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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第12 国土交通省 |
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  • 補助金 |
  • (4)工事の施工が設計と相違していたもの

土留壁の施工が設計と相違していたもの[島根県](360)


(1件 不当と認める国庫補助金 42,333,850円)

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(360) 島根県 大田市 社会資本整備総合交付金 23、24 96,154
(96,154)
62,500 65,129
(65,129)
42,333

この交付金事業は、大田市が、市道二中前線道路改良事業の一環として、同市久手(くて)町刺鹿(さつか)地内において、既存の歩道を拡幅するために、矢板工、アンカー工、舗装工、防護柵工等を実施したものである。

このうち矢板工及びアンカー工は、土中に建て込んだ鋼矢板(長さ4.5m~11.5m、計215枚)からアンカー計36本を路体に打ち込み、アンカー頭部に鋼製台座等を設置して土留壁(延長129.0m)を築造したものである。

同市は、本件土留壁を「グラウンドアンカー設計・施工基準,同解説」(社団法人地盤工学会編)等(以下「基準等」という。)に基づいて、次のように設計し、これにより施工することとしていた(参考図参照)。

  • 〔1〕 鋼矢板を土中に建て込み、アンカーを路体に打ち込んだ後、鋼矢板に等辺山形鋼を三角形に組んで製作した計214個のブラケットを上下二段(上下各107個)に脚長8㎜のすみ肉溶接(注)により固定する。
  • 〔2〕 ブラケットの上に、腹起し材としてH型鋼を上下二段に設置して、鋼矢板と腹起し材の間に充填材を設置する。
  • 〔3〕 アンカー頭部に鋼製台座を設置した後、アンカーを緊張させ、緊張完了後にアンカーキャップ等を設置して、鋼製台座を介してアンカーと腹起し材を結合する。

しかし、現地の状況を確認するなどして検査したところ、土留壁の施工が次のとおり適切でなかった。

充填材については、214か所の全てにおいて設置されておらず、鋼矢板と腹起し材の間に隙間が生じている箇所が見受けられた。このため、腹起し材が鋼矢板からの荷重を均等に受けて、これをアンカーに平均して伝達させることができず、鋼矢板からの荷重が一部のアンカーに集中するおそれがある状況となっていた。

また、ブラケットについては、214個全てにおいて鋼矢板との溶接部の脚長が設計値である8㎜を満たしていない部分が見受けられた。このうち131個はその脚長が4㎜以下となっており、さらに、溶接が途切れているものやブラケットの端部が溶接により溶けているものが見受けられた。このように、溶接が著しく粗雑なものとなっており、ブラケットと鋼矢板が一体化していないため、腹起し材及び鋼製台座がブラケットにより十分に支持されないおそれがある状況となっていた。

したがって、本件矢板工及びアンカー工は、施工が設計と著しく相違して粗雑なものとなっていて、矢板工、アンカー工及びその上部に施工された舗装工等(工事費相当額65,129,000円)は、工事の目的を達しておらず、これに係る交付金相当額42,333,850円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、請負人が設計図書等に対する理解が十分でなく、粗雑な施工を行っていたのに、これに対する同市の監督及び検査が適切でなかったことなどによると認められる。

(注)
すみ肉溶接  ほぼ直交する二つの部材の面をつなぐ三角形状の断面を持つ溶接

(参考図)

土留壁の概念図 画像,アンカー頭部の概念図 画像