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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第2節 団体別の検査結果 |
  • 第92 放送大学学園 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

電気及びガスの調達契約を締結するに当たり、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、一般競争に付するなどの協定等に基づく契約手続を実施することにより、内外無差別原則の確立と手続の透明性等を確保するよう改善させたもの


科目
経常費用 業務費、一般管理費
部局等
放送大学学園本部
契約の概要
事務所、施設等で使用する電気及びガスの調達を行うもの
件数及び支払額
電気 4件 2億2001万円(平成24、25両年度)
ガス 2件   1762万円(平成24、25両年度)
計  6件 2億3763万円

1 特定調達に係る契約手続の概要等

(1)契約事務等の概要

放送大学学園(以下「学園」という。)は、学園が定めた会計規程、契約規程等の内部規程等に基づき、保有する事務所、施設等で使用する電気及びガスの調達契約に係る事務を行っている。

(2)政府調達に関する協定等の概要

近年、我が国の電気及びガスの小売市場は自由化が進められており、一般の需要に応じて電気又はガスを供給する事業者(以下、それぞれ「一般電気事業者」、「一般ガス事業者」という。)以外の事業者も広く小売市場に参入できるような状況となっている。

政府調達に関する協定(平成7年条約第23号(平成26年条約第4号による改正前のもの)。以下「協定」という。)は、世界貿易機関(WTO)の下で運用されている協定の一つで、各加盟国の中央政府、地方政府及び協定が定める機関による調達の分野における、国内外のいかなる事業者でも参入を可能なものとする内外無差別原則の確立と手続の透明性等の確保を目的として、各国が遵守すべき調達手続上の義務等を規定している。そして、我が国政府は、「物品に係る政府調達手続について(運用指針)」(平成6年アクション・プログラム実行推進委員会)等を我が国の自主的措置として決定している(以下、協定及び我が国の自主的措置を合わせて「協定等」という。)。

協定等の対象となる機関が、協定等の対象となる調達契約を締結する場合には、内部規程等に加えて、協定等に基づき事務を行う必要がある。

協定によれば、適用対象となる機関は、中央政府の機関、地方政府の機関及びその他の機関に区分され、それぞれ具体的な機関名が明示されていて、学園は、その他の機関の区分に記載されており、協定の適用対象とされている。

適用対象となる調達については、産品及びサービスの調達とされていて、産品については、全ての産品の調達を適用対象とすることとされている。そして、電気及びガスについては上記の適用対象となる産品の例外ではないとされている。

また、協定等によれば、適用対象となる調達額については、機関の区分、調達する産品及びサービス、契約締結時期等ごとに、それぞれ基準額が定められており、当該基準額以上の価額の産品及びサービスの調達契約が協定等の適用対象とされている。そして、例えば、平成24年4月1日から26年3月31日までの間に締結される産品の調達契約については、評価の基礎となる額(予定価格等)が10万SDR(注)(邦貨換算額は1200万円)以上の場合が協定等の適用対象とされている(以下、協定等の適用対象となる調達を「特定調達」という。)。

(注)
SDR  IMF(国際通貨基金)の特別引出権(Special Drawing Rights)。その邦貨換算額は2年ごとに見直されている。

(3)特定調達に係る契約手続

協定の適用対象となる機関は、特定調達を行うに当たり、協定等に基づき、原則として一般競争に付することとなっており、緊急の必要により競争に付することができないなどの場合に限って随意契約によることができることとなっている。そして、一般競争に付する際には、協定等で定める公告期間を設け、また、契約期間等に関する情報等を官報に公告することとなっており、随意契約の際には、契約前に契約相手方等を官報に公示することとなっている。さらに、いずれの場合も、契約の相手方を決定したときは、契約の相手方、契約額等を官報で公示することとなっている。

そして、特定調達を行うに当たり、学園は、協定等を遵守した契約事務を行うために、「放送大学学園契約事務取扱規程の特例を定める規程」(平成15年放送大学学園規程第23号。以下「規程」という。)を定めている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、従来、特定調達に係る検査を行い、特定調達に該当する調達契約を締結しているにもかかわらず、協定等に基づいた契約手続を実施していないなど適切でない事態について検査報告に掲記している。また、前記のとおり、近年、我が国の電気及びガスの小売市場は自由化が進められている。

そこで、本院は、合規性等の観点から、協定の適用対象となる電気及びガスの調達契約の事務を行うに当たり、特定調達に係る契約手続を適正かつ適切に実施しているかに着眼して、学園本部が24、25両年度に締結するなどした電気及びガスの調達契約を対象として、学園本部において、契約書、請求書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、調書の作成及び提出を求めるなどして検査した。

(検査の結果)

検査したところ、学園本部において24、25両年度に締結するなどした電気及びガスの調達契約は、電気について計10件(支払額計2億3703万余円)、ガスについて計10件(支払額計2059万余円)、合計20件(支払額計2億5762万余円)となっていた。そして、この中には、当該契約に係る支払額が基準額である1200万円以上のものが、電気について計4件(支払額計2億2001万余円)、ガスについて計2件(支払額計1762万余円)、合計6件(支払額計2億3763万余円)見受けられた。しかし、学園本部は、これらの調達契約について、当該契約の評価の基礎となる額を算定する際に用いる前年度(23年度又は24年度)の電気料金又はガス料金の支払額が基準額である1200万円を上回っているにもかかわらず、特定調達に係る契約手続を実施していなかった。そして、学園本部は、これらの電気及びガスの調達契約を締結するに当たり、一般競争に付することなく、従前の契約相手方である一般電気事業者との間で契約を更新していたり、以前に提出した申込書によって締結した一般ガス事業者との間の契約をそのまま継続していたりなどしていた。

このように、学園における電気及びガスの調達契約について、特定調達の対象となる要件を満たしているにもかかわらず、一般競争に付するなどの特定調達に係る契約手続が実施されていない事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、学園において、電気については競争入札に付すると従前適用されていた一般電気事業者の料金種別が変更されるなどして契約額が割高になる可能性があると考えていたこと、ガスについては供給が可能な事業者は1者のみであると考えていたことにもよるが、次のことなどによると認められた。

  • ア 電気及びガスの調達契約に関し、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、内外無差別原則の確立と手続の透明性等の確保という協定の趣旨を踏まえて、特定調達に係る契約手続を協定等及び規程に基づいて実施することの重要性に対する理解が十分でなかったこと
  • イ ガスの小売市場の自由化が進展したことにより一般ガス事業者以外の国内外の事業者による新規参入が可能な制度になっていることの理解が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、学園は、26年7月及び9月に通知を発して、契約担当者が協定の趣旨を十分理解した上で、電気及びガスの調達契約について、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、特定調達に係る契約手続を協定等及び規程に基づいて実施するよう周知徹底した。そして、同年9月に電気の調達契約について、また、同年10月にガスの調達契約について、それぞれ特定調達手続を踏まえて、官報に入札公告を掲載し、一般競争に付する処置を講じた。