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  • 保険給付

雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの[厚生労働本省、39公共職業安定所](53)


会計名及び科目
労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業等給付費
部局等
厚生労働本省(支給庁)
39公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方
73人
不当と認める失業等給付金
(1)求職者給付
(2)就職促進給付
失業等給付金の支給額の合計
(1)33,468,395円(平成22年度~26年度)
(2)15,044,544円(平成25、26両年度)
計 48,512,939円
不当と認める支給額
(1)13,228,948円(平成22年度~26年度)
(2)15,044,544円(平成25、26両年度)
計 28,273,492円

1 保険給付の概要

(1)雇用保険

雇用保険は、常時雇用される労働者等を被保険者として、被保険者が失業した場合、被保険者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合等に、その生活及び雇用の安定を図るなどのために失業等給付金の支給を行うほか、雇用安定事業等を行う保険である。

(2)失業等給付金の種類

失業等給付金には、次の求職者給付及び就職促進給付のほか、教育訓練給付及び雇用継続給付の4種がある。

ア 求職者給付には7種の手当等があり、このうち基本手当は、失業等給付金の支給額の大半を占めており、失業者の生活の安定を図る上で基本的な役割を担うもので、受給資格者(注)が失業している日について所定給付日数を限度として支給される。

イ 就職促進給付には6種の手当等があり、このうち再就職手当は、早期の再就職の促進を図るもので、受給資格者が基本手当を受給できる日数を所定給付日数の3分の1以上残して安定した職業に就いた場合に支給される。また、就業促進定着手当は、再就職手当の支給を受けた者が再就職先に6か月以上雇用され、かつ、再就職後の6か月間の賃金日額が離職前の6か月間の賃金日額を下回る場合に支給される。

(注)
受給資格者  被保険者が、離職して労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあり、原則として、離職日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上(倒産等により離職した者(特定受給資格者)及び特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新を希望したにもかかわらず、当該更新がないことなどにより離職した者については、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上)あることの要件を満たしていて、公共職業安定所において基本手当を受給する資格があると決定された者

(3)失業等給付金の支給

上記の手当は、公共職業安定所が次のように支給決定を行い、これに基づいて厚生労働本省が支給することとなっている。

ア 基本手当については、受給資格者から提出された失業認定申告書に記載されている就職又は就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認して、失業の認定を行った上で、支給決定を行う。

イ 再就職手当及び就業促進定着手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書及び就業促進定着手当支給申請書に記載されている雇入年月日や賃金額等について調査し確認した上で、支給決定を行う。

また、偽りその他不正の行為により上記の手当の支給を受け、又は受けようとした者に対しては、その支給を受け、又は受けようとした日以後、当該手当を支給しないこととなっており、公共職業安定所は、既に支給した手当の返還等を命ずることができることとなっている。

2 検査の結果

(1)検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、失業等給付金の支給を受けた者(以下「受給者」という。)に対する失業等給付金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、全国47都道府県労働局(以下、都道府県労働局を「労働局」という。)の436公共職業安定所(平成27年3月末現在)のうち、16労働局の134公共職業安定所において会計実地検査を行い、22年度から27年度までの間における受給者から5,644人を選定して、失業等給付金の支給の適否について検査した。

検査に当たっては、受給者から提出された失業認定申告書等の書類により会計実地検査を行い、適正でないと思われる事態があった場合には、他の年度分も含めて更に当該公共職業安定所に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2)検査の結果

検査の結果、12労働局の39公共職業安定所管内における22年度から26年度までの間の受給者73人については、再就職した後も引き続き失業等給付金の支給を受けるなどしており、これらに対する失業等給付金の支給額48,512,939円のうち28,273,492円は、支給の要件を満たしていなかったもので支給が適正でなく、不当と認められる。

これを給付の種別に示すと次のとおりである。

ア 求職者給付

39公共職業安定所管内の受給者70人に対する基本手当の支給額33,468,395円のうち13,228,948円は、支給の要件を満たしていなかった。

イ 就職促進給付

20公共職業安定所管内の受給者30人に対する再就職手当等の支給額15,044,544円(再就職手当14,501,107円、就業促進定着手当543,437円)の全額は、支給の要件を満たしていなかった。

このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなかったため、失業認定申告書、再就職手当支給申請書及び就業促進定着手当支給申請書の記載内容が事実と相違するなどしていたのに、前記の39公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

京都西陣公共職業安定所は、受給者Aから、平成26年1月に就職したとする失業認定申告書及び再就職手当支給申請書の提出を受けて、これに基づき、基本手当13,526円及び再就職手当1,149,312円の支給決定を行っていた。

しかし、実際には、受給者Aは25年12月に就職していたのに、上記のとおり26年1月に就職したと偽って申告したことから、受給者Aに対する基本手当13,526円及び再就職手当1,149,312円、計1,162,838円の全額が支給の要件を満たしていなかった。

なお、これらの適正でなかった支給額については、本院の指摘により、全て返還の処置が執られた。

これらの適正でなかった支給額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名 公共職業安定所 本院の調査に係る受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業等給付金 左のうち不当と認める失業等給付金
    千円 千円
栃木 鹿沼等3 80 4 1,703 940
  鹿沼等2 56 3 1,283 1,283
  小計     2,987 2,224
石川 金沢等4 242 5 3,429 708
  小松 46 1 446 446
  小計     3,876 1,154
愛知 名古屋東等3 220 5 2,928 623
  名古屋南 34 1 692 692
  小計     3,620 1,315
京都 京都西陣等4 233 7 1,616 419
  京都西陣等2 57 4 2,853 2,853
  小計     4,470 3,273
大阪 阿倍野等4 180 6 2,440 1,961
  布施等3 101 3 1,480 1,480
  小計     3,920 3,441
広島 広島等3 176 4 1,868 1,636
  広島 32 1 670 670
  小計     2,538 2,306
福岡 福岡中央等3 164 3 1,137 1,034
  直方等2 51 2 177 177
  小計     1,314 1,211
佐賀 唐津等3 69 6 2,636 844
  唐津 17 1 331 331
  小計     2,968 1,175
長崎 諫早等2 92 3 890 705
  諫早 37 2 837 837
  小計     1,728 1,543
宮崎 宮崎等2 139 4 2,471 1,406
  都城 22 1 814 814
  小計     3,286 2,221
鹿児島 川内等3 70 6 1,797 739
  鹿屋 26 2 788 788
  小計     2,586 1,527
沖縄 那覇等5 246 17 10,548 2,209
  那覇等4 126 9 4,667 4,667
  小計     15,215 6,876
求職者給付計 39か所 1,911 70 33,468 13,228
就職促進給付計 20か所 605 30 15,044 15,044
合計       48,512 28,273
注(1)
上段は求職者給付に係る分、下段は就職促進給付に係る分である。
注(2)
公共職業安定所数及び不適正受給者数については、両給付間で重複しているものがあり、実数はそれぞれ39か所、73人である。