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  • 平成26年度|
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  • (4)工事の設計及び施工が適切でなかったもの

穀物貯蔵サイロの設計及び施工が適切でなかったもの[東北農政局](329)


(1件 不当と認める国庫補助金 9,103,671円)

  部局等 補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(329) 東北農政局 秋田県 鹿角市 農業・食品産業強化対策整備交付金 25 98,710 47,005 19,117 9,103
株式会社ファー夢かづの
(事業主体)

この交付金事業は、株式会社ファー夢かづの(以下「会社」という。)が、鹿角市において、地域の特産米の品質及び収量の安定化と低コスト化に対する取組としてコルゲート鋼板造の穀物貯蔵サイロ(延べ床面積53.1m2。以下「サイロ」という。)等を設置するなどしたものである。

サイロは、建築基準法(昭和25年法律第201号)、「容器構造設計指針・同解説」(社団法人日本建築学会編集。以下「指針」という。)等によれば、地震その他の振動等に対して構造計算上安全なものでなければならないとされている。そして、会社は、指針に基づきサイロの有効重量等により算定した地震力を考慮して、サイロと鉄筋コンクリート造の基礎を有効長さ57mmのすみ肉溶接(注1)により作製した接続金具(以下「アンカー金具」という。)を用いて22か所で接合すれば、地震時におけるアンカー金具の溶接部1か所当たりのせん断力(注2)が許容せん断力(注2)を下回ることなどから構造計算上安全であるとして、これにより施工することとしていた。

しかし、会社は、上記の地震力の算定に当たり、指針によればサイロの有効重量はサイロの満載重量の80%を下限とすることとされているのに、誤ってサイロの満載重量の50%とするなどしていて、地震力を過小に算定していた。

また、施工業者は、施工に当たり、アンカー金具による接合を誤って19か所としていたり、19か所全てのアンカー金具のすみ肉溶接の有効長さを前記の57mmを下回る27mmから34mmとしていたりなどしていた。

そこで、地震力を適正に算定した上で、実際の施工状況に基づき改めて構造計算を行ったところ、アンカー金具の溶接部1か所当たりの地震時におけるせん断力は36.7kN、許容せん断力は13.6kNとなり、せん断力が許容せん断力を大幅に上回っているなどしていて、構造計算上安全であるとされる範囲に収まっていなかった。

したがって、サイロ(工事費相当額計19,117,710円)は、設計及び施工が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額9,103,671円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、会社においてサイロの設計についての理解が十分でなかったり、施工についての監督及び検査が十分でなかったりなどしていたこと、鹿角市において会社に対する指導が十分でなかったこと、秋田県において同市に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
すみ肉溶接  ほぼ直交する二つの部材の面をつなぐ三角形状の断面を持つ溶接
(注2)
せん断力・許容せん断力  「せん断力」とは、外力が材に作用して、これを切断しようとする力の大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容せん断力」という。

(参考図)

サイロの概念図

サイロの概念図の画像

アンカー金具の概念図

アンカー金具の概念図の画像