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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第9 厚生労働省 |
  • 不当事項 |
  • 補助金

(11)厚生労働科学研究費補助金が過大に交付されていたもの[厚生労働本省、国立がんセンター](234)―(236)


3件 不当と認める国庫補助金 14,975,000円

厚生労働科学研究費補助金は、厚生労働科学研究の振興を促し、もって、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に関して、行政施策の科学的な推進を確保するために、技術水準の向上を図ることを目的とする研究事業を行う研究者等に対して、厚生労働科学研究費補助金取扱規程(平成10年厚生省告示第130号)、厚生労働科学研究費補助金取扱細則(平成10年厚科第256号厚生科学課長決定)等(以下、これらを合わせて「取扱規程等」という。)に基づき、厚生労働大臣が認めた額と補助対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額と、総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して、少ない方の額を国が補助するものである。

取扱規程等によれば、研究事業に係る補助対象経費は、研究で使用する消耗品等(以下「研究用物品」という。)の購入費等の直接研究に必要な経費(以下「直接経費」という。)等とされている。また、直接経費の管理及び経理に係る事務は、補助金の経理の透明化を図るなどのために、研究者の所属機関の長に必ず委任することとされている。そして、委任を受けた所属機関の長は、直接経費に係る事務を適正に執行することとされている。

本院は、23研究機関に所属する220名の研究者が実施している700研究事業について会計実地検査を行った。その結果、1研究機関に所属する3名の研究者が実施している31研究事業において、研究者が雇用した事務補助者が業者に架空の取引を指示して研究用物品を購入したとする虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより研究者の所属機関に購入代金を支払わせて、これを業者に預けて別途に経理する不適正な経理処理を行っていたため、国庫補助金計14,975,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、研究者において、補助金の原資は税金等であるにもかかわらず事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、研究者の所属機関において、研究用物品の納品検査等が十分でなかったこと、厚生労働省において、研究者及び研究機関に対して補助金の不正使用の防止についての周知徹底が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

国家公務員共済組合連合会虎の門病院に所属する研究者Aは、平成20年度から24年度までの間に、補助金の交付を受け、その全額を研究用物品の購入等に使用したとして、補助事業終了後に事業実績報告書等を提出していた。そして、研究用物品を52,244,947円で購入したとして納品書、請求書等を同病院に提出していて、同病院は当該購入代金を業者に支払っていた。しかし、研究者Aが実際に研究用物品を購入した額は43,646,134円にすぎず、差額の8,598,813円については、研究者Aが雇用した事務補助者が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させたものであった。そして、当該事務補助者は、これを業者に預けて別途に経理していた。

この結果、国庫補助金が8,506,000円過大に交付されていた。

以上を部局等別、所属機関別・研究者別に示すと次のとおりである。

  部局等 所属機関名 国庫補助金の交付先
(研究者)
年度 事業数 国庫補助金交付額 不当と認める国庫補助金交付額 摘要
            千円 千円  
(234) 厚生労働本省、国立がんセンター(注) 国家公務員共済組合連合会虎の門病院 A 20~24 24 927,990 8,506 不適正な経理処理
(235) 厚生労働本省 B 22~24 3 22,767 3,823
(236) 厚生労働本省、国立がんセンター C 20~22、24 4 88,978 2,646
(234)―(236)の計 31 1,039,735 14,975  
(注)
国立がんセンター(平成22年4月1日以降は独立行政法人国立がん研究センター)は、20、21両年度に、国の機関として、一部の研究事業に係る補助金の交付事務を行っていた。