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  • 平成25年度|
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国有港湾施設有償貸付契約において、貸付料の算定を誤ったため、契約額が低額となっていたもの[近畿財務局神戸財務事務所](21)


会計名及び科目
一般会計 (部)雑収入 (款)国有財産利用収入 (項)国有財産貸付収入
部局等
近畿財務局神戸財務事務所
契約名
国有港湾施設有償貸付契約
契約の概要
港湾法に基づき、国有港湾施設のうち国土交通省から引き継いだ普通財産である土地を貸し付けるもの
契約の相手方
神戸市
契約
平成18年8月、21年10月、24年9月 随意契約
契約額
1,720,490,894円(平成18年度~26年度)
低額となっていた契約額
36,223,752円(平成18年度~26年度)

1 貸付契約の概要

近畿財務局神戸財務事務所(以下「財務事務所」という。)は、港湾法(昭和25年法律第218号)に基づき、神戸港に所在する国有港湾施設のうち国土交通省(平成13年1月5日以前は運輸省)から引き継いだ普通財産である土地について、地区ごとに区分するなどして国有港湾施設有償貸付契約(賃貸借契約)を港湾管理者の神戸市とそれぞれ締結し、原則として3年ごとにこれらの契約を更新している(以下、このように貸し付けられる土地を「港湾貸付地」という。)。財務事務所は、同市中央区に所在するC・D地区の港湾貸付地(25年度末の国有財産台帳面積計111,859.08m2)に係る期間3年の賃貸借契約を同市と締結し、18年度、21年度及び24年度に契約を更新している(18年度から26年度までの契約金額計1,720,490,894円。以下「本件契約」という。)。そして、同市は、本件契約で借り受けている土地を原則として民間事業者等に事務所、倉庫等の用地として転貸している。

港湾貸付地の貸付料については、「国有港湾施設のうち国土交通省から引き継がれた普通財産の取扱いについて」(昭和33年蔵管第3444号。以下「通達」という。)によれば、普通財産貸付事務処理要領(平成13年財理第1308号)の算定基準を準用して、3年分の貸付料年額を一括して算定することとされている(以下、算定基準により算定した貸付料年額を「基準貸付料」という。)。そして、継続して貸し付ける土地の貸付料については、3年ごとの契約更新時に、契約更新前の直近年度分の基準貸付料に所定の調整を行って3年分の基準貸付料を算定することとされている。

また、港湾工事の費用の一部を地方公共団体が負担した港湾貸付地の貸付料については、通達によれば、基準貸付料から地方公共団体が港湾工事の費用を負担した割合を基準貸付料に乗ずるなどした額(以下「負担割合相当額」という。)を控除した額とすることができることとされ、その際は、次の算式により算定することとされている(以下、この算式により算定した貸付料を「決定貸付料」という。)。

決定貸付料=基準貸付料-負担割合相当額 負担割合相当額=(基準貸付料-市町村交付金相当額(注2))×負担割合(注2) 注1 注2

(注1)
市町村交付金相当額  国有資産等所在市町村交付金法(昭和31年法律第82号)に基づき国が貸付財産の所在する市町村等に対して交付する国有資産等所在市町村交付金相当額
(注2)
負担割合  地方公共団体が港湾工事の費用を負担した割合

そして、財務事務所は、転貸先等ごとに決定貸付料を算定し、地区ごとにそれらの3年度分を合計した額を港湾貸付地の賃貸借契約の契約額としている。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、港湾貸付地の賃貸借契約における決定貸付料は適切に算定されているかなどに着眼して、本件契約を対象として、財務事務所において、貸付料計算調書等の書類により会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切でない事態が見受けられた。

財務事務所は、本件契約のうち神戸市が転貸するなどしていた13か所の土地(25年度末の国有財産台帳面積計20,123.69m2、同価格計776,694,800円)について、18年度から26年度までの本件契約における決定貸付料を計191,314,232円としていた。

しかし、財務事務所は、上記13か所の土地について、契約更新時に直近年度分の基準貸付料を用いて新たな基準貸付料を算定すべきであったのに、基準貸付料から負担割合相当額を控除した直近年度分の決定貸付料を誤って用いるなどしたため、新たな基準貸付料が過小に算定されていた。その結果、新たな決定貸付料が過小に算定されていた(18年度10か所、21年度1か所、24年度2か所)。さらに、財務事務所は、その後の契約更新時にも上記の誤った基準貸付料を用いて新たな基準貸付料を算定した結果、新たな決定貸付料が過小に算定されているものがあった(21年度8か所、24年度7か所)。

したがって、前記13か所の土地について、適正に算定した基準貸付料を用いるなどして本件契約における決定貸付料を修正計算すると、計227,537,984円となる。これに基づき本件契約の適正な契約額を算定すると、計1,756,714,646円となり、前記の契約額計1,720,490,894円は、これに比べて計36,223,752円低額となっていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、財務事務所において、港湾貸付地の賃貸借契約における貸付料の算定方法についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。