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租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの[38税務署](13)


会計名及び科目
一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入
(項)各税受入金
部局等
38税務署
納税者
74人
徴収過不足額
徴収不足額 231,086,342円(平成21年度~26年度)
徴収過大額
44,717,000円(平成22年度~24年度)

1 租税の概要

源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、申告の手続、納付の手続等が定められている。

納税者は、納付すべき税額を税務署に申告して納付することなどとなっている。国税局等又は税務署は、納税者が申告した内容が適正であるかについて申告審理を行い、必要があると認める場合には調査等を行っている。そして、確定した税額は、税務署が徴収決定を行っている。

平成26年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は67兆8574億余円となっている。このうち源泉所得税は1396億余円、源泉所得税及復興特別所得税(注1)は16兆4744億余円、申告所得税は1169億余円、申告所得税及復興特別所得税は2兆9335億余円、法人税は11兆9532億余円、相続税・贈与税は1兆9775億余円、消費税及地方消費税は25兆1897億余円となっていて、これら各税の合計額は58兆7851億余円となり、全体の86.6%を占めている。

(注1)
復興特別所得税  東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)に基づくものであり、平成25年1月から49年12月までの25年間、源泉所得税及び申告所得税に、その税額の2.1%相当額を上乗せする形で徴収されるもの

2 検査の結果

(1)検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、上記の各税に重点をおいて、合規性等の観点から、課税が法令等に基づき適正に行われているかに着眼して、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき本院に提出された証拠書類等により検査するとともに、全国の12国税局等及び524税務署のうち12国税局等及び67税務署において、申告書等の書類により会計実地検査を行った。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、国税局等及び税務署に調査等を求めて、その調査等の結果の内容を確認するなどの方法により検査した。

(2)徴収過不足の事態

検査の結果、38税務署において、納税者74人から租税を徴収するに当たり、徴収額が、72事項計231,086,342円(21年度から26年度まで)不足していたり、2事項計44,717,000円(22年度から24年度まで)過大になっていたりしていて、不当と認められる。

これを、税目別に示すとのとおりである。

表 税目別の徴収過不足額等

税目 事項数 徴収不足額 事項数 徴収過大額(△)
     
源泉所得税、源泉所得税及復興特別所得税 2 7,425,442
申告所得税、申告所得税及復興特別所得税 19 70,326,600 1 △2,713,600
法人税 30 129,311,800 1 △42,003,400
相続税・贈与税 15 16,734,600
消費税 6 7,287,900
72 231,086,342 2 △44,717,000

なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、全て徴収決定又は支払決定の処置が執られた。

(3)発生原因

このような事態が生じていたのは、前記の38税務署において、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤るなどしているのに、これを見過ごしたり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、課税資料の収集及び活用が的確でなかったりしたため、誤ったままにしていたことなどによると認められる。

(4)税目ごとの態様

この74事項について、源泉所得税、源泉所得税及復興特別所得税(以下、源泉所得税と源泉所得税及復興特別所得税とを合わせて「源泉所得税」という。)、申告所得税、申告所得税及復興特別所得税(以下、申告所得税と申告所得税及復興特別所得税とを合わせて「申告所得税」という。)、法人税、相続税・贈与税及び消費税の別に、その主な態様を示すと次のとおりである。

ア 源泉所得税

源泉所得税に関して徴収不足になっていた事態が2事項あった。これらは、報酬に関する事態である。

報酬の支払者は、支払の際に、所定の方法により計算した源泉所得税を徴収して、徴収の日の属する月の翌月10日(以下、この期限を「法定納期限」という。)までに国に納付しなければならないこととなっている。そして、法定納期限までに納付がない場合には、税務署は支払者に対して納税の告知をしなければならないこととなっている。

この報酬に関して、徴収不足になっていた事態が2事項計7,425,442円あった。その内容は、報酬の支払額について、法定納期限を経過した後も長期間にわたって源泉所得税が納付されていないのに、課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、納税の告知をしていなかったものである。

イ 申告所得税

申告所得税に関して徴収不足又は徴収過大になっていた事態が20事項あった。この内訳は、不動産所得に関する事態が11事項、事業所得に関する事態が6事項及びその他に関する事態が3事項である。

(ア)不動産所得に関する事態

個人が不動産を貸し付けた場合には、その総収入金額から必要経費等を差し引いた金額を不動産所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。そして、個人が有する減価償却資産の償却費として不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、当該資産について取得日等に応じて定められた償却の方法に基づいて計算した金額とすることとなっている。また、個人が貸付けの用に供する不動産を取得する際に支払った仲介手数料は、その取得した不動産の取得価額に含め、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入しないこととなっている。

この不動産所得に関して、徴収不足になっていた事態が10事項計31,384,900円、徴収過大になっていた事態が1事項2,713,600円あった。その主な内容は、減価償却費の計算を誤って必要経費の額を過大に計上していたり、貸付けの用に供した不動産の取得価額に含めなければならない仲介手数料を必要経費に算入していたりしているのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていたものである。

<事例1> 貸付けの用に供した不動産の取得価額に含めなければならない仲介手数料を必要経費に算入していた事態

納税者Aは、平成23年分の申告に当たり、不動産所得の計算において、貸付けの用に供する土地建物を取得する際に支払った仲介手数料12,593,000円を必要経費に算入し、同年分の総収入金額から当該仲介手数料を含めた必要経費等の額を差し引き、不動産所得の金額を41,231,078円と算出していた。

しかし、当該仲介手数料は取得した土地建物の取得価額に含めなければならず、不動産所得の必要経費に算入することはできない。したがって、当該仲介手数料を不動産所得の必要経費から除外するなどして計算すると、納税者Aの不動産所得の金額は55,953,978円となるのに、これを見過ごしたため、申告所得税額5,889,200円が徴収不足になっていた。

(イ)事業所得に関する事態

個人が事業を営む場合には、その総収入金額から必要経費等を差し引いた金額を事業所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。そして、青色申告書の提出について税務署長の承認を受けている事業所得者が、同人の営む事業に専ら従事し生計を一にする親族(以下「青色事業専従者」という。)に対して一定の要件の下に支払った給与については、必要経費に算入することとなっている。

この事業所得に関して、徴収不足になっていた事態が6事項計35,037,400円あった。その主な内容は、青色事業専従者に対する給与の必要経費算入についての規定の適用を誤るなどして必要経費の額を過大に計上しているのに、これを見過ごしたため、事業所得の金額を過小のままとしていたものである。

(ウ)その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、譲渡所得等に関して、徴収不足になっていた事態が3事項計3,904,300円あった。

ウ 法人税

法人税に関して徴収不足又は徴収過大になっていた事態が31事項あった。この内訳は、受取配当等の益金不算入に関する事態が7事項、特定同族会社の留保金に対する特別税率に関する事態が3事項及びその他に関する事態が21事項である。

(ア)受取配当等の益金不算入に関する事態

法人が内国法人から受ける配当等の金額、証券投資信託の収益の分配金のうち内国法人から受ける配当等から成る部分の金額等については、所定の方法により計算した金額を所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととなっている。ただし、証券投資信託のうち特定外貨建等証券投資信託の収益の分配金、不動産投資信託の収益の分配金等については、その全額が益金不算入の対象とならないこととなっている。

この受取配当等の益金不算入に関して、徴収不足になっていた事態が7事項計17,892,100円あった。その主な内容は、受取配当等の益金不算入の対象とならない特定外貨建等証券投資信託の収益の分配金、不動産投資信託の収益の分配金等を受取配当等の益金不算入額としているのに、これを見過ごしたため、所得の金額を過小のままとしていたものである。

<事例2> 受取配当等の益金不算入の対象とならない特定外貨建等証券投資信託の収益の分配金等を受取配当等の益金不算入額としていた事態

B会社は、平成24年1月から25年12月までの2事業年度分の申告に当たり、特定外貨建等証券投資信託の収益の分配金の2分の1相当額及び不動産投資信託の収益の分配金の全額を受取配当等の金額に含めて受取配当等の益金不算入額を46,260,032円と計算していた。

しかし、特定外貨建等証券投資信託の収益の分配金及び不動産投資信託の収益の分配金は、その全額が受取配当等の益金不算入の対象とならないため、2事業年度分の所得の金額が過小となっていたのに、これを見過ごしたため、法人税額24年12月期分6,752,700円及び25年12月期分4,633,100円、計11,385,800円が徴収不足になっていた。

(イ)特定同族会社の留保金に対する特別税率に関する事態

株主等の1人並びにこれと特殊の関係のある個人及び法人が発行済株式総数又は出資総額の100分の50を超える株式数又は出資金額を有しているなどの会社(資本金又は出資金の額が1億円以下であるものを、原則として除く。以下「特定同族会社」という。)については、通常の法人税のほか、利益のうち社内に留保した金額が一定の金額を超える場合には、その超える部分の金額(以下「課税留保金額」という。)に対し特別税率の法人税を課することとなっている。

この特定同族会社の留保金に対する特別税率に関して、徴収不足になっていた事態が2事項計38,872,000円、徴収過大になっていた事態が1事項42,003,400円あった。その主な内容は、特定同族会社の課税留保金額の計算を誤っているのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課していなかったものである。

<事例3> 特定同族会社の課税留保金額の計算を誤り特別税率の法人税を課していなかった事態

C会社は、平成25年1月から12月までの事業年度分の申告に当たり、特定同族会社の課税留保金額の計算において、利益のうち社内に留保した金額がないとした結果、課税留保金額は算出されないとしていた。

しかし、C会社の申告書の課税留保金額に関する資料によれば、利益のうち社内に留保した金額472,556,531円があることから、所定の計算を行うと課税留保金額155,706,000円が算出され特別税率の法人税が課されるのに、これを見過ごしたため、法人税額24,641,200円が徴収不足になっていた。

(ウ)その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、法人税額の特別控除、役員給与の損金不算入等に関して、徴収不足になっていた事態が21事項計72,547,700円あった。

エ 相続税・贈与税

相続税・贈与税に関して徴収不足になっていた事態が15事項あった。この内訳は、相続税については相続税額の加算に関する事態が5事項及びその他に関する事態が4事項、贈与税については有価証券の価額に関する事態が5事項及び直系尊属から住宅取得等資金(注2)の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例(以下「住宅取得等資金の特例」という。)に関する事態が1事項である。

(注2)
住宅取得等資金  自己の居住の用に供する家屋の新築若しくは取得又は自己の居住の用に供している家屋の増改築等の対価に充てるための金銭
(ア)相続税
a 相続税額の加算に関する事態

個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その取得した財産に対して相続税を課することとなっている。そして、財産を取得した者が被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の者である場合には、所定の方法により計算した金額にその100分の20に相当する金額を加算するなどした金額をその者の相続税額とすることとなっている。

この相続税額の加算に関して、徴収不足になっていた事態が5事項計4,637,800円あった。その主な内容は、相続により財産を取得した者が被相続人の弟であり、一親等の血族及び配偶者以外の者であるため、相続税額を加算する必要があるにもかかわらず上記の加算をしていないのに、法令等の適用の検討が十分でなかったため、相続税額を過小のままとしていたものである。

b その他に関する事態

aのほか、有価証券の価額等に関して、徴収不足になっていた事態が4事項計3,662,000円あった。

(イ)贈与税

個人が贈与により財産を取得した場合には、その取得した財産に対して贈与税を課することとなっている。そして、取得した財産の価額は、贈与により取得した時の時価とすることとなっている。また、個人が22年1月1日以降に直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受け、贈与を受けた年の所得税における合計所得金額が2000万円以下であることなどの一定の要件を満たす場合には、住宅取得等資金の特例の規定が適用され、その贈与により取得した住宅取得等資金のうち一定の額までの金額を贈与税の課税価格に算入しないこととなっている。

この贈与税に関して、徴収不足になっていた事態が6事項計8,434,800円あった。その内容は、取引相場のない株式の価額について時価の算定を誤っていたり、住宅取得等資金の贈与を受けた年の所得税における合計所得金額が2000万円を超えているにもかかわらず誤って住宅取得等資金の特例の規定を適用していたりしているのに、これを見過ごしたため、株式の価額を過小のままとしていたり、贈与税の課税価格を過小のままとしていたりしていたものである。

<事例4> 誤って住宅取得等資金の特例の規定を適用していた事態

納税者Dは、平成23年分贈与税の申告に当たり、住宅取得等資金の特例の規定を適用し、納税者Dの母から贈与された住宅取得等資金10,000,000円を課税価格に算入することなく、課税価格を1,225,000円と算出していた。

しかし、納税者Dの同年分所得税の申告書等によれば、合計所得金額が2000万円を超えていることから、住宅取得等資金の特例の規定は適用できない。したがって、課税価格は当該住宅取得等資金を算入した11,225,000円となるのに、これを見過ごしたため、贈与税額3,240,000円が徴収不足になっていた。

オ 消費税

消費税に関して徴収不足になっていた事態が6事項あった。この内訳は、課税仕入れに係る消費税額の控除に関する事態が5事項及びその他に関する事態が1事項である。

(ア)課税仕入れに係る消費税額の控除に関する事態

事業者は、課税期間における課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除した額を消費税として納付することとなっている。

この課税仕入れに係る消費税額の控除に関して、徴収不足になっていた事態が5事項計5,692,600円あった。その主な内容は、課税仕入れにならない給料賃金を課税仕入れに係る支払対価の額に計上しているのに、これを見過ごしたため、課税仕入れに係る消費税額の控除額を過大のままとしていたものである。

(イ)その他に関する事態

(ア)のほか、課税売上高の計上に関して、徴収不足になっていた事態が1事項1,595,300円あった。

これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局別に示すと次のとおりである。

    源泉所得税   申告所得税   法人税   相続税
贈与税
  消費税  
国税局 税務署数 事項数 徴収不足
徴収過大
(△)
事項数 徴収不足
徴収過大
(△)
事項数 徴収不足
徴収過大
(△)
事項数 徴収不足
徴収過大
(△)
事項数 徴収不足
徴収過大
(△)
事項数 徴収不足
徴収過大
(△)
      千円   千円   千円   千円   千円   千円
札幌国税局 3     2 1,720             2 1,720
      1 △2,713             1 △2,713
仙台国税局 4         4 6,032         4 6,032
関東信越国税局 3 1 3,559 2 9,852 1 1,575     1 784 5 15,771
東京国税局 23     15 58,753 19 108,971 13 14,584 5 6,503 52 188,813
          1 △42,003         1 △42,003
金沢国税局 1                   2 2,149         2 2,149
名古屋国税局 2             5 10,152               5 10,152
大阪国税局 1             1 2,580               1 2,580
広島国税局 1 1 3,865                           1 3,865
38 2 7,425   19 70,326   30 129,311   15 16,734   6 7,287   72 231,086
        1 △2,713   1 △42,003               2 △44,717