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(7)一般財団法人民間都市開発推進機構が実施する住民参加型まちづくりファンド支援事業について、資金の受領者に資金の使用見込みの定期的な見直しなどを行わせることを事業実施要領等に定めることなどにより、資金の有効な活用が図られるよう改善の処置を要求したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)国土交通本省 (項)都市再生・地域再生整備事業費(平成19年度以前は、(項)都市環境整備事業費)
(項)港湾事業費
部局等
国土交通本省
一般財団法人民間都市開発推進機構(平成25年3月31日以前は財団法人民間都市開発推進機構)
補助の根拠
予算補助
住民参加型まちづくりファンド支援事業の概要
一般財団法人民間都市開発推進機構が、国土交通省からの補助を受け、住民等による都市開発事業等への助成を行うまちづくりファンドに対して資金を拠出して支援を行うもの
検査の対象とした97ファンドに拠出した民都資金の額
29億4560万円(平成17年度~26年度)
上記に対する国庫補助金交付額
29億4560万円
資金が使用見込みの見直しなどが行われず長期にわたり使用されていなかったまちづくりファンド数及び民都資金の額(1)
11ファンド 1億1876万余円
資金を使用して整備された施設等が継続的に維持管理されずに撤去等されていたまちづくりファンド数及び民都資金相当額(2)
10ファンド 2097万余円
(1)及び(2)の純計
20ファンド 1億3973万余円
上記に対する国庫補助金相当額
1億3973万円

【改善の処置を要求したものの全文】

住民参加型まちづくりファンド支援事業の実施について

(平成27年10月29日付け 国土交通大臣
一般財団法人民間都市開発推進機構理事長宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 住民参加型まちづくりファンド支援事業の概要等

(1)事業の概要

国土交通省は、都市再生推進事業制度要綱(平成12年建設省経宅発第37―2号、建設省都計発第35―2号、建設省住街発第23号建設省建設経済局長、都市局長、住宅局長通知)等に基づき、地域の資金を地縁により調達し、これを景観形成・観光振興等のまちづくりへ誘導するなどのために、平成17年度から、一般財団法人民間都市開発推進機構(25年3月31日以前は財団法人民間都市開発推進機構。以下「民都機構」という。)が行う住民参加型まちづくりファンド支援事業(以下「支援事業」という。)に対して、補助金を交付している。

支援事業は、公益信託(注1)、公益法人、非営利法人、地方公共団体が設置する基金等(以下、これらを合わせて「まちづくりファンド」という。)に対して地方公共団体、住民、企業等が資金の拠出等を行う場合、上記の補助金の交付を受けた民都機構がまちづくりファンドに対して資金(以下、この資金を「民都資金」といい、拠出後の民都資金には運用益を含む。)を拠出して支援を行うものである(以下、民都資金の拠出を受けてまちづくりファンドを運営する者を「民都資金受領者」という。)。

民都資金は、まちづくりファンドから、住民等が実施する公共公益施設整備等の都市開発事業等への助成等に充てられることとなっている(以下、助成により住民等が実施する都市開発事業等を「まちづくり事業」という。図参照)。

(注1)
公益信託  受託者である信託銀行等が、個人や法人との信託契約等に基づき、一定の公益目的に従い財産の管理、処分等をすべきものとすることであり、信託された財産は、受託者に属することとなっている。

図 事業の概要

事業の概要の画像

(2)民都資金の拠出

民都機構は、住民参加型まちづくりファンド支援事業実施要領(平成18年要領第7号)等(以下「要領等」という。)を定め支援事業を実施している。

要領等によれば、民都資金の拠出を受けようとする者は資金拠出申請書を民都機構に提出し、民都機構はこれを住民参加型まちづくりファンド選定委員会へ付議し、当該まちづくりファンドが行う助成がまちの魅力づくりなどに寄与するものであるかなどについての審査を経て、支援の対象とするまちづくりファンドを選定することとされている。民都機構は、民都資金を拠出するまちづくりファンドを選定した場合、民都資金受領者との間で民都資金に関する契約を締結し、この契約に基づき、民都資金を拠出することとされている。

そして、民都機構は、17年度から26年度までの間に、国土交通省から計35億2960万円の補助金の交付を受け、民都資金として同額を計116ファンドに対し拠出している。

(3)助成の概要

要領等によれば、まちづくり事業の対象は、景観形成、まちの魅力向上、観光振興等の良好なまちづくりに資する施設等の新設、改修、保全等とされている(以下、まちづくり事業で整備された施設等を「助成施設等」という。)。そして、民都資金受領者は、まちづくり事業の選定に当たり、審査委員会を設置して、その審査を経るものとされ、公益性等の観点からまちの魅力づくりや活性化等に寄与することができるものを選定することが望ましいとされている。

(4)基金基準の概要

「補助金等の交付により造成した基金等に関する基準」(平成18年8月閣議決定。以下「基金基準」という。)において、補助金等の交付により造成した基金を保有する法人が当該基金により実施している事業に関し、補助金等を交付した府省(以下「所管府省」という。)が補助金交付要綱等に基づく指導監督を行う場合の基準が定められている。そして、基金基準によれば、上記の基金を保有する法人は、少なくとも5年に1回は定期的に基金の見直しを行い、直近3年以上事業実績がないなどの使用見込みの低い基金については、基金の財源となっている国からの補助金等の国庫への返納等、その基金の取扱いを検討することなどとされている。

また、国以外の者を経由して間接的に国の補助金等の交付を受けて設置造成されている基金(以下「間接補助基金」という。)についても同様の見直しが行われるよう、所管府省は補助金等を経由させた法人に対して要請を行うこととされている。

そして、民都資金の拠出を受けているまちづくりファンドは、基金基準上の間接補助基金には該当しないものであるが、民都資金が国の補助金を財源とした資金であることから、基金基準の趣旨を踏まえて間接補助基金と同様に取り扱われる必要がある。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、有効性等の観点から、まちづくりファンドにおいて、民都資金は使用見込みの見直しが行われるなどして適切に使用されているか、助成施設等は整備後に有効に利活用されているかなどに着眼して、民都機構が17年度から26年度までの間に民都資金を拠出した116ファンドのうち、97ファンドに拠出した民都資金29億4560万円を対象として、国土交通省、民都機構及び88民都資金受領者(注2)において、機構拠出金活用状況報告書、収支状況報告書等の関係書類及び現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、公益信託の受託者である7民都資金受領者(注3)において、上記と同様の方法により実地に調査を行った。

(注2)
88民都資金受領者  山形、埼玉、香川各県、山形、土浦、筑西、かすみがうら、渋川、富岡、川口、行田、本庄、銚子、四街道、海老名、魚津、氷見、七尾、加賀、茅野、多治見、恵那、土岐、豊橋、蒲郡、常滑、高浜、長浜、宮津、南丹、岸和田、枚方、東大阪、神戸、益田、高梁、倉敷、玉野、福山、東広島、松山、福岡、大牟田、八女、大野城、うきは、佐賀、唐津、平戸、大分、宮崎、日向、浦添各市、虻田郡喜茂別、積丹郡積丹、木曽郡木曽、可児郡御嵩、丹羽郡大口、与謝郡伊根、伊都郡高野、安芸郡熊野、世羅郡世羅、神石郡神石高原、綾歌郡宇多津、遠賀郡遠賀、北松浦郡小値賀、国頭郡本部各町、一般社団法人尾道観光協会、一般財団法人開陽丸青少年センター、一般財団法人置賜地域地場産業振興センター、一般財団法人柏市みどりの基金、一般財団法人岐阜市にぎわいまち公社、公益社団法人高山青年会議所、公益財団法人札幌市公園緑化協会、公益財団法人秋田市総合振興公社、公益財団法人東京都公園協会、公益財団法人立川市地域文化振興財団、公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンター、公益財団法人名古屋市みどりの協会、公益財団法人名古屋まちづくり公社、公益財団法人淡海文化振興財団、公益財団法人京都市景観・まちづくりセンター、公益財団法人山口きらめき財団、特定非営利活動法人つるおかランド・バンク、特定非営利活動法人大和社中、特定非営利活動法人住民の力、特定非営利活動法人泊瀬門前町再興フォーラム、特定非営利活動法人ASUKA自然塾
(注3)
7民都資金受領者  株式会社りそな銀行、株式会社千葉銀行、株式会社広島銀行、株式会社四国銀行、三菱UFJ信託銀行株式会社、三井住友信託銀行株式会社、株式会社しんきん信託銀行

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)民都資金が使用見込みの見直しなどが行われず長期にわたり使用されていない事態

前記97ファンドのうち、26年度末において民都資金の残高があるまちづくりファンドは57ファンドとなっており、これらのまちづくりファンドに拠出された民都資金は計17億8800万円、残高は表1のとおり、計9億4100万余円となっている。そして、57ファンドのうち30ファンドは、民都資金が拠出されてから5年以上経過しているが、民都資金の使用見込みの見直しなどを行っていなかった。

このうち、8ファンドにおいては、直近3年以上にわたり、まちづくり事業への助成が全く行われておらず、拠出された民都資金計2億6600万円のうち、表1のとおり、計8635万余円が使用されていなかった。

上記の8ファンドは、基金基準における5年に1回の定期的な基金の見直しが行われたとした場合、直近3年以上助成が行われていないことから、使用見込みの低い基金に該当すると認められる。

また、前記57ファンドのうち3ファンドについては、民都資金が拠出されてから基金基準で定期的な基金の見直しが必要とされる5年を経過していないものの、表1のとおり、拠出された民都資金計3240万余円が3年以上まちづくり事業への助成に全く使用されていなかった。

表1 まちづくりファンドの民都資金の残高

区分 まちづくりファンド数 民都資金の残高
平成26年度末に民都資金の残高があるまちづくりファンド 57ファンド 9億4100万余円
  うち民都資金が拠出されてから5年以上経過しているまちづくりファンド 30ファンド 3億7699万余円
  うち3年以上にわたり民都資金が使用されていないまちづくりファンド(A)
(まちづくりファンドの名称)
8ファンド 8635万余円
(銚子市協働のまちづくり推進基金)
(茅野市パートナーシップのまちづくり基金)
(大口町ふるさとづくり基金)
(宮津市まちづくり基金)
(東大阪市ふるさと創生基金)
(五條市新町地区まちづくり拠点ファンド)
(小値賀町振興基金)
(公益信託那覇市NPO活動支援基金)
  うち民都資金が拠出されてから5年経過していないが、3年以上使用されていないまちづくりファンド(B)
(まちづくりファンドの名称)
3ファンド 3240万余円
(水の郷きもべつまちづくり振興基金)
(大野城市まちづくりパートナー基金)
(本部町ちゅらまちづくり応援基金)
(A)と(B)の計 11ファンド 1億1876万余円

国土交通省は、民都機構に対し、まちづくりファンドに拠出した民都資金が長期にわたり使用されないことがないよう、積極的な助成の推進について要請を行っていたが、まちづくりファンドにおける民都資金の活用状況の把握が十分でなく、基金基準の趣旨を踏まえて民都資金の使用見込みの見直しなどを行うことについては、明確に要請を行っていなかった。そして、民都機構は、民都資金の使用見込みの定期的な見直しなどについて要領等に定めていなかった。

<事例1>

長崎県北松浦郡小値賀町は、平成20年度に、街並み景観保全と空き古民家建造物の再生10件(民都資金使用見込額4500万円)、国際交流事業の促進5件(同300万円)及び新たな物産開発の拠点整備1件(同200万円)に対して助成を行うとして、同町が設置した小値賀町振興基金に民都資金5000万円の拠出を受けている。しかし、これらの事業のうち、22年度に、空き古民家建造物の再生2件(事業費計3802万余円)に対して助成を行い、民都資金2000万円を使用したものの、その他14件については、他の補助事業等を活用したなどのため、まちづくりファンドからの助成が全く行われず、民都資金は、直近4年以上にわたり全く使用されることなく、26年度末の残高は3010万余円となっていた。そして、同基金は、民都資金の拠出を受けてから5年以上経過しているが、同町は、民都資金の使用見込みの見直しを行っていなかった。

(2)助成施設等が継続的に維持管理されずに撤去等されている事態

26年度までに助成が行われた92ファンドの1,039事業における助成施設等の利活用の状況についてみたところ、表2のとおり、10ファンドの10事業(事業費計3028万余円)において、助成施設等が継続的に維持管理されずに撤去されていたり、遊休していたりなどしていて、有効に利活用されていなかった。そして、これらの助成施設等に係る民都資金相当額は計2097万余円となっていた。これらのまちづくり事業の中には、民都資金受領者において、まちづくり事業の選定における審査基準の中に、助成施設等を継続的に利活用できるかなどの観点を明確に示しておらず、まちづくり事業の選定の審査が継続性の観点から十分に行われていないものなどが見受けられた。

表2 助成施設等が継続的に維持管理されずに撤去等されているまちづくりファンド

まちづくりファンド数
(まちづくりファンドの名称)
助成施設等が撤去されていたり遊休していたりなどするまちづくり事業 左のまちづくり事業の事業費  
左のうち撤去等された助成施設等に係る民都資金相当額
10ファンド 10事業 3028万余円 2097万余円
(ぎふ景観まちづくりファンド)
(高山JCまちづくり基金)
(財団法人名古屋市みどりの協会)
(財団法人名古屋都市センター)
(岸和田市歴史的町並み保全基金)
(東広島市地域振興基金)
(公益信託こうちNPO地域社会づくりファンド)
(福岡市NPO活動支援基金)
(佐賀市ふるさとづくり基金)
(公益信託那覇市NPO活動支援基金)

<事例2>

公益社団法人高山青年会議所は、平成20年度に、同青年会議所が設置した高山JCまちづくり基金に民都資金500万円の拠出を受け、24年度に、育児の情報交換ができるなどの場を提供する市民が運営する団体Aに対し、Aが提供している施設の老朽化に伴う改装等に要する費用328万余円の一部の助成を行うとして、民都資金160万円を使用している。そして、Aは、同施設の運営が困難となり、27年2月をもって同施設を閉鎖していた。

同青年会議所が設置した審査会では、まちづくり事業を選定する際の審査において、不特定多数の市民の参加が可能な事業であるかなどの観点からは審査されていたが、利用者の需要やAの運営体制は同施設を継続的に利活用できるものかなどの観点からは十分に審査されていなかった。

(改善を必要とする事態)

まちづくりファンドにおいて、民都資金が使用見込みの見直しなどが行われず長期にわたり使用されていなかったり、助成施設等が継続的に維持管理されずに撤去等され有効に利活用されていなかったりなどしている事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、民都資金受領者において、助成の適切な実施についての理解が十分でないことにもよるが、主として国土交通省及び民都機構において次のことなどによると認められる。

  • ア 国土交通省において、民都機構に対して民都資金の使用見込みの定期的な見直しなどを行うことについて明確に要請を行っていないこと
  • イ 民都機構において、民都資金の使用見込みの見直し及び使用見込みの低い民都資金の取扱いについて要領等に明確に定めていないこと並びにまちづくり事業の選定における助成施設等の継続性の審査等に関する規定を民都資金受領者が整備することについて要領等に定めていないこと

3 本院が要求する改善の処置

まちづくりファンドを活用して住民等による自発的なまちづくり事業を推進し、住民参加型のまちづくりの促進を図るために、引き続き、国土交通省は支援事業に対して補助金を交付して、民都機構は支援事業を実施することが見込まれる。

ついては、国土交通省及び民都機構において、まちづくりファンドの民都資金の有効な活用が図られるよう、次のとおり改善の処置を要求する。

  • ア 国土交通省において、民都機構に対して、民都資金の使用見込みの定期的な見直しなどを行うことについて明確に要請を行うこと
  • イ 民都機構において、民都資金の使用見込みの定期的な見直し、使用見込みが低い民都資金の民都機構への返還等について要領等に明確に定め、民都資金受領者に周知するとともに、まちづくり事業の選定における助成施設等の継続性の審査等に関する規定を民都資金受領者が整備することについて要領等に定め、民都資金受領者に周知すること