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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書
  • 平成26年10月
  • 第2 検査の結果
  • 1 年金記録問題に関する事業の実施状況

年金記録問題に関する日本年金機構等の取組に関する会計検査の結果について


(6) ねんきんネットの活用等

ア ねんきんネットの概要等

「ねんきんネット」は、年金記録問題を解決するなどのため、紙台帳等とオンライン記録との突合せ等の機構等の能動的な取組に加えて、被保険者等の側から常に年金記録を確認できる仕組みとして、従来の「年金個人情報提供サービス」(注13)の機能を拡充して23年2月に導入された。

「ねんきんネット」は、当初、機構のホームページを通じ被保険者等の側から容易に年金加入状況、保険料納付状況等の年金記録を確認するシステムとしてスタートしたが、①被保険者等からの情報提供が未解明の年金記録等の重要な解決手段となること、②裁定を待たずにより直近の年金記録を確認できるため年金記録問題の再発防止対策として有効であること、③年金記録の確認等に年金事務所等を介さないなど年金事務の効率化が図れることなどから、図表1-31のとおり、徐々に機能を拡充することにより、利用者の増大が図られてきている。

そして 「ねんきんネット」の導入や機能拡充等に要した経費は、厚生労働省と、機構とを合わせて計63億1013万余円(25年度末)であり、国から機構に交付される運営費交付金も含めて、全て租税収入等の国の財源によって賄われている。

(注13)
年金個人情報提供サービス  年金相談等に対応するため平成18年3月から社会保険庁に導入されたシステム

図表1-31 「ねんきんネット」の機能拡充状況

リリース 時期 主な拡充内容


平成23年 2月 ・年金記録の照会
・年金未加入の期間等を強調表示
・「アクセスキー」によるユーザーIDの即時発行


23年10月 ・被保険者の年金見込額試算
・国民年金の特殊台帳とオンライン記録の突合せで誤りのある可能性のある死亡者記録の検索


24年 4月
6月
8月
・「ねんきん定期便」の電子化
・年金支払に関する通知書の電子化
・追納や後納等の可能月数と納付額の確認


25年 1月

4月
・未統合記録の検索
・電子版「公的年金等の源泉徴収票」
・市町村情報照会システムの統合
・年金受給者の年金見込額試算


25年度末から
26年度にかけて
・年金記録の一覧表示
・届書の作成支援
・未統合記録の検索対象の追加
・スマートフォン等のモバイル機器への対応

イ ねんきんネットの利用状況

前記のとおり、機構は、「ねんきんネット」の機能を、23年2月の導入以降、徐々に拡充している。機能拡充による利用者の増加状況について月平均のユーザーID発行件数でみると、第1次から第4次までの「ねんきんネット」の各リリース後の月平均ユーザーID発行件数は、図表1-32のとおり、それぞれ約5.1万件、約7.1万件、約6.6万件、約9.4万件となっており、第3次リリース後に減少したが、第4次リリース後には、25年1月から実施した「気になる年金記録、再確認キャンペーン」との相乗効果もあって増加に転じていた。

そして、「ねんきんネット」の総利用者数であるユーザーID発行件数は、25年度末現在で計約280.4万件、23年2月から26年3月までの間の月平均では約7.5万件となっていた。なお、機構の第3次リリースのシステム基本計画書に記載された「ねんきんネット」の対象者数は25年度で934万人とされている。

また、主な機能別の月平均利用件数は、「年金記録の照会」で約19.4万件、「見込額試算」で約6.8万件、「電子版ねんきん定期便のダウンロード」で約3.2万件、「未統合記録の検索」で約1.4万件となっていた。

そして、機構は、「電子版ねんきん定期便のダウンロード」の機能追加に伴い、「ねんきん定期便」の郵送の要・不要を登録できる機能を追加したことから、25年度末現在に意向を確認できた131.4万人のうち「ねんきん定期便」の郵送を不要としたユーザーの数は、約13.7万人(10.5%)程度となっていた。

図表1-32 「ねんきんネット」の利用実績(平成25年度末現在)

(単位:件)
リリース ユーザーID
発行件数
ログイン件数 年金記録の照会
件数
見込額試算の利
用件数
電子版ねんきん
定期便のダウン
ロード件数
未統合記録の検
索件数

1次
358,257
(51,179)
616,844
(88,120)
647,734
(92,533)

2次
426,900
(71,150)
960,358
(160,059)
779,268
(129,878)
206,954
(34,492)

3次
601,985
(66,887)
2,136,496
(237,388)
1,267,558
(140,839)
482,253
(53,583)
207,488
(23,054)

4次
1,416,985
(94,465)
6,418,566
(427,904)
4,504,545
(300,303)
1,374,363
(91,624)
580,340
(38,689)
221,108
(14,740)

2,804,127
(75,787)
10,132,264
(273,844)
7,199,105
(194,570)
2,063,570
(68,785)
787,828
(32,826)
221,108
(14,740)
(注)
( )は月平均件数

ウ 市区町村との連携

年金局は、「ねんきんネット」の運用開始に併せて、インターネット環境がない者に 市区町村窓口で、「ねんきんネット 」を利用した年金記録の提供を行えるよう、市区町村に対して「ねんきんネット」を利用するための市区町村用のユーザーIDの取得や端末の導入等を要請している。

25年度末現在、機構から「ねんきんネット」のユーザーIDを取得した市区町村は、989市区町村(ID発行数2,264件)となっており、端末の設置場所がない、厚生年金等の知識がないなどの理由で、全国1,742市区町村の56.8%にとどまっていた。そして、市区町村における年金記録の照会件数は58,625件となっており、26年3月の1市区町村当たりの照会件数は5.9件となっていた。

前記のとおり、「ねんきんネット」は、未解明の年金記録等の解決手段、年金記録問題の再発防止策及び年金事務の効率化策として期待されている。一方、年金記録問題への対応の集中処理期間が終了したことで、26年度以降、年金記録問題への対策費は減少していくことが見込まれることから、今後は、新たな機能の追加だけでなく、既存の機能をより一層有効活用することが重要である。