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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第11 環境省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(2)国からの委託を受けて実施する国民公園の駐車場業務により委託先において生じた積立金について、適切な規模を超える分は国庫に納付させたり、有効に活用させたりできるよう意見を表示し並びに委託先における経理を適切なものとするよう適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求め、並びに他の契約と重複する業務を契約の対象から除外するよう是正改善の処置を求めたもの


部局等
環境本省
契約名
国民公園内駐車場等整理清掃業務委託
契約の概要
国民公園内に設置された駐車場における利用車両の整理、場内の清掃等の業務を委託するもの
契約の相手方
一般財団法人国民公園協会(平成16年8月1日から24年7月31日までは財団法人国民公園協会、16年7月31日以前は財団法人国民公園保存協会)
契約
昭和62年4月 随意契約
積立金として計上されている額(1)
7065万円(平成26年度末)
区分経理が適切に行われていなかった額(2)
5618万円(平成17、18両年度、21年度〜26年度)
重複して契約の対象とされている業務に係る収益及び費用の計上額(3)
収益 6788万円(平成26年度)
費用 7886万円(平成26年度)
(1)から(3)までの計
2億7357万円

【意見を表示し並びに適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたものの全文】

国からの委託を受けて実施する国民公園の駐車場業務により委託先において生じた積立金の取扱いなどについて

(平成27年10月29日付け 環境大臣宛て)

標記について、下記のとおり、会計検査院法第36条の規定により意見を表示し、並びに同法第34条の規定により是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。

1 契約等の概要

(1)駐車場業務委託契約の概要

貴省は、「旧皇室苑(えん)地の運営に関する件」(昭和22年12月閣議決定)、環境省設置法(平成11年法律第101号)等に基づき、旧皇室苑地のうち、国が直接管理して広く一般国民に開放されることとなった皇居外苑、京都御苑及び新宿御苑(以下、これらを合わせて「国民公園」という。)を管理している。そして、貴省は、国民公園内に設置された駐車場において利用車両の整理、場内の清掃等の業務(以下「駐車場業務」という。)を実施して、来園者の利便性の向上に資するなどのために、昭和62年に財団法人国民公園保存協会(平成24年8月1日以降は一般財団法人国民公園協会。以下「協会」という。)との間で、国民公園内駐車場等整理清掃業務委託契約(以下「駐車場業務委託契約」という。)を締結している。

駐車場業務委託契約の有効期間は、昭和62年4月1日から63年3月31日までとなっているが、貴省又は協会から契約解除の意思表示がない限り、期間満了後1年間順次継続することとなっていて、これまでにどちらからも契約解除の意思表示がないことから現在まで継続している。また、駐車場業務を実施するために必要な経費については、協会が駐車場等の利用者から徴収する整理清掃協力費による収入をもって支弁することになっているため、貴省は協会に対して委託費を支払っていない。

(2)駐車場業務に係る経理等

協会の駐車場業務に係る経理等については、駐車場業務委託契約において、次のとおり定められている。

ア 協会は、駐車場等整理清掃特別会計(以下「駐車場特別会計」という。)を設置し、整理清掃協力費による収入及び駐車場業務に要する支出を他の経理と明確に区別して経理(以下「区分経理」という。)する。

イ 協会は、毎会計年度、駐車場特別会計の予算を作成し、あらかじめ貴省の承認を得る。

ウ 協会は、貴省の承認を得て定めた会計経理基準によって駐車場特別会計の経理を行う。

エ 協会は、駐車場特別会計において毎会計年度の決算上生じた剰余金を積立金として積み立てる。また、決算上損失が生じた場合はその損失を積立金から減額し、なお不足があるときは繰越欠損金として処理する。

オ 協会は、毎会計年度、駐車場特別会計の決算を行い、決算書を貴省に提出する。

カ 協会は、駐車場業務委託契約が解除されたときは、駐車場特別会計を精算し、剰余の資産は貴省に引き渡す。

(3)第1期市場化テスト事業及び第2期市場化テスト事業の実施

貴省は、駐車場業務委託契約以外に、国民公園内の駐車場等以外の区域に係る清掃、植生管理等の業務(以下「管理運営業務」という。)について、平成18年度以前は一括して、19年度以降は皇居外苑、京都御苑及び新宿御苑のそれぞれについて企画競争を実施した上で、随意契約により協会に委託しており、管理運営業務を実施するために必要な経費として協会に対して委託費を支払っている。また、貴省は、国民公園内に設置された売店、レストラン等の施設について、17年度以前は協会に対し、18年度以降は、施設ごとの公募により選定した協会等の事業者に対し、国有財産法(昭和23年法律第73号)に基づく使用許可を行って、各施設の運営に係る業務(以下「収益施設業務」という。)を実施させている。

ただし、これらの業務のうち、新宿御苑の管理運営業務については、「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」(平成18年法律第51号)に基づく公共サービス改革基本方針(平成20年12月閣議決定)において、22年7月から25年6月までの間、民間競争入札の対象となる公共サービス(以下「第1期市場化テスト事業」という。)として選定されたことから、貴省は、22年6月に、総合評価落札方式による一般競争入札により契約の相手方を選定して、国民公園協会・昭和造園グループと委託契約を締結している。

その後、公共サービス改革基本方針(平成24年7月閣議決定)において、25年7月から30年6月までの間、民間競争入札の対象となる公共サービス(以下「第2期市場化テスト事業」という。)として、新宿御苑の管理運営業務に加えて新宿御苑の駐車場業務や収益施設業務等が選定されたことから、貴省は、25年6月に、これらの業務を一括して第1期市場化テスト事業と同様の方式により契約の相手方を選定して、国民公園協会・昭和造園グループと委託契約を締結している。

そして、第2期市場化テスト事業に係る委託契約においても、委託先が駐車場業務に関して区分経理を行うこと、毎会計年度の決算上生じた剰余金を積立金として積み立てることなどとなっている。また、国民公園協会・昭和造園グループにおいては、代表者である協会が経理を行うこととなっている。

これらの各業務に係る契約形態等をまとめると、表1のとおりである。

表1 各業務に係る契約形態等

公園名等
契約等期間
皇居外苑、京都御苑 新宿御苑
駐車場業務 管理運営業務 収益施設業務 駐車場業務 管理運営業務 収益施設業務
〜平成22年6月末 駐車場業務
委託契約
委託契約 使用許可 駐車場業務
委託契約
委託契約 使用許可
22年7月〜25年6月末 第1期市場化
テスト事業に
係る委託契約
25年7月〜 第2期市場化テスト事業に係る委託契約

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

貴省は、国民公園の管理に当たり、駐車場業務、管理運営業務及び収益施設業務を協会に委託するなどしていて、このうち、駐車場業務については、昭和62年の協会との契約締結後、長期間が経過している。また、各業務はそれぞれ異なる契約形態等により実施されており、必要な経費の財源も業務ごとに異なっている。

そこで、本院は、合規性、有効性等の観点から、協会において駐車場特別会計に係る区分経理は適切に行われているか、貴省と協会との間で締結された各業務に係る委託契約等の内容が、現状においても適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、協会が内規に基づいて会計帳簿等を保存している平成17年度から26年度までの間の駐車場業務に係る経理、21年度から26年度までの間の管理運営業務に係る経理(契約金額計9億3275万余円)並びに第1期市場化テスト事業及び第2期市場化テスト事業に係る経理(契約金額計9億0534万円)を対象として、貴省本省及び3国民公園管理事務所(注1)並びに協会において、契約書、仕様書、協会が決算書として貴省に提出している正味財産増減計算書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注1)
 3国民公園管理事務所 皇居外苑、京都御苑、新宿御苑各管理事務所

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)駐車場特別会計における積立金の状況

協会は、駐車場業務委託契約等に基づき、駐車場特別会計において、各会計年度(注2)の一般正味財産期末残高を積立金として経理していた。そして、前記のとおり、駐車場業務委託契約が解除されたときは、駐車場特別会計を精算し、剰余の資産があるときはこれを貴省に引き渡すこととなっているが、駐車場業務委託契約は、昭和62年以降、現在まで長期間にわたって継続しており、契約内容の見直しも行われていない。このため、駐車場特別会計における積立金は、貴省に引き渡されることのないまま協会が保有しており、表2のとおり、協会の平成26年度決算(26年12月末時点)における積立金の額は、7065万余円となっていた。

表2 駐車場特別会計の状況

(単位:千円)
年度 当期収益(a) 当期費用(b) 当期一般正味財産増減額
(A)=(a)−(b)
一般正味財産期首残高
(B)
一般正味財産期末残高(積 立金)
(A)+(B)
平成17 377,974 411,169 △33,195 △3,298 △36,493
18 373,934 354,356 19,578 △36,493 △16,915
19 378,741 345,099 33,642 △16,915 16,727
20 372,772 371,857 915 16,727 17,642
21 354,278 358,393 △4,115 17,642 13,527
22 332,612 341,975 △9,363 13,527 4,163
23 306,238 282,824 23,413 4,163 27,577
24 324,713 285,365 39,347 27,577 66,924
25 315,760 303,378 12,381 66,924 79,306
26 313,100 321,750 △8,649 79,306 70,656
(注)
平成25年度及び26年度の当期収益、当期費用等には、第2期市場化テスト事業の対象となった新宿御苑の駐車場業務の実施により生じたものが含まれている。

貴省は、駐車場特別会計が決算上の損失を生じた場合、積立金から減額して補填することになっていることなどから、駐車場業務を安定的に実施するための備えとして、協会に一定額の積立金を保有させる必要があるとしている。しかし、積立金を具体的にどの程度の規模とするのが適切であるかや、積立金のうち適切な規模を超える分の取扱いについて検討していなかった。

(注2)
会計年度  協会の会計年度である毎年1月1日から12月31日まで

(2)駐車場特別会計に係る区分経理の状況

前記のとおり、協会は、駐車場業務委託契約に基づき、駐車場特別会計を設置し、区分経理を行うこととなっている。しかし、協会は、17、18両年度の収益施設業務で生じた損失を処理するための費用計4350万余円や、21年度から26年度までの間の管理運営業務に係る人件費計1267万余円、合計5618万余円を駐車場特別会計に計上していて、駐車場特別会計に係る区分経理を適切に行っていなかった。このため、駐車場特別会計における積立金の額は、本来計上されるべき額より少額となっている。

そして、貴省は、駐車場業務委託契約に基づき、毎会計年度、協会から駐車場特別会計の決算書等を提出させているが、支出の内容について十分な確認を行っておらず、上記の事態を把握していなかった。

(3)新宿御苑の駐車場業務に係る委託の状況

貴省は、25年6月に、新宿御苑の駐車場業務が契約の対象に含まれる第2期市場化テスト事業に係る委託契約を締結したにもかかわらず、駐車場業務委託契約の対象から新宿御苑の駐車場業務を除外していなかった。このため、新宿御苑の駐車場業務(26年度における収益の計上額6788万余円、費用の計上額7886万余円)は重複して契約の対象とされていた。

(改善並びに是正及び是正改善を必要とする事態)

国からの委託を受けて実施する駐車場業務により協会において生じた積立金について、長期間にわたって契約内容が見直されておらず、積立金の適切な規模や取扱いについて検討されていない事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。また、協会において、駐車場特別会計に係る区分経理が適切に行われていないことにより、駐車場特別会計の積立金の額が、本来計上されるべき額よりも少額となっている事態は適切ではなく、是正及び是正改善を図る要があると認められる。さらに、新宿御苑の駐車場業務が他の契約と重複して契約の対象とされている事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、協会において駐車場業務委託契約に基づいて駐車場特別会計に係る区分経理を適切に行うことの認識が欠けていることにもよるが、貴省において次のことなどによると認められる。

  • ア 駐車場業務委託契約の契約内容を見直すこと及び駐車場特別会計における積立金の適切な規模や取扱いを検討することの必要性に対する認識が欠けていること
  • イ 駐車場特別会計の決算書等の確認が十分でないこと

3 本院が表示する意見並びに要求する是正の処置及び求める是正改善の処置

貴省は、「旧皇室苑地の運営に関する件」等に基づき、国民の福祉に寄与するなどのために、今後も引き続き国民公園の管理を行っていくこととしている。そして、駐車場業務については、当面、駐車場業務委託契約等により実施することが見込まれる。

ついては、貴省において、国民公園の適切な管理に資するよう、駐車場業務委託契約の契約内容、駐車場特別会計の経理等に関し、次のとおり意見を表示し並びに是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。

  • ア 契約内容を見直すなどして、協会が保有する積立金について、その適切な規模を検討するとともに、これを超える分は国庫に納付させたり、有効に活用させたりできるようにすること(会計検査院法第36条による意見を表示するもの)
  • イ 過去の駐車場特別会計に係る経理を精査して、積立金の額を本来計上すべき額にさせるとともに、今後、駐車場特別会計に係る区分経理が適切に行われるよう、決算書等の確認を十分に行うこと(同法第34条による是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めるもの)
  • ウ 契約内容を見直すなどして、他の契約と重複する新宿御苑の駐車場業務を契約の対象から除外すること(同法第34条による是正改善の処置を求めるもの)