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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書
  • 平成26年10月
  • 第2 検査の結果
  • 1 年金記録問題に関する事業の実施状況

年金記録問題に関する日本年金機構等の取組に関する会計検査の結果について


(10) 年金記録問題対策に関する経費の状況

ア 特別委員会の報告書等における年金記録問題対策に関する経費の概要

前記のとおり、厚生労働省及び機構は、厚生年金保険制度及び国民年金制度を管掌し、年金記録問題に関する事業等を実施している。そして、年金記録問題は、国の事務処理誤りにより発生したものであり、この対策のための経費を厚生年金保険料等に転嫁させるのは適当ではないとの考えに基づき、年金記録問題対策に関する経費は、主に租税収入等の国の財源を充てることとなっている。

このため、厚生労働省は、毎年度、年金記録問題対策に要する資金を一般会計から年金特会の業務勘定に繰り入れ、同勘定から直接、又は同勘定から機構に交付金を交付し、交付を受けた機構が年金記録問題対策のための経費を支出している。

機構への交付金には、租税収入等を財源とした運営費交付金と、保険料収入等を財源とした事業運営費交付金とがある。これらの交付金は、図表1-47のとおり、機構が行う各業務に充てられており、前記の理由から、年金記録問題対策の経費には、運営費交付金が充てられている。

図表1-47 運営費交付金及び事業運営費交付金の使途

運営費交付金
(租税収入等を財源)
年金記録問題対策 誤った年金記録を正しい記録とするための調査等
一般管理費 正規職員、役員の人件費及び内部管理に必要な業務
事業運営費交付金
(保険料収入等を財源)
保険事業 ①国民年金及び厚生年金保険の資格の得喪等に関する事務
②保険料の収納及び老齢・障害・遺族年金の給付に 関する事務
社会保険オンライ
ンシステム事業
年金記録管理・基礎年金番号管理システム及び年金給付システムの維持管理
年金相談等事業 年金事務所等の来訪相談等

特別委員会の報告書等によれば、年金記録問題発生以降、厚生労働省(21年12月以前は社会保険庁)及び機構において支出した年金記録問題対策に関する経費は、図表1-48のとおり3873億余円となっているとしている。このうちの「Ⅰ ねんきん特別便等関係」、「Ⅱ 紙台帳とコンピュータ記録の突合せ関係」、「Ⅶ 年金記録問題対応のための体制強化等関係」の経費の合計は、全体の97.9%を占めており、その内容等を支出額の多い順に示すと次のとおりである。

① 「Ⅱ 紙台帳とコンピュータ記録の突合せ関係」の経費1891億余円

主な内容は、21年度前後は厚生労働省による紙台帳検索システムの開発、サーバの調達に要する経費等で、22年10月以降は機構による紙台帳検索システムを利用した突合せ作業等のための委託費等である。

② 「Ⅰ ねんきん特別便等関係」の経費951億余円

主な内容は、各種便の作成、送付等に要した経費であり、ねんきん特別便(全員便)等の多くの各種便を送付した20年度前後の経費が多額となっており、各種便の送付の減少に伴い経費も減少してきている。

③ 「Ⅶ 年金記録問題対応のための体制強化等関係」の経費950億余円

主な内容は、機構における年金記録問題対策に必要な有期雇用職員の人件費である。

なお、前記のとおり25年度末において年金記録問題への対応の集中処理期間が終了することから、年金記録問題対策の26年度予算額は110億余円と大幅に縮減されている。

図表1-48 特別委員会の報告書等において年金記録問題対策に関する経費とされた経費

(単位:百万円)
事項等\年度 平成
19年度

20年度

21年度

22年度

23年度

24年度

25年度

ねんきん特別便等関係
[各種便の送付、専用ダイヤル、被保険者等への回答の処理 等]
11,210 39,190 21,023 322 - 183 - 71,930
機構 - - 9,106 9,600 2,433 1,920 199 23,260
小計 11,210 39,190 30,129 9,923 2,433 2,103 199 95,190
紙台帳とコンピュータ記録の
突合せ関係
[紙台帳検索システムの構築、突合せ作業、国民年金特殊台帳との突合せ等]
- 5,739 24,269 5,592 1,435 1,337 1,255 39,630
機構 - - 99 21,629 60,278 49,628 17,857 149,493
小計 - 5,739 24,368 27,222 61,714 50,965 19,113 189,124
厚生年金基金記録との突合せ関係
[突合せ作業等]
- 238 - - - - 32 271
機構 - - - 214 31 92 31 370
小計 - 238 - 214 31 92 64 641
標準報酬月額等の遡及
訂正事案対応関係
[戸別訪問、相談対応等]
- 1,021 - - - - - 1,021
機構 - - - - - - - -
小計 - 1,021 - - - - - 1,021
ねんきんネット関係
[システム構築等]
- - - 128 374 586 333 1,422
機構 - - - 1,117 1,622 1,257 888 4,887
小計 - - - 1,245 1,997 1,844 1,222 6,310
3号不整合対応関係
[システム構築等]
- - - - - - - -
機構 - - - - 0 - - 0
小計 - - - - 0 - - 0
年金記録問題対応のための
体制強化等関係
[年金再裁定事務の迅速化、適用・収納対策、年金記録問題対策に必要な人件費等]
- - 1,307 450 7 3 3 1,772
機構 - - 1,167 16,878 25,996 24,610 24,590 93,244
小計 - - 2,475 17,329 26,004 24,613 24,594 95,016
11,210 46,190 56,973 55,935 92,179 79,619 45,194 387,304
注(1)
単位未満を切り捨てているため、各項目を合計しても小計、計欄とは一致しないものがある。
注(2)
金額は、契約額ではなく、年金特会の業務勘定及び機構から年金記録問題対策として支出された額である。

(特別委員会の報告書等を基に会計検査院が作成)

イ 特別委員会の報告書において年金記録問題対策に関する経費とされていない経費

特別委員会の報告書において年金記録問題対策に関する経費とされている経費に は、次の経費が、整理上の理由で計上されていなかった。

(ア) 年金特会の業務勘定からの支出でない経費

特別委員会の報告書においては、年金記録問題対策に関する経費に 「年金特、会の業務勘定及び機構から支出した経費のうち、年金記録問題の対策のための業務に要した経費」を計上している。このため、総務省の一般会計から支出した第三者委員会等の経費(常勤職員の人件費を除く。)492億余円、特例納付保険料の額に相当する額の総額として一般会計から年金特会の厚生年金勘定に繰り入れられた厚生年金特例法に基づく国庫負担額21億余円、厚生労働省の一般会計から支出した社会保障審議会第3号被保険者不整合記録問題対策特別部会の経費80万余円は、年金記録問題対策に関する経費として計上されていなかった。

(イ) 年金記録問題対策として予算措置されていない経費

前記のとおり、機構の正規職員の定員数には、年金記録問題対策のための職員は考慮されておらず、また、その人件費は、年金記録問題対策に要する経費として予算措置されていない。代わりに、年金記録問題対策のための多くの有期雇用職員の人件費が年金記録問題対策に要する経費として予算措置されている。このため、有期雇用職員の人件費のみが年金記録問題対策に関する経費として計上され、正規職員の人件費は、年金記録問題対策に従事しているか否かにかかわらず、計上されていなかった。

なお、実際には、前記のとおり、多くの機構の正規職員が年金記録問題対策に従事していて、代わりに年金記録問題対策の要員として予算措置された有期雇用職員の一部が、適用・徴収業務等の経常業務に従事していた。そこで、機構が算出した正規職員の年金記録問題対策に従事した割合等に基づき、年金記録問題対策に従事した正規職員の人件費等を試算すると43億余円となっていた。

(ウ) 年金記録問題対策に従事した割合が不明な経費

① 厚生労働省(21年12月以前は社会保険庁)における年金記録問題対策は、社会保険庁の運営部企画課と年金保険課、年金局の事業企画課、特に同課の年金記録回復室で行われている。そして、厚生労働省によれば、上記課室の職員の多くは年金記録問題対策専従の職員ではないとして、年金記録問題対策に従事した割合(以下「年金記録従事割合」という。)が明確でないことを理由に、当該職員の人件費を、年金記録問題対策に関する経費に計上していないとしている。

なお、上記の人件費について、年金記録従事割合に代わる指標を用いて支出額ベースで試算することが極めて困難なことから、19年度から25年度までの各年度に、年金記録問題に対応する目的で措置されている級別定数(注16)を基に、各年度における新規増員分の人件費予算額の算出方法によって年金記録問題対策に従事した職員の人件費予算を試算すると33億余円となっていた。

(注16)
級別定数  職員の職務をその複雑、困難及び責任の度に応じて各俸給表の職務の級別に分類し、その職務の級ごとの適用職員数を定めたもの

② 年金事務所等における年金相談業務の委託費は、前記の厚生労働省の職員の人件費と同様に、適用・徴収業務等の経常業務に係る年金相談対応と年金記録問題に係る年金相談対応との従事割合が明確でないことを理由に年金記録問題対策に関する経費として計上されていなかった。

なお、年金事務所等に設置された委託相談窓口数に占める記録相談窓口の各年度ごとの割合を、年金記録問題に対する相談対応の従事割合とみなして、これを基に年金記録問題に係る年金相談業務の委託費を試算すると81億余円となっていた。

(エ) (ア)及び(ウ)のいずれにも整理できる経費

第三者委員会事務室の常勤職員の人件費は、年金特会の業務勘定からの支出ではないため、年金記録問題対策に関する経費として計上されていなかった。また、総務省によれば、第三者委員会事務室の常勤職員は、年金記録問題対策専従の職員とは限らず、年金記録従事割合が明確でないとしている。このため、当該常勤職員の人件費は、特別委員会において(ウ)の経費として整理することもできたと思料される。

なお、上記の人件費については、年金記録従事割合に代わる指標を用いて支出額ベースで試算することが極めて困難なことから、19年度から25年度までの各年度に、年金記録問題に対応する目的で措置されている級別定数を基に、各年度における新規増員分の人件費予算額の算出方法によって年金記録問題対策に従事した職員の人件費予算を試算すると91億余円となっていた。

特別委員会の報告書においては、上記の経費は年金記録問題対策に関する経費として計上されていなかったが、(ア)は年金記録問題がなければ必要がなかった蓋然性が高いこと、(イ)、(ウ)及び(エ)は年金記録問題対策に関係する業務等に従事した実績があり、年金記録問題がなければその間は他の業務等に従事することができたことを考慮すると、これらの経費計764億余円についても整理次第で年金記録問題対策に関する経費として計上する余地はあったと思料される(図表1-49参照 。)

図表1-49 年金記録問題対策に関する経費(図表1-48)として計上されていない経費

(単位:百万円)
事項等\年度 平成
19年度

20年度

21年度

22年度

23年度

24年度

25年度

(ア) 第三者委員会等の経費 2,195 9,479 11,270 10,910 8,294 4,501 2,611 49,264
厚生年金特例法による国庫負担額 - - 8 9 217 914 1,007 2,158
第3号被保険者不整合記録問
題対策特別部会の経費
- - - - 0 - - 0
(イ) 機構の正規職員の人件費 - - 2,263 5,493 -777 -2,992 387 4,374
(ウ)① 厚生労働省の職員の人件費 - 1,112 1,560 215 214 118 119 3,339
(ウ)② 年金記録問題に対する相談業務等の委託費 - - 689 2,990 2,029 1,604 799 8,113
(エ) 第三者委員会事務室の常勤職員の人件費 - 120 583 2,284 2,192 2,133 1,857 9,170
2,195 10,711 16,375 21,904 12,171 6,279 6,782 76,421
注(1)
(ア)の第三者委員会等の経費の欄は、総務省において、平成21年度以降の支出済額を抽出したものである。また、関係書類等の保存期限が経過しているため、19年度の欄は、平成19年度決算検査報告の、会計検査院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項(年度途中に急きょ設置された組織等の運営経費に係る経理について、方針を定めることにより、速やかに適切な手続が執られるよう改善させたもの)に掲記されている19年度の第三者委員会の運営経費21億9583万余円を、20年度の欄は、歳出決算報告書において第三者委員会に係る支出に特定できる「(事項)年金記録確認地方第三者委員会に必要な経費」の94億7987万余円を記載している。
 なお、第三者委員会等の経費には、「年金業務・社会保険庁監視等委員会」及び「年金業務監視委員会」の経費も含まれている。
注(2)
(ア)の第3号被保険者不整合記録問題対策特別部会の経費は801,497円である。
注(3)
(イ)の機構の正規職員の人件費の欄は、機構が算出した正規職員の年金記録問題対策に従事した割合等に基づき算出した正規職員の人件費から経常業務に従事した有期雇用職員の人件費を控除した額である。
注(4)
(ウ)①から(エ)までは前記の方法により試算した額である。
注(5)
単位未満を切り捨てているため、各項目を合計しても計欄とは一致しないものがある。