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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(3)船舶工事の予定価格の積算に当たり、基準労務費単価以外の単価を採用する際の基準等を明確にし、採用する際には、事前に工事内容等を十分確認するなどして、労務費等の算定を適切なものとするよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)海上保安庁 (項)船舶交通安全及海上治安対策費
部局等
海上保安庁本庁等
契約の概要
船舶の給気等に係る改良改修工事等を実施するもの
契約の相手方
三井造船株式会社
契約
平成24年8月~25年9月 随意契約
基準労務費単価を採用しなかった工事の契約件数及び契約金額
3件 8億4115万余円(平成24、25両年度)
上記に係る労務費等の算定額
2億7970万余円
低減できた労務費等の算定額
3240万円(平成24、25両年度)

1 船舶工事等の概要

(1)船舶工事の概要

海上保安庁は、保有する巡視船艇等の船舶(以下「船舶」という。)の性能及び機能の維持並びに向上を図り、もって船舶による海上保安業務の適切な遂行に資することを目的として、船舶安全法(昭和8年法律第11号)、海上保安庁船舶整備規則(平成16年海上保安庁訓令第11号)等に基づき、船舶の整備を適正かつ効率的に行うこととしている。

海上保安庁は、保有する船舶のうち9隻において、定期整備と同時に給気等に係る改良改修を行う船舶工事(以下「改修工事」という。)を実施している。このうち、3隻の改修工事の内容については、建造時における船体の改修に係るものであることから、3隻が所属する管区海上保安本部(以下「所属管区本部」という。)は、平成24、25両年度に、改修工事を3隻の建造会社である三井造船株式会社(以下「造船会社」という。)と随意契約を締結している。なお、残りの6隻の改修工事については、船体の改修に係るものではないことから、見積合わせを行った上で当該6隻を建造した会社以外の会社と随意契約を締結している。

(2)船舶の整備に係る予定価格の積算について

海上保安庁本庁は、海上保安庁船舶建造修繕等積算基準(平成25年保総政第363号)及び海上保安庁船舶建造修繕等積算基準算出要領(平成25年保装船第1341号)(25年3月以前は船舶修繕積算基準(昭和52年保経経第246号)。以下、これらを「積算基準」という。)等に基づき、労務費等単価に工数を乗ずるなどして、船舶の建造及び整備に係る予定価格の積算を行うこととしている。

このうち、労務費等単価については、海上保安庁本庁は、海上保安庁予定価格作成要領(昭和42年保経契第66号)により定めることとしており、同要領に基づき、海上保安庁総務部長が、毎年度「製造業等に係る労務費等単価及び諸経費率について」を定めて、各管区海上保安本部に労務費等単価(以下「基準労務費単価」という。)を通知している。また、工数については、積算基準において、標準的な工事内容の項目等ごとに工数基準が定められている。

そして、積算基準では、工数基準が定められていない工事内容の項目等に係る工数について、類似の整備例又は参考見積りなどの内容を検討して算定するものとし、また、その計算に当たっては船舶の整備費用等の市況を勘案することなどとされている。これに対して、労務費等単価については、基準労務費単価を採用しない場合の基準や手続等は定められていない。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

海上保安庁は船舶を多数保有しているが、船舶の運用の多様化に伴い船舶工事の内容が複雑になっており、3隻の改修工事のように船体の改修に係る船舶工事も行われるようになっている。

そこで、本院は、経済性等の観点から、予定価格の積算が適切なものとなっているかなどに着眼して、所属管区本部が24、25両年度に締結した3隻の改修工事に係る契約3件、契約金額3億0765万円、2億7300万円、2億6050万余円、計8億4115万余円を対象として、海上保安庁本庁及び所属管区本部において契約書、仕様書、予定価格調書等の関係書類を確認するとともに、造船会社において工事内容等を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

所属管区本部は、3隻の改修工事の予定価格の積算に当たり、改修工事の内容が、船体の改修に係る設計及び船体、機関、電気各工種の工事であり、建造時の知見等の技術を必要とすること、積算基準に工数基準が定められていないことなどから、改修工事の内容の全てにおいて造船会社のみが施行可能であるとして、基準労務費単価を採用せず、造船会社から徴した参考見積書に記載された労務費等単価(以下「基準外労務費単価」という。)を採用した。そして、所属管区本部は、工数に基準外労務費単価を乗ずるなどして予定価格を積算しており、3隻の改修工事に係る労務費等についてはそれぞれ1億1322万余円、8608万余円、8039万余円、計2億7970万余円と算定し、24年8月、25年6月及び9月に造船会社と契約していた。

そこで、積算に採用した基準外労務費単価は、基準労務費単価よりも割高なものとなっていたため、3隻の改修工事の内容等を確認したところ、実際には、上記と異なり、船体の改修に係る設計は、造船会社が施行していたが、船体、機関、電気各工種の工事は、造船会社以外の者に施行させていた。このため、所属管区本部は、造船会社以外の者が施行していた工事については、建造時の知見等の技術を必要としない工事であったことから、定期整備と同様に、基準外労務費単価を採用するのではなく船舶の建造及び整備で採用している基準労務費単価により労務費等を算定すべきであったと認められた。

したがって、3隻の改修工事の予定価格の積算に当たり、その工事内容等を十分確認することなく、基準外労務費単価を採用して算定していた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(低減できた労務費等の算定額)

上記により、3隻の改修工事の予定価格について、実際に造船会社において施行していた船体の改修に係る設計は基準外労務費単価のままとし、造船会社以外の者が施行していた工事内容は基準労務費単価を用いて労務費等を修正計算すると、それぞれ1億0305万余円、7461万余円、6963万余円、計2億4730万余円となり、前記の算定額2億7970万余円に比べて計約3240万円低減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、海上保安庁において、船舶工事の予定価格の積算に当たり、基準外労務費単価を採用する際の基準や手続等が明確に定められていなかったこと、工事内容等の確認が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、海上保安庁本庁は、27年9月に積算基準を改正し、各管区海上保安本部等に対して通知を発して、基準労務費単価以外の単価を採用する際の基準、手続及び確認すべき事項を明確にするとともに、各管区海上保安本部等は、船舶工事の予定価格の積算に当たり、基準労務費単価以外の単価を採用する際には、海上保安庁本庁と事前に協議を行い工事内容等を十分確認して、労務費等の算定を適切なものとする処置を講じた。