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  • 平成25年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第4 総務省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(1) 性能を向上させる改造等を行ったのに帳簿価格が改定されていない重要物品について、速やかに帳簿価格を改定するよう適宜の処置を要求し、帳簿価格を改定するための事務手続を明確に定めるなどして、物品管理簿が正確に記録されるよう是正改善の処置を求めたもの


会計名
一般会計
部局等
総務本省、3総合通信局
重要物品の概要
総務省が管理している取得価格が50万円以上の機械等
物品増減及び現在額報告書に記載された重要物品の数量及び価格
10,123個 1320億4392万余円(平成24年度末)
性能を向上させる改造等を行っていた重要物品の数量及び価格
151個  281億3005万余円(平成20年度~24年度)
上記のうち価格を改定していない重要物品の数量及び価格
59個  26億5266万余円
物品管理簿に反映されていない額
11億9920万円

【適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたものの全文】

重要物品の帳簿価格の改定について

(平成26年10月14日付け 総務大臣宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。

1 物品管理の概要

(1) 委託事業等における物品の改造等

貴省は、委託事業等により、周波数帯を効率的に利用するための技術の研究開発や貴省が定めた戦略的な重点研究開発目標を実現するための各種の研究開発等を多数実施している。そして、これらの委託事業等の実施に当たり、受託者等に対して貴省が管理している物品を貸与して、必要に応じて当該物品に機能を追加して性能を向上させる改造を行わせるなどしている。

(2) 国における物品の管理等

物品管理法(昭和31年法律第113号)等によれば、国の物品については、各省各庁の長が物品の取得、保管、供用及び処分(以下、これらを合わせて「管理」という。)を行い、各省各庁の長からその管理に関する事務の委任を受けた職員が物品管理官として当該事務を行うこととされている。

物品管理官は、物品管理簿を備えて、その管理する物品の分類及び品目ごとに、物品の増減等の異動数量、現在高その他物品の異動に関する事項等を記録することとされており、取得価格が50万円以上の機械等(以下「重要物品」という。)については、その価格も記録しなければならないこととされている(以下、物品管理簿に記録された価格を「帳簿価格」という。)。

各省各庁の長は、重要物品について、毎会計年度末の物品管理簿の記録内容に基づいて、物品増減及び現在額報告書(以下「物品報告書」という。)を作成し、翌年度の7月31日までに財務大臣に送付することとされている。そして、財務大臣は、各省各庁の長から送付された物品報告書に基づき、物品増減及び現在額総計算書(以下「総計算書」という。)を作成することとされ、内閣は、総計算書を物品報告書とともに本院に送付し、総計算書に基づき、毎会計年度末における物品の現在額等について、国会に報告することとされている。

(3) 帳簿価格の改定の取扱い

物品管理法施行規則(昭和31年大蔵省令第85号)第38条第4項の規定によれば、物品管理官は、財務大臣の定めるところにより、帳簿価格を改定しなければならないこととされ、この規定を受けて財務大臣が定めた「物品管理簿に記録された価格の改定について」(昭和36年蔵計第862号)によれば、物品管理官は、重要物品について、その性能を向上させる改造等を行った場合には、帳簿価格を改定することとされている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

前記のとおり、物品管理簿は、物品管理法に従って物品を適切に管理するための帳簿であり、また、重要物品の現在額等を国会に報告するための基礎となる帳簿である。

そこで、本院は、正確性、合規性等の観点から、重要物品について、委託事業等によりその性能を向上させる改造等を行った場合に、帳簿価格が適正に改定されているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、貴省が平成24年度末現在で管理している重要物品10,123個(帳簿価格計1320億4392万余円)のうち、20年度から24年度までの間に委託事業等によりその性能を向上させる改造等を行ったものを対象として、貴省本省及び4総合通信局(注1)において、委託契約書、仕様書、物品管理簿等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。また、貴省本省、消防庁、公害等調整委員会、4施設等機関(注2)、9管区行政評価局等(注3)、7総合通信局等(注4)から重要物品の価格改定に係る調書の提出を受けて、その内容を確認するなどの方法により検査を実施した。

(注1)
4総合通信局  東北、関東、近畿、九州各総合通信局
(注2)
4施設等機関  自治大学校、情報通信政策研究所、統計研修所、消防大学校
(注3)
9管区行政評価局等  北海道、東北、関東、中部、近畿、中国四国、九州各管区行政評価局、四国行政評価支局、沖縄行政評価事務所
(注4)
7総合通信局等  北海道、信越、北陸、東海、中国、四国各総合通信局、沖縄総合通信事務所

(検査の結果)

検査したところ、貴省本省の2部局(注5)、情報通信政策研究所、北海道管区行政評価局、10総合通信局等(注6)及び消防庁において、20年度から24年度までの間に、委託事業等により性能を向上させる改造等を行った重要物品計151個(帳簿価格計281億3005万余円)のうち、貴省本省の2部局及び3総合通信局(注7)において21年度から24年度までの間に改造等を行った重要物品計59個(帳簿価格計26億5266万余円、改造等に要した費用計11億9920万余円)について、物品管理官は、帳簿価格を改定しなければならないのに、改定していなかった。このため、物品管理簿、ひいては物品報告書が重要物品の現況を反映した正確なものとなっていない状況となっていた。

(注5)
2部局  情報通信国際戦略局、総合通信基盤局
(注6)
10総合通信局等  北海道、東北、関東、信越、北陸、東海、近畿、四国、九州各総合通信局、沖縄総合通信事務所
(注7)
3総合通信局  東北、関東、九州各総合通信局

上記の事態について事例を示すと次のとおりである。

<事例>

貴省本省の総合通信基盤局は、平成23年度に、電波資源拡大のために周波数帯を有効活用する技術の研究開発を委託事業により実施している。そして、委託事業の受託者に、重要物品である〔1〕信号識別実験試作装置(帳簿価格3254万余円)、〔2〕無線リソース共用制御実験システム(同1億2894万余円)及び〔3〕フェージングシミュレータ(同5832万余円)を貸与し、それぞれ性能を向上させる改造(改造に要した費用〔1〕1242万余円、〔2〕1億6537万余円、〔3〕5575万余円)を行わせた上で研究等を実施させていた。

しかし、当該委託事業の担当職員は、これらの重要物品3個について、性能を向上させる改造を行ったことを物品管理官に対して報告していなかった。

このため、物品管理官は、それぞれの帳簿価格を〔1〕4496万余円、〔2〕2億9432万余円、〔3〕1億1408万余円に改定しなければならないのに、改定していなかった。

(是正及び是正改善を必要とする事態)

上記のとおり、貴省において、委託事業等により性能を向上させる改造等を行った重要物品について、帳簿価格を改定しておらず、物品管理簿、ひいては物品報告書が重要物品の現況を正確に反映したものとなっていない事態は適切ではなく、是正及び是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴省において、性能を向上させる改造等を行った重要物品について、帳簿価格を改定する必要があることに対する認識が欠けていること、適時かつ適正に帳簿価格を改定するための事務手続を明確に定めていないことなどによると認められる。

3 本院が要求する是正の処置及び求める是正改善の処置

物品管理簿は、国の物品を管理するための基本的な帳簿であり、各省各庁の長は、物品管理簿の記録内容に基づいて、毎年度、物品報告書を作成している。そして、総計算書は物品報告書に基づき作成されており、総計算書に基づき毎会計年度末における重要物品の現在額等を国会に報告することは、国民に対して重要物品の現況を明らかにするという性格を有するものとなっている。このように、国の物品について、物品管理法等に基づき、正確に物品管理簿に記録することは、極めて重要である。

ついては、貴省において、物品管理簿が正確に記録されるよう、アのとおり是正の処置を要求し及びイのとおり是正改善の処置を求める。

ア 性能を向上させる改造等を行ったのに帳簿価格が改定されていない重要物品について、速やかに帳簿価格を改定すること

イ 性能を向上させる改造等を行った重要物品について、適時かつ適正に帳簿価格を改定するための事務手続を明確に定めるなどして、関係部局に周知徹底すること