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雇用保険の特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)の支給が適正でなかったもの[8労働局](55)


会計名及び科目
労働保険特別会計(雇用勘定) (項)高齢者等雇用安定・促進費
部局等
8労働局
支給の相手方
18事業主
特定就職困難者雇用開発助成金の支給額の合計
63,775,954円(平成22年度~25年度)
不当と認める支給額
15,088,752円(平成22年度~25年度)

1 保険給付の概要

(1)特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金は、雇用保険(「雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの」参照)で行う事業のうちの雇用安定事業の一環として、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等に基づき、特定の求職者(60歳以上65歳未満の高年齢者や障害者等の就職が特に困難な者(以下「就職困難者」という。)、65歳以上の離職者等をいう。)の雇用機会の増大及び雇用の安定を図るために、特定の求職者を雇い入れた事業主に対して、当該雇用労働者の賃金の一部に相当する額を助成するもので、特定就職困難者雇用開発助成金(以下「就職困難者助成金」という。)、高年齢者雇用開発特別奨励金及び被災者雇用開発助成金の三つがある。

(2)就職困難者助成金の支給

就職困難者助成金の支給要件は、事業主が就職困難者を公共職業安定所等の紹介により新たに継続して雇用する労働者として雇い入れたことなどとなっている。そして、支給額は、60歳以上65歳未満の高年齢者を雇い入れた中小企業事業主の場合、原則として、新たに雇い入れた労働者1人につき90万円となっており、これを6か月ごとに2回に分け、45万円ずつ支給することとなっている。

就職困難者助成金の支給を受けようとする事業主は、当該助成金に係る支給申請書及び支給要件を満たした労働者に係る出勤簿等の添付書類を都道府県労働局(以下「労働局」という。)に提出することとなっている。そして、労働局は、支給申請書等に記載されている当該労働者の氏名、生年月日、雇用年月日、賃金の支払、事業主の過去の不正受給の有無等を審査した上で、支給決定を行い、これに基づいて就職困難者助成金の支給を行うこととなっている。また、労働局は、偽りその他不正の行為により本来受けることのできない支給を受け、又は受けようとした事業主に対して、支給の取消しを行い、又は不支給とすることなどとなっている。

2 検査の結果

(1)検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、事業主に対する就職困難者助成金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、全国47労働局のうち、13労働局において会計実地検査を行い、平成21年度から25年度までの間に就職困難者助成金の支給を受けた事業主から220事業主を選定して、就職困難者助成金の支給の適否について検査した。

検査に当たっては、事業主から提出された支給申請書等の書類により会計実地検査を行い、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該労働局に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2)検査の結果

検査の結果、8労働局管内における18事業主は、既に雇い入れている者又は事実上雇入れが決定している者に形式的に公共職業安定所の紹介を受けさせて、その紹介により雇い入れたこととして申請するなどしており、これら18事業主に対する就職困難者助成金の支給額63,775,954円のうち15,088,752円は支給の要件を満たしていなかったもので支給が適正でなく、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主が誠実でなかったなどのため、支給申請書等の記載内容が事実と相違していたのに、上記の8労働局において、これに対する調査確認等が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

東京労働局は、事業主Aから、就職困難者Bを平成22年9月に新宿公共職業安定所の紹介を受けて同月に雇い入れたとする支給申請書の提出を受けて、これに基づき、就職困難者助成金900,000円を事業主Aに支給していた。

しかし、実際には、就職困難者Bは同年8月から勤務しており、事業主Aは既に雇い入れている就職困難者Bに形式的に同公共職業安定所の紹介を受けさせていたことから、就職困難者Bは就職困難者助成金の対象とならず、就職困難者助成金900,000円の全額が支給の要件を満たしていなかった。

また、事業主Aは、他の就職困難者2名についても就職困難者助成金計1,800,000円の支給を受けていたが、上記と同様の理由により就職困難者助成金の対象とならず、その全額が支給の要件を満たしていなかった。このため、事業主Aに対して支給された就職困難者3名に係る就職困難者助成金計2,700,000円の全額が支給の要件を満たしていなかった。

なお、これらの適正でなかった支給額については、本院の指摘により、全て返還の処置が執られた。

これらの適正でなかった支給額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名 本院の調査に係る事業主数 不適正受給事業主数 左の事業主に支給した就職困難者助成金 左のうち不当と認める就職困難者助成金
      千円 千円
岩手 16 1 2,100 900
栃木 28 4 12,563 2,448
千葉 20 2 6,033 2,473
東京 28 2 10,200 3,300
福井 7 2 2,318 1,868
愛知 14 1 2,915 904
大阪 15 1 5,275 1,800
広島 24 5 22,369 1,393
152 18 63,775 15,088