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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第9 厚生労働省 |
  • 不当事項 |
  • 補助金

(4)国民健康保険の財政調整交付金が過大に交付されていたもの[22都道府県](125)―(176)


52件 不当と認める国庫補助金 584,264,000円

国民健康保険(「国民健康保険の療養給付費負担金が過大に交付されていたもの」参照)については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)が行う国民健康保険について財政調整交付金が交付されている。財政調整交付金は、市町村間で医療費の水準や住民の所得水準の差異により生じている国民健康保険の財政力の不均衡を調整するために、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づいて交付するもので、普通調整交付金と特別調整交付金がある。

普通調整交付金は、被保険者の所得等から一定の基準により算定される収入額(以下「調整対象収入額」という。)が、医療費、老人保健医療費拠出金等から一定の基準により算定される支出額(以下「調整対象需要額」という。)に満たない市町村に対して、その不足を公平に補うことを目途として交付するものであり、医療費等に係るもの(以下「医療分」という。)、後期高齢者支援金等(注1)に係るもの(以下「後期分」という。)及び介護納付金(注2)に係るもの(以下「介護分」という。)の合計額が交付されている。そして、普通調整交付金の交付額は、「国民健康保険の調整交付金の交付額の算定に関する省令」(昭和38年厚生省令第10号)等に基づき、医療分、後期分及び介護分のいずれも、それぞれ当該市町村の調整対象需要額から調整対象収入額を控除した額に基づいて算定することとなっている。

(注1)
後期高齢者支援金等  高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)の規定に基づき、各医療保険者が社会保険診療報酬支払基金に納付する支援金等
(注2)
介護納付金  介護保険法(平成9年法律第123号)の規定に基づき、各医療保険者が社会保険診療報酬支払基金に納付する納付金

特別調整交付金は、市町村について特別の事情がある場合に、その事情を考慮して交付するものであり、非自発的失業財政負担増特別交付金等がある。

財政調整交付金の交付手続については、〔1〕 交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書及び事業実績報告書を提出して、〔2〕 これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査した上で厚生労働省に提出して、〔3〕 厚生労働省はこれに基づき交付決定及び交付額の確定を行うこととなっている。

本院は、31都道府県の320市区町村において、平成20年度から24年度までの間に交付された財政調整交付金について、会計実地検査を行った。その結果、22都道府県の52市区町において、普通調整交付金の調整対象需要額を過大に算定したり、調整対象収入額を過小に算定したり、特別調整交付金のうち非自発的失業財政負担増特別交付金等を過大に算定したりするなどしていたため、交付金交付額計52,689,081,000円のうち計584,264,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、上記の52市区町において制度の理解が十分でなく事務処理が適切でなかったこと、上記の22都道府県において事業実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について態様別に示すと次のとおりである。

ア 普通調整交付金の調整対象需要額を過大に算定していたもの

普通調整交付金の調整対象需要額は、本来保険料で賄うべきとされている額であり、そのうち医療分に係る調整対象需要額は、一般被保険者(退職被保険者及びその被扶養者以外の被保険者をいう。以下同じ。)に係る医療給付費、老人保健医療費拠出金等の合計額から療養給付費負担金等の国庫補助金等を控除した額となっている。

このうち、一般被保険者に係る医療給付費は、療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る被保険者の一部負担金に相当する額を控除した額と入院時食事療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額との合計額とすることとなっている。

6県の25市町は、普通調整交付金の実績報告等に当たり、一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定しており、調整対象需要額を過大に算定していた。このため、交付金交付額計226,686,000円が過大に交付されていた。

上記の事態について事例を示すと次のとおりである。

<事例>

青森県三沢市は、平成20年度から23年度までの普通調整交付金の実績報告等に当たり、医療給付費の集計を誤ったため、一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたことにより、調整対象需要額を過大に算定していた。

その結果、適正な一般被保険者に係る医療給付費により算定した調整対象需要額に基づいて普通調整交付金の交付額を算定すると、9,029,000円が過大に交付されていた。

イ 普通調整交付金の調整対象収入額を過小に算定していたもの

普通調整交付金の調整対象収入額は、医療分、後期分及び介護分それぞれについて、一般被保険者又は介護納付金賦課被保険者の数を基に算定される応益保険料額と、それら被保険者の所得を基に算定される応能保険料額との合計額となっており、本来徴収すべきとされている保険料の額である。

このうち、医療分及び後期分の応能保険料額は、一般被保険者の所得(以下「算定基礎所得金額」という。)に一定の方法により計算された率を乗じて算定することとなっている。

そして、算定基礎所得金額は、保険料の賦課期日現在一般被保険者である者の前年における所得金額の合計額を基に算定することとなっている。ただし、同一世帯に属する被保険者の所得金額の合計額が別に計算される金額(以下「所得限度額」という。)を超えて高額である世帯(以下「所得限度額超過世帯」という。)がある場合には、当該世帯の所得金額のうち所得限度額を超える部分の額に一定の方法により計算した率を乗じて得た額を上記一般被保険者の所得金額の合計額から控除して、算定基礎所得金額とすることとなっている。

また、介護分の応能保険料額は、介護納付金賦課被保険者について上記と同様に算定することとなっている。

愛知県瀬戸市は、普通調整交付金の実績報告等に当たり、所得限度額超過世帯の所得金額のうち、所得限度額を超える部分の額を過大に算定しており、調整対象収入額を過小に算定していた。このため、交付金交付額34,247,000円が過大に交付されていた。

ウ 特別調整交付金を過大に算定していたもの

非自発的失業財政負担増特別交付金は、賦課期日の翌日以降の非自発的失業者に係る保険料(税)軽減措置による財政負担が多額になっている場合に交付するものである。

そして、この交付額は、一般被保険者数、非自発的失業による保険料軽減世帯に係る一般被保険者数等から一定の計算式により調整基準額を算定し、これに基づいて算定することとなっている。

13道府県の21市町は、非自発的失業財政負担増特別交付金の実績報告等に当たり、非自発的失業による保険料軽減世帯に係る一般被保険者に算定の対象とならない者を含めたことなどにより調整基準額を過大に算定しており、非自発的失業財政負担増特別交付金を過大に算定していた。このため、交付金交付額計291,359,000円が過大に交付されていた。

上記の事態について事例を示すと次のとおりである。

<事例>

大阪府枚方市は、平成23年度の非自発的失業財政負担増特別交付金の実績報告等に当たり、非自発的失業による保険料軽減世帯に係る一般被保険者数に、一定額以上の所得を有していたことにより算定の対象とならない者を含めていたため、調整基準額を過大に算定していた。

その結果、適正な調整基準額に基づいて非自発的失業財政負担増特別交付金の交付額を算定すると、計25,247,000円が過大に交付されていた。

以上のほか、15都道府県の18市区は、特別調整交付金の実績報告等に当たり、対象となる保険料調定額や一般被保険者数を過大に算定するなどしていた。このため、財政負担増影響額等特別交付金(注3)12,752,000円、非自発的失業軽減特別交付金(注4)6,322,000円、結核・精神病特別交付金(注5)5,327,000円、離職者減免特別交付金(注6)4,886,000円、東日本大震災財政負担増特別交付金(注7)1,445,000円、減額解除特別交付金(注8)308,000円等の交付金交付額計31,972,000円が過大に算定されていた。

(注3)
財政負担増影響額等特別交付金  前年度の財政調整交付金において、申請誤りなどのため交付額が過小となっていて国民健康保険の財政負担となる影響額等がある場合に交付される交付金
(注4)
非自発的失業軽減特別交付金  賦課期日現在における非自発的失業者に係る保険料(税)軽減措置による財政負担が多額になっている場合に交付される交付金
(注5)
結核・精神病特別交付金  結核性疾病及び精神病に係る医療給付費等が多額である場合に交付される交付金
(注6)
離職者減免特別交付金  一般被保険者又はその属する世帯の世帯主が経済状況の悪化に伴い離職したと保険者が認める者に対して条例に基づき保険料(税)の減免を実施した場合に交付される交付金
(注7)
東日本大震災財政負担増特別交付金  東日本大震災により被災した被保険者等に係る保険料(税)の減免措置等による財政負担が増加する場合に交付される交付金
(注8)
減額解除特別交付金  前年度において、収納率による普通調整交付金の減額を受けている保険者であって、保険料(税)収納率向上対策の効果が認められる場合に交付される交付金

なお、前記の52市区町のうち13市については事態の態様が重複している。

以上を部局等別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

  部局等 交付先
(保険者)
交付金の種類 年度 交付金交付額 左のうち不当と認める額 摘要
          千円 千円  
(125) 北海道 滝川市 特別調整交付金(離職者減免特別交付金) 22 4,411 2,788 調整対象基準額を過大に算定していたもの
(126) 北斗市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金等) 23 8,800 5,095 調整基準額を過大に算定していたものなど
(127) 青森県 八戸市 普通調整交付金、特別調整交付金(非自発的失業軽減特別交付金等) 20、21、23 5,303,467 31,065 調整対象需要額を過大に算定していたものなど
(128) 黒石市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金等) 22、23 10,125 2,975 調整基準額を過大に算定していたものなど
(129) 三沢市 普通調整交付金 20~23 963,866 9,029 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(130) 秋田県 大館市 20~23 2,267,920 10,054
(131) 茨城県 那珂市 特別調整交付金(東日本大震災財政負担増特別交付金) 24 20,702 1,445 調整基準額を過大に算定していたもの
(132) 東京都 荒川区 特別調整交付金(離職者減免特別交付金) 22 11,835 1,372 調整対象基準額を過大に算定していたもの
(133) 神奈川県 藤沢市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金等) 23 131,249 77,562 調整基準額を過大に算定していたものなど
(134) 新潟県 新潟市 普通調整交付金 (注9)
20
3,086,833 31,699 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(135) 長岡市 普通調整交付金、特別調整交付金(結核・精神病特別交付金) (注9)
20
1,329,967 19,583 調整対象需要額を過大に算定していたものなど
(136) 三条市 普通調整交付金 (注9)
20
551,496 3,890 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(137) 柏崎市 20~22 1,133,551 8,377
(138) 新発田市 (注9)
20
551,776 4,097
(139) 小千谷市 (注9)
20
128,759 1,415
(140) 加茂市 20~22 611,485 6,494
(141) 十日町市 (注9)
20
353,161 1,464
(142) 村上市 (注9)
20
472,459 3,099
(143) 燕市 20~22 1,375,473 11,112
(144) 糸魚川市 20~22 604,496 3,586
(145) 妙高市 (注9)
20
245,283 1,218
(146) 五泉市 (注9)
20
403,228 3,501
(147) 上越市 20~22 2,887,500 38,824
(148) 阿賀野市 20~22 882,603 6,789
(149) 佐渡市 20~22 1,434,270 9,655
(150) 魚沼市 20~22 564,245 3,830
(151) 南魚沼市 20~22 852,047 11,180
(152) 東蒲原郡
阿賀町
(注9)
20
137,160 1,125
(153) 長野県 松本市 21 1,372,454 1,332
(154) 静岡県 富士市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 23 7,811 4,837 調整基準額を過大に算定していたもの
(155) 伊豆の国市 22 3,879 2,069
(156) 愛知県 瀬戸市 普通調整交付金 24 356,119 34,247 調整対象収入額を過小に算定していたもの
(157) 滋賀県 長浜市 特別調整交付金(非自発的失業軽減特別交付金) 23 8,748 3,125 非自発的失業による保険料軽減世帯に係る一般被保険者数等を過大に算定していたもの
(158) 草津市 特別調整交付金(非自発的失業軽減特別交付金等) 23 20,635 6,333 一般被保険者の保険料調定総額を過大に算定していたものなど
(159) 大阪府 枚方市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 23 46,498 25,247 調整基準額を過大に算定していたもの
(160) 門真市 23 29,324 11,471
(161) 大阪狭山市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金等) 22、23 23,310 10,289 調整基準額を過大に算定していたものなど
(162) 阪南市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 23 17,426 9,728 調整基準額を過大に算定していたもの
(163) 鳥取県 米子市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金等) 23 24,367 3,970 調整基準額を過大に算定していたものなど
(164) 岡山県 勝田郡
勝央町
特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 22~24 6,619 4,462 調整基準額を過大に算定していたもの
(165) 広島県 呉市 普通調整交付金 21、22 2,211,924 2,330 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(166) 高知県 須崎市 特別調整交付金(非自発的失業軽減特別交付金) 23 1,679 1,639 非自発的失業による保険料軽減世帯に係る保険料調定総額を過小に算定していたもの
(167) 福岡県 飯塚市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 23 15,175 10,795 調整基準額を過大に算定していたもの
(168) 宮若市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金等) 23 6,786 3,676 調整基準額を過大に算定していたものなど
(169) 長崎県 雲仙市 23 4,813 1,785
(170) 西彼杵郡
長与町
特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 23、24 1,907 1,363 調整基準額を過大に算定していたもの
(171) 熊本県 熊本市 普通調整交付金、特別調整交付金(減額解除特別交付金) 20~23 21,897,491 22,894 調整対象需要額を過大に算定していたものなど
(172) 大分県 中津市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 22、23 20,482 7,970 調整基準額を過大に算定していたもの
(173) 宇佐市 特別調整交付金(財政負担増影響額等特別交付金等) 23 72,914 6,507 調整基準額を過大に算定していたものなど
(174) 宮崎県 宮崎市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 23、24 190,208 88,886 調整基準額を過大に算定していたもの
(175) 鹿児島県 鹿屋市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金等) 24 17,930 5,643 調整基準額を過大に算定していたものなど
(176) 指宿市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 22 2,415 1,343 調整基準額を過大に算定していたもの
(125)―(176)の計 52,689,081 584,264  
(注9)
新潟、長岡、三条、新発田、小千谷、十日町、村上、妙高、五泉各市、阿賀町は、平成21、22両年度においても、他年度と同様に調整対象需要額を過大に算定していたが、当該事態については平成24年度決算検査報告「国民健康保険の療養給付費負担金及び財政調整交付金の交付額の算定に当たり、定額制の負担軽減措置を実施した市町村において減額調整率を適用する際に必要となる負担軽減措置対象者の負担割合の算定方法を具体的に示して都道府県を通じて市町村に対して周知することなどにより、その交付額の算定が適正なものとなるよう是正改善の処置を求めたもの」に掲記していることから、両年度分については除外している。