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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第13 環境省 |
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(2)環境放射能水準調査委託費により整備するゲルマニウム半導体方式放射能検査機器について、今後の検査機器の整備に当たり標準的かつ経済的な構成例を示すことなどにより、構成機器の調達に要する費用の節減を図り、水準調査を経済的に実施することが可能となるよう改善の処置を要求したもの


会計名及び科目
エネルギー対策特別会計(電源開発促進勘定) (項)原子力安全規制対策費(平成24年度以前は、(項)電源立地対策費)
部局等
原子力規制委員会(平成25年3月31日以前は文部科学省)
契約名
環境放射能水準調査委託
契約の概要
全国における環境放射能の水準を把握するなどのために、モニタリングポストによる空間放射線量率調査、降水についての全ベータ放射能測定調査、ゲルマニウム半導体方式放射能検査機器による核種分析調査等を行うもの
検査の対象とした委託契約の相手方
9府県、1財団法人(平成25年4月1日以降は公益財団法人)
上記に係る委託費支払額
27億7602万余円(平成22年度~24年度)
上記のうち検査機器の整備に要した費用に相当する額
4億2062万余円
節減できたと認められる委託費相当額
3191万円(平成23、24両年度)

【改善の処置を要求したものの全文】

環境放射能水準調査委託費により整備するゲルマニウム半導体方式放射能検査機器の構成について

(平成26年10月9日付け 原子力規制委員会委員長宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 事業等の概要

(1)環境放射能水準調査事業の概要

貴委員会(平成25年3月31日以前は文部科学省)は、毎年度、都道府県及び財団法人日本分析センター(25年4月1日以降は、公益財団法人日本分析センター。以下「センター」といい、都道府県とセンターを合わせて「都道府県等」という。)に委託して、環境放射能水準調査(以下「水準調査」という。)を実施している。

水準調査は、全国における環境放射能の水準を把握するなどのために、モニタリングポストによる空間放射線量率調査、降水についての全ベータ放射能測定調査、ゲルマニウム半導体方式放射能検査機器(以下「検査機器」という。)による核種分析調査等を行うものであり、22年度から24年度までの間の水準調査に係る委託費支払額は、47都道府県で計40億6664万余円、センターで計32億9089万余円、合計73億5754万余円となっている。

上記各調査のうち、検査機器による核種分析調査の実施に当たっては、採取した陸水、土壌、農水産物等の試料から放出されるガンマ線放出核種を測定するために、委託契約において検査機器を委託先である都道府県等に調達させて整備させている。そして、都道府県等は、検査機器の整備に当たり、それぞれが検査機器の構成を独自に検討した上で、入札や契約に必要な仕様書を作成するなどしている。

(2)検査機器の概要

検査機器は、製造会社により若干の相違はあるものの、図1のとおり、主に、遮蔽体部、ゲルマニウム半導体検出器部(以下「検出器部」という。)、多重波高分析器部(Multi Channel Analyzer部。以下「MCA部」という。)、データ解析器部等の機器から構成されている(以下、検査機器を構成するこれらの機器を「構成機器」という。)。

そして、都道府県等においては、個々の構成機器の経年劣化等の状況に応じて構成機器を更新し、検査機器を整備している。

検査機器の主な製造会社は、A社及びB社の2社となっている。このうち、A社製の検査機器はMCA部の裏面に拡張用スロットが備え付けられ、機種により2組又は4組の拡張ボードを装備して2台又は4台の検出器部を同時に制御できる仕様となっている。また、B社製の検査機器はB社製のソフトウェアをインストールしたパソコン1台で複数の検出器部及びMCA部を同時に制御できる仕様となっている。

(3)検査機器の増備の状況

貴委員会に水準調査に係る事務を移管した文部科学省は、従来、水準調査の実施に必要な検査機器を34都道府県(原子力発電所が立地するなどしていて、放射線監視等交付金により検査機器を整備している13府県(注1)を除く。)に1式ずつ整備させて水準調査を実施してきた。

そして、同省は、23年3月に発生した東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を契機として、放射能調査体制の強化を図るために、平成23年度第2次補正予算(以下「23年度2次補正」という。)により、46都道府県(放射線監視等交付金により既に検査機器を整備していて、23年度2次補正による水準調査としての検査機器の整備を行わないこととした京都府を除く。)との委託契約を変更して、1式ずつ検査機器を増備させている。これにより、上記の34都道府県では、従前の水準調査で整備していた検査機器と合わせて、2式の検査機器で水準調査を実施する体制となっている。

また、同省は、23年度に、福島県内で採取された大量の試料を測定する見通しであるとして、センターとの委託契約を変更して、センターに検査機器10式を増備させている。

(注1)
13府県  京都府、青森、宮城、福島、茨城、新潟、石川、福井、静岡、島根、愛媛、佐賀、鹿児島各県

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、都道府県等が検査機器の構成等について十分に検討して検査機器を調達しているかなどに着眼して、23年度に検査機器が増備されていることを踏まえて、22、23両年度又は23、24両年度に連続して検査機器を整備した9府県(注2)に対する委託費支払額計7億5901万余円及び23年度のセンターに対する委託費支払額20億1700万余円、合計27億7602万余円のうち、検査機器の整備に係る委託費相当額9府県分計2億5472万余円、センター分1億6590万円、合計4億2062万余円を対象として、貴委員会、9府県及びセンターにおいて、検査機器の整備に係る契約書、仕様書等の関係書類を確認したり、検査機器の設置状況を確認したりするなどして会計実地検査を行った。

(注2)
9府県  大阪府、秋田、群馬、山梨、長野、鳥取、山口、徳島、大分各県

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

文部科学省は、23年度2次補正による検査機器の増備の際に、各都道府県に対して検査機器の構成を示しているが、検査機器一式に係る構成機器の一覧や基本的な性能等を示すにとどまっていて、前記の製造会社別に異なる構成例を示すことなどを行っていなかった。そして、9府県及びセンターは、検査機器の整備に当たり、機器の構成を独自に検討した上で仕様書を作成していた。

そして、9府県のうち5府県(注3)及びセンターは、整備した検査機器のいずれについても、図1の構成例のように全ての構成機器が備わった形で、同一の場所に近接して設置しており、22年度から24年度までの3か年度における検査機器20式の整備に係る委託費相当額は、表1のとおり、計3億1883万余円となっている。

(注3)
5府県  大阪府、秋田、群馬、鳥取、山口各県

表1 5府県及びセンターの検査機器の整備に係る委託費相当額

(単位:千円)
委託契約の相手方 号機 増備、一部更新年月日 平成
22年度
23年度 24年度 摘要
秋田県 1号機 25. 1.24 4,305 4,305 一部更新
2号機 24. 3.26 18,900 18,900 増備
群馬県 1号機 22.10.29
25. 3.29
1,459 13,965 15,424 両年度とも一部更新
2号機 24. 3.28 19,845 19,845 増備
大阪府 1号機 23. 3.17 11,235 11,235 一部更新
2号機 24. 3.22 18,879 18,879 増備
鳥取県 1号機 24.11.29 16,170 16,170 一部更新
2号機 24. 4. 5 18,879 18,879 増備
山口県 1号機 23. 3.28 9,156 9,156 一部更新
2号機 24. 3.29 20,139 20,139 増備
センター 1号機~10号機 24. 3.26 165,900 165,900 増備及び一部更新
20式 21,850 262,542 34,440 318,832
(注)
センターの検査機器は、1号機から8号機までの8式が本部の同一の場所に、9号機及び10号機の2式がむつ分析科学研究所の同一の場所に、それぞれ設置されている。

しかし、前記のとおり、A社製のMCA部は、機種により2組又は4組の拡張ボードを装備して2台又は4台の検出器部を同時に制御できる仕様となっており、また、B社製のソフトウェアをインストールしたパソコンは、1台のパソコンで複数の検出器部及びMCA部を同時に制御できる仕様となっていることなどから、図2のとおり、増設や一部更新する際に検査機器ごとに構成機器を全て備える必要はなく、検査機器を経済的に調達することが可能と認められる。

図2 経済的な検査機器の構成例

(A社製の例)

(A社製の例)画像

(B社製の例)

(B社製の例)画像

したがって、5府県及びセンターが整備した検査機器20式について、上記に示した複数の検出器部等を同時に制御する構成に改めると、MCA部8台及びデータ解析器部13台(委託費相当額計3191万余円)を調達しなくても複数の検出器部等を同時に制御でき、表2のとおり、これらの調達に要した費用を節減することができたと認められる。

表2 調達しなくても複数の検出器部等を同時に制御できた構成機器(5府県及びセンター)

(単位:台、千円)
委託契約の相手方 調達年度 調達しなくても複数の検出器部等を同時に制御できた構成機器 左に係る委託費相当額
MCA部 データ解析器部
秋田県 平成24年度 1 2,123
群馬県 23年度 1 790
24年度 1 1,609
大阪府 23年度 1 1,890
鳥取県 24年度 1 2,006
山口県 23年度 1 1 4,241
センター 23年度 7 7 19,257
8 13 31,916

(改善を必要とする事態)

このように、都道府県等において、構成機器の仕様に応じてその調達数を少なくすることにより、構成機器の調達に要する費用の節減を図り、水準調査を経済的に実施することができるのに、このような費用の節減に向けた取組が行われていない事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、文部科学省及び同省が実施していた水準調査に係る事務の移管を受けた貴委員会において、水準調査の経済的な実施に向けて、構成機器の調達に要する費用の節減を図るために有益な情報を都道府県等に示していないことなどによると認められる。

3 本院が要求する改善の処置

水準調査は、今後も引き続き実施され、また、都道府県等は23年度に一斉に検査機器を増備していることから、検出器部、MCA部及びデータ解析器部の経年劣化等に伴う更新は、今後、一斉に到来することが見込まれる。

ついては、貴委員会において、今後の検査機器の整備に当たり、検査機器の標準的かつ経済的な構成例を都道府県等に対して示すことなどにより、構成機器の調達に要する費用の節減を図り、水準調査を経済的に実施することが可能となるよう改善の処置を要求する。