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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成26年4月

地方財政計画及び地方公務員の特殊勤務手当等の状況について


4 所見

(1) 検査の状況の概要

ア 地方財政計画と国の予算との関連等

地方財政計画では、地方団体の歳入歳出総額の見込額を算定する過程において、歳入総額が歳出総額を下回り財源不足が見込まれる場合には、財源不足の額を地方交付税の増額、地方債の増額等により補塡する措置である地方財政対策が講じられる。財源不足の額のうち通常収支の不足分は、建設地方債である財源対策債等により補塡する額を除いた額を国と地方が折半して負担するとされ、国負担分は国の一般会計からの加算措置(臨時財政対策特例加算)により、地方負担分は特例地方債(臨時財政対策債)により補塡する措置が講じられている。21年度以降は、臨時財政対策特例加算とは別枠で国の一般会計から加算する別枠加算の措置が講じられている。

地方交付税総額に占める国の一般会計からの加算措置の状況をみると、21年度における臨時財政対策特例加算の額は2兆5553億円、別枠加算の額は1兆円、計3兆5553億円であり、24年度における臨時財政対策特例加算の額は3兆8361億円、別枠加算の額は1兆0500億円、計4兆8861億円と一般会計からの多額の加算措置が継続している。

イ 地方財政計画額と決算額とのかい離

総務省は、地方財政計画額と決算額について一定の修正を行った上で毎年度の比較をしており、これによると地方財政計画額(歳出)と決算額(歳出)とのかい離の状況は、17年度から19年度にかけてのかい離の一体的是正により、17年度から20年度までは2兆円を下回っていた。しかし、その後一般行政経費のかい離額が大きくなるなどして、歳出総額のかい離額は、21年度には3兆円を超えて、22年度には5兆円を超えていた。また、一般行政経費のかい離の状況は、10年度から19年度までは縮小の傾向にあったが、20年度から拡大しており、22年度は6兆円を超えていた。

ウ かい離の要因分析

総務省は、一定の修正を行った上で地方財政計画額(歳出)と決算額(歳出)を比較しているが、恒常的に決算額が地方財政計画額を上回っている。その要因として、この比較において、①歳出において地方財政計画に計上されていない基金の取崩額相当分について、基金の取崩額がどの歳出区分において歳出に充てられたかを特定することができないため、決算額から控除していないこと、②地方財政計画には計上されない超過課税及び法定外税について、決算額(歳出)ではこれらを財源とした歳出額があるものの、この歳出額を特定することができないため、決算額から控除していないこと、③実質的な歳入歳出とはいえない年度内貸付けを含む貸付金について、地方財政計画に計上される額が決算額に比べて少額であることが考えられる。

エ 地方公務員に係る特殊勤務手当等の支給、福利厚生事業への支出及び病気休暇等の制度

全国の地方公共団体の普通会計における特殊勤務手当の23年度の支給額は、16年度の支給額と比べて減少しているが、地方公共団体によっては、教育関係の特殊勤務手当の支給額が増加している。自宅所有者に対する住居手当については、会計実地検査の対象とした15道府県及び管内の174市町村のうち5府県は23年3月までに人事委員会から廃止の勧告を受けていたが、23年度においても経過措置等で支給を継続していた。また、自動車等を使用する場合の通勤手当については、会計実地検査の対象とした15道府県及び管内の174市町村のうち13道県及び91市町村において、通勤距離に応じた支給月額が国家公務員の支給月額を上回っていた。

全国の地方公共団体の普通会計性質別決算における福利厚生事業費のうち職員互助組合等に対する補助金等の額は、10年度以降、一貫して減少していて、特に、17、18両年度の減少幅が大きくなっていた。会計実地検査の対象とした15道府県及び管内の174市町村から職員互助組合等に対して交付された補助金等の交付額は、23年度は25億7764万余円であり、補助金等負担率は25.9%となっていた。また、独自職員互助組合等への補助金等を減額又は廃止している地方公共団体が多く見受けられた一方、引き続き共同職員互助組合等へ補助金等を交付している例が見受けられた。また、35職員互助組合等においては、補助金等を退会給付金に充当していた。そして、医療給付等の短期給付に係る職員の保険料負担を国家公務員や地方公務員の共済組合における50%の負担割合より軽減していた17市の健康保険組合は、22年12月までにその全てが解散していた。

病気休暇の制度については、国家公務員に適用される病気休暇期間である90日を超えても給与が減額されない状況が会計実地検査の対象とした15道府県及び管内の174市町村のうち11市において見受けられた。また、特別休暇としての夏季休暇以外の夏季における休暇等を付与している例が見受けられた。

オ 住民に対する開示・公表の状況

地方公務員の特殊勤務手当等の状況について、会計実地検査の対象とした15道府県及び管内の174市町村の全てで何らかの開示・公表を行っており、総務省においても地方公共団体給与情報等公表システム等で各種情報を開示し公表している。しかし、その内容には、特殊勤務手当別の支給額、共同職員互助組合等に対する補助金等交付額、特別休暇としての夏季休暇以外の夏季における休暇等を付与している場合の付与日数といった情報が含まれていない状況となっていた。

(2) 所見

地方財政は、リーマン・ショック後の経済危機の影響を引き続き受け、地方税収が十分な水準まで回復しない中、国の一般会計からの加算措置等による地方交付税の増額が継続している状況にあり、日本経済の再生と財政健全化の両立を実現するためには、地方においても財政を健全化し自立を促進することなどが求められている。そして、総務省は、財政健全化は、国・地方共通の重要な課題であるとして、国・地方の信頼関係及び適正な財政秩序を維持しつつ、改革に取り組むこととしている。

一方、地方公務員に係る特殊勤務手当等の支給、福利厚生事業への支出及び病気休暇等の制度について、総務省は、各地方公共団体においてより積極的な行政改革の推進及びその状況の公表がなされるよう取組を行っている。

総務省においては、今回の会計検査院の検査結果を踏まえて、次の点に留意して、現在進めている取組をより実効のあるものにしていくことが重要である。

ア 地方財政計画は、国の予算編成と関連して策定されることにより、地方財政と国家財政との整合性を確保する意義や役割があるとされており、地方財政計画額をどのように見込むかは、財源不足の額に影響を及ぼし、ひいては国の一般会計の負担による地方交付税の加算額にも影響を及ぼす可能性がある。このため、その見込みが適切であったかについての事後的な検証、特に、所要経費の積上げではなくその総額が枠として計上される項目のある歳出総額についての事後的な検証が重要となり、その検証のためには地方財政計画額と決算額を比較してそのかい離の状況を把握することが有効である。総務省は、一定の修正を行った上で地方財政計画額と決算額との比較を行い、かい離の状況を公表しており、このかい離の状況は後年度における地方財政計画の総額、ひいては地方交付税総額に係る議論にも影響することが想定される。
 総務省は、これまでも地方財政計画の合理化、適正化に努めてきており、地方財政計画額(歳出)と決算額(歳出)とのかい離額は一旦縮小したものの、21年度以降拡大している。そして、地方財政計画と普通会計決算との比較については、現行の比較においては全体として決算額(歳出)が地方財政計画額(歳出)を上回る結果となっているが、基金取崩額、超過課税等及び貸付金に係るかい離のように決算額が地方財政計画額を上回る要因があることに留意が必要である。
 したがって、地方財政計画額と決算額とのかい離の要因についてその全てを把握することは困難であるが、総務省において、これらの現状を踏まえて、地方財政計画の妥当性の検証に当たっては、引き続きかい離の把握に努めるとともに、かい離の状況の公表に当たっては、地方財政計画に計上されている内容と普通会計決算に計上されている内容の差異、決算額(歳出)が地方財政計画額(歳出)を上回る要因等の有用な情報の提供を行うことで、より透明性の確保を図ることが求められる。

イ 地方公務員に係る特殊勤務手当等の支給、福利厚生事業への支出及び病気休暇等の制度については、地方自治の本旨に基づき、各地方公共団体においてその住民の意思に基づいて決定されるべきものである。
 これらの事項については、各地方公共団体においてその状況の公表が行われるよう総務省においても取組がなされており、各地方公共団体において、国における制度の見直しや時代の変化を踏まえて必要性及び妥当性を継続的に点検し、住民の理解が得られるものとなるよう見直しを実施するとともに、これらの事項の具体的内容や実施状況等を住民に対して、より一層積極的に開示して公表することが求められる。

会計検査院としては、今後の地方財政やこれを取り巻く状況、具体的には、国の予算と密接な関係を有する地方財政計画の策定の状況や、地方公務員の特殊勤務手当等の状況及びその情報の開示、公表等の動向も踏まえつつ、地方公共団体の決算の状況について引き続き検査していくこととする。