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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
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  • 平成26年10月|
  • 第2 検査の結果|
  • 1 年金記録問題に関する事業の実施状況

年金記録問題に関する日本年金機構等の取組に関する会計検査の結果について


(2) 厚生労働省及び機構における年金記録問題への取組の実施状況

機構は、工程表において、ねんきん特別便等による年金記録の確認、紙台帳等とオンライン記録との突合せ、厚生年金基金記録との突合せ等を実施することとしており、厚生労働省及び機構におけるその実施状況は次のとおりとなっていた。

ア ねんきん特別便等の各種便の送付

この取組は 「未統合記録問題」及び「記録の内容に誤りがある問題」への対応のためのものである。

(ア) ねんきん特別便等の各種便の内容、対象及び送付実績

19年12月以降、社会保険庁は、未統合記録の解明等のために年金受給者や被保険者等に対して、ねんきん特別便等の各種便(以下「各種便」という。)を送付して年金記録の確認をしてもらい、その回答に基づき年金記録の訂正を行う取組を開始したが、機構も引き続きこの取組を行っている。

そして、主要な各種便は、図表1-1のとおり、機構設立前に大部分が送付されているが、機構も、全ての被保険者に毎年「ねんきん定期便」を送付したり、各種便が未送達の者に対して直近の住所情報を基に再送付したり、制度改正を踏まえて新たに送付対象となった者に各種便を送付したりしていた。

機構が各種便の送付等に要した費用は、図表1-2のとおり、21年度から25年度までの間で約312億円 作成費用約128億円 送付費用約184億円 となっている。

図表1-1 各種便の送付状況(平成25年4月末現在)

種類
(送付時期)
対象者 送付件数 回答件数
(未回答件数:送付件数に対する比率)
左のうち訂正あり回答件数
(うち調査が終了した件数:訂正あり回答件数に対する比率)
年金記録
判明件数
(回答件数に対する比率)
備考
ねんきん特別便【名寄せ便】
(平成19年12月~20年3月)
オンライン記録と未統合記録が、氏名、生年月日及び性別の3条件で一致する者 1030万件 8167万件
(2471万件:22.7%)
1312万件
(1311万件:99.9%)
953万件
(11.7%)
回答件数は、名寄せ便と全員便とで区分されていない。
ねんきん特別便【全員便】
(20年4月~10月)
全ての年金受給者及び被保険者 9843万件
年金加入記録確認のお知らせ【グレー便】
(20年5月)
基礎年金番号記録とマイクロフィルム上の厚生年金保険及び船員保険の旧台帳記録の突合により、旧台帳記録の持ち主である可能性のある者 68万件 58万件
(9.3万件:13.7%)
58万件
(58万件:100%)
44万件
(75.9%)
年金記録の確認のお知らせ【黄色便】
(20年6月~21年12月)
未統合記録と住民基本台帳ネットワークシステム等との突合により未統合記録の持ち主である可能性のある者 262万件 160万件
(93万件:35.5%)
149万件
(149万件:100%)
132万件
(82.5%)
共済組合等加入記録の確認のお知らせ【茶色便】
(21年3月、25年3月)
基礎年金番号に統合されていない共済年金過去記録と、基礎年金番号の氏名、生年月日及び性別の3条件を突合し、年金記録が結び付く可能性のある年金受給者等 134万件 105万件
(29万件:21.6%)
100万件
(95万件:95.0%)
年金記録判明件数は集計されていない。
年金加入記録の確認のお願い【加入期間10年未満の黄色便】
(24年6月~7月)
前記黄色便の対象となっていなかった、加入期間が10年未満の年金記録の持ち主である可能性のある者 44万件 10万件
(31万件:70.5%)
9万件
(8万件:88.9%)
7万件
(70.0%)
未統合記録の確認のために送付し、回答を求める必要がある各種便の計 注(2)
ZU1-1-CHU2
1億1382万件 8500万件
(2633万件:23.1%)
1628万件
(1621万件:99.6%)
1136万件(13.4%)
ねんきん定期便(21年度から毎年度) 全ての被保険者 21年度
6676万件
244万件 注(4) 244万件
(244万件:100%)
年金記録判明件数は集計されていない。
22年度
6610万件
23年度
6525万件
24年度
6578万件
25年度
6552万件
厚生年金加入記録のお知らせ【受給者便】
(21年12月~22年11月)
厚生年金の受給者等 2632万件 88万件 88万件
(88万件:100%)
年金記録判明件数は集計されていない。
未送達便(再送付)
(24年2月) 厚生年金加入記録のお知らせの未送達者【受給者便】 2万件 未送達便の回答件数についてはそれぞれ受給者便、ねんきん定期便又は黄色便に含まれている。
(24年3月、25年3月) ねんきん特別便・ねんきん定期便の未送達者 92万件
(25年3月) 年金加入記録の確認のお願いの未送達者【黄色便】 3万件
注(1)
各種便の送付状況については、平成25年4月末現在で機構が把握しているものが最新のデータである。
なお ねんきん定期便については 25年度の送付実績件数が判明しているため 25年度分も記載している。
注(2)
各種便の計は、端数処理を行っているため、各種類の数値を集計しても計欄の数値と一致しない。
注(3)
未送達となったものがあるため、回答件数と未回答件数を合計しても送付件数に一致しない。
注(4)
ねんきん定期便の回答件数は、送付年度ごとの分類ができないため、21年度から24年度まで合算した件数を記載している。

図表1-2 機構が発送した各種便の費用

種類(送付時期) 作成費用 送付費用
共済組合等加入記録の確認のお知らせ【茶色便】
(平成25年3月)
4648万円 2480万円 7128万円
年金加入記録の確認のお願い【加入期間10年未満の黄色便】
(24年6月~7月)
3188万円 3228万円 6416万円
ねんきん定期便
(22~25年度)
94億6239万円 155億7561万円 250億3800万円
厚生年金加入記録のお知らせ【受給者便】
(22年1月~11月)
32億0290万円 27億2106万円 59億2396万円
未送達便(再送付) 厚生年金加入記録のお知らせの未送達者【受給者便】
(24年2月)
834万円 212万円 1046万円
ねんきん特別便・ねんきん定期便の未送達者
(24年3月、25年3月)
5996万円 1億0414万円 1億6411万円
年金加入記録の確認のお願いの未送達者【黄色便】
(25年3月)
574万円 216万円 790万円
128億1769万円 184億6217万円 312億7987万円

(イ) 進捗状況及び処理実績

各種便において本人から訂正ありと回答があった件数に対して年金記録訂正のための調査が終了した件数の割合をみると、88.9%から100%となっていた。

そして 未統合記録の確認のために送付し 回答を求める必要がある各種便(名寄せ便、全員便、グレー便、黄色便、茶色便、加入期間10年未満の黄色便)における本人からの回答状況をみると、図表1-1のとおり、25年4月末現在で送付総数約1億1382万件に対して回答がなかったものは約2633万件、送付総数に対する未回答件数の平均値は23.1%となっていて、送付した者の約4分の1からは回答がない状況となっていた。

各種便に対して回答がない理由として、特別委員会の報告書によれば、対象者が、年金記録訂正による年金の増加額が少額のため年金記録訂正の申出を放置していたり、短期間ずつの複数加入であって、その判明した年金記録の全てを訂正しても年金受給資格期間を満たすことが期待できないとして放置していたり、各種便の内容が理解できなかったりしていることなどによるものと推定されている。

また、これらの回答件数に対する年金記録判明件数の比率をみると、ねんきん特別便は、全ての年金受給者、被保険者等を対象としていることから11.7%となっているが、グレー便、黄色便、加入期間10年未満の黄色便は、未統合記録の持ち主である可能性が高い者に対して送付していることもあり、70.0%から82.5%となっていた。

そして、名寄せ便を送付したもののうち、年金受給者から「訂正なし」との回答があったもの及び未回答のもので未統合記録が結び付く可能性が高いものについては、約88万人を対象として、電話、訪問及び文書によるフォローアップ照会が行われた。また、上記のフォローアップ照会でも接触できなかった者に対しては、21年10月から市区町村の協力を得て電話番号等の調査が行われ、接触できなかった約11万人を除く約77万人について、25年4月末までにフォローアップ照会の処理を終えていた。

前記の各種便の送付等の結果、26年3月末現在で約1382万人(年金受給者約716万人、被保険者等約666万人)の年金記録が回復した(注4)とされている。

<機構が公表した年金記録回復の具体例>

「厚生年金加入記録のお知らせ(受給者便) 」の送付を受けた85歳男性より「年金)記録に漏れがある」との回答があったため調査したところ、男性の申出のとおり新たに87月の厚生年金の記録月が判明したため、調査前の年金記録の加入期間227月に判明した記録を統合した結果、年額約118万円だった年金額は年額約166万円となり、年額にして約48万円の年金額が新たに回復した。

なお、機構は、今後、毎年送付する「ねんきん定期便」等により、各種便の未回答者等に対して回答を促すなど年金記録確認の呼びかけを実施するとしている。

(注4)
年金記録が回復した 漏れや誤りのあった個別の年金記録が本来の姿に戻されたこと

イ 紙台帳等とオンライン記録との突合せ

この取組は、「記録の内容に誤りがある問題」への対応のためのものである。

(ア) 紙台帳検索システムの概要

適正化工程表により、前記の既に基礎年金番号に結び付いている約2.5億件のオンライン記録等について、その内容を確認するため、全国の市区町村及び社会保険庁の社会保険事務所等で管理されていた厚生年金被保険者台帳や国民年金被保険者台帳等の約9.5億件の紙台帳及びマイクロフィルム(以下「紙台帳等」という 。)との突合せを行うこととされた。

しかし、それまでの年金記録の確認は、紙台帳等が社会保険事務所等で保管されていたことから、ある社会保険事務所で他の社会保険事務所等が保管している紙台帳等を確認するためには、他の社会保険事務所等へ依頼して確認する作業が必要であり、手間や時間が相当かかっていた。また、対象となる紙台帳等の記録は膨大な数に上る。このため、社会保険庁においてサンプル調査を行うなどして突合せ作業を効率的に実施するための作業方法の検討等が行われた。その結果、分散して保管されていた約9.5億件の紙台帳等を電子画像化した上で、個人単位で集約してコンピュータ端末に表示する「年金情報総合管理・照合システム」(以下「紙台帳検索システム」という。)を構築して効率的に突合せ作業を実施することとされた。

この紙台帳検索システムは22年10月から運用が開始され、これにより、紙台帳検索システムに収録された全ての紙台帳等の画像データを、各年金事務所等でも瞬時に確認できるようになった。

(イ) 突合せ業務に係る委託契約等の概要

突合せ業務は、紙台帳検索システムを構築するところから始められ、上記の約9.5億件の紙台帳等を電子画像化し、各個人の基礎年金番号(又は手帳番号)と生年月日等を基にオンライン記録とのひも付け処理を実施するなどして、紙台帳等の内容が重複しているなどの約2.3億件及び年金記録の一部が判読不明であるなどの約1.2億件を除いた約6億件の紙台帳等をオンライン記録にひも付けした。その後、この約6億件の紙台帳等に記載された年金記録について、1件ずつオンライン記録と比較しながら、年金額計算の基礎データとなる加入資格期間や標準報酬月額、保険料納付金額等の記録内容に漏れや誤りがないか、審査・判定を行うことになった。

そして、この突合せ業務は、図表1-3のとおり、機構のブロック本部等の区分けにより設置した記録突合センター29か所で、5事業者に委託するなどして業務が開始された。

上記の委託業務は、22年10月に、総合評価方式による一般競争契約により契約を締結し、中央記録突合センターから開始され、23年1月までに29か所の記録突合センターで開始された。機構は、同年4月の契約更改時に、作業に要する時間の基礎データがそろっていないことや、今後の突合せ作業の方針が確定していないことを理由として、既契約事業者と随意契約により契約を締結して業務を継続させていたが、政府の行政刷新会議から効率的な業務運営を求められたことから、同年11月に、委託費の支払方法を、それまでの突合せ作業者の実績人数に応じた「席数払い方式」から、突合せ処理の実績件数に応じた「件数払い方式」に変更するとともに、処理単価の低い記録突合センターにより多くの件数を割り当てるなどの改善を図った。機構は、これにより、1件当たり処理コストが2,264円から2,139円と、5.5%低減されるとしていた。

その後、機構は、24年4月から、各記録突合センターの業務を委託している事業者に対して、単価及び希望委託件数の提示を求め、単価の低い事業者から順次、委託予定件数を割り当てる見積合わせ方式により契約を締結して業務を行わせていた。

これらの委託業務は25年12月までに終了し、委託事業者に支払った金額は計1278億余円となっていた。

なお、このほかに、紙台帳検索システムの整備のために、国が直接支出したものとして20年度から25年度までに計390億余円を要していた。

図表1-3 記録突合センターの設置状況と業務実績

ブロッ
ク本部
記録突
合セン
ター
委託事業者 開始年月 廃止年月 支払金額
(平成22~25年度)
従事者数
(23年1月現在)
突合せ実施件数
(22~25年度)
(千円) (人) (人)
本部 中央 アデコ(株) 22.10 25.9 9,350,357 1,194 3,302,737
北海道 札幌 (株)もしもしホットライン 22.12 25.6 6,330,328 757 4,352,712
東北 仙台第1 (株)もしもしホットライン 22.12 25.6 6,105,959 656 4,415,648
仙台第2 (株)KDDI EVOLVA 22.12 25.9 4,915,349 647 3,701,390
南関東 千葉 アデコ(株) 23.1 24.3 2,900,418 772 1,320,354
東京 (株)もしもしホットライン 22.11 25.6 9,281,870 1,062 5,084,518
横浜 (株)もしもしホットライン 22.11 24.12 7,394,610 1,090 3,675,052
北関東・信越 さいたま アデコ(株) 23.1 25.9 9,330,773 1,137 6,772,342
水戸 (株)KDDI EVOLVA 22.11 25.9 2,680,288 386 1,767,272
新潟 (株)TMJ 23.1 24.12 2,003,634 326 1,150,428
宇都宮 (株)KDDI EVOLVA 23.1 25.9 2,272,658 261 1,708,238
長野 (株)KDDI EVOLVA 23.1 25.9 2,517,181 292 2,127,587
中部 名古屋第1 アデコ(株) 22.11 24.3 3,681,391 896 1,652,217
静岡 (株)もしもしホットライン 22.11 25.6 3,652,460 497 1,953,215
名古屋第2 (株)KDDI EVOLVA 22.11 25.9 4,053,185 514 3,026,933
金沢 (株)もしもしホットライン 22.11 25.6 3,018,803 295 2,066,950
近畿 大阪第1 (株)もしもしホットライン 22.11 25.6 7,576,825 736 5,179,926
大阪第2 (株)もしもしホットライン 22.12 24.12 4,757,989 690 2,347,714
神戸 (株)もしもしホットライン 22.12 25.8 6,817,664 724 4,589,534
京都 アデコ(株) 22.11 24.3 2,533,355 596 1,061,835
中国 広島 (株)KDDI EVOLVA 22.11 25.9 5,270,211 672 4,111,279
岡山 (株)もしもしホットライン 22.12 25.11 3,184,356 331 2,157,111
四国 高松 (株)もしもしホットライン 22.12 24.12 1,673,644 244 847,455
松山 (株)KDDI EVOLVA 22.11 25.9 2,710,385 308 2,210,565
九州 福岡 (株)KDDI EVOLVA 22.11 24.12 3,433,629 644 1,722,234
熊本 (株)もしもしホットライン 22.11 24.12 1,740,606 249 871,987
鹿児島 (株)TMJ 22.11 25.12 3,728,981 402 3,075,023
長崎 (株)NTTマーケティングアクト 23.1 25.11 2,624,107 314 1,704,954
大分 (株)KDDI EVOLVA 23.1 25.5 2,260,621 323 1,292,502
29か所 5事業者 127,801,651 17,015 79,249,712
(注)
突合せ実施件数は、複数の年金を受給している者の重複分を除いた人数となっているなどのため、後述の審査終了人数とは異なっている。

(ウ) 突合せ業務の概要

この突合せ業務については、当初、年金受給者を対象に開始されたが、被保険者を費用対効果の点から対象とするかどうかの議論があった。しかし、厚生労働省に設置された年金記録回復委員会の審議を経て、年金記録への信頼を確保するという基本的考え方から、24年7月に厚生労働省から、被保険者についても全件の突合せを行う方針が示され、これに従い、機構は、被保険者についても突合せ業務を行った。

突合せ業務の実施に当たっては、正確かつ効率的に業務を進めることが求められており、これを担保するために、22年10月、業務に係る手順、審査基準等を定めた「年金記録に係るコンピュータ記録と紙台帳等の突合せ業務実施要領」を厚生労働省の関与の下、機構が制定し、この要領に基づいて委託事業者及び機構職員の間で分担して、図表1-4に示した手順、体制で業務を行ったとしていた。

図表1-4 年金記録に関する紙台帳等とオンライン記録の突合せ作業の概要

図表1-4 年金記録に関する紙台帳等とオンライン記録の突合せ作業の概要画像

機構によれば、突合せ業務の正確性を確保するために、委託事業者は2段階の審査を行ったとしていた。そして、紙台帳等とオンライン記録の記載内容の一致・不一致を確認する「第一次審査」では、一つの審査案件について担当者を変えて2回審査を行い、その審査結果について更に別の担当者が確認を行ったとしていた。この第一次審査で一致とされた案件については、機構の職員が最終確認を行って審査を終了したとしていた。また、不一致とされた案件については、最新のオンライン記録の詳細に基づく訂正履歴等の関係資料等を踏まえて当該不一致に理由があるかを確認する「第二次審査」を行い、この第二次審査の結果について、不一致理由の有無にかかわらず全て機構の職員が確認を行ったとしていた。そして、第二次審査後の機構職員による確認を終えて、年金記録の訂正の必要があると判定された案件については、年金受給者等に対して通知を送付し、年金受給者等本人の年金記録であるかどうか、年金記録訂正の意思があるかなどについて当該本人に確認した上で、最終的に年金記録を訂正したとしていた。

また、突合せ業務を効率的に実施するために、作業工程を区分することにより1人の作業員の作業範囲を限定したり、不一致理由の判明の確率が高い作業から順次実施したりなどしたとしていた。

そして、委託事業者による第一次審査、第二次審査、機構職員による審査、年金受給者等本人への通知送付等の作業の各段階ごとに、バーコードによる進捗管理を行ったとしていた。

さらに、委託事業者や機構職員に対する研修を行ったり、紙台帳検索システムの利用履歴の監視を行うことによって、所定の作業手順に従って業務が行われたことを確認する仕組みを設けたり、個人情報保護のため、委託事業者のオンラインシステムによる情報検索に制限を設けたりするなどの措置を執ったとしていた。

そして、委託事業者の業務の終了により、当初29か所あった記録突合センターを順次廃止したり、記録突合センターで機構職員が行っていた審査、通知送付等の業務を、機構の事務センターに移管して実施したりして、業務の集約及び効率化を図ったとしていた。なお、記録突合センターの設置数、同センターで突合せ業務に従事していた委託事業者の職員数及び機構の職員数の推移は図表1-5のとおりとなっていて、突合せ業務の進捗に伴い、いずれも減少していた。

図表1-5 記録突合センターの設置数等の推移

区分\年月 平成23.1 23.4 23.10 24.4 25.4 25.7 25.12
記録突合センターの設置数 29 29 29 26 20 13 2
委託事業者の職員数(人) 17,015 17,015 13,976 8,157
機構の職員数(人) 760 426 253 164 86
(注)
職員数は、機構において委託事業者又は機構の職員数を把握していた時点の数字を記載しているため、把握していない時点については空欄としている。

(エ) 進捗状況及び処理実績

工程表によれば、突合せ業務は25年度中に終了し、本人宛て確認通知が必要な者については、処理困難ケース(注5)を除き、25年度中に通知の発送を完了する予定となっていた。

(注5)
処理困難ケース  市区町村、共済組合、他都道府県の年金事務所等が照会先となっていて調査に時間を要するもの

実際の進捗状況についてみると、第二次審査を25年12月までに終了しており、その後、機構職員による審査を行い、年金記録訂正の必要がある者に対する通知発送、年金記録訂正等の業務を行っている。

そして、突合せ審査対象者約8123万人のうち、機構職員による審査まで終了したものは約8122万人、このうち紙台帳等とオンライン記録が不一致となったものが約324万人となっていた(26年3月末現在 )。

機構は、その後の工程として、通知に対する回答の精査、未回答に対する督促状の発送等を行い、26年9月末までに処理を完了させることとしていたが、10月以降も引き続きこれらの業務を行っている。

なお、紙台帳検索システムにより、オンライン記録とひも付けられなかった約1.2億件の紙台帳等を含む約9.5億件の紙台帳等の画像データを各年金事務所で確認できることになったことから、機構は、各年金事務所で年金受給者等から年金記録の確認の申出があった場合等において、紙台帳検索システムを活用して年金記録の調査を行うこととした。そして、全国の年金事務所で統一のとれた適切な調査ができるよう、年金記録確認のための統一的調査手順の構築を図り、25年1月から実施している。

ウ 厚生年金保険の被保険者等の年金記録と厚生年金基金記録との突合せ

この取組は、「記録の内容に誤りがある問題」への対応のためのものである。

(ア) 突合せ業務の概要

厚生年金基金(以下「基金」という。)制度は、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)に基づき、企業等の厚生年金保険の適用事業所の事業主により設立された公法人である基金が保険者として、厚生年金保険の保険者である国に代わって老齢厚生年金の一部を代行給付し、更に独自の掛金(保険料に相当)の徴収と上積みの給付を当該基金の加入員(厚生年金保険の被保険者)に対して行うものである。そして、被保険者及び事業主が負担する厚生年金保険料の一部は、代行給付に要する費用として国ではなく基金に納付されることになる。

このため、基金制度に加入する事業所は、厚生年金保険の適用、資格取得等について同一内容の諸届を年金事務所と基金の双方に提出し、国と基金は、それぞれ同一内容の年金記録を把握して、管理しておく必要がある。しかし、双方の年金記録が合致しない事態が一定数あることが明らかになったことから、適正化工程表により双方の年金記録を突合し、正しい年金記録に訂正を行うこととされた。

この突合せに当たっては、社会保険庁において、まず基金の加入記録を有する被保険者等のオンライン記録を抽出した上で、21年3月から12月までの間に、基金からの中途脱退者及び解散基金の加入員の年金記録を管理している企業年金連合会(各基金で構成する連合会)に当該オンライン記録を提供するなどして、機構、企業年金連合会、各基金の間で22年4月から約3679万人(25年3月末時点)の年金記録を対象として突合せ業務が開始された。

機構は、国の年金記録と基金又は企業年金連合会(以下「基金等」という。)の年金記録との突合せ業務をおおむね26年3月に終了することを目途としていた。そして、この突合せ業務の結果、国の年金記録の誤りが発見された場合は、国の年金記録を訂正することとなっている。

(イ) 進捗状況及び処理実績

突合せ業務は、①社会保険庁(22年1月以降は機構)から提供を受けたオンライン記録と基金等の年金記録が不一致であり、基金等から審査依頼があったものについて、機構が紙台帳等を確認する第一次審査と、②第一次審査で国の年金記録が正しいとされたものの、基金等から再審査の依頼があり、基金等が行った適用事業所の人事記録等の調査結果を踏まえて、機構が審査を行う第二次審査等から成っている。

そして、その進捗状況等についてみると、図表1-6のとおり、基金等から国のオンライン記録と一致しないとして審査依頼のあった約475.9万件に係る第一次審査は25年9月末に既に終了していて、紙台帳等とオンライン記録が一致しており 、国の年金記録が正しいとして基金等に回答したものが約339.6万件(71.4%)となっていた。また、オンライン記録とは不一致であるが、紙台帳等と基金等の年金記録が一致していたものについて、国の年金記録が誤りであるとして基金等に回答を行ったものが約51.3万件(10.8%)となっており、このうち約50.1万件は突合せの結果について被保険者等に通知する(注6)などして国の年金記録が訂正されていた。また、突合せの結果について通知を受けた被保険者等から国の年金記録訂正不要の申出が行われるなどしたため国の年金記録の訂正を行わないものが約7.1万件及び被保険者等に国の年金記録訂正の要否について通知したが申出のないものが約3.2万件となっていた。

(注6)
被保険者等に対して、年金記録訂正の必要がある旨を通知し、その回 答を踏まえて、年金記録の訂正を行うこととなっている。

さらに、図表1-6のとおり機構が第一次審査の結果、国の年金記録が正しいとして基金等に回答した約339.6万件のうち、機構が基金等から再審査を依頼されたものが約32.1万件となっていた。この約32.1万件に係る第二次審査は、26年3月末現在、その全ての審査が終了していて、国の年金記録が正しいとして基金等に回答したものが約24.2万件、国の年金記録が誤りであるとして基金等に回答したものが約3.4万件などとなっていた。

図表1-6 国の年金記録と基金等の年金記録との突合せの結果(平成26年3月末現在)

図表1-6 国の年金記録と基金等の年金記録との突合せの結果(平成26年3月末現在)画像

上記の第一次審査及び第二次審査の結果、年金受給者で増額となる再裁定(当初の年金支給の際に行った裁定の変更をいう。以下同じ。)が行われ、国からの年金給付が回復した件数は、24年1月から26年3月までで約6.8万件となっていた。

以上の状況を示すと図表1-6-2のとおりである。

図表1-6-2 突合せ業務の状況(平成26年3月末現在)

図表1-6-2 突合せ業務の状況(平成26年3月末現在)画像

エ 総務大臣のあっせん等による処理

この取組は、「記録の内容に誤りがある問題」への対応のためのものである。

(ア) 制度の概要

第三者委員会は、年金記録の確認について、国側に年金記録がなく、年金受給者等の側も保険料納付の領収書等の物的な証拠を持っていないなどの事例について、国民の立場に立って申立てを十分に汲み取り、様々な関連資料を検討し、年金記録訂正に関し第三者的な立場から客観的かつ公正な判断を示すことを任務として、前記のとおり、19年6月、総務省に設置された。なお、地方委員会は、年金記録に係る確認の申立件数の減少傾向を踏まえ、25年5月16日に、全国50か所から9か所に集約されている。

第三者委員会は、年金事務所等が受け付け、転送された年金記録に係る確認の申立てについて調査審議を行い、年金記録の訂正を要する場合はあっせん案を作成することになっている。そして、作成されたあっせん案を踏まえて、総務大臣は厚生労働大臣に対して年金記録の訂正に関するあっせんを行い、厚生労働大臣はその決定を尊重し、年金記録を訂正して回復させることとなっている。

(イ) 年金事務所等段階における記録回復

個別の年金記録の訂正に関するあっせんは、その都度第三者委員会に個別に調査審議を仰ぐ必要があり、調査審議には数箇月を超える日数を要していた。そこで、年金記録に係る確認の申立てに際し、年金事務所等において迅速に対応するため、第三者委員会においてこれまでのあっせん事案の分析等を行い、その結果、第三者委員会での調査審議を経ずに年金事務所等段階で年金記録の訂正を行うことができるよう、20年4月から23年10月までの間にかけて国民年金及び厚生年金について、厚生労働省及び社会保険庁(22年1月以降は機構)は「年金事務所等段階での回復基準」を順次策定し、これに基づいて年金事務所等において年金記録の訂正等の処理を行っている。

(ウ) 進捗状況及び処理実績

19年6月から26年3月までの間における第三者委員会への申立て受付件数は、図表1-7のとおり284,055件、このうち第三者委員会において年金記録の訂正が必要と判断され、あっせんされた件数は110,101件となっていて、その全ての年金記録が年金事務所等において訂正されていた。

図表1-7 年金記録に係る確認の申立ての受付件数及び回復件数(平成26年3月末までの累計)

図表1-7 年金記録に係る確認の申立ての受付件数及び回復件数画像

また、図表1-8のとおり、国民年金については、申立内容に対応する「確定申告書(控)」、「家計簿」等が残っている場合や保険料未納期間が1年以下である場合には、20年4月の「第三者委員会送付前の社会保険事務所段階における記録回復基準」によって26年3月までに1,813件の年金記録が年金事務所等段階で回復されていた。厚生年金については、総報酬制(注7)が導入された15年4月以降、賃金台帳により賞与からの保険料控除が確認できるなどの場合に、23年10月の「厚生年金特例法第1条第1項に規定する場合に該当する記録回復基準」によって26年3月までに18,706件の年金記録が年金事務所段階で回復されていた。

(注7)
総報酬制 厚生年金の保険料について、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に共通の保険料率を乗じて算出する制度

このほか、上記以外の回復基準により回復された事案と合わせて、26年3月までに国民年金について1,975件、厚生年金について24,652件、計26,627件の年金記録が年金事務所等段階で回復されていた。

図表1-8 年金事務所等段階での回復基準による年金記録回復の状況(平成26年3月末現在)

(単位:件)
年金事務所等段階での回復基準の内容 回復件数
国民
年金
確定申告書(控)、家計簿等によるもの及び1年以下の保険 料未納期間に対する申立てによるもの 1,813
2年以下の保険料未納期間に対する申立てによるもの 129
その他 33
小計 1,975
厚生
年金
不適正な遡及訂正処理事案に該当するもの 2,882
あっせん事案の同僚事案に該当するもの 注(1) 2,790
厚生年金特例法第1条第1項に規定する場合に該当するもの 注(2)
ZU1-8-CHU7-2
18,706
脱退手当金に関する事案に該当するもの 274
小計 24,652
26,627
注(1)
年金記録の回復が行われた者と同一事業所に同一時期に勤務していた他の者による年金記録訂正の申立て事案
注(2)
事業主が、被保険者から被保険者の負担すべき厚生年金保険料を源泉控除した事実があるにもかかわらず、当該保険料を納付する義務を履行したことが明らかでない場合

オ 厚生年金保険の標準報酬等の遡及訂正

この取組は、「記録の内容に誤りがある問題」への対応のためのものである。

(ア) 遡及訂正の概要

厚生年金保険の標準報酬等の遡及訂正とは、厚生年金保険料を滞納していた事業主が、滞納保険料の圧縮等を目的に、当初、届け出ていた被保険者の標準報酬月額や資格の得喪年月日等を事実と異なる形に遡及して訂正したものである。その訂正内容は、事業主が雇用していた被保険者の標準報酬月額を実際の給与支払額に相当する額よりも低く訂正したり、勤務期間を実際より短くなるよう資格喪失届を訂正したりしたもので、このような不適正な訂正が行われた被保険者の年金記録に基づく年金額は、当該訂正により減少してしまうことになる。

(イ) 取組の概要並びに進捗状況及び処理実績

上記のような年金記録の遡及訂正について、その年金記録の回復を総務大臣があっせんするという事例が続いたことなどから、20年9月に開催された年金記録問題に関する関係閣僚会議において、「オンライン上のすべての記録から不適正な遡及訂正処理の可能性のある記録を抽出した上で、ご本人によるその記録の確認に基づき、調査を行う」ことが決定された。そして、社会保険庁は、標準報酬月額の引下げ処理と同日又は翌日に資格喪失処理が行われていて、かつ、標準報酬月額が一定以上の等級及び一定以上の期間引き下げられている年金記録約6.9万件を抽出し、このうち年金受給者に係る約2万件の年金記録を対象に、同年10月から21年3月までの間に社会保険事務所職員等による年金受給者に対する戸別訪問調査を実施した。その結果、従業員であって、年金記録が事実と相違しており、年金記録回復の申立ての意思ありとの回答があった1,602件について年金記録を回復していた。

また、これと並行して、上記の条件に該当する年金記録について、20年9月以降、社会保険庁が社会保険事務所段階における回復基準を策定し、これにより年金事務所等において26年3月末までに2,882件の年金記録を回復していた。

なお、社会保険庁及び厚生労働省は約2万件の戸別調査終了後、年金記録の遡及訂正処理について社会保険庁職員が事業主に対して指導を行ったなど同庁職員の関与をうかがわせる回答があったものを含む1,368件について、事実関係の調査を21年3月から24年9月までの間に行った。その結果、遡及訂正処理への職員の不適切な関与が確認されたものが4件あり、社会保険庁は当該職員に対して処分を行っている。

カ 国民年金の特殊台帳とオンライン記録との突合せ

この取組は、「記録の内容に誤りがある問題」への対応のためのものである。

(ア) 突合せ業務の概要

国民年金の年金記録は、前記の図表0-4のとおり、昭和59年のオンラインシステムの導入以前は、社会保険事務所等において「被保険者台帳」により管理されるなどしていた。そして、社会保険庁は、オンラインシステムの導入に当たり、上記の被保険者台帳を特殊台帳(特例として過去に遡って保険料の納付を行った特例納付の記録や年度内の一部の期間のみ未納や免除となっている記録等の特殊な納付記録が記載されている台帳)と普通台帳(特殊台帳以外の台帳)とに区分して、約3096万件の特殊台帳についてはマイクロフィルム化して社会保険事務所等において保存管理していた。

しかし、この特殊台帳の記録とオンライン記録との間に相違があることが、平成19年4月から6月までの間にかけて社会保険庁が行った調査により明らかになったことなどから、適正化工程表により、双方の記録を突合し、正しい年金記録に訂正することとされた。そして、社会保険庁は20年5月から突合せ業務を開始し、機構はこの突合せ業務を引き継いでいる。

(イ) 進捗状況及び処理実績

機構によれば、突合せ業務は22年6月に全て終了し、特殊台帳の記録とオンライン記録が不一致となったものが約30万件あったとしている。そして、年金受給者であって年金額が増えると考えられた約7万件について年金記録が訂正されて、年金額が年額で平均約1.4万円増額となったとしている。

キ 引き続き取組を行う必要がある未統合記録

未統合記録約5095万件について、特別委員会の報告書では、ねんきん特別便を初めとした様々な取組が実施された結果として、25年9月末におけるその解明の状況を示している。そして、26年6月に、厚生労働省は、特別委員会の報告書の25年9月末時点の数値等を26年3月末時点に更新した上で公表しており、図表1-9のとおり、基礎年金番号に統合済み又は一定の解明がなされた年金記録約3012万件(未統合記録のうちの59.1%)を「解明された記録」とし、ねんきん特別便等を送付したものの未回答となっているなどの年金記録約2083万件(同40.9%)を「解明作業中又はなお解明を要する記録」として整理している。

図表1-9 未統合記録約5095万件の解明状況(平成26年3月末現在)

区分
件数(万件)
(割合(%))
内訳
件数(万件)
(人数(万人))

割合
(%)
解明された記録
3012
(59.1)
(1)基礎年金番号に統合済みの記録 1771
(1382)
34.8
(2)死亡者に関連する記録及び年金受給に結び付かない記録 1241
(968)
24.4
① 死亡者に関連する記録 689 13.5
Ⅰ 死亡の届出が提出されている記録 195 3.8
Ⅱ 死亡一時金を受給している記録 62 1.2
Ⅲ 国内の最高齢者(男女別)以上の生年月日となっている
記録
121 2.4
Ⅳ 住基ネットで死亡と確認された記録 70 1.4
Ⅴ ⅠからⅣまでの記録と氏名・生年月日・性別の3項目が
一致する記録
241 4.7
② 年金受給に結びつかない記録 552 10.8
Ⅰ 脱退手当金、脱退一時金及び特別一時金を受給した記
204 4.0
Ⅱ 共済組合へ移管済みの記録 25 0.5
Ⅲ 名寄せ特別便の期間重複チェックの結果、基礎年金番
号に収録されている記録と完全に重複している記録
134 2.6
Ⅳ 厚生年金又は船員保険の加入月数が0か月である記録及
び国民年金の保険料納付月数が0か月である記録
188 3.7
解明作業中又はなお解明を要する記録
2083
(40.9)
(1)現在調査中の記録(本人からの回答に基づき記録を調査中) 4
(3)
0.1
(2)名寄せ特別便等の対象となったが、未回答等のため持ち主が
判明していない記録
843
(658)
16.5
①本人からの未回答のもの 312 6.1
②「自分のものではない」と回答のあったもの 192 3.8
③お知らせ便の未送達のもの 52 1.0
④「訂正がある」との回答だったが、調査の結果、本人の
ものではなかったもの
22 0.4
⑤基礎年金番号のある記録と名寄せされたが、その記録が
対象記録と期間重複があり特別便の対象から外れたもの
119 2.3
⑥黄色便の送付対象として氏名等の補正を行ったが、基礎
年金番号のある記録と名寄せされず、黄色便が送付され
なかったもの
64 1.3
⑦その他(「本人に返戻中のもの」、「黄色便の送付対象となったが記録の一部が不完全であるため送付対象とならなかったもの」、「住基ネット住所が不備であったため送付対象とならなかったもの」) 82 1.6
(3)持ち主の手掛かりがいまだ得られていない記録 想定される例
  ・届出誤り(誤った氏名・生年月日)により収録されたもの
  ・死亡していると考えられるもの
  ・国外に転居していると考えられるもの
  ・事情により別の氏名や生年月日で届出したもの
921
(719)
18.1
(4) (1)~(3)の記録と同一人のものと思われる記録 注(2)
CHU9-2
314
(245)
6.2
注(1)
「割合」欄は、未統合記録約5095万件に対する比率である。
注(2)
「解明作業中又はなお解明を要する記録」には、同姓同名、同一生年月日及び同性の3条件が一致する者が複数の記録を持っていると思われるケースがある。この場合、複数の記録のうち1件のみを(1)から(3)までの該当するものに計上し、残りの記録については(4)に計上している。

(特別委員会の報告書等を基に会計検査院が作成)

(ア) 「解明された記録」の状況

前記のとおり 「解明された記録」は約3012万件あるが、この内訳についてみると、「基礎年金番号に統合済みの記録」約1771万件(未統合記録のうちの34.8%)、脱退手当金等(注8)を受給していた対象期間に係る記録等で「年金受給に結びつかない記録」約552万件(同10.8%)とともに 「死亡者に関連する記録」約689、万件(同13.5%)が含まれている。

特別委員会の報告書では、「死亡者に関連する記録」について、「未統合であっても基礎年金番号に統合する積極的な意味を持たないことが確認された記録」であるとし、「遺族年金につながる可能性については、配偶者も同世代層と考えれば、配偶者も死亡(遺族年金の対象は不存在)となっている可能性も高いものと考えられる」としている。一方、厚生労働省は、「死亡者に関連する記録」について、遺族からの年金記録確認の照会等があれば、今後の年金受給に結び付く可能性があるものとしている。そして、「死亡者に関連する記録」は、26年1月の特別委員会の報告書で示されている25年9月末現在では約690万件であったが、26年3月末現在では約689万件となっていて、その理由について、機構は、年金記録確認の照会等により「死亡者に関連する記録」から「基礎年金番号に統合済みの記録」に移ったものがあるためとしている。

このため、「解明された記録」約3012万件のうち「死亡者に関連する記録」約689万件には、今後も年金記録の確認の照会(遺族からの申出)(注9)を待つ必要がある記録も含まれていると認められる。そして、「ねんきんネット」では、25年1月から、未統合記録検索機能により、遺族が死亡した親族の年金記録の検索を行うことができるようになっている。

(注8)
脱退手当金  厚生年金保険の加入者が、短期間(加入期間5年以上) で退職して、その後、厚生年金保険に再加入する予定がないなどの場合に支給された一時金であり、その対象となった厚生年金保険の加入期間は、年金給付に反映されない。昭和60年の厚生年金保険法改正により廃止されている。
(注9)
遺族からの申出  死亡者の遺族が遺族年金を受給している場合には、遺族に「ねんきん特別便」を送付し確認をしている。遺族年金の受給者以外の場合には、機構側で遺族の把握が困難であることから、死亡者の記録が遺族年金や未支給年金に結び付くには遺族からの年金記録の照会を待つしかない状況である。

(イ) 「解明作業中又はなお解明を要する記録」の状況

前記のとおり、「解明作業中又はなお解明を要する記録」は約2083万件あるが、このうち、ねんきん特別便等に対する回答に基づき調査中の約4万件を除いた約2079万件については、ねんきん特別便等に未回答であるなどの状態のものが約843万件、「持ち主の手掛かりがいまだ得られていない記録」が約921万件、これらの記録と同一人のものと推定される記録が約314万件とされている。

そして、「持ち主の手掛かりがいまだ得られていない記録」について、特別委員会の報告書では、誤った氏名、生年月日により収録された年金記録や、死亡していると考えられる者の年金記録、国外に転居していると考えられる者の年金記録等であると推定している。そして、これらの年金記録は、機構から「個別のお知らせ」ができない年金記録であり、本人側に事情があり、別姓名、別生年月日の届出によって別人扱いとなっていると想定されるものは、本人からの申出がない限り、実態把握や対象人数の推計ができない年金記録であるとしている。

なお、「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」(平成24年法律第62号。以下「年金機能強化法」という。)が成立し、税制抜本改革の施行時期に合わせて、27年10月から、年金受給資格期間を現在の25年から10年に短縮することが予定されている。そして、特別委員会の報告書等では、図表1-10及び1-11のように、「解明作業中又はなお解明を要する記録」約2083万件について年齢別及び期間別の状況を示している。これによれば、60歳未満の年金記録が2割を超えていたり年金加入期間が25年未満の年金記録の割合が高くなったりしている。こうした年金記録は、年金受給資格に結びつく可能性が低いことなどから、解明が進まなかったと思料されるが、年金受給資格期間が短縮された場合、加入期間が短期間の年金記録であっても年金受給に影響を与える可能性のある年金記録は相当数あることから、改めて年金記録確認の照会等を行う者が増えることが予想される。

図表1-10 「解明作業中又はなお解明を要する記録」約2083万件の年齢別内訳

年齢 40歳未満 40歳以上
50歳未満
50歳以上
60歳未満
60歳以上
70歳未満
70歳以上 年齢不明
件数(万件) 22.8 189.5 243.3 425.3 1201.2 0.7 2083
割合(%) 1.1 9.1 11.7 20.4 57.7 0.0 100.0

(特別委員会の報告書等を基に会計検査院が作成)

図表1-11 「解明作業中又はなお解明を要する記録」約2083万件の期間別内訳

期間 1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
25年未満
25年以上 期間不明
件数(万件) 1093.1 727.7 156.5 83.6 4.4 17.7 2083
割合(%) 52.5 34.9 7.5 4.0 0.2 0.8 100.0

(特別委員会の報告書等を基に会計検査院が作成)

このため、厚生労働省及び機構において、短期間の年金記録等であっても引き続き未統合記録の解明を進める必要があると認められる。