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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第35 独立行政法人国際協力機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2)特定非営利活動法人等が実施する草の根技術協力事業の実施に当たり、額の確定が適切に行われるよう、また事業終了後一定期間経過後の状況を把握することによって得られる教訓が今後の類似事業に活かされるよう改善させたもの


科目
一般勘定 (項)国民参加型協力関係費
部局等
独立行政法人国際協力機構本部、5国際センター
草の根技術協力事業の概要
特定非営利活動法人、地方自治体等が開発途上地域の経済及び社会の開発又は復興に協力することを目的として行う技術協力活動を促進し、助長するための事業
検査の対象とした契約数及びこれらに係る実績額
88契約 22億8176万余円(平成23年度~25年度)
業務従事日数の妥当性を十分確認せずに直接人件費、日当及び宿泊料の額の確定を行っていた契約数並びにこれらに係る実績額
88契約 8億8136万円(平成23年度~25年度)
上記宿泊料のうち宿泊の実態を踏まえた額の確定を行っていなかった契約数及びこれらに係る実績額
39契約 8926万円
現地調査の対象とした事業数及びこれらに係る実績額
26事業 11億0925万余円(平成15年度~25年度)
事業の効果が持続していないことを把握できていなかった事業数及びこれらに係る実績額
4事業 1億5616万円(背景金額)(平成18年度~24年度)

1 草の根技術協力事業の概要等

(1)草の根技術協力事業の概要

独立行政法人国際協力機構(以下「機構」という。)は、国民参加協力の一環として国内の特定非営利活動法人、地方自治体等が開発途上にある海外の地域(以下「開発途上地域」という。)の住民を対象として当該地域の経済及び社会の開発又は復興に協力することを目的として行う技術協力活動を促進し、助長するための事業として、技術協力の実施並びに有償及び無償の資金供与による協力の実施とは別に、草の根技術協力事業を実施している。

本件事業は、草の根パートナー型(以下「草の根技協」という。)、草の根協力支援型及び地域提案型の3つの類型に分類されており、機構は、特定非営利活動法人、地方自治体等との間で業務委託契約を締結して、3年間から5年間程度の事業を行っている。草の根技協は国際協力の経験が豊富な特定非営利活動法人等が、草の根協力支援型は比較的小規模な特定非営利活動法人等が、それぞれ受託団体となって開発途上地域で人を介した協力を通じて知識、技術等を相手国実施機関に移転する事業(以下、これらの事業を「草の根技協等」という。)であり、平成25年度の事業実績でみると、草の根技協等の事業費のうち約90%が草の根技協となっている。一方で、地域提案型は、地方自治体等が受託団体となり、日本での研修員受入れを中心として行う事業が多く、事業内容が草の根技協等と異なっている。

また、機構は、27年度に、より多くの団体の参加を促進するために草の根技協等を新・草の根パートナー型として実施するとともに、事業規模の小さな新・草の根協力支援型を新設しているが、実施方法について草の根技協等から大きな変更はなされていない。

(2)草の根技協等に係る委託費の積算、額の確定等

機構は、草の根技協等についての募集要項、その別冊である経費積算ガイドライン及び実施の手引き(以下、これらを合わせて「募集要項等」という。)を制定しており、募集要項等によれば、機構は、応募者から提出された概算事業費を含む事業提案書を審査して受託団体を決定した後、概算事業費を精査等した額を基に業務委託契約を締結することとされている。また、機構は、四半期ごとに、実際の支出額の費目別内訳、直接人件費内訳書、派遣諸費精算明細書等を含む四半期支出状況報告書(以下「四半期報告書」という。)及びその証拠書類を受託団体から提出させ、これらを審査して各期の支出実績額の確定(以下「額の確定」という。)を行い、契約期間終了後に精算を行うこととしている。

草の根技協等の対象経費は、業務従事者に関する直接人件費、日当、宿泊料等であり、これらの積算及び額の確定に関して、機構は、次のように定めている。

ア 直接人件費の積算は、業務従事者の経歴等を勘案した上で、機構と受託団体との間で合意した月額単価に、業務従事者の業務従事日数を月数に換算した値を乗じて算出する。

イ 日当及び宿泊料の積算は、現地の物価水準等を勘案した上で、機構と受託団体との間で合意したそれぞれの単価に、派遣期間中の業務従事日数や宿泊数(機中泊分を除く。)を乗じて算出する。

ウ 直接人件費、日当及び宿泊料のいずれも、業務従事者が受託業務に従事していない期間の計上はできず、額の確定に当たっては、業務従事日数等の実績に基づくこととし、四半期報告書で実績を確認する。

(3)草の根技協等の事業効果の評価

募集要項等によれば、草の根技協等の実施に当たり、機構及び受託団体は、事業終了時までに達成されるべき具体的目標であるプロジェクト目標を、相手国実施機関と合意の上で設定することとされている。機構は、草の根技協等について、事業の効果、プロジェクトの目標の達成状況及び実施過程を確認し、そこから引き出される教訓を評価対象事業及び類似事業へフィードバックして、今後のより良い事業づくりにつなげることなどを目的として、事業の終了時評価等を実施することとしている。そして、草の根技協等の終了後においても、その直接的な効果が継続、あるいは更に発展することによる長期的な効果が期待されている。

2 検査及び現地調査の結果

(検査及び現地調査の観点及び着眼点)

本院は、効率性、有効性等の観点から、草の根技協等の実施に当たり、機構が額の確定を適切に行っているか、草の根技協等の効果が事業終了後においても持続しているかなどに着眼して検査及び現地調査を実施した。

(検査及び現地調査の対象及び方法)

本院は、機構本部及び5国際センター(注1)において、草の根技協に関する23年度から25年度までの間に締結された56受託団体の88契約(注2)(実績額計22億8176万余円)を対象として、額の確定に当たっての確認状況等について聴取するとともに、このうち6受託団体については事務所に赴き、関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。また、機構を通じて受託団体から資料の提出を求めてその内容を確認するなどの方法により検査を実施した。

さらに、7か国(注3)で14受託団体に委託して実施され、16年度から25年度までの間に事業が終了した草の根技協、26事業(同計11億0925万余円)を対象として、機構の職員の立会いの下に相手国実施機関等の協力が得られた範囲で、事業の実施現場の状況を確認するなどして現地調査を実施した。

(注1)
5国際センター  北海道、筑波、東京、中部、中国各国際センター
(注2)
56受託団体の88契約  平成24年度に広尾センターが閉鎖されたことに伴い、東京国際センター及び筑波国際センターへと移管された契約を含む。
(注3)
7か国  カンボジア王国、インド、ケニア共和国、ペルー共和国、フィリピン共和国、ウズベキスタン共和国、ベトナム社会主義共和国

(検査及び現地調査の結果)

検査及び現地調査したところ、機構において次のような事態が見受けられた。

(1)額の確定について

ア 業務従事日数の確認状況について

業務従事者による業務従事日数は、直接人件費、日当及び宿泊料の算定根拠となることから、前記88契約(直接人件費5億8850万余円、日当及び宿泊料2億9285万余円、計8億8136万余円)の業務従事者のうち業務従事日数が多い者計230名を抽出して、業務への従事状況についてみたところ、62契約に係る計115名は受託業務以外の他の業務にも従事している兼務者となっていた。

そして、88契約のうち前記の6受託団体が受託した11契約についてみると、11契約全てについて委託費の対象となる業務従事者の中に兼務者が含まれている状況であったが、業務実績が確認できる書類を整備することとされていないことから、四半期報告書が兼務の実態を踏まえた内容で作成されているのか確認できなかった。また、6受託団体における四半期報告書への業務従事日数の記載内容については、契約交渉時に定めた日数をそのまま計上していたり、明確な根拠がないまま想定した他の業務との従事割合を勘案した日数を計上していたりなどしている状況となっていた。

しかし、機構は、88契約に係る額の確定において、四半期報告書に他の業務への従事状況の記載等、業務従事日数の実績を確認するための書類の提出を求めていなかった。このため、機構は、上記の兼務の実態等を把握しておらず、額の確定において、業務従事日数の妥当性を十分に確認していなかった。

イ 開発途上地域に長期滞在する業務従事者の宿泊の実態の把握について

前記の88契約に係る宿泊料について、開発途上地域での宿泊日数が多い業務従事者計141名(宿泊料計1億4463万余円)を抽出して、その宿泊の状況をみたところ、のとおり39契約に係る計51名(同計8926万余円)についてはホテル等に宿泊せず、受託団体が借り上げた住宅等に滞在しており、特に滞在期間が180日以上の業務従事者では、借り上げた住宅等に滞在している割合が70%以上となっていた。

表 滞在期間別の宿泊、滞在先の人(泊)数

滞在期間の区分 宿泊、滞在先別の内訳
ホテル等に宿泊 住宅等を借り上げて滞在
人数(泊数) 割合(泊数の割合) 人数(泊数) 割合(泊数の割合) 人数(泊数)
180日未満 76(3,760) 82%(71%) 16(1,526) 17%(28%) 92(5,286)
180日以上 14(4,833) 28%(23%) 35(15,506) 71%(76%) 49(20,339)
90(8,593) 63%(33%) 51(17,032) 36%(66%) 141(25,625)

そして、前記6受託団体のうち、実際に住宅等を借り上げていた4受託団体によると、家賃以外にも、光熱水料等の経費が必要であるが、住宅等を借り上げて滞在する方がホテル等に宿泊するよりも経済的であるとしていた。

しかし、機構は、業務従事者が長期滞在する場合に、受託団体が借り上げた住宅等に滞在している実態を十分に把握していなかったため、その実態を踏まえた額の確定が行われていなかった。

(2)事業終了後の事業効果の持続状況の確認について

7か国で実施され16年度から25年度までの間に事業が終了した前記の26事業について、機構は、終了時評価等においてプロジェクト目標の達成状況等については確認しているとしていた。

一方で、本院の現地調査時点においては、上記26事業のうち3か国(注4)で実施された計4事業(実績額計1億5616万余円)について、草の根技協を通じて水供給関連施設の使用方法、維持管理の方法等の技術等を現地の住民に移転した後に引き渡された施設等の大部分が故障するなどして有効に活用されていなかったり、教育施設の運営等に係る技術等の移転を行ったものの、施設の一部が目的に沿って使用されていなかったり、施設の利用者数が目標の半分程度にとどまっていたりなどしていて移転された技術等が十分に活用されていない事態が見受けられた。

しかし、機構は、草の根技協等について、終了時評価は実施しているため事業実施中に発生した問題点及び終了直後に発生した問題点は把握することができる体制にはあるものの、事業終了後一定期間経過後の状況を確認することとしていないため、上記の事態を把握できておらず、今後実施する類似事業に対する教訓として活用等することができていなかった。

このように、機構において、直接人件費、日当及び宿泊料の額の算定根拠となる業務従事日数の妥当性を十分確認していなかったり、業務従事者が受託団体が借り上げた住宅等に滞在している実態に対応した額の確定が行われていなかったりしていた事態並びに事業終了後一定期間経過後の状況を確認して今後の類似事業の改善に反映させる体制となっていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(注4)
3か国  インド、ケニア共和国、ペルー共和国

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、機構において、次のことによると認められた。

  • ア 額の確定に当たり、業務従事日数の実績を確認する方法の検討が十分でなかったり、業務従事者の宿泊実態を把握することの重要性についての理解が十分でなかったりしていたこと
  • イ 事業終了から一定期間経過後の状況を確認して、今後の類似事業の改善に反映させることの重要性についての理解が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、機構は、27年9月に募集要項等を改訂するなどして、次のような処置を講じた。

ア 受託団体から業務従事日数の実績を確認できる書類を提出させることを定めるとともに、業務従事実績を確認した上で額の確定を行ったり、借り上げた住宅等に滞在する場合に計上することができる費用等について定めるとともに、領収書に基づき額の確定を行ったりすることとした。

イ 事業終了から3年程度が経過した時点で、実績額が一定金額以上の事業を対象として、受託団体から聞き取りを行ったり、機構自らが現地を確認したりなどして事業終了後の状況を把握し、その結果を今後の類似事業の改善に反映できる体制を整備した。