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刑事施設等の常勤医師が、許可を受けて行うこととされている外部研修を行っておらず、正規の勤務時間中に勤務していなかったのに、勤務しなかった時間に係る給与を減額することなく支給していたもの[4刑事施設等](14)-(16)


会計名及び科目
一般会計 (組織)矯正官署 (項)矯正官署共通費
(平成19年度以前は、(項)矯正官署)
部局等
4刑事施設等
常勤医師の給与の概要
常勤医師に対して支給される俸給及び諸手当
外部研修を行っていなかった常勤医師の数
3名
上記の3名に支給された給与の総額
162,071,982円(平成20年1月~26年6月)
減額すべきであった給与額及び勤勉手当額の合計
18,653,742円(平成20年1月~26年6月)

1 常勤医師の勤務の概要

(1) 常勤医師の給与等の概要

刑務所、少年刑務所及び拘置所の刑事施設、少年院及び少年鑑別所(以下、これらを合わせて「刑事施設等」という。)は、「刑務所、少年刑務所及び拘置所組織規則」(平成13年法務省令第3号)又は「少年院及び少年鑑別所組織規則」(平成13年法務省令第4号)により、保健、防疫、医療等に関する事務を所掌する医務部門を設置し、同部門に常勤で勤務する医師(以下「常勤医師」という。)を配置している。

常勤医師には国家公務員法(昭和22年法律第120号。以下「公務員法」という。)、一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号。以下「給与法」という。)、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成6年法律第33号。以下「勤務時間法」という。)等が適用され、刑事施設等は、常勤医師の勤務時間の管理等を行い、所定の給与を支給している。

公務員法によれば、一般職の国家公務員である職員は、勤務時間中職務に専念しなければならないこととされている。

給与法等によれば、休日である場合又は休暇による場合その他その勤務しないことにつき特に承認があった場合等を除いて正規の勤務時間中に勤務しなかった時間は、給与額(勤勉手当等の額は含まない。以下同じ。)を減額して支給することとされている。そして、この減額する給与額は、勤務しなかった時間数に勤務1時間当たりの給与額を乗じて得た額とされている。また、職員に支給される勤勉手当は当該職員の俸給の月額等に勤務期間(注1)による割合(以下「期間率」という。)を乗ずるなどして算出することとされており、期間率は勤務期間に応じて0から100分の100までの割合とされている。

(注1)
勤務期間  勤勉手当支給の基準日となる6月1日及び12月1日以前の6か月以内の期間において、給与法の適用を受ける職員として在職した期間から給与法により給与を減額された期間等を除いた期間

(2) 外部研修の概要等

常勤医師は、一定の要件を満たす場合、医療技術の維持向上等を目的として、大学医学部、大学病院、総合病院等の外部医療機関等における研修(以下「外部研修」という。)を行うことが認められている。

人事院規則10-3(職員の研修)、「医療職俸給表(一)適用職員の外部医療機関等における研修について」(平成13年法務省矯総第4293号)等によれば、外部研修を行う場合は、勤務する刑事施設等の長(以下「施設長」という。)に対して、研修目的、研修先の外部医療機関等、研修の課業時間等を記載した研修計画書(以下「計画書」という。)を事前に提出して許可を受けることとされている。そして、外部研修を行った場合は、施設長に対して、計画した研修期間の満了時点等の適宜の時期に研修結果報告書(以下「報告書」という。)を提出することとされている。

また、勤務時間法、人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)等によれば、日常の執務を離れて行う外部研修については、許可を受けた課業時間が当該職員に割り振られた正規の勤務時間とみなすこととされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、常勤医師が外部研修を行う場合の勤務時間の管理は適正に行われ、常勤医師の給与は適正に算定されているかなどに着眼して、18刑事施設等において、常勤医師に支給された給与を対象として、出勤簿、計画書、報告書、職員別給与簿等により会計実地検査を行った。そして、このうち疑義が生じた3刑事施設等(注2)の常勤医師3名については、平成20年4月から26年6月までの間に支給された給与の総額143,607,378円を対象として、上記の関係書類を確認したり、刑事施設等の職員を通じて外部研修の実施状況を確認したりするなどして検査した。さらに、当該常勤医師3名のうち1名については、以前に他の刑事施設等にも勤務していたため、上記の給与額に加えて、以前の勤務先である東京少年鑑別所において20年1月から21年7月までの間に支給された給与の総額18,464,604円についても、同鑑別所から新たに関係書類の提出を受け、これを確認するなどして検査した。

(注2)
3刑事施設等  京都刑務所、多摩、京都医療両少年院

(2) 検査の結果

検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

すなわち、常勤医師3名は、19年度から26年度までの毎年度、外部研修として、週2日から週5日、外部医療機関等において、医療技術の向上等を目的とした研究等を行うこととする計画書を施設長に提出して外部研修の許可を受けており、研修期間経過後に報告書を提出して、計画どおり研修を行ったとしていた。そして、常勤医師3名が外部研修を行ったとする課業時間について、正規の勤務時間に勤務したものとして、所定の給与が支給されていた。

しかし、本院が刑事施設等の職員を通じて、常勤医師3名及び常勤医師3名の外部研修先から外部研修の実施状況を確認するなどしたところ、常勤医師1名は、20年1月から23年3月までの間に、上記の外部研修を行ったとする課業時間に外部研修を全く行っていなかった。また、常勤医師2名は、21年1月から26年4月までの間に、上記の外部研修を行ったとする課業時間のうちの一部の時間に外部研修を行っていなかった。

したがって、常勤医師3名が20年1月から26年4月までの間に外部研修を行っていなかった課業時間数計5,353時間は、当該常勤医師に割り振られた正規の勤務時間中に特に承認を得ることなく無断で勤務していなかったこととなることから、月ごとの勤務しなかった時間数(14時間から80時間)にそれぞれの月の勤務1時間当たりの給与額(2,466円から3,677円)を乗じた額の合計17,119,681円を給与額から減額すべきであった。

また、上記の勤務しなかった期間については、給与法により勤務期間の算定上、給与を減額される期間となり在職した期間から除かれることから、勤勉手当の算出基礎となる期間率は当初の100分の100の割合から所定の割合(100分の70から100分の95)に下がることとなり、勤勉手当額を計1,534,061円減額すべきであった。

前記のとおり、常勤医師3名が施設長の許可を受けて行うこととされている外部研修を全く又は一部行わず、正規の勤務時間中に勤務していなかったのに、当該常勤医師3名が勤務していた4刑事施設等は、その給与の支給に当たり、勤務しなかった時間に係る給与額17,119,681円及び勤勉手当額1,534,061円、計18,653,742円を減額しておらず、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、常勤医師3名において国家公務員の服務規律を遵守することの認識が欠けていたこと、4刑事施設等において外部研修をその目的に沿って適切に行うよう常勤医師に対して十分な指導を行っていなかったこと、外部研修の実施状況を適切に把握していなかったことなどによると認められる。

これらの勤務しなかった時間について減額すべきであった給与額及び勤勉手当額を刑事施設等別に示すと次のとおりである。

刑事施設等名 当該常勤医師に支給された給与の総額
(支給期間)
外部研修を行っていなかった期間 外部研修を行っていなかった課業時間 減額すべきであった給与額 減額すべきであった勤勉手当額 減額すべきであった給与額及び勤勉手当額の計
時間
(14) 京都刑務所 66,085,142
(21.1~26.6)
21.1~26.4 2,003 6,231,517 500,235 6,731,752
(15) 東京少年鑑別所 18,464,604
(20.1~21.7)
20.1~21.7 1,232 4,146,512 358,483 4,504,995
多摩少年院 31,648,731
(21.8~24.1)
21.8~23.3 1,224 4,336,466 478,361 4,814,827
小計 50,113,335
(20.1~24.1)
20.1~23.3 2,456 8,482,978 836,844 9,319,822
(16) 京都医療少年院 45,873,505
(20.4~24.3)
21.1~22.12 894 2,405,186 196,982 2,602,168
(14)-(16)の計 162,071,982 5,353 17,119,681 1,534,061 18,653,742