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  • 平成25年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 法務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2) 更生保護委託費のうち、毎月定額で支払われている福祉職員に係る委託事務費の中の人件費相当額について、更生保護法人等が同職員に実際に支給した人件費等を把握して、実際の人件費等が人件費相当額の年額を下回った場合には、差額の精算を行うよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)更生保護官署 (項)更生保護活動費
部局等
法務本省、6地方更生保護委員会
福祉職員に係る委託事務費の概要
更生保護施設における福祉職員の配置に必要な経費を定額で支払うもの
実際の人件費等が人件費相当額の年額を下回っていた更生保護法人数(施設数)
41法人(42施設)(平成23、24両年度)
上記の法人に支払われた福祉職員に係る人件費相当額
3億8364万余円(平成23、24両年度)
実際の人件費等が人件費相当額の年額を下回っていた額
8860万円(平成23、24両年度)

1 制度の概要

(1) 更生保護委託費の概要

法務省は、更生保護法(平成19年法律第88号)等に基づき、保護観察所の長が、満期釈放者、保護観察に付されない執行猶予者等に対し、その者の申出に基づいて食事、医療、旅費等を支給する緊急措置である更生緊急保護又は保護観察対象者に対して更生緊急保護と同様の措置を講ずる応急の救護を行っている。そして、これらの措置は、保護観察所の長が自ら行うか又は更生保護施設を設置、運営し、被保護者に対して、宿泊場所の供与や食事の給与とともに、職業補導や社会生活に適応させるために必要な生活指導等を行う更生保護法人等に委託して行うこととなっている。

保護観察所の長がこれらの措置を更生保護法人等に委託した場合に、国は委託によって生ずる費用を支弁することとなっており、保護観察所の会計事務等を行う地方更生保護委員会(以下「委員会」という。)は、更生保護法人等に対して更生保護委託費を平成23年度計44億1320万余円、24年度計44億7843万余円支払っている。

同委託費の額は、更生保護委託費支弁基準(平成20年法務省令第41号。以下「支弁基準」という。)により、補導援護費、宿泊費、食事付宿泊費、委託事務費(更生保護施設の職員の人件費及び同施設の運営に必要な物件費に相当する額)等について、それぞれ単価が定められている。同委託費は、被保護者の人数及び在所日数の実績に上記措置の内容に応じた単価を乗じて算定され支払われることとなっている。そして、更生保護法人等が更生保護施設に社会福祉士、精神保健福祉士又は介護福祉士の資格を持つなどの福祉に関する専門的知識を有する職員(以下「福祉職員」という。)を配置した場合には、上記の委託事務費とは別に、福祉職員に係る委託事務費が支払われることとなっている。

(2) 福祉職員に係る委託事務費等

福祉職員に係る委託事務費は、支弁基準により、人件費に相当する額(月額単価と健康保険法(大正11年法律第70号)等の規定により事業主が負担することとされている保険料に相当する額(以下「社会保険料事業主負担分」という。)の合計額。以下「人件費相当額」という。)と物件費に相当する額とを、予算の範囲内で毎月、定額で支払うこととなっている。

人件費相当額の算定のための月額単価については、地域区分ごとに、23年度は360,026円から424,412円、24年度は332,975円から392,497円となっている。そして、社会保険料事業主負担分については、上記の月額単価を基にして算定することとなっている。

法務省は、21年度から、刑務所等の矯正施設を出所した者等のうち、高齢者又は障害を有する者であって、かつ、適当な住居のない者は、必要となる福祉サービス等を出所後直ちに受けられないなど、社会復帰の過程において著しい困難を伴うことから、これらの者が円滑に福祉サービス等を受けられるようにするために、あらかじめ法務大臣が指定する更生保護施設に福祉職員を配置することとしている。24年度末現在において、全国の104施設中、指定を受けたものは57施設あり、それぞれ1人の福祉職員が配置されている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

福祉職員に係る委託事務費については、前記のとおり、定額による支払となっていることから、本院は、経済性等の観点から、福祉職員に係る委託事務費の額が福祉職員の給与等の支払の実態に応じた適切なものとなっているかなどに着眼して、全国の8委員会のうち6委員会(注)が23、24両年度に46法人(47施設)に対して支払った福祉職員に係る委託事務費計4億8195万余円を対象として検査した。検査に当たっては、上記の6委員会において、更生保護法人等から提出されている職員給与等一覧表等の関係書類を確認するとともに、法務本省において、支弁基準における福祉職員に係る委託事務費の根拠等を聴取するなどして会計実地検査を行った。

(注)
6委員会  北海道、関東、中部、近畿、四国、九州各地方更生保護委員会

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

6委員会が管内の更生保護施設を運営する更生保護法人等に対して支払った福祉職員に係る委託事務費のうち人件費相当額は、23年度計2億4335万余円、24年度計2億2561万余円であり、一人当たりの年額は、23年度4,961,550円から5,850,132円、24年度4,602,018円から5,426,322円となっていた。

一方、23年度及び24年度にそれぞれ46施設で実際に福祉職員に支払われた給与等の年額と社会保険料事業主負担分の年額を合計した金額(以下、「実際に福祉職員に支払われた給与等の年額と社会保険料事業主負担分の年額を合計した金額」を「実際の人件費」という。)を確認したところ、23年度2,775,480円から6,691,294円、24年度2,683,121円から6,250,559円となっていた。そこで、実際の人件費と上記の人件費相当額の年額とを比較すると、多くの更生保護施設で実際の人件費が人件費相当額の年額を下回っており、その下回っているものの差額は、23年度は43施設で、33,725円から2,778,816円、24年度は38施設で、9,549円から2,093,394円となっていた。これらのうちには実際の人件費が人件費相当額の年額を20%以上下回っている施設が、23年度は34施設、24年度は19施設あった。このように実際の人件費が下回っているのは、施設に配置された福祉職員には定年退職後に雇用された60歳を超える者等が多いことなどによると思料された。

以上のように、支弁基準によって支払われている人件費相当額は、福祉職員の人件費の支払に充てる額として更生保護法人等に支払われているのに、多くの更生保護施設において、実際の人件費がこれを相当程度下回っていて実際に支払われていない人件費相当額が生じている事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(節減できた人件費相当額の年額)

上記のことから、福祉職員に係る人件費相当額の年額を、更生保護法人が支給した実際の人件費が下回る場合には、これにより福祉職員に係る委託事務費を精算することにすると、各更生保護法人が負担している退職給与に係る費用等を考慮したとしても、6委員会が23、24両年度に支払ったもののうち、41法人(42施設)に支払われた福祉職員に係る人件費相当額計3億8364万余円は、計2億9503万余円となり、計8860万余円節減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、法務本省において、福祉職員に係る人件費相当額の年額より、更生保護法人等が支給した実際の人件費等が下回っている状況について実態の把握が十分でなく、福祉職員に係る委託事務費の精算を行うことについての検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、法務省は、26年5月に支弁基準の運用に関する通達を改正するなどして、26年度から、委員会が更生保護法人等が支給した実際の人件費等を把握して、人件費相当額の年額を下回った場合には、福祉職員に係る委託事務費の精算を行うこととする処置を講じた。