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  • 平成25年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第4 総務省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(3) 新たな難視を解消するためのケーブルテレビ幹線対策事業のうち、対象世帯の過半数の加入が確保されていない事業について、その過半数がケーブルテレビに加入していない原因を分析した上で効果的な加入促進方策を策定するなどして、これを反映させた取組計画を事業主体に策定させ、その取組状況等について必要に応じて指導及び助言するよう意見を表示したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)総務本省 (項)電波利用料財源電波監視等実施費
部局等
総務本省
補助の根拠
電波法(昭和25年法律第131号)
補助事業者
社団法人デジタル放送推進協会(平成25年4月1日以降は一般社団法人デジタル放送推進協会)
間接補助事業者
(事業主体)
会社44、共聴組合3、市2、一般社団法人1、計50事業主体
補助事業
ケーブルテレビ幹線対策事業
補助事業の概要
新たな難視世帯が地上デジタルテレビ放送を視聴できるようにするためにケーブルテレビ事業者等が地上デジタルテレビ放送を受信して有線放送設備により、新たな難視世帯に対して再放送するための幹線設備を整備するもの
対象世帯の過半数の加入が確保されていない事業数
6事業(平成23、24両年度)
上記に係る事業費の合計
3249万余円
上記に対する国庫補助金交付額の合計
2165万円

【意見を表示したものの全文】

無線システム普及支援事業費等補助金により実施しているケーブルテレビ幹線対策事業について

(平成26年10月30日付け 総務大臣宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 事業の概要

(1) 無線システム普及支援事業費等補助金の概要

貴省は、周波数割当ての抜本的な見直しにより新規の電波需要に対する迅速な周波数の確保を図るために地上アナログテレビ放送を地上デジタルテレビ放送へ移行させることとして、平成15年度以降、順次、地上デジタルテレビ放送を開始させている。そして、44都道府県においては23年7月24日に、東日本大震災により大きな被害を受けた岩手、宮城及び福島の3県においては24年3月末に、それぞれ地上アナログテレビ放送を終了させ、地上デジタルテレビ放送への移行を完了させている。しかし、この措置に伴い、従来、地上アナログテレビ放送が受信できた地区において、デジタル波の特性、地理的条件等により、地上デジタルテレビ放送を受信できない状況(以下「新たな難視」といい、新たな難視が生じている地区のことを「新たな難視地区」という。)が生じている。

このため、貴省は、20年度から、社団法人デジタル放送推進協会(平成25年4月1日以降は一般社団法人デジタル放送推進協会。以下「協会」という。)に、高性能アンテナやケーブルテレビ等により新たな難視を解消するための各種対策を行う事業主体に対する経費の一部の補助及び新たな難視となっている世帯(以下「新たな難視世帯」という。)からのデジタル受信相談等を、デジタル受信相談・対策事業として実施させており、これに要する経費に対して、無線システム普及支援事業費等補助金(21年度以前は電波遮へい対策事業費等補助金)を交付している。

(2) ケーブルテレビ幹線対策事業等の概要

新たな難視を解消するための各種対策のうち、ケーブルテレビ幹線対策事業(以下「対策事業」という。)は、新たな難視世帯が地上デジタルテレビ放送を視聴できるようにするためにケーブルテレビ事業者等が地上デジタルテレビ放送を受信して有線放送設備により、対策事業の対象となる新たな難視地区(以下「対象地区」といい、この地区の新たな難視世帯のことを「対象世帯」という。)の対象世帯に対して再放送するための幹線設備を整備するものである。そして、事業主体は、ケーブルテレビ事業者等の有線放送設備設置者又は対象地区が所在する市町村となっている。

また、対策事業により新たな難視が解消されるためには、高性能アンテナの設置等の他の事業と異なり、幹線設備が整備されるだけでなく、整備された後、対象世帯がケーブルテレビ等に加入する必要がある。そして、ケーブルテレビ等に加入する場合において、対象世帯にはそれまで支払う必要がなかった月額利用料等の新たな負担が生ずることから、対象世帯の意向を確認することが必要になる。このため、協会は、対策事業の実施に当たり、貴省と調整した上で作成した「新たな難視対策事業費補助事業助成金申請マニュアル」の中で、事業採択の条件として、対策事業の事業主体は、交付申請書を協会に提出する際に、対象地区の過半数の対象世帯の加入予定が確認できる事前加入申込書の写しなどの資料を交付申請書に添付しなければならないこととしている。

また、貴省は、新たな難視を解消するための各種対策が実施されていない新たな難視世帯に対して地上デジタルテレビ放送を衛星放送により再送信する暫定的難視聴対策事業や新たな難視世帯がケーブルテレビ等に新規に加入する際に必要となる初期費用を補助するケーブルテレビ等加入対策事業を27年3月末まで実施することとしている。

さらに、暫定的難視聴対策事業により地上デジタルテレビ放送を受信している新たな難視世帯の中には、同事業により新たな難視が解消したと誤解している世帯や同事業の27年3月末の終了を把握していない世帯がいる可能性があるとして、同事業により放送を受信していることを字幕により画面に表示するなどの対応を行っている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

前記のとおり、対策事業により新たな難視が解消されるためには、対策事業により幹線設備が整備されるだけでなく、整備した幹線設備を利用して対象世帯がケーブルテレビ等に加入する必要がある。

そこで、本院は、有効性等の観点から、対策事業により幹線設備が整備されたケーブルテレビ等への対象世帯の過半数の加入が確保され、幹線設備が新たな難視の解消のために有効に活用されているかなどに着眼して検査を行った。検査に当たっては、22年度から25年度までの間に実施された全対策事業、すなわち50事業主体(44ケーブルテレビ事業者、3共聴組合、2市及び1一般社団法人)が実施した81対策事業(補助対象事業費計3億9463万余円、国庫補助金計2億6305万余円)を対象として、調書を徴してその内容を分析するなどして検査を行うとともに、このうち4事業主体(注)については現地に赴き、交付申請書、実績報告書、契約書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注)
4事業主体  岩手ケーブルテレビジョン株式会社、株式会社ジェイコムイースト、峡東ケーブルネット株式会社、宮崎ケーブルテレビ株式会社

(検査の結果)

検査したところ、26年3月末現在、81対策事業のうち、33対策事業については、対象世帯の全世帯がケーブルテレビ等に加入していた。しかし、残りの48対策事業については、ケーブルテレビ等に加入していない世帯が見受けられた。そして、そのうち6対策事業(補助対象事業費計3249万余円、国庫補助金計2165万余円)において、表のとおり、対象世帯のケーブルテレビへの過半数の加入が確保されておらず、対策事業により整備した幹線設備が十分有効に活用されていない事態が見受けられた。

表 6対策事業におけるケーブルテレビへの加入状況(平成26年3月末現在)

事業主体名 事業実施年度
(年度)
事業数 対象世帯数
(A)
加入世帯数
(B)
未加入世帯数
(A)-(B)
加入率
(B)/(A)
(%)
狭山ケーブルテレビ株式会社 23 1 8 2 6 25.0
株式会社ジェイコムイースト 23、24 3 56 25 31 33.3~50.0
天草ケーブルネットワーク株式会社 24 1 9 4 5 44.4
宮崎ケーブルテレビ株式会社 23 1 77 16 61 20.7
6 150 47 103 31.3

また、これらの6対策事業において、事前加入申込書に署名するなどして、対策事業実施後にケーブルテレビに加入することを申し出ていた世帯のうち、事業実施後にケーブルテレビに加入した世帯の割合は40.6%となっていた。そして、これらの6対策事業の中には、対象世帯がケーブルテレビへの加入をするかどうかを判断するために重要となる初期費用、月額料金等の情報について、意向確認の際に説明が十分に行われていないまま、事前加入申込書の取りまとめが行われている事業も見受けられた。

一方、貴省は、前記のとおり、新たな難視世帯の中には、暫定的難視聴対策事業により新たな難視が解消したと誤解しているなどの世帯がいる可能性があるとして、同事業の終了時期等を字幕により画面に表示する対応を行っている。また、新たな難視世帯がケーブルテレビ等に新規加入する際の初期費用の負担を軽減するためのケーブルテレビ等加入対策事業も実施している。

しかし、貴省は、対策事業について、各事業主体に対象世帯ごとの未加入となっている原因を調査するよう指示していないことなどから、個別具体的な原因を把握しておらず、このため、効果が十分に発現していない事業において加入促進のための対策を講ずるよう、事業主体に対して適切な指導及び助言も行っていない状況となっていた。

(改善を必要とする事態)

対策事業により整備した幹線設備が十分有効に活用されていない事態、及び貴省がその原因を把握しておらず、効果が十分に発現していない事業において加入促進のための対策を講ずるよう事業主体に対して適切な指導及び助言を行っていない事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴省において次のことなどによると認められる。

ア 対策事業を実施した対象地区について、対象世帯がケーブルテレビに加入していない原因の調査、分析等を行い効果的な加入促進方策を策定することの必要性についての理解が十分でないこと

イ 事業主体に対して、取組計画を策定させた上でその取組状況について必要に応じて指導及び助言を行うことの必要性についての理解が十分でないこと

3 本院が表示する意見

地上デジタルテレビ放送への移行に伴う各種対策は、27年3月末をもって終了することとなっている。そして、その終了の際に、新たな難視が解消されていることは、災害時における情報提供等、国民が安心及び安全で豊かな生活を送る上でも重要となるものであり、対策事業により整備した幹線設備は十分有効に活用される必要がある。

これらのことから、対策事業におけるケーブルテレビへの加入については、最終的には対象世帯が判断すべきものではあるものの、ケーブルテレビに加入していない対象世帯に対して、暫定的難視聴対策事業等の終了時期が近づいていることなどのケーブルテレビへの加入をするかどうかを判断するために重要となる情報を周知するなどした上、国が実施する難視対策事業の趣旨を十分に説明するなどして理解を求める必要がある。

ついては、貴省において、事業実施後に対象世帯のケーブルテレビへの過半数の加入が確保されていない対策事業について、対象世帯の実態を十分に把握するなどした上で加入率の一層の向上を図ることにより、幹線設備が十分有効に活用されるよう、次のとおり意見を表示する。

ア 事業主体に対象世帯ごとのケーブルテレビに加入していない原因を報告させることなどによりその実態を十分に把握するとともに、その報告内容を分析した上で対象世帯の意思を尊重しつつ暫定的難視聴対策事業やケーブルテレビ等加入対策事業が終了することを周知するなどの効果的な加入促進方策を策定すること

イ 事業主体に、早急な事態の改善に向けて、加入促進方策を反映した取組計画を策定させた上でその取組状況等について必要に応じて事業主体に指導及び助言すること