ページトップ
  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果|第1節 省庁別の検査結果|第9 厚生労働省|本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1)地域医療再生基金及び医療施設耐震化臨時特例基金を活用して実施する助成事業における消費税の取扱いを適切に行うことにより、両基金が効率的に活用されるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)医療提供体制基盤整備費
(項)医療提供体制確保対策費
部局等
厚生労働本省
補助の根拠
予算補助
補助事業者
24都道府県
助成事業
(1)地域医療再生基金事業
(2)耐震化整備事業
助成事業の概要
国の交付金により造成した基金を活用して、医療圏単位での医療機能の強化、医師等の確保等の取組等の支援及び地震発生時における適切な医療提供体制の維持を目的として事業者に助成金を交付するもの
都道府県の定めた助成要綱に基づく事務処理を適時適切に行っていなかった助成事業数及び助成金額
(1)957助成事業 158億4613万余円(平成21年度~24年度)
(2)101助成事業 321億2330万余円(平成21年度~24年度)
計 1,058助成事業 479億6944万余円
上記の助成金額のうち仕入税額控除していた消費税額
(1)6566万余円
(2)1億4109万余円
計 2億0676万余円
上記に係る交付金相当額(ア)
(1)5939万円
(2)1億2895万円
計 1億8835万円
都道府県が定めた助成要綱に消費税の取扱いを定めていなかった助成事業数及び助成金額
(1)220助成事業 41億2342万余円(平成21年度~24年度)
(2)6助成事業 18億5804万余円(平成21年度~24年度)
計 226助成事業 59億8147万余円
上記の助成金額のうち仕入税額控除していた消費税額
(1)886万余円
(2)893万余円
計 1779万余円
上記に係る交付金相当額(イ)
(1)886万円
(2)893万円
計 1779万円
(ア)及び(イ)の計
(1)6825万円
(2)1億3788万円
計 2億0613万円

1 制度の概要

(1)地域医療再生基金及び医療施設耐震化臨時特例基金の概要

厚生労働省は、「平成21年度地域医療再生臨時特例交付金の交付について」(平成21年厚生労働省発医政第0605003号)等に基づき、都道府県が地域の医療課題の解決等に向けて策定する地域医療再生計画等に基づいて行う事業を支援するために、都道府県が設置する地域医療再生基金の造成に必要な経費として、地域医療再生臨時特例交付金を、平成21年度から24年度までの間に計5549億9792万余円交付している。

また、厚生労働省は、「平成21年度医療施設耐震化臨時特例交付金の交付について」(平成21年厚生労働省発医政第0605004号)等に基づき、災害拠点病院等の医療機関の耐震整備を行い、地震発生時において適切な医療提供体制の維持を図るために、都道府県が設置する医療施設耐震化臨時特例基金の造成に必要な経費として、医療施設耐震化臨時特例交付金を、21年度から24年度までの間に計1959億0750万余円交付している。

地域医療再生基金及び医療施設耐震化臨時特例基金(以下、これらを合わせて「両基金」という。)を活用して行う地域医療再生基金事業及び耐震化整備事業(以下、これらを合わせて「両助成事業」という。)の実施に当たっては、都道府県が、両助成事業における助成金の交付事務に係る手続等を定めた助成要綱を作成することとなっており、両助成事業の内容に合わせて要綱を複数定めるなどしている。

(2)消費税額の仕入税額控除の概要

消費税法(昭和63年法律第108号)等に基づき、消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)は、事業者が課税対象となる取引を行った場合に納税義務が生ずるが、生産及び流通の各段階の取引で重ねて課税されないように、確定申告において、課税売上げ(消費税の課税対象となる資産の譲渡等)に係る消費税額から課税仕入れ(消費税の課税対象となる資産の譲受け等)に係る消費税額を控除(以下「仕入税額控除」という。)する仕組みとなっている。

また、確定申告をする者は、原則として課税期間(注1)終了後2か月以内に確定申告書を提出することとなっている。

(注1)
課税期間  納付する消費税額の計算の基礎となる期間をいい、原則として法人は事業年度、個人事業者は暦年である。

(3)両助成事業における消費税の取扱い

両助成事業の事業者が消費税の課税事業者であり、かつ、両助成事業の対象となる建物の取得、設備機器の購入等の設備投資等により得られる売上げが課税売上げとなるなどの場合には、その設備投資等は課税仕入れに該当する。そして、両助成事業の事業者が確定申告の際に課税仕入れに係る消費税額を仕入税額控除した場合には、当該事業者はこれらに係る消費税額を実質的に負担していないこととなる。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

両助成事業において助成の対象となる経費(以下「助成対象事業費」という。)に対して交付される助成金は毎年度多額に上っており、また、事業者の中に医療法人等の消費税の課税事業者が多数含まれていると見込まれる。

そこで、本院は、合規性、効率性等の観点から、両助成事業における消費税に係る取扱いが適切に行われ、地域医療再生臨時特例交付金及び医療施設耐震化臨時特例交付金(以下、これらを合わせて「両交付金」という。)により造成された両基金が効率的に活用されているかなどに着眼して、両交付金により24都道府県(注2)に造成された48両基金において、21年度から24年度までの間に2,323両助成事業に対して交付された助成金計725億4801万余円を対象として、実績報告書等の書類により会計実地検査を行った。

(注2)
24都道府県  東京都、北海道、京都、大阪両府、茨城、群馬、神奈川、新潟、山梨、岐阜、静岡、愛知、兵庫、和歌山、鳥取、岡山、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島各県

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)都道府県の定めた助成要綱に基づく事務処理を適時適切に行っていなかったもの

24都道府県の47両基金により603事業者が実施した1,058両助成事業(助成対象事業費計2315億0830万余円、助成金計479億6944万余円(うち両交付金計414億5010万余円))において、事業者は、消費税の課税事業者であり、両助成事業の対象となる設備投資等により得られる売上げが課税売上げとなることなどから、確定申告により課税売上高に対する消費税額から、上記の助成金に係る消費税額を仕入税額控除していた。

一方、上記の603事業者が実施した1,058両助成事業に係る助成要綱によれば、助成対象事業費に係る消費税額のうち仕入税額控除できる額が確定した場合、事業者は、速やかに都道府県知事等に対して報告書(以下、この報告書を「仕入税額控除報告書」という。)を提出するとともに、仕入税額控除報告書に基づいて都道府県知事等から返還命令を受けた場合、これを都道府県に返還しなければならないこととされている。

しかし、事業者において、仕入税額控除できる額が確定する確定申告書の提出日から、おおむね6か月以上経過しても仕入税額控除報告書を都道府県知事等に提出していなかったり、都道府県において、事業者の仕入税額控除報告書の提出から、おおむね6か月以上経過しても都道府県に報告額を返還させていなかったりしていて、1,058両助成事業において仕入税額控除した消費税額に係る助成金相当額計2億0676万余円(うち地域医療再生臨時特例交付金相当額5939万余円、医療施設耐震化臨時特例交付金相当額1億2895万余円、計1億8835万余円)が事業者に対して交付されたままとなっていた。

これを都道府県別及び基金別に示すと表1のとおりである。

表1 助成要綱に基づく事務処理を適時適切に行っていなかった事態の都道府県別及び基金別内訳

都道府県名 基金名 助成事業数 助成金額(千円) 仕入税額控除した消費税額に係る助成金相当額(千円) 左のうち両交付金相当額(千円)
北海道 地域医療再生基金 44 887,644 2,702 2,702
医療施設耐震化臨時特例基金 6 2,239,574 12,010 6,675
茨城県 地域医療再生基金 51 1,032,297 14,079 12,352
医療施設耐震化臨時特例基金 6 2,258,294 56,263 56,263
群馬県 地域医療再生基金 28 2,418,558 5,883 5,883
医療施設耐震化臨時特例基金 3 2,082,046 4,260 2,692
東京都 地域医療再生基金 24 278,900 1,524 1,184
医療施設耐震化臨時特例基金 5 472,224 5,271 5,271
神奈川県 地域医療再生基金 134 786,292 3,847 3,847
医療施設耐震化臨時特例基金 6 1,118,146 4,111 4,111
新潟県 地域医療再生基金 1 23,693 54 54
医療施設耐震化臨時特例基金 3 915,541 2,024 2,024
山梨県 地域医療再生基金 14 136,765 1,159 1,159
医療施設耐震化臨時特例基金 1 712,387 3,531 3,531
岐阜県 地域医療再生基金 47 606,788 1,138 914
医療施設耐震化臨時特例基金 1 3,433 9 9
静岡県 地域医療再生基金 23 804,360 2,423 2,423
医療施設耐震化臨時特例基金 2 281,590 1,070 1,070
愛知県 地域医療再生基金 12 820,891 5,138 4,404
医療施設耐震化臨時特例基金 8 2,474,375 7,234 7,234
京都府 地域医療再生基金 3 1,848 33 33
医療施設耐震化臨時特例基金
大阪府 地域医療再生基金 72 889,720 4,781 4,781
医療施設耐震化臨時特例基金 6 2,487,844 6,054 6,054
兵庫県 地域医療再生基金 48 94,583 259 259
医療施設耐震化臨時特例基金 3 1,594,213 4,859 4,859
和歌山県 地域医療再生基金 17 827,126 5,192 5,192
医療施設耐震化臨時特例基金 1 19,609 53 53
鳥取県 地域医療再生基金 103 494,360 1,435 1,435
医療施設耐震化臨時特例基金 2 98,016 193 193
岡山県 地域医療再生基金 89 2,191,386 6,000 4,514
医療施設耐震化臨時特例基金 12 3,080,756 7,076 4,004
香川県 地域医療再生基金 6 29,208 68 68
医療施設耐震化臨時特例基金 1 157,837 404 212
愛媛県 地域医療再生基金 35 1,088,871 2,408 2,347
医療施設耐震化臨時特例基金 6 3,485,528 4,467 2,784
高知県 地域医療再生基金 5 306,421 1,739 349
医療施設耐震化臨時特例基金 1 651,148 756 469
福岡県 地域医療再生基金 119 688,828 1,931 1,725
医療施設耐震化臨時特例基金 7 2,437,030 4,963 4,963
佐賀県 地域医療再生基金 26 331,482 726 682
医療施設耐震化臨時特例基金 2 793,733 1,238 1,238
長崎県 地域医療再生基金 18 350,732 1,211 1,211
医療施設耐震化臨時特例基金 8 1,641,985 4,280 4,280
熊本県 地域医療再生基金 29 500,123 1,510 1,449
医療施設耐震化臨時特例基金 6 2,042,859 8,961 8,961
鹿児島県 地域医療再生基金 9 255,258 416 416
医療施設耐震化臨時特例基金 5 1,075,137 1,996 1,996
24都道府県
地域医療再生基金 957 15,846,137 65,668 59,394
医療施設耐震化臨時特例基金 101 32,123,305 141,094 128,957
合計 1,058 47,969,442 206,763 188,352

(2)都道府県が定めた助成要綱に消費税の取扱いを定めていなかったもの

9都道府県(注3)の10両基金により139事業者が実施した226両助成事業(助成対象事業費計273億6484万余円、助成金計59億8147万余円(両交付金同額))において、事業者は、消費税の課税事業者であり、両助成事業の対象となる設備投資等により得られる売上げが課税売上げとなることなどから、確定申告により課税売上高に対する消費税額から、上記の助成金に係る消費税額を仕入税額控除していた。

(注3)
9都道府県  東京都、北海道、京都府、神奈川、愛知、鳥取、愛媛、福岡、佐賀各県

しかし、上記の139事業者が実施した226両助成事業に係る助成要綱には、事業者が確定申告を行い、助成対象事業費に係る消費税額のうち仕入税額控除できる額が確定した場合、その額に係る助成金を返還することなどの規定が定められていなかった。このため、226両助成事業において仕入税額控除した消費税額に係る助成金相当額計1779万余円(地域医療再生臨時特例交付金相当額886万余円、医療施設耐震化臨時特例交付金相当額893万余円、計1779万余円)が事業者に対して交付されたままとなっていた。

これを都道府県別及び基金別に示すと表2のとおりである。

表2 助成要綱に消費税の取扱いを定めていなかった事態の都道府県別及び基金別内訳

都道府県名 基金名 助成事業数 助成金額(千円) 仕入税額控除した消費税額に係る助成金相当額(千円) 左のうち両交付金相当額(千円)
北海道 地域医療再生基金 48 2,649,411 6,333 6,333
医療施設耐震化臨時特例基金
東京都 地域医療再生基金 3 343,173 722 722
医療施設耐震化臨時特例基金
神奈川県 地域医療再生基金 3 295,447 190 190
医療施設耐震化臨時特例基金
愛知県 地域医療再生基金 5 272,951 109 109
医療施設耐震化臨時特例基金
京都府 地域医療再生基金 143 480,913 1,402 1,402
医療施設耐震化臨時特例基金 6 1,858,043 8,931 8,931
鳥取県 地域医療再生基金 15 27,244 91 91
医療施設耐震化臨時特例基金
愛媛県 地域医療再生基金 1 3,937 7 7
医療施設耐震化臨時特例基金
福岡県 地域医療再生基金 1 50,000 6 6
医療施設耐震化臨時特例基金
佐賀県 地域医療再生基金 1 350 2 2
医療施設耐震化臨時特例基金
9都道府県計 地域医療再生基金 220 4,123,427 8,867 8,867
医療施設耐震化臨時特例基金 6 1,858,043 8,931 8,931
合計 226 5,981,470 17,798 17,798

(1)及び(2)のように、仕入税額控除した消費税額に係る助成金相当額が事業者に交付されたままとなっていて、この結果、両基金が効率的に活用されないこととなっている事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。

  • ア 厚生労働省において、両助成事業における消費税の取扱いに関する適正な事務処理及び助成要綱における消費税の取扱いの明確化について、都道府県に対する周知が十分でなかったこと
  • イ 都道府県において、事業者に対する助成要綱に基づく速やかな仕入税額控除報告書の提出についての周知及び事業者から提出された仕入税額控除報告書の適時適切な処理による効率的な基金活用への配慮が十分でなかったこと、並びに事業者が消費税の課税事業者である場合、助成対象事業費に係る消費税額を確定申告の際に仕入税額控除できる場合があることについての理解が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、厚生労働省は、26年3月及び8月に都道府県に対して事務連絡を発して、事業者から都道府県に返還されていない仕入税額控除した消費税額に係る助成金相当額については、速やかに返還の処理を行わせる処置を講じた。そして、両助成事業の助成要綱に基づき消費税に係る取扱いを適時適切に行うことを都道府県から事業者に周知させるとともに、都道府県に対して速やかな事務処理の徹底を行うよう周知した。また、両助成事業の助成要綱に仕入税額控除した消費税額に係る助成金相当額の取扱いを明確にすることを徹底するよう都道府県に周知する処置を講じた。