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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 農林水産省|
  • 平成25年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(8)基幹的な農業水利施設のストックマネジメントについて


平成25年度決算検査報告参照

1 本院が要求した改善の処置

農林水産省は、基幹的な農業水利施設の劣化の状況に応じた補修等を計画的に行うことにより、施設の長寿命化及びライフサイクルコストの低減を図る取組(以下「ストックマネジメント」という。)を推進している。しかし、土地改良調査管理事務所等及び府県において、機能診断及び機能保全計画の対象施設を選定する際の優先度に係る客観的な選定基準が設定されていなかったり、維持管理の範囲を超える規模の補修等の対策工事が、施設の劣化予測を踏まえて作成された複数の実施時期及び工法の組合せ(以下「シナリオ」という。)のうち機能保全コストを比較するなどして選定された最適なシナリオを踏まえて、適時に実施されていなかったり、土地改良区等の施設管理者による施設監視が適切に実施されていないことから施設の劣化状況が継続的に把握されていなかったりしている事態、また、府県において、優先度が高いと考えられる施設が機能診断等の対象施設として選定されていなかったり、ストックマネジメントに関する情報がデータベースにおいて一元的に蓄積されていなかったり、機能診断の対象施設について土地改良施設管理円滑化事業(以下「円滑化事業」という。)の定期診断が重複して実施されていたりなどしている事態が見受けられた。

したがって、農林水産省において、施設監視の具体的な方法について「農業水利施設の機能保全の手引き」(以下「手引」という。)等で明確にし、また、機能診断の対象施設について円滑化事業における定期診断を重ねて行わないよう見直しを行った上で、土地改良調査管理事務所等に対して、機能診断等の対象施設を選定する際の客観的な選定基準を設定するなどして優先度の高い施設を選定すること、土地改良区における自己負担金の準備等に関する優良事例集の配布や施設の劣化状況の継続的な把握をするなどして、最適なシナリオを踏まえて対策工事を適時に実施するための取組を促進すること及び土地改良区等に、ストックマネジメントの重要性について周知し、施設監視を適切に行うとともに自己負担金の準備を適時に行うよう助言することを周知徹底したり、都道府県に対して、上記の内容に加えて、実施方針において優先度の高い施設を選定すること及びストックマネジメントに関する情報をデータベースに一元的に蓄積することの重要性について周知徹底したり、対策工事の実施状況及び関連情報のデータベースへの蓄積状況について定期的に把握したりするよう、農林水産大臣に対して平成26年9月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。

2 当局が講じた処置

本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

ア 27年5月に手引を改定して、施設監視の具体的な方法について明確にした。また、26年8月に地方農政局等に対して事務連絡を発して、機能診断の対象施設について、円滑化事業において同じ内容の定期診断を重ねて行わないよう調整を図る見直しを行った。

イ 27年6月までに、土地改良調査管理事務所等に対して、改定した手引等により機能診断及び機能保全計画の対象施設を選定する際の客観的な選定基準を定めて優先度の高い施設を選定すること、同年5月に作成した優良事例集を土地改良区に対して配布したり、手引に基づき施設の劣化状況を継続的に把握したりなどして、最適なシナリオを踏まえて対策工事を適時に実施するための取組を促進すること及び土地改良区等に、ストックマネジメントの重要性について周知したり、手引に基づく施設監視を適切に行うとともに優良事例集を参考にして自己負担金の準備を適時に行うよう助言したりすることを、会議等において周知徹底した。

ウ 26年11月に都道府県に対して事務連絡を発して、イの処置に加えて、実施方針において優先度の高い施設を選定すること及びストックマネジメントに関する情報をデータベースに一元的に蓄積することの重要性について周知徹底した。

エ 26年8月に地方農政局等に対して事務連絡を発して、都道府県等から定期的に報告を受けることにより、対策工事の実施状況及び関連情報のデータベースへの蓄積状況を把握することとした。