成しているもの

表6 新規161基金のうち160基金への国庫補助金等の交付状況

(単位:基金、百万円)
所管府省等名 年度
平成20年度 21年度 22年度 23年度 24年度
基金数 交付額 基金数 交付額 基金数 交付額 基金数 交付額 基金数 交付額 基金数 交付額
内閣府 0 - 12 7,000 0 - 1 3,200 0 - 13 10,200
厚生労働省 0 - 9 830,625 6 212,928 4 71,410 3 94,023 16 1,208,988
農林水産省 17 74,291 19 110,311 7 10,226 14 153,741 22 180,841 56 529,413
経済産業省 6 19,000 4 276,125 9 220,890 25 889,415 25 630,715 59 2,036,148
国土交通省 2 4,800 3 44,669 3 4,660 1 21,885 3 1,849 8 77,863
環境省 0 - 2 6,000 1 1,000 0 - 1 428 4 7,428
合同事業 0 - 2 626,769 2 310,399 1 144,600 2 50,520 4 1,132,288
25 98,091 51 1,901,502 28 760,104 46 1,284,253 56 958,378 160 5,002,330
注(1)
一つの基金に対して、複数回にわたり国庫補助金等の交付による積増しを行っている場合等があるため、各年度の基金数を合計しても計欄の基金数と一致しないものがある。
注(2)
合同事業による4基金は、3省合同事業である総務省、経済産業省及び環境省所管のグリーン家電普及促進基金と経済産業省、国土交通省及び環境省所管の環境対応住宅普及促進基金、2省合同事業である総務省及び経済産業省所管のコンテンツ海外展開等促進基金と国土交通省及び環境省所管の耐震・環境不動産支援基金である。

160基金の設置造成のために7府省から交付された国庫補助金等の交付額の合計は、5兆0023億円となっている。そして、このうち、当初予算によるものが2544億円、補正予算等によるものが4兆7478億円となっており、交付された国庫補助金等の9割以上が補正予算等によるものとなっている。所管府省別に基金数をみると、農林水産省、経済産業省各所管の基金を合計すると全体の約7割を占める状況となっている。また、基金の設置造成のために交付された国庫補助金等の額の合計は、経済産業省が2兆円、厚生労働省が1兆円をそれぞれ超えているほか、合同事業による基金の設置造成のために交付された国庫補助金等の額の合計も1兆円を超えている。

合同事業である4基金のうち、2基金は3省合同事業によるもので、総務省、経済産業省及び環境省所管のグリーン家電普及促進基金と、経済産業省、国土交通省及び環境省所管の環境対応住宅普及促進基金である。これら2基金(国庫補助金交付額計1兆0817億円)を設置造成した基金法人は、いずれも一般社団法人環境パートナーシップ会議(以下「パートナーシップ会議」という。)であり、このほかにもパートナーシップ会議は、経済産業省所管の17基金(国庫補助金交付額計1兆1762億円)及び国土交通省所管の2基金(国庫補助金交付額計523億円)を設置造成しており、交付された国庫補助金の合計額は2兆3104億円となっている。また、厚生労働省所管の17基金(基金の事業間の配分変更のみで設置造成された1基金を含む。)のうち、12基金を設置造成した中央職業能力開発協会(以下「開発協会」という。)に交付された交付金の合計額は9950億円となっている。このように基金を設置造成するための国庫補助金等が特定の基金法人に集中している状況が見受けられた。

新規161基金の所管府省別の推移(20年4月1日から25年3月31日まで)は、表7のとおりである。

表7 新規161基金の所管府省別の推移

(単位:法人、基金、百万円)
所轄省名 時点
平成20年4月1日 21年4月1日 22年4月1日 23年4月1日 24年4月1日 25年3月31日
法人数 基金数 法人数 基金数 法人数 基金数 法人数 基金数 法人数 基金数 法人数 基金数
基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
内閣府 0 0 0 0 11 11 12 12 11 11 1 1
-
(-)
-
(-)
6,200
(6,200)
5,052
(5,052)
3,748
(3,748)
178
(178)
厚生労働省 0 0 0 0 2 9 3 12 4 14 4 14
-
(-)
-
(-)
455,821
(455,821)
515,206
(515,192)
313,434
(313,434)
295,063
(295,063)
農林水産省 0 0 9 17 14 32 14 27 11 27 15 33
-
(-)
71,311
(69,935)
144,531
(140,205)
71,309
(64,926)
197,285
(185,383)
324,315
(304,810)
経済産業省 0 0 5 6 8 9 9 15 7 35 10 52
-
(-)
18,999
(18,999)
290,547
(290,547)
242,137
(242,137)
1,070,979
(1,070,979)
1,267,124
(1,267,124)
国土交通省 0 0 1 2 2 5 2 6 2 6 2 6
-
(-)
4,800
(4,800)
42,671
(42,671)
10,159
(10,159)
24,406
(24,406)
8,473
(8,473)
環境省 0 0 0 0 1 2 1 3 1 3 1 4
-
(-)
-
(-)
5,797
(5,797)
4,986
(4,986)
2,737
(2,737)
1,216
(1,216)
合同事業 0 0 0 0 1 2 1 2 1 2 3 4
-
(-)
-
(-)
529,887
(529,887)
383,426
(383,426)
178,486
(178,486)
136,692
(136,692)
0 0 15 25 37 70 40 77 35 98 34 114
-
(-)
95,111
(93,735)
1,475,456
(1,471,130)
1,232,279
(1,225,882)
1,791,078
(1,779,176)
2,033,063
(2,013,559)
(注)
パートナーシップ会議が、経済産業省、国土交通省及び合同事業の基金を保有しているため、各所管府省等の法人数を合計しても計欄の法人数と一致しないものがある。

新規161基金のうち、25年3月31日時点において基金保有額があるものは、7府省所管の114基金(34基金法人、基金保有額2兆0330億円)であり、47基金が25年3月31日までに廃止されている。また、47基金が廃止された理由は、事業期間の終了、事業仕分けによる評価結果等によるものであった。そして、25年3月31日時点において基金保有額がある114基金の中には、既に新規申請の受付を終了していて、過去に採択した事業の後年度負担に係る事業のみを実施している38基金が含まれている。

また、新規161基金及びそのうち25年3月31日時点において基金保有額がある114基金を運営形態、使途別に示すと表8のとおりである。

表8 新規161基金の運営形態・使途別状況

(単位:基金、百万円)
運営形態・使途 時点
161基金 114基金(平成25年3月31日時点) 廃止数
基金数
(a)
基金数
(b)
基金保有額 (うち国庫補助金
等相当額)
基金数
(a-b)
取崩型 補助事業 137 92 1,956,746 (1,937,241) 45
利子助成事業 15 13 23,879 (23,879) 2
調査等事業 3 3 2,693 (2,693) 0
その他事業 2 2 2,467 (2,467) 0
157 110 1,985,786 (1,966,282) 47
回転型 貸付事業 1 1 0 (0) 0
その他事業 1 1 35,000 (35,000) 0
2 2 35,000 (35,000) 0
保有型 債務保証事業 1 1 5,016 (5,016) 0
その他事業 1 1 7,260 (7,260) 0
2 2 12,277 (12,277) 0
合計 161 114 2,033,063 (2,013,559) 47
(注)
一つの基金の中に区分経理された複数の事業がある基金は、区分経理された事業ごとに一つの基金として集計している。また、複数の運営形態・使途が併存している基金については、主な運営形態・使途により分類している。

新規161基金の運営形態は、取崩型157基金、回転型2基金及び保有型2基金となっており、ほとんどが取崩型であり、運用型の設置造成はなかった。また、25年3月31日までに廃止された47基金は、全て取崩型であった。

前記のとおり、新規161基金の中には、基金事業の終了に伴い基金を廃止したり、使用見込みが低いものとして基金規模を縮小したりなどしたために、20年度から24年度までの間に基金保有額の一部又は全部を国庫へ返納した基金があり、その所管府省別の状況は、表9のとおりである。

表9 新規161基金の国庫への返納状況

(単位:基金、百万円)
所管府省等名 年度
平成20年度 21年度 22年度 23年度 24年度
基金数 返納額 基金数 返納額 基金数 返納額 基金数 返納額 基金数 返納額 基金数 返納額
内閣府 0 - 0 - 0 - 0 - 10 549 10 549
厚生労働省 0 - 6 353,353 0 - 4 25,538 2 3,318 8 382,210
農林水産省 0 - 4 10,264 16 57,101 8 2,580 6 2,923 26 72,869
経済産業省 0 - 0 - 4 1,820 2 479 5 10,517 9 12,816
国土交通省 0 - 1 5,902 1 3,569 2 136 3 999 4 10,607
環境省 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - 0 -
合同事業 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - 0 -
0 - 11 369,519 21 62,491 16 28,733 26 18,308 57 479,053
(注)
一つの基金が国庫への返納を複数回にわたり行っている場合があるため、各年度の基金数を合計しても計欄の基金数と一致しないものがある。

新規161基金のうち、国庫への返納を行ったのは5府省所管の57基金で、返納額の合計は4790億円となっている。特に21年度の返納額が3695億円と多額となっている理由は、平成21年度第1次補正予算について、「平成21年度第1次補正予算の執行の見直しについて」(平成21年10月閣議決定)により、基金の設置造成のために既に交付された国庫補助金等についても執行の見直しの対象となって国庫への返納が行われたことなどによるものである。また、この執行の見直しによって、基金造成のために交付を予定していた国庫補助金等の執行停止、平成21年度第2次補正予算において第1次補正予算分を減額して国庫補助金等を交付する補正減の措置も執られた。

20年度から23年度までに国庫補助金等により新規に設置造成された基金は121基金であり、この多くは、緊急経済対策の一環として設置造成されていて、設置造成時における事業の終了(後年度負担が発生する事業については新規申請の受付終了)までの期間は、事業期間の設定のない19基金を除く102基金の約9割に当たる91基金が、3年以内(設置造成した年度を除く。)と短く設定されている。新規161基金から24年度に新規に設置造成された40基金を除いた121基金のうち、基金の使途が債務保証事業や補助事業のうち突発的に発生する事故の際の補塡を行う事業等であるため執行率の算出になじまない10基金を除いた111基金について、24年度末までに基金事業のために支出された額(以下「事業支出」という。)を基金造成のために交付された国庫補助金等の交付額、運用益等の基金の収入額で除して算出した執行率の状況は、表10のとおりである。

表10 新規161基金のうち111基金の平成24年度末までの執行率の状況(基金別)

(単位:基金)
平成24年度末の基金保有額 設置
造成
年度
基金数 執行率別の基金数
0%以上25%未満 25%以上50%未満 50%以上75%未満 75%以上100%
保有額なし 20年度 16 3 3 4 6
21年度 27 1 2 4 20
22年度 2 1 0 0 1
23年度 2 1 0 0 1
47 6 5 8 28
保有額あり 20年度 8 0 5 2 1
21年度 17 2 3 5 7
22年度 10 4 1 3 2
23年度 29 15 5 3 6
64 21 14 13 16
合計 111 27 19 21 44

既に廃止されて24年度末に基金保有額がない47基金についてみると、19基金において事業終了までの執行率が75%を下回っている。また、24年度末に基金保有額があり、事業継続中である64基金についてみると、25年度以降においても引き続き事業が行われるものの、21基金における執行率が25%を下回っている。

また、前記の111基金全体における24年度末までの執行率は、表11のとおりである。

表10 新規161基金のうち111基金の平成24年度末までの執行率の状況(基金別)

(単位:基金、百万円)
設置造成規模 平成24年度末の基金保有額 基金数 事業支出計
(a)
収入額計
(b)
執行率
(a/b)
1000億円以上 保有額なし 8 318,056 380,321 83.6%
保有額あり 26 2,046,787 2,946,768 69.4%
34 2,364,843 3,327,089 71.0%
1000億円未満 保有額なし 39 56,679 72,336 78.3%
保有額あり 38 52,753 136,216 38.7%
77 109,432 208,553 52.4%
全体 保有額なし 47 374,735 452,657 82.7%
保有額あり 64 2,099,541 3,082,984 68.1%
合計 111 2,474,276 3,535,642 69.9%
(注)
事業期間を短縮することとなり、基金の設置造成のために交付された国庫補助金等を交付された年度中に国庫へ返納している場合には、その額は収入額に含めていない。

111基金の全体の執行率は、69.9%となっている。これは、111基金のうち、基金の設置造成のための国庫補助金等の交付額が100億円以上の34基金における収入額の計が全体の9割以上を占めていて、これらの基金の執行率が71.0%となっていることなどによるものである。一方で、基金の設置造成のための国庫補助金等の交付額が100億円未満である77基金の執行率は52.4%となっている。

ウ 25年3月31日時点の基金の状況等

既存152基金と新規161基金を合わせた313基金のうち、25年3月31日時点において基金保有額がある10府省(前記11府省のうち、文部科学省は該当なし。2省合同事業及び3省合同事業を含む。)所管の188基金(75基金法人、基金保有額2兆6155億円)における所管府省別の状況は、表12のとおりである。

表12 平成25年3月31日時点の所管府省別の基金保有額

(単位:法人、基金、百万円)
所管府省等名 法人数 基金数 基金保有額 (うち国庫補助金等相当額)
内閣府 1 1 178 (178)
外務省 2 2 1,134 (1,134)
財務省 1 2 5,303 (3,421)
厚生労働省 4 14 295,063 (295,063)
農林水産省 31 65 544,444 (513,591)
経済産業省 15 63 1,497,528 (1,486,292)
国土交通省 17 28 123,625 (97,472)
環境省 2 8 11,290 (8,323)
防衛省 1 1 254 (254)
合同事業 3 4 136,692 (136,692)
75 188 2,615,515 (2,542,423)
(注)
パートナーシップ会議が、経済産業省、国土交通省及び合同事業の基金を保有しているため、各所管府省等の法人数を合計しても計欄の法人数と一致しない。

所管府省別に基金保有額をみると、経済産業省所管の基金が1兆4975億円と最も多額となっており、厚生労働省、農林水産省、国土交通省各所管の基金も1000億円を超えている。また、同様に基金数をみると、農林水産省、経済産業省各所管の基金が、それぞれ全体の約3分の1ずつを占めている。

20年度から24年度までに、基金の設置造成のために交付された国庫補助金等の額及び基金から国庫へ返納された額の所管府省別の状況は、表13のとおりである。

表13 平成20年度から24年度までの基金への国庫補助金等の交付状況及び基金の国庫への 返納状況

(単位:基金、百万円)
所管府省 等名 国庫補助金等の交付額
(平成20年度~24年度)
国庫への返納額
(20年度~24年度)
基金数 交付額 基金数 返納額
内閣府 13 10,200 10 549
外務省 0 - 2 1,410
財務省 0 - 1 20,786
文部科学省 0 - 1 663
厚生労働省 16 1,208,988 11 509,558
農林水産省 84 660,034 100 442,088
経済産業省 63 2,364,456 20 36,241
国土交通省 13 106,359 14 39,803
環境省 6 19,278 1 487
防衛省 0 - 0 -
合同事業 4 1,132,288 0 -
199 5,501,605 160 1,051,588

各所管府省から基金の設置造成のために交付された国庫補助金等の額の合計は、5兆5016億円と多額となっている一方、事業仕分け等による見直しにより事業期間を短縮しているものなども含め、基金から国庫へ返納された額の合計も1兆0515億円と多額になっている。また、国庫への返納は行っていないものの、基金の設置造成時に見込んでいたほどの事業支出がなかったことなどから、基金事業の期間を延長したり、複数事業がある基金の中で別の事業に配分変更をしたりなどしている基金も見受けられた。さらに、基金から国庫へ返納された額の中には、基金の見直しを適時適切に実施していれば、使用見込みのない額の返納時期を繰り上げて早期に国庫へ返納することができたものが見受けられた。

上記の使用見込みのない額の返納時期を繰り上げて早期に国庫へ返納することができた事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2>

所管府省名 基金法人名 基金名 早期に国庫へ返納できた額
厚生労働省 中央職業能力開発協会 緊急人材育成・就職支援基金(中小企業等雇用創出支援事業等4事業) 255億3854万円

開発協会は、平成21年度に厚生労働省から交付金の交付を受けて、「緊急人材育成・就職支援基金(中小企業等雇用創出支援事業、長期失業者等支援事業、日系人離職者支援事業及び研修生・技能実習生の帰国旅費立替払事業)」(以下、これらを合わせて「4支援基金」という。)を設置造成している。4支援基金は、取崩型等で、十分な技能及び経験を有しない求職者を期間を定めて雇用して人材の育成を図る事業主に対し、実習型雇用助成金の支給等を行うものである。同省から開発協会への交付金は、平成21年度第1次補正予算により4支援基金計2166億3100万円が交付された。その後、21年10月に「平成21年度第1次補正予算の執行の見直しについて」により、4支援基金については、23年度末としていた新規申請の受付の終了時期を21年度末に短縮し、22、23両年度分に相当する1605億7719万円を21年12月に国庫へ返納している。

検査したところ、4支援基金の新規申請の受付は21年度末で終了しており、この時点の基金保有額から21年度受付分の後年度負担分を除いた額は、使用見込みのない額となっていたが、開発協会及び同省は、基金の取扱いを検討しておらず、使用見込みのない額が国庫へ返納されないまま、開発協会が保有し続けている状況となっていた。その後、23年7月の閣議決定により、別事業の財源の一部に同省所管の基金の剰余金等が充てられることとなり、4支援基金からは、24年2月に255億3854万円が国庫へ返納された。

基金基準によると、新規申請の受付が終了した事業については、受付を終了した時点で、直ちに国庫への返納等の検討に着手することとされているが、上記のとおり、開発協会が1年以上使用見込みのない額を保有し続けていた。


<事例3>

所管府省名 基金法人名 基金名 早期に国庫へ返納できた額
経済産業省 一般社団法人環境パートナーシップ会議 環境対応車普及促進基金(環境対応車普及促進事業、平成21年度第2次補正予算) 12億7242万円

パートナーシップ会議は、平成21年度に経済産業省から国庫補助金の交付を受けて、「環境対応車普及促進基金(環境対応車普及促進事業)」を設置造成している。同基金は、取崩型で、環境性能に優れた自家用自動車の購入に対する補助を行うものである。同省からパートナーシップ会議への国庫補助金は、平成21年度第2次補正予算により2304億0061万円が交付された。

検査したところ、パートナーシップ会議から委託を受けて補助金の申請の受付等を行う受託事業者に対して支払った2303億8371万円(補助金として交付する金額を含む。)のうち、23年4月までに一部を精算して、受託事業者から返金のあったものなど12億7242万円について、パートナーシップ会議及び同省は、基金の取扱いを検討しておらず、使用見込みのない額が国庫へ返納されないまま、パートナーシップ会議が基金廃止まで保有し続けている状況となっていた。その後、基金事業を終了したことから、パートナーシップ会議は、25年3月に基金を廃止し、同月に基金保有額全額の13億7626万円を国庫へ返納した。

基金基準によると、新規申請の受付が終了した事業については、受付を終了した時点で、直ちに国庫への返納等の検討に着手することとされているが、上記のとおり、パートナーシップ会議が1年以上使用見込みのない額を保有し続けていた。

事例2、3と同様の事態があった基金は、表14のとおりである。

表14 事例2、3と同様の事態があった基金(5基金)

所管府省名 基金法人名 基金名 早期に国庫へ返納できた額
農林水産省 財団法人魚価安定基金 国産水産物安定供給推進事業資金(直接取引推進事業等2事業) 13億9450万円
経済産業省 一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター 債務保証基金 1億4481万円
一般社団法人新エネルギー導入促進協議会 新エネルギー導入促進基金 59億7856万円
国土交通省 一般社団法人環境パートナーシップ会議 環境対応車普及促進基金(環境対応車普及促進事業、平成21年度第2次補正予算) 3億0216万円

所管府省は、基金の設置造成に当たり、基金廃止時に多額の国庫返納が生ずることがないように、設置造成時に基金事業の実施に必要となる額を精査して国庫補助金等を交付することは当然であるが、それとともに、基金の執行途中であっても、執行状況等を勘案するなどして適時適切に見直しを行い、基金規模が適切となるよう留意する必要があると認められる。

(2) 基金基準の状況等

ア 基金基準による見直し等の実施状況

(ア) 23年度の基金基準による見直しの実施状況

前記のとおり、18、20両年度に行われた基金基準による見直し、さらに、21年11月に行われた事業仕分け等により、国庫補助金等により設置造成された基金に対する見直しが実施され、使用見込みのない額が国庫へ返納されるなどしている。しかし、これ以降の基金の見直しについては、20年12月に、20年度の基金基準による見直しの状況を内閣官房の行政改革推進本部事務局が公表した「補助金等の交付により造成した基金の見直し」において、所管府省は、「23年度に事業の実績を踏まえて改めて見直しを行うこと」とされていたが、会計検査院が検査を開始した24年11月時点で、23年4月1日時点において基金保有額があった179基金を所管していた10府省(前記11府省のうち、文部科学省は該当なし。3省合同事業を含む。)のうち、23年度の基金基準による見直しを実施し公表している所管府省は、経済産業省のみであった。

基金の見直しについては、一度実施すれば足りるというものではなく、基金事業の進捗状況、基金の執行状況等により、その後においても新たに使用見込みが低い基金に該当すると判断されることがあり得るので、定期的に実施する必要があり、上記のように見直しが実施されていない状況は適切とは認められない。実際に、使用見込みの低い基金を保有していて、定期的な見直しが実施されていれば、使用見込みのない額が国庫へ返納されたと考えられる事態も見受けられた。

上記の使用見込みの低い基金を保有している事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例4>

所管府省名 基金法人名 基金名 使用見込みのない額
国土交通省 財団法人民間都市開発推進機構 事業促進支援基金 13億4515万円

財団法人民間都市開発推進機構(以下「民都機構」という。)は、平成11年度に国土交通省(13年1月5日以前は建設省。以下同じ。)から国庫補助金の交付を受けて、「事業促進支援基金」を設置造成している。同基金は、運用型で、民都機構自らが事業促進支援業務を行うものであり、26年度に基金事業を終了することになっている。

検査したところ、民都機構は、21年に会計検査院の指摘を受けたことなどから基金規模の見直しを行っており、22年4月までに設置造成した基金本体200億円全額のうち国庫補助金分150億円を国庫へ返納し、22年度以降はそれまでに積み立てていた基金の運用益の残余(事業促進支援準備預金)により基金事業を実施していた。そして、事業促進支援業務の支出額は、22年度4801万円、23年度4804万円、24年度3166万円であり、24年度末の基金保有額は、18億2664万円(国庫補助金相当額13億6998万円)となっており、基金残余額の国庫への返納は事業終了時に行うとしていた。

しかし、25年度以降の所要見込額を算出したところ、基金事業は26年度で終了すること、事業促進支援業務の対象となる案件は3件しかないことなどから、所要見込額は3310万円となっていた。したがって、24年度末の基金保有額との差額17億9353万円(国庫補助金相当額13億4515万円)が使用見込みのないまま民都機構に滞留していた。

また、民都機構及び国土交通省は、20年度の基金基準による見直しを行った際、次回の見直しを23年度に実施するとしていたが、見直しを実施していなかった。民都機構が基金基準による見直しを23年度に実施していれば、使用見込みの低い基金に該当すると判断され、事業終了までの所要見込額を除いた額のうち国庫補助金相当額については速やかに国庫へ返納されたものと考えられる。

なお、民都機構は、会計検査院の検査を踏まえて、使用見込みのない額を国庫へ返納した。

(イ) 平成21年度補正予算において設けられた基金等の執行状況等の公表の実施状況

財務省は、「平成21年度補正予算において設けられた基金等の執行状況等の公表について(連絡)」により、平成21年度補正予算において設置造成された基金については、各基金の設置造成のための国庫補助金等の交付額、運用収入、執行済額等について、少なくとも半年に一度公表を行うこと、基金事業の終了まで継続して公表を行うことなどとして、各府省に公表様式を示している。しかし、会計検査院が検査を開始した24年11月時点において、平成21年度第1次補正予算により設置造成された46基金のうち、都道府県等に設置造成された基金を除く18基金を所管している6省(3省合同事業を含む。)の公表様式に基づく公表の実施状況についてみると、24年度執行分まで継続して公表を行っていたのは厚生労働省のみであり、環境省及び3省合同事業は21年度執行分のみを公表しており、農林水産省、経済産業省及び国土交通省は公表していなかった。

また、財務省による連絡は、21年6月以前に設置造成された基金についても、執行状況の把握、公表等について、これに準じた取組を行うこととしているが、平成21年度第1次補正予算により設けられた基金以外についてみると、このような取組を実施している所管府省はなかった。

前記(ア)及び(イ)のとおり、23年度に実施する予定となっていた基金基準による見直しを実施していなかったり、基金の執行状況等を公表していなかったりしている基金が多く見受けられたが、これらについては、基金事業の進捗状況、基金の執行状況等に合わせて、定期的に実施して、公表する必要があると認められる。


イ 基金基準に対する検討

基金法人及び所管府省が基金の見直し等を実施するに当たっては、基金基準に定める基準によることとなるが、基準が遵守されていない事態、基準等の検討が必要な事態が見受けられた。

(ア) 基金基準に定める基準が遵守されていない事態
a 補助金交付要綱等への明文化

基金基準は、①既存の基金については、所管府省が18年度の初回見直しに合わせ基金法人と協議し、補助金交付要綱等の所要の改正を行い、所管府省が指導監督を行う旨を明記するとともに、基金基準に定める基準を盛り込むよう努めること、②新たに基金を設置造成する場合については、所管府省は基金の設置造成を目的とした国庫補助金等を交付する際に補助金交付要綱等に基金基準に定める基準を明記することとしている。

検査対象とした313基金のうち、2回目の基金基準による見直しが実施された20年度より前に設置造成された既存152基金については、補助金交付要綱等に基金基準に基づき指導監督する旨の記載が明記されているものは108基金であり、約7割の基金について補助金交付要綱等の改正等により明記されていた。一方で、20年度以降に設置造成された新規161基金のうち、23年度までに設置造成された121基金については、補助金交付要綱等にその旨の記載が明記されているものは約4割の50基金となっていた。このように、補助金交付要綱等に基金基準に基づき指導監督を行うことを明記していないことが、23年度に実施する予定となっていた基金基準による見直しが実施されなかった原因の一つになったと考えられる。また、新規161基金のうち、24年度に新規に設置造成された40基金については、補助金交付要綱等に基金基準に基づき指導監督する旨の記載が明記されているものは24基金であるが、この24基金はいずれも24年度の補正予算等による国庫補助金等により設置造成された基金である。なお、検査対象とした313基金のうち、25年3月31日時点において基金保有額がある188基金については、補助金交付要綱等にその旨の記載が明記されているものは114基金である。

今後、新規に設置造成する基金については、国庫補助金等を交付する際に補助金交付要綱等に基金基準に定める基準を明記すること、今回の検査対象とした基金のうち、基金基準に定める基準が補助金交付要綱等に明記されていない基金については、基金法人と協議し、基金基準に定める基準を盛り込むよう努めるとともに、基金法人に対して、基金により実施している事業に関して所管府省が指導監督を行う場合の基準として基金基準の周知を図ることが必要であると認められる。

b 基本的事項の公表の実施

基金基準は、新たに基金を設置造成した場合、基金法人及び所管府省において、基金の基本的事項として、「基金の名称、基金額、基金のうち国庫補助金等相当額、基金事業の概要、基金事業を終了する時期、定期的な見直しの時期、基金事業の目標について、基金造成後速やかに公表すること」としている。しかし、20年度以降に設置造成された基金についてみると、会計検査院が検査を開始した24年11月時点において、基金の設置造成後に基本的事項の公表を行っていた所管府省は、経済産業省のみであった。

新規に国庫補助金等の交付により基金を設置造成した場合に、設置造成した基金額、基金事業の概要等について公表することは、基金の透明性を確保するために必要であると認められる。

c 保有割合の算出における事業見通しの算出方法

基金基準は、定期的な見直しの際に、基金事業の今後の見通し又はこれまでの実績からみて、基金の規模が過大となっていないかなどの状況を客観的に把握するため、基金の保有割合を算出することとしている。そして、基金の保有割合の算出に当たっては、基金基準において例示された算出式を参考とし、「基金法人及び関係府省間で協議された合理的な事業見通し又は実績を用いて算出すること」としており、当該算出に用いた算出式及び数値を公表することとしている。例示されている算出式の一例を示すと、取崩型の補助事業は、「直近年度末の基金額÷(事業が完了するまでに必要となる補助・補てん額及び管理費)」となっており、基金事業が完了するまでに必要となる補助額、事業費の見込額等を用いることなどとしている。

20年度の基金基準による見直しの対象となった127基金のうち、既に基金事業を終了していて保有割合を算出していないものなどの14基金を除く113基金の公表資料をみると、保有割合が「1」を超えているものが30基金、「1」であるものが46基金及び「1」未満であるものが37基金となっていた。しかし、保有割合を「1」以下としているものの中には、見込額の算出に過去の実績額等が反映されておらず、結果として、事業終了時に多額の基金を国庫へ返納しているものが見受けられた。

上記の基金基準による保有割合の算出に当たり、過去の実績額等が反映されていなかった事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例5>

所管府省名 基金法人名 基金名
農林水産省 社団法人大日本水産会 ノリ養殖業構造調整・競争力強化助成基金

社団法人大日本水産会(以下「水産会」という。)は、平成18年度に農林水産省(水産庁)から国庫補助金の交付を受けて、「ノリ養殖業構造調整・競争力強化助成基金」を設置造成している。同基金は、取崩型で、ノリ自動乾燥機等の処分に係る経費の助成を行うものである。同省から水産会への国庫補助金は、18年度に6億3259万円、19年度に6億1727万円が交付された。

検査したところ、20年度の基金基準による見直しにおいて、同基金は、19年度末の基金保有額12億0986万円に対し、基金事業が完了するまでに必要となる助成額及び管理費を21億3800万円として、保有割合を「0.6」としており、20年度に国庫補助金により2億8720万円を基金に積増ししていた。

しかし、同基金は、22年度で基金事業が終了することとなっており、20年度から22年度までに21億3800万円を執行するには単年度で約7億円の助成をすることとなるが、事業支出は18年度961万円、19年度3245万円であり、基金事業が完了するまでに必要としている見込額と過の実績額が大きくかい離している状況であった。そして、20年度から22年度までの事業支出の合計額は2億3879万円にとどまり、12億7674万円を国庫へ返納することとなった。

また、23年度に実施する予定となっていた基金基準による見直しが一部しか実施されていなかったことなどから、24年4月1日時点において基金保有額があった185基金を対象として、基金法人及び所管府省から、基金基準に準じて算出した24年4月1日時点の保有割合、その算出根拠等について調書を徴した。対象とした185基金のうち、24年度中に基金を廃止したもの、23年度末までに新規申請の受付を終了しているものなどを除く101基金についてみると、保有割合が「1」を超えているものが30基金、「1」であるものが39基金及び「1」未満であるものが32基金となっていた。この保有割合の算出方法は、単年度当たりの見込額に年数を乗ずるなどの算出式を用いているものが51基金、見込額の合計のみとなっているものが36基金、その他のものが14基金となっている。このうち、単年度当たりの見込額に年数を乗ずるなどの算出式を用いている51基金について、過去の単年度当たりの実績額と比較すると、9基金が過去の実績額の2倍以上を見込んでいる状況が見受けられた。また、見込額の合計のみを用いているものについては、見込額に関する説明を十分に行っているとはいえない状況となっていた。

前記のとおり、基金の保有割合の公表に併せて、保有割合の算出に用いた算出式及び数値は公表されているが、基金事業が完了するまでに必要となる見込額の数値については、単年度当たりの見込額をいくらとしているのか、何年度分の見込額であるのかなど、どのような積算によりその見込額が算出されたものかが示されておらず、合理的な事業見通し又は実績を用いて算出したものであるかどうかを判断することができない状況となっている。

基金基準による見直しの際の保有割合の算出において、合理的な事業見通し等を用いることは、基金の規模を適切に管理するために必要であると認められる。また、基金基準において、算出式及び数値を公表することは、次の見直し時期に事業見通しの的確性を検証することも目的となっており、合理的な事業見通し又は実績を用いて算出したものであるかを判断するための材料として、見込額の算出方法についても公表する必要があると認められる。

d 新規申請の受付が終了した事業の見直し

基金基準は、後年度負担が発生する事業について、新規申請の受付が終了した時点で、基金法人は、直ちに国庫への返納等の検討に着手することとしており、受付を終了した年度以降も、毎年度、支払財源等として必要のない額を国庫へ返納するなど、基金の取扱いを検討して、当該検討結果を所管府省に報告し、基金法人及び所管府省はこれを公表することとしている。

24年4月1日時点において基金保有額があった185基金のうち、新規申請の受付が終了していて、後年度負担に係る事業のみを行っている基金は39基金である。これらの39基金はいずれも見直しの状況を公表していなかったが、毎年度見直しを実施して、使用見込みのない額を国庫へ返納している基金も見受けられる一方、見直しを実施していない基金もあった。

そこで、24年度中に新規申請の受付が終了して、後年度負担に係る事業のみを行っている基金も含めて、検査したところ、基金法人が多額の使用見込みのない額を保有したままとなっている事態が見受けられた。この使用見込みのない額は、後年度負担に係る事業を行うために必要となる額を超えるものであり、以後の基金事業において必要とされることはない額であることから、新規申請の受付が終了した時点及び受付が終了した年度以降の毎年度において、基金に使用見込みのない額がないかの見直しを実施する必要があり、その見直しの結果、支払財源等として必要のない額がある場合は、早急に国庫へ返納する必要があると認められる。

上記の使用見込みのない額を保有している事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例6>

所管府省名 基金法人名 基金名 使用見込みのない額
厚生労働省 中央職業能力開発協会 緊急人材育成・就職支援基金(新卒者就職実現プロジェクト事業) 25億0101万円

開発協会は、平成22年度に厚生労働省から交付金の交付を受けて、「緊急人材育成・就職支援基金(新卒者就職実現プロジェクト事業)」を設置造成している。同基金は、取崩型で、事業主に対し、3年以内既卒者の採用拡大のための奨励金の支給等を行うものである。同省から開発協会への交付金は、平成22年度予算予備費により、新規申請の受付の終了時期を22年度末と設定して、118億円が交付された。その後、平成22年度補正予算により、492億円を交付し、新規申請の受付の終了時期を23年度末に延長している。

検査したところ、新規申請の受付は23年度末で終了しており、後年度負担分を除いた額は、使用見込みのない額となっていたが、開発協会及び同省は、基金の取扱いを検討していなかった。そして、25年3月に、「緊急人材育成・就職支援基金(若者育成支援事業)」へ配分変更を行っているものの、開発協会が使用見込みのない額を保有し続けている状況となっていた。

24年度末の基金保有額128億7029万円に対し、25年度以降の後年度負担額は103億6928万円となっており、この差額25億0101万円が使用見込みのない額となっていた。

なお、開発協会は、会計検査院の検査を踏まえて、使用見込みのない額を国庫へ返納することとした。


<事例7>

所管府省名 基金法人名 基金名 使用見込みのない額
経済産業省 一般社団法人環境パートナーシップ会議 環境対応車普及促進基金(低炭素型雇用創出産業立地推進事業) 342億3064万円

パートナーシップ会議は、平成22年度に経済産業省から国庫補助金の交付を受けて、「環境対応車普及促進基金(低炭素型雇用創出産業立地推進事業)」を設置造成している。同基金は、取崩型で、国内雇用の創出に寄与しつつ国内への投資を加速し設備等を新増設する企業に対し補助事業を行うものである。同省からパートナーシップ会議への国庫補助金は、平成22年度予算予備費により1100億円が交付された。

検査したところ、新規申請の受付は22年11月18日で終了しており、22年度末までに交付決定が行われ、交付決定額は1095億2484万円となっていた。そして、基金造成額1100億円と交付決定額1095億2484万円に4億7515万円の差額が生じていた。また、交付決定を行った事業は、24年度末で、交付決定後に補助事業者の都合等により事業を取りやめたことなどにより交付決定額を減額したものが337億5548万円となっていた。したがって、補助金の新規申請の受付は終了していることから、これら計342億3064万円は使用見込みのない額となっていたが、パートナーシップ会議及び経済産業省は、基金の取扱いを検討しておらず、使用見込みのない額が国庫へ返納されることなく、パートナーシップ会議が保有し続けている状況となっていた。

24年度末の基金保有額430億3601万円に対し、25年度以降の後年度負担額は88億0537万円となっており、この差額342億3064万円が使用見込みのない額となっていた。

なお、パートナーシップ会議は、会計検査院の検査を踏まえて、使用見込みのない額を国庫へ返納した。


<事例8>

所管府省名 基金法人名 基金名 使用見込みのない額
国土交通省 日本自動車整備商工組合連合会 自動車整備近代化資金 5億9053万円

日本自動車整備商工組合連合会(以下「整商連」という。)は、昭和58年度に国土交通省(平成13年1月5日以前は運輸省。以下同じ。)から国庫補助金の交付を受けて、「自動車整備近代化資金」を設置造成している。同基金は、保有型等で、整備事業者が必要とする設備の近代化等のための資金の借入れに対する債務保証等の事業を行うものである。

検査したところ、新規申請の受付は22年度末で終了しており、現在は過去に採択したものの債務保証等を実施している状況となっていた。整商連は、債務保証等の新規申請の受付が終了したことに伴い、24年1月に使用見込みのない額6億3600万円を国庫へ返納しており、債務保証等の事業が終了する29年度に基金残余額を国庫へ返納することとしていた。

しかし、債務保証等の事業に必要な基金保有額は、債務保証残高等を基に算出されるもので、債務保証等の新規申請の受付が終了したことにより債務保証残高等は年々減少していくことから、必要な基金保有額も同様に減少していくこととなり、毎年度の見直しが必要となるが、整商連及び国土交通省は、基金の取扱いを検討しておらず、使用見込みのない額が国庫へ返納されることなく、整商連が保有し続けている状況となっていた。

24年度末の基金保有額25億9400万円(国庫補助金相当額9億7900万円)に対し、25年度以降の後年度負担額は7億7400万円となっており、この差額18億2000万円(国庫補助金相当額5億9053万円)が使用見込みのない額となっていた。

なお、整商連は、会計検査院の検査を踏まえて、使用見込みのない額を国庫へ返納した。


事例6、7、8と同様の事態があった基金は、表15のとおりである。

表15 事例6、7、8と同様の事態があった基金(12基金)

所管府省名 基金法人名 基金名 早期に国庫へ返納できた額
外務省 公益財団法人日中友好会館 東アジア青少年交流基金 8億9923万円
公益財団法人日韓文化交流基金 東アジア青少年交流基金 2億3504万円
厚生労働省 中央職業能力開発協会 緊急人材育成・就職支援基金(長期失業者等支援事業等3事業) 1億7730万円
農林水産省 全国農業協同組合連合会 担い手経営展開支援リース事業積立金 2億3128万円
経済産業省 社団法人全国石油協会 環境・安全等対策基金(立地最適化事業等2事業) 1億5500万円
日本商工会議所 人材対策基金 2億0621万円
一般社団法人環境パートナーシップ会議 環境対応車普及促進基金(レアアース等利用産業等設備導入事業等2事業) 103億2198万円
国土交通省 一般社団法人環境パートナーシップ会議 環境対応車普及促進基金(環境対応車普及促進事業、平成23年度第4次補正予算) 5億2900万円
(注)
全国農業協同組合連合会、日本商工会議所及びパートナーシップ会議は、会計検査院の検査を踏まえて、使用見込みのない額を国庫へ返納した。また、開発協会及び社団法人全国石油協会は、会計検査院の検査を踏まえて、使用見込みのない額を国庫へ返納することとした。なお、公益財団法人日中友好会館及び公益財団法人日韓文化交流基金については、後述の「(3)個別の基金の状況」の5及び表20を参照のこと。
e 基金事業が複数ある場合の公表状況

基金基準は、一つの基金において複数の基金事業を実施している場合、保有割合の算出に当たっては基金事業ごとの保有割合を算出することなどとしていて、基金事業ごとにその状況を公表することとしている。

しかし、20年度の基金基準に基づく公表資料をみると、一つの基金として保有割合が算出されていたものの中に、実際には、別々の国庫補助金等により設置造成されるなどしていて、一つの基金の中に区分経理された複数の基金事業がある基金が見受けられた。基金基準に定められているように、保有割合を算出するに当たっては、基金事業ごとに算出しなければ適切な保有割合を求めることはできないものであることから、基金事業ごとに算出して公表する必要があると認められる。

また、25年3月31日時点において基金保有額がある債務保証事業又は貸付事業を行っている25基金のうち、5基金は、債務保証事業又は貸付事業を実施していると同時に、基金を運用元本とする運用収入、債務保証事業の保証料収入、貸付事業の貸付利息収入等により、調査等事業等を実施している。これらの運用収入等を使用して調査等事業等を実施できることは補助金交付要綱等に規定されているところであるが、その事業の実施に当たっては、基金法人の自己財源による事業と同様の内容となっているなどしていて、明確に区分して経理がなされていない事態も見受けられた。しかし、これらの運用収入等による事業についても、国庫補助金等により設置造成された基金により行っている事業であることから、実施した事業及びこれに係る支出は、基金法人の自己財源による事業とは明確に区分して管理される必要があると認められる。

さらに、これらの基金については、基金基準による見直しにおいて、その対象を債務保証事業又は貸付事業のみとしていて、運用収入等による事業が公表の対象とされていなかったが、運用収入等による事業も国庫補助金等により設置造成した基金による事業であることから、公表する必要があると認められる。

上記の運用収入等による基金事業が公表されていない事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例9>

所管府省名 基金法人名 基金名
国土交通省 公益財団法人不動産流通近代化センター 信用・指導基金

公益財団法人不動産流通近代化センター(以下「近代化センター」という。)は、昭和55年度に国土交通省(平成13年1月5日以前は建設省。以下同じ。)から国庫補助金の交付を受けて、「信用・指導基金」を設置造成している。同基金は、保有型で、中小不動産業者が協業化を推進する事業等を行うために必要な資金の借入れに対する債務保証等を行うものである。

同省が定めた不動産流通近代化促進費補助金交付要綱によると、「補助金の運用益は、不動産流通市場の整備・近代化に関する指導、不動産業に関する総合的な調査研究、不動産取引に関する消費者及び不動産業者の啓発を図るための広報及び出版、不動産業者の業務に従事し、又は従事しようとする者に対する講習事業並びに不動産取引に関する相談の事業に要する経費に充当し、なお残余がある場合には、補助金に係る信用・指導基金に繰り入れるものとする。」とされており、また、「補助金について他の経理と区分して経理しなければならない。」とされている。

検査したところ、基金の運用益による事業は、近代化センターが自己財源で行う事業と同様であり、基金の運用益(年間約7000~9000万円)は近代化センターの経常収益に計上され、明確な区分経理がなされることなく経常費用の一部として全額が費消されていたが、基金の運用益がどのような事業の実施に用いられたかについては明確にすべきであると認められる。

また、20年度の基金基準による見直しとして公表された内容には、基金の運用益により実施している事業に関する記述は含まれていなかったが、これについても公表する必要があると認められる。


事例9と同様の事態があった基金は、表16のとおりである。

表16 事例9と同様の事態があった基金(4基金)

所管府省名 基金法人名 基金名
農林水産省 公益財団法人海外漁業協力財団 貸付事業資金
国土交通省 一般財団法人建設業振興基金 信用・指導基金
建設業安定化基金
公益社団法人全国市街地再開発協会 民間再開発促進基金
(イ) 基金基準に定める基準等の検討が必要な事態
a 見直しの頻度

基金基準は、定期的な見直しについて、「少なくとも5年に1回」としている。実際の見直しの間隔についてみると、基金基準が閣議決定された18年度の見直しでは次回の見直しを21年度としていたが、21年度の見直しは1年前倒しとなって2年後の20年度に行われた。また、20年度の見直しでは次回の見直しは3年後の23年度としていた。

20年度以降に設置造成された基金の事業期間についてみると、緊急経済対策等を目的としていることなどから、3年以内(設置造成した年度を除く。)と短く設定している基金が多い。そして、基金の中には、事業終了時に多額の基金を国庫へ返納しているものも見受けられる。

現在の基準では5年に1回の見直しを実施すればよいこととなっているが、上記のことを考慮すると、事業期間中に1度も見直しが行われなかったり、使用見込みの低い基金があっても次回の見直しまで国庫返納の検討が行われなかったりなどすることが想定される。したがって、年度末時点における基金事業の進捗状況、基金の執行状況等を踏まえ、毎年度の見直しを実施し、公表することが必要であると考えられる。

b 収入・支出及び事業実績の公表

基金基準に基づく見直しの状況を公表する資料には、基金の収入・支出や事業実績を公表する項目が設定されていない。また、これらの項目について、「平成21年度補正予算において設けられた基金等の執行状況等の公表について(連絡)」では、基金の設置造成のための国庫補助金等の交付額、運用収入、執行済額等を公表することとしているが、前記のとおり、公表しているものは一部の基金にとどまっている。

そのため、所管府省が基金法人に国庫補助金等を交付して、基金を設置造成した以降、基金法人が実施する基金事業に係る収入・支出及び事業実績を公表する機会はほとんどなく、基金の透明性が確保されていない状況となっている。しかし、基金が適切に執行され、効率的な運営が行われるためにも、基金の収入・支出及び事業実績を公表して、透明性を確保することが必要であると考えられる。

また、事業実績を公表することは、基金基準による見直しにおける保有割合の算出に当たって用いられた基金事業が完了するまでに必要となる見込額等が適正な額となっているかを判断する材料の一つにもなるものであり、その観点からも事業実績の公表が必要であると考えられる。

c 使用見込みの低い基金の取扱いの検討

基金基準は、定期的な見直しの際、①事業を終了した基金(後年度負担が発生する事業においては、新規申請の受付を終了した基金)、②前回の見直し以降事業実績がない基金又は直近3年以上事業実績がない基金、③基金造成時の政策目的がなくなった基金又は変更になった基金、④算出した保有割合が「1」を大幅に上回っている基金、⑤その他、使用見込みが低いと判断される基金に該当する基金については、使用見込みの低い基金として、国庫へ返納するなど、その基金の取扱いを検討することとしている。

このうち、④は、算出した保有割合が「1」を大幅に上回っている基金としているが、これは例えば、直近年度末の基金保有額を基金事業が完了するまでに必要となる補助額、事業費の見込額等で除した保有割合が「1」を超えていても、大幅に上回ると判断するための数値等の基準が定められておらず、曖昧な基準となっている。20年度の基金基準による見直しを実施した127基金のうち、保有割合を算出していないものなどの14基金を除く113基金の公表資料をみると、算出した保有割合が「1」を超えている30基金のうち、使用見込みの低い基金として、その基金の取扱いを検討したものは15基金であり、このうち、④算出した保有割合が「1」を大幅に上回っている基金に該当することから基金の取扱いを検討し、使用見込みのない額を国庫へ返納したものは5基金のみであった(表17参照)。

表17 保有割合が「1」を超える30基金の検討の状況

(単位:基金)
保有割合「1」超 使用見込みの低い基金の該当の有無 使用見込みの低い基金に該当する理由
30 15 ①事業を終了した基金(新規申請の受付を終了した基金) 8
②事業実績がない基金 2
③事業実績がない基金及び4保有割合が「1」を大幅に上回っている基金 2
④保有割合が「1」を大幅に上回っている基金 3
15
(注)
使用見込みの低い基金に該当する理由を、2及び4とした2基金、4とした3基金、計5基金については、いずれも使用見込みのない額を国庫へ返納している。

しかし、保有割合は、基金事業が完了するまでに必要となる補助額、事業費の見込額等を用いて算出しており、「1」を超える分に相当する額については、基金事業が見込みのとおりに執行されれば使用されることのない額であり、使用見込みの低い額に当たるものと考えられる。また、前記の24年4月1日時点において基金保有額があった185基金を対象として、基金法人及び所管府省から徴した基金基準に準じて算出した保有割合(24年4月1日時点)によると、保有割合が「1」を超えているものが30基金あり、この30基金の「1」を超える分に相当する額の合計を算出すると542億円と多額に上っている。したがって、算出した保有割合が「1」を超えている全ての基金については、使用見込みの低い基金として、その基金の取扱いを検討することとすべきであると考えられる。なお、基金基準は、使用見込みの低い基金であっても、当面の危機対応や社会経済情勢の変化への対応等のため所要額を残置する必要がある基金については、残置が必要な理由、残置する所要額等を公表することとしており、全ての使用見込みの低い基金に対して国庫への返納を求めているわけではない。

d 基金廃止時の状況の公表

基金基準は、基金を廃止した際の状況の公表について、特に定めておらず、基金基準による見直しの際に、既に廃止した基金については公表の対象となっていない。しかし、基金廃止時において、基金を廃止した理由、廃止時における基金保有額の国庫等への返納の状況、基金事業の継続の有無、基金事業の目標達成度の評価等を公表することは、基金の透明性を確保する上で必要であると考えられる。

e 見直し体制の確立

基金基準は、内閣官房の行政改革推進本部事務局が「本基準に従った基金の見直し状況について、当分の間必要に応じて取りまとめを行うこと」としている。また、20年度の基金基準による見直しの結果を行政改革推進本部事務局が取りまとめた20年12月の「補助金等の交付により造成した基金の見直し」において、「23年度に事業の実績を踏まえて改めて見直しを行うこと」としている。なお、23年6月に、行政改革推進本部は解散している。

前記のとおり、23年度の基金基準による見直しを実施したのは経済産業省のみとなっていて、見直しを実施していなかった所管府省の多くは、その理由として、行政改革推進本部事務局から作業の依頼がなかったことを挙げている。一方で、内閣官房は、基金の見直し状況の取りまとめは、当分の間必要に応じて行うこととなっていたものであるが、23年度については、所管府省において見直しを行うこととしていたとしている。

基金基準による見直しについては、各々の基金法人及び所管府省において行われるべきものであり、依頼がなくとも所管府省ごとに基金の見直しが行われるような体制を整備することが必要であると考えられる。

ウ 基金シートによる公表の実施

政府は、25年1月に、「行政改革推進本部の設置について」において、内閣に行政改革推進本部を設置することを閣議決定している。また、同月に、行政改革推進本部決定により、行政改革に関する重要事項の調査審議を実施するため、行政改革推進会議を開催することを決定している。

同年4月に開催された第2回の同会議において、「今後の行政事業レビューの実施等について(案)」が議事となり、その中で、基金を活用した事業については、これまでの行政事業レビューでは執行状況の把握、点検が十分に行えないことから、政府として、別途の取組により、これを点検して、公表すべきであり、「基金シート実施要領」にまとめたとおり進めるべきとされており、これを含む案が同会議において了承された。「基金シート実施要領」によると、①内閣官房の行政改革推進本部事務局が基金シートの様式を作成し、各府省は、決算を踏まえ、7月末を目途に公表を行う、②行政改革推進会議は、必要に応じ、各府省の公表内容等が十分なものとなっているかについて、チェックを行い、意見を提出するなどして、基金シートの作成・公表方法の改善に活用するなどとされている。

その後、政府は、同月に、「行政事業レビューの実施等について」において、毎年、行政事業レビューを実施することにより、各府省自らが、事業に係る予算の執行状況等について見直しを行い、公表することなどを閣議決定しており、この中で、基金についても執行状況等を分かりやすい形で毎年公表することとしている。

行政改革推進本部事務局が作成した「平成25年基金シート」の様式は、事業概要、収入・事業費等の額、保有割合とその算出方法等を記載することとなっており、この様式に従い、各府省は7月末以降、ホームページで基金シートを公表している。また、内閣官房は、26年度以降の基金シートの様式について、公表内容等が十分なものとなっているかなどについて検討するとしている。

(3) 個別の基金の状況

ア 21年報告において検討すべき事態が見受けられた基金のその後の状況

21年報告において、検討すべき事態が見受けられた8基金のその後の状況についてみると、7基金は23年度末までに廃止されている。7基金のうち、公益社団法人国民健康保険中央会の国保特別対策基金及び社団法人潤滑油協会の潤滑油製造業近代化基金については、基金の返納の際に、国庫補助金により設置造成された基金の額と国庫への返納額に差額が生じており(1及び表18参照)、また、一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターの債務保証基金については、事例2、3と同様の事態が生じている(表14参照)。

そして、25年3月31日時点において基金保有額がある1基金は、運用益の処理について検討すべきものとされていた公益財団法人海外漁業協力財団の貸付事業資金であり、前記の事例9と同様の事態が生じている(表16参照)。

① 基金の返納の際に、国庫補助金により設置造成された基金の額と国庫への返納額に差額が生じたもの

所管府省名 基金法人名 基金名 国庫へ返納できなかった額
厚生労働省 公益社団法人国民健康保険中央会 国保特別対策基金 8億3912万円

公益社団法人国民健康保険中央会(以下「中央会」という。)は、平成5年度に厚生労働省(13年1月5日以前は厚生省。以下同じ。)から国庫補助金の交付を受けて、「国保特別対策基金」を設置造成している。同基金は、運用型で、医療費適正化に係る対策会議、研修会の実施等を行うものである。同省から中央会への国庫補助金は、5年度に50億円が交付された。

21年報告は、同基金について、個別の基金の状況として、保有額の半分以上を満期償還までの期間が長い債券で運用しているが、これらの債券は、満期償還日が事業終了年度(27年度)より後の28年度以降に到来し、また、近年の金融情勢の影響を受けて、時価評価額が帳簿価額を下回っている状況であり、事業終了後の国庫への返納の際に、保有債券の途中売却による回収額と要返納額に差額が生ずるおそれがあるとしていた。

検査したところ、中央会は、21年報告直後の21年11月の行政刷新会議による「事務事業の横断的見直しについて」において、「運用益で事業を行っているものについては、基金相当額を国に返納し、必要額を毎年度の予算措置に切り替えるべき」とあったことから、基金を廃止していた。

23年3月に国庫へ返納された額は41億6087万円であり、当初の国庫補助金により設置造成した基金本体の額50億円と8億3912万円の差額が生じている。この理由について、中央会は、国庫への返納を行うために運用中の債券を中途で売却したところ、売却損が生じたためとしている。

上記①と同様の事態があった基金は、表18のとおりである。

表18 ①と同様の事態があった基金(1基金)

所管府省名 基金法人名 基金名 国庫へ返納できなかった額
経済産業省 社団法人潤滑油協会 潤滑油製造業近代化基金 1億4554万円

イ 個別の基金において検討すべき事態

120基金法人の313基金について検査した結果、前記の事例1から事例9まで及び上記①として記述した基金以外にも、次のような事態が見受けられた。

② 基金事業に係る支出がないもの

所管府省名 基金法人名 基金名 設置造成額
国土交通省 財団法人民間都市開発推進機構 まち再生基金(港湾局分) 7億3000万円

民都機構は、平成19年度に国土交通省から国庫補助金の交付を受けて、「まち再生基金(港湾局分)」を設置造成している。同基金は、回転型で、港湾における民間事業者による拠点施設の整備に対して出資するものである。同省から民都機構への国庫補助金は、19年度に3億円、20年度に2億4000万円、21年度に1億9000万円、計7億3000万円が交付された。

検査したところ、同基金による出資事業は、事業を開始した19年度から24年度まで支出のない状況であった。また、同基金は、20年度の基金基準による見直しを実施し、同じスキームで都市再生整備に対して出資をする「まち再生基金(都市局分)」と合算して、公表を行っていた。これらは別の国庫補助金により設置造成されたものであるが、基金事業ごとに公表されていなかった。

なお、国土交通省によると、20年のリーマンショック以降の経済情勢の悪化等により、事業に遅れが生じているものの、25年6月時点において、今後の出資の見込みはあるとしている。

上記②と同様の事態があった基金は、表19のとおりであるが、この2基金については、既に24年度末までに廃止されている。

表19 ②と同様の事態があった基金(2基金)

所管府省名 基金法人名 基金名 設置造成額
農林水産省 社団法人大日本水産会 漁船漁業構造改革総合対策基金(担い手漁業経営改革支援リース事業) 2億5920万円
経済産業省 社団法人全国石油協会 環境・安全等対策基金(特定被災地域石油製品供給支援事業) 9億1035万円

③ 基金事業として使用見込みのない額を保有しているもの

所管府省名 基金法人名 基金名 使用見込みのない額
厚生労働省 中央職業能力開発協会 緊急人材育成・就職支援基金(緊急人材育成支援事業) 752億3648万円

開発協会は、平成21年度に厚生労働省から交付金の交付を受けて、「緊急人材育成・就職支援基金(緊急人材育成支援事業)」を設置造成している。同基金は、取崩型で、雇用保険の求職者給付を受給できない者に対し、訓練・生活支援給付金の支給等を行うものである。同省から開発協会への交付金は、平成21年度第1次補正予算により4784億3900万円が交付された。その後、21年10月に「平成21年度第1次補正予算の執行の見直しについて」により、23年度末としていた新規申請の受付の終了時期を22年度末とし、23年度分に相当する1903億9594万円を21年12月に国庫へ返納している。その後、平成22年度補正予算により、990億0756万円を交付し、新規申請の受付の終了時期を23年9月末に延長している。

検査したところ、新規申請の受付は23年9月末で終了しており、後年度負担分を除いた額は、使用見込みのない額となっていた。同基金の終了後に残額が生じた場合は、22年12月の国家戦略担当大臣、財務大臣及び厚生労働大臣による合意文書である「平成23年度予算における求職者支援制度及び雇用保険国庫負担の本則復帰の取扱いについて」において、同基金の後継となる国直轄の事業である求職者支援制度の財源として活用することとされていたが、求職者支援制度の財源として活用されることなく、開発協会が保有し続けている状況となっていた。

24年度末の基金保有額763億2832万円に対し、25年度以降の後年度負担額は10億9183万円となっており、この差額752億3648万円が基金事業として使用見込みのない額となっている。


④ 基金保有額を超える額を今後の支出見込額としているもの

所管府省名 基金法人名 基金名 基金保有額を超える支出見込額
厚生労働省 中央職業能力開発協会 緊急人材育成・就職支援基金(成長分野等人材育成支援事業) 93億8063万円

開発協会は、平成22年度に厚生労働省から交付金の交付を受けて、「緊急人材育成・就職支援基金(成長分野等人材育成支援事業)」を設置造成している。同基金は、取崩型で、健康、環境分野等の事業を行う事業主に対し、事業主が負担した労働者の訓練に要した経費に対する奨励金の支給等を行うものである。同省から開発協会への交付金は、平成22年度補正予算により、498億円が交付された。新規申請の受付の終了時期は23年度末と設定していたが、24年3月に、終了時期を24年度末に延長している。

検査したところ、25年2月に、24年12月末時点で算出した同基金の使用見込みのない額約334億円から、266億円を「緊急人材育成・就職支援基金(日本再生人材育成支援事業)」へ配分変更していた。また、同月に、震災特例分に限り、新規申請の受付の終了時期を25年度末に延長していた。さらに、同年3月に、25年1月末時点で算出した同基金の使用見込みのない額約72億円から、58億円を「緊急人材育成・就職支援基金(若者育成支援事業)」へ配分変更していた。

しかし、25年度以降の奨励金の支給見込額を算出したところ、240億6978万円となっていて、24年度末の基金保有額146億8914万円を上回っており、同基金による奨励金を支給見込額どおりに支給するには93億8063万円が不足している。一方で、24年度は2回にわたり、同基金から使用見込みのない額として、他の事業へ計324億円を配分変更しており、基金の管理が適切に行われていない状況となっている。


⑤ 公益目的事業財産とされた基金の国庫補助金等を国庫へ返納する際の取扱いが明確でないもの

所管府省名 基金法人名 基金名
外務省 公益財団法人日中友好会館 東アジア青少年交流基金

公益財団法人日中友好会館(以下「日中会館」という。)は、平成18年度に外務省から拠出金の交付を受けて、「東アジア青少年交流基金」を設置造成している。同基金は、取崩型で、日中の青少年を対象とする短期及び中長期の招へい事業や派遣事業、交流事業等を実施するものであり、事業期間は19年度から23年度までの5年間とされている。

検査したところ、日中会館は、基金事業が23年度末に終了したものの、全ての精算業務が完了し日中会館での決算が終わる25年6月頃に基金の残余額を国庫へ返納するとしていて、24年4月の段階で使用見込みのない8億9923万円を保有している状況となっていた。

一方で、日中会館は、24年4月に財団法人から公益財団法人へ移行しており、その際、同基金は、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号。以下「公益法人認定法」という。)第18条の公益目的事業財産とされている。

公益法人認定法第18条によると、公益社団法人又は公益財団法人は、内閣府令で定める正当な理由がある場合を除き、公益目的事業財産を公益目的事業を行うために使用し、又は処分しなければならないこととされている。そして、基金事業終了等に伴う基金の残余額の国庫への返納は、内閣府令で定める正当な理由として明記されていない。

同基金は、目的とする事業が終了しているため、もはや公益法人認定法第18条に掲げる公益目的事業財産として日中会館にとどめておくことは合理性に欠けると考えられる。しかし、上記のとおり、公益目的事業財産とされた同基金の残余額を国庫へ返納する場合について、公益法人認定法及び内閣府令における取扱いが必ずしも明確となっておらず、日中会館が同基金の残余額を適切に国庫へ返納するためには公益目的事業財産とされた基金の残余額を国庫へ返納する際の取扱いを明確にする必要があると認められる。なお、日中会館は、この取扱いが明確になり次第、使用見込みのない額を国庫へ返納するとしている。


基金法人のうち、社団法人又は財団法人の一部は、既に公益社団法人又は公益財団法人へ移行しており、その際、基金が公益目的事業財産とされるなどしている。そして、今後、公益社団法人又は公益財団法人へ移行する基金法人もあることが見込まれている。

公益目的事業財産とされた基金については、他の基金と同様に、基金事業終了前の使用見込みのない額や、基金事業終了後の基金の残余額を国庫へ返納する場合もある。

したがって、公益法人認定法を所管する内閣府においては、これらに関して、公益法人認定法及び内閣府令における取扱いを明確にする必要があると認められる。


上記⑤と同様の事態があった基金は、表20のとおりである。

表20 ⑤と同様の事態があった基金(1基金)

所管府省名 基金法人名 基金名
外務省 公益財団法人日韓文化交流基金 東アジア青少年交流基金