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  • 平成26年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第1節 国会及び内閣に対する報告

<参考:報告書はこちら>

第5 地域再生法に基づく事業の実施状況等について


検査対象
内閣官房、内閣府、金融庁、総務省、法務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、認定地方公共団体887団体(44都道府県、842市町村、1一部事務組合)
地域再生法に基づく事業の概要
認定地方公共団体が、認定地域再生計画に基づき、支援措置の適用を受けるなどして実施する、自主的かつ自立的な取組による地域経済の活性化、地域における雇用機会の創出その他の地域の活力を再生するための事業
検査の対象とした地域再生法に基づく事業に係る認定地域再生計画数
1,506計画(平成17年度~26年度)
上記の認定地域再生計画に記載された支援措置を適用した事業に係る国の支出額
8524億8979万円
上記のうち地域再生基盤強化交付金額
8089億6113万円

1 検査の背景

(1) 地域再生法の概要等

ア 地域再生法の概要

地域再生法(平成17年法律第24号)によれば、同法の目的は、近年における急速な少子高齢化の進展、産業構造の変化等の社会経済情勢の変化に対応して、地方公共団体が行う自主的かつ自立的な取組による地域経済の活性化、地域における雇用機会の創出その他の地域の活力の再生(以下「地域再生」という。)を総合的かつ効果的に推進することとされている。そして、国は、地方公共団体の自主性及び自立性を尊重しつつ、地域再生に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有するとされている。また、政府は、地域再生に関する施策の総合的かつ効果的な推進を図るための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならないとされ、基本方針には、①地域再生の意義及び目標に関する事項、②地域再生のために政府が実施すべき施策に関する基本的な方針、③地域における少子高齢化の進展に対応した良好な居住環境の形成その他の地方公共団体が地域再生を図るために特に重点的に取り組むことが必要な政策課題に関する基本的な事項、④地方公共団体が基本方針に基づき作成する地域再生を図るための計画(以下「地域再生計画」という。)の認定に関する基本的な事項、⑤①から④までのほか、地域再生の推進のために必要な事項を定めるものとされている。

政府は、地域再生法に基づき、平成17年4月に閣議決定により基本方針を定めており、基本方針において、地域再生の意義は、「地域の自主的・自立的な取組とそれを尊重した国の支援とがあいまって、我が国の活力の源泉である地域の活力の再生を加速し、持続可能な地域再生を実現すること」であるとしている。また、地域再生の推進により実現すべき目標は、「個々の地域において、地域の特性、資源を顕在化させ、これらを有効に活用した地域産業の振興、生活環境の改善、観光・交流の促進等の地域の創意工夫を凝らした具体的な取組を推進することにより、自主的・自立的で持続可能な地域の形成を図ること」及び「地域の創意工夫を凝らした取組の成果として地域再生の成功事例を示すことにより、他の地域における取組を刺激し、多様な分野での地域再生の取組の総体として、全国的な規模での地域の活力の増進を図ること」であるとしている。

イ 地域再生計画の作成等

地域再生法に基づく地域再生制度は、地域が行う地域再生のための自主的・自立的な取組を総合的かつ効果的に支援するために、地方公共団体(都道府県、市町村(特別区を含む。)又は地方自治法(昭和22年法律第67号)の規定による一部事務組合若しくは広域連合をいい、港湾法(昭和25年法律第218号)の規定による港務局を含む。以下同じ。)が作成し申請する地域再生計画を内閣総理大臣が認定(以下、認定された地域再生計画を「認定地域再生計画」という。)した場合に、国が認定地域再生計画に基づく事業に対して特別な措置を講ずる制度である。

地域再生法によれば、地方公共団体は、単独で又は共同して、基本方針に基づき、地域再生計画を作成し、内閣総理大臣の認定を申請することができるとされている。地域再生計画には、地域再生計画の区域、地域再生を図るために行う事業に関する事項及び計画期間を記載するものとされ、地域再生計画の目標、その他内閣府令で定める事項を記載するよう努めるとされている。そして、地域再生法施行規則(平成17年内閣府令第53号。以下「施行規則」という。)において、内閣府令で定める事項として、地域再生計画の名称、地域再生計画の目標の達成状況に係る評価(以下「達成状況評価」という。)に関する事項等が定められている。また、同法によれば、地域再生を図るために行う事業に関する事項が認定地域再生計画に記載されている場合、地域再生法に基づき、特別の措置(以下、地域再生法に基づく特別の措置を「法定措置」という。)が適用され、国の支援が受けられることとなる。また、法定措置のほか、認定地域再生計画に記載されていることにより、国の支援が受けられる各府省庁が実施する施策(以下「連動施策」という。)がある(以下、法定措置と連動施策を合わせて「支援措置」という。)。

内閣府は、地方公共団体の地域再生計画の作成に資するために、地域再生計画の認定制度、認定基準、認定申請手続等を解説した「地域再生計画認定申請マニュアル(総論)」(以下「申請マニュアル(総論)」という。)を作成して、地域のニーズの把握、地域再生計画の区域の設定、地域再生計画の変更等、地域再生計画の発案から認定の流れなどを示している。また、支援措置について、支援措置を設ける趣旨及び概要、支援措置の内容、支援措置に係る必要な手続、地域再生計画及び添付資料の記載に当たって留意すべき事項、当該支援措置を認定申請できる時期等について定めた「地域再生計画認定申請マニュアル(各論)」(以下「申請マニュアル(各論)」という。)、支援措置の中でも特に「地域再生基盤強化交付金」(以下「交付金」という。)に絞り、交付金の特徴、交付金に係る地域再生計画作成の考え方、交付金に係る達成状況評価等について詳細に解説した「地域再生計画作成の手引き~地域再生基盤強化交付金活用のために~」(以下「手引」という。)等を作成している。

地域再生法によれば、内閣総理大臣は、地方公共団体から認定申請があった地域再生計画が、①基本方針に適合するものであること、②その実施が当該地域における地域再生の実現に相当程度寄与するものであると認められること、③円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること(以下、これらを「認定基準」という。)に適合すると認めるときは、認定する(以下、地域再生計画の認定を受けた地方公共団体を「認定地方公共団体」という。)ものとされ、内閣総理大臣は、認定したときは、その旨を公示しなければならないとされている。また、認定地方公共団体は、認定地域再生計画を変更しようとするときは、軽微な変更を除き、内閣総理大臣の認定を受けなければならないとされている。軽微な変更については、施行規則によれば、地域の名称の変更又は地番の変更に伴う範囲の変更、交付金を充てて行う施設の整備の事業期間に影響を与えない場合における計画期間の六月以内の変更及び地域再生計画の実施に支障がないと内閣総理大臣が認める変更とされている。

さらに、内閣総理大臣は、認定地域再生計画が、認定基準のいずれかに適合しなくなったと認められるときは、認定を取り消すことができるとされている。

ウ まち・ひと・しごと創生法との関係

国は、国民一人一人が夢を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営むことができる地域社会の形成、地域社会を担う個性豊かで多様な人材の確保及び地域における魅力ある多様な就業の機会の創出を一体的に推進すること(以下「まち・ひと・しごと創生」という。)が重要であるとして、26年11月にまち・ひと・しごと創生法(平成26年法律第136号。以下「創生法」という。)を制定した。そして、創生法において、都道府県及び市町村は、政府が定めるものとされているまち・ひと・しごと創生総合戦略(以下「総合戦略」という。)を勘案して、都道府県まち・ひと・しごと創生総合戦略及び市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略(以下、これらを合わせて「地方版総合戦略」という。)を定めるよう努めるものとされている。内閣府によれば、地方版総合戦略は、都道府県又は市町村の区域における、まち・ひと・しごと創生に関する施策目標や基本的方向性等を明示して地域の実情に応じた施策全般にわたる戦略を定めるものであり、地域再生計画は、地域再生を図るために取り組もうとする個別の事業や、それを実施するために活用する国の支援措置について具体的に定める実施計画であるとしている。そして、創生法の制定に併せて改正した地域再生法において、基本方針は、総合戦略等との調和が保たれたものでなければならないと規定された。

(2) 地域再生法に基づく事業等

ア 地域再生法に基づく事業

26年度末現在における支援措置は、法定措置8件、連動施策26件の計34件となっている。法定措置は、認定地域再生計画に記載されることにより事業を実施することができるものであり、法定措置に係る事業を実施しようとする地方公共団体は、地域再生計画を作成し、申請して内閣総理大臣の認定を受けることが要件となる。連動施策となっている各府省庁が実施する事業には、法定措置と同様に、地域再生計画の認定を事業実施の要件としているものと、地域再生計画の認定を受けることにより事業の採択や選定に当たり一定の配慮をするものがある。

イ 交付金の概要及び特徴

交付金は、地域における経済基盤の強化又は生活環境の整備を総合的かつ効果的に行うために、道、汚水処理施設及び港の三つの分野において、省庁の所管を超える2種類以上の類似施設を一体的に整備することとして、複数の省庁が所管する類似施設に対する補助金を内閣府に一元化し、17年度に法定措置として創設された。そして、予算は内閣府に一括計上され、地域再生計画の申請及び交付金の予算要望の窓口を内閣府に一本化することにより、地方公共団体の手続の簡素化が図られるとされ、また、地域の裁量による自由な施設配置、事業の進捗等に応じた事業間の融通及び年度間の事業量の変更を可能とすることにより予算の弾力的な執行が可能となるなど、地域の自主裁量性が向上するとされた。交付金は、道整備交付金、汚水処理施設整備交付金及び港整備交付金の3種類に分類され、各交付金の対象施設は、道整備交付金は、市町村道、広域農道又は林道(このうち2種類以上の施設の整備を行う。)、汚水処理施設整備交付金は、公共下水道、集落排水施設(農業集落排水施設及び漁業集落排水施設に限る。)又は浄化槽(このうち2種類以上の施設の整備を行う。)、港整備交付金は、地方港湾の港湾施設又は第一種漁港若しくは第二種漁港の漁港施設(両方の施設の整備を行う。)となっている。

交付金について基本的な枠組みを定めた「地域再生基盤強化交付金に係る基本大綱」(平成17年府地再第8号、17農振第148号、国総政第6号、環廃対発第050422002号。以下「基本大綱」という。)によれば、交付金を交付する期間は、認定地域再生計画に基づく事業に対して交付金の交付が開始される年度からおおむね5年以内とされている。また、交付金の総額は、交付金の種類及び施設の区分に応じ、認定地域再生計画に記載された施設の整備に要する費用に交付限度額の算出に用いる割合を乗じて算出された額及び対象施設の整備事業の進捗を勘案し、認定地方公共団体が行う予算要望を踏まえるものとされている。

交付金の交付の事務は、地域再生法及び地域再生法施行令(平成17年政令第151号)に基づき、主として農道、林道、集落排水施設及び漁港施設に係るものについては農林水産大臣が、主として道路、下水道及び港湾施設に係るものについては国土交通大臣が、主として浄化槽に係るものについては環境大臣が行うこととなっている(以下、交付金の交付の事務を行う大臣を「交付担当大臣」という。)。そして、内閣総理大臣は、専門的知見を活用した交付金の効果的・効率的執行という観点から、毎年度、交付担当大臣と協議して、交付金の種類ごとに作成した配分計画に基づき、財務大臣の承認を得て、交付金の予算を交付担当大臣が所管する関係行政機関へそれぞれ移し替えることとなっている。

交付金に係る基準等は、基本大綱、申請マニュアル(総論)、申請マニュアル(各論)、手引のほか、交付金の種類ごとに「道整備交付金交付要綱」(平成17年17農振第7号、国道地調第2号)、「汚水処理施設整備交付金交付要綱」(平成17年17農振第167号、国都下事第18号、環廃対発第050422003号)、「港整備交付金交付要綱」(平成17年17水港第641号、国港管第53号)等がそれぞれ定められており、これらに基づいて事業が実施されている。

手引によれば、交付金の特徴は、複数の施設を連携して一体的に整備する必要があること、交付金の交付申請関連の書類をいずれかの省庁の地方支分部局等の一箇所でまとめて申請すること(以下「ワンストップ窓口」という。)ができること、従来の補助金とは異なり、単年度ごとの国の負担割合が固定ではないため、年度内に発生する事業の進捗状況の変化に応じて当該年度の国費の充当率を変更し、次年度以降で調整すること(以下「年度間融通」という。)ができること、年度ごとの交付金の交付額(以下「単年度交付額」という。)の2分の1未満で、かつ一体的に整備する類似の他の施設(以下「他の施設」という。)の当該年度の交付額未満の範囲において、交付された交付金を他の施設の整備に要する経費として充てること(以下「他施設充当」という。)ができることとされている。

ウ 地域再生法に基づく事業の予算額等

地域再生法が施行された17年4月から27年3月までの間における、認定地域再生計画数は1,013認定地方公共団体の1,870計画となっており、支援措置数は内閣官房等12府省庁(注1)が所管する計112件に上っている。これらの支援措置の中には、交付金の交付等の国の予算措置を伴うもの、課税の特例等の国が財政上の優遇措置を行うものなど国の収入支出に係る支援措置のほか、規制の緩和を内容とするなど国の収入支出には直接関わらない支援措置がある。

そして、112件の支援措置のうち、地域再生計画の認定が事業実施の要件となっていて、かつ、国の予算措置を伴う支援措置は15件であり、これらに係る事業の17年度から26年度までの間の予算額は、毎年度多額に上っている。

(注1)
内閣官房等12府省庁  内閣官房、内閣府、金融庁、総務省、法務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

国は、地域再生を総合的かつ効果的に推進するために、認定地方公共団体が認定地域再生計画に基づいて行う事業に対して、支援措置を適用するなどして地域が行う自主的かつ自立的な取組を支援することとしている。

そして、前記のとおり、17年4月から27年3月までの間における認定地域再生計画数は、1,013認定地方公共団体の1,870計画となっており、支援措置数は、内閣官房等12府省庁の112件となっている。また、地域再生計画の認定が事業実施の要件となっている支援措置のうち、国の予算措置を伴う支援措置に係る17年度から26年度までの間の内閣官房等12府省庁の予算額は、前記のとおり毎年度多額に上っている。

また、国は、26年11月に創生法を制定し、併せて地域再生法を改正したことなどから、同法に基づく事業の実施は、地方公共団体における地方版総合戦略の着実な遂行においても重要なものとなっている。

そこで、本院は、内閣官房等12府省庁及び地方公共団体における地域再生法に基づく事業の実施状況等について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次のような点に着眼して横断的に検査を実施した。

ア 地方公共団体は、地域再生計画を作成するに当たって、適切に地域のニーズを把握しているか、地方公共団体間の調整及び連携を適切に行っているか。また、認定地方公共団体は、認定地域再生計画を地域住民等に対し適時に公表しているか。

イ 認定地域再生計画に記載された支援措置の適用を受けた事業は、適切に実施されているか、支援措置は、地方公共団体にとって活用しやすいよう適切に設定されているか。

ウ 交付金事業は、その特徴が十分に生かされ、効果的・効率的かつ弾力的に行われているか。また、支援措置として交付金を記載した認定地域再生計画の計画変更等は適切に行われ、計画に基づいて事業は適切に実施されているか。

エ 認定地域再生計画に設定された目標は達成されているか。また、国と地方公共団体との連携等は十分図られているか。

(2) 検査の対象及び方法

17年度から26年度までの間における認定地方公共団体1,013団体の認定地域再生計画1,870計画のうち、国の予算措置を伴うものなど国の収入支出に係る支援措置を適用して実施した887団体の1,506計画に基づく事業(このうち、国の予算措置を伴う支援措置を適用して実施した事業に係る国の支出額8524億余円)を対象として検査を実施した。また、前記のとおり、支援措置の中には、国の収入支出には直接関わらないものがあるが、地域再生法に基づく事業の実施状況等の全体像を把握するために、このような支援措置を記載するなどした126団体の364計画についても合わせて調査した。

そして、地域再生制度を所管する内閣府並びに内閣官房等12府省庁及び13道県(注2)において、地域再生法に基づく事業の実施状況等について、関係資料の提出や説明を受けたり、現地の状況を確認したりなどして会計実地検査を行った。また、13道県及び31都府県(注3)の計44都道府県(管内1,614市町村。認定地方公共団体927団体。927団体に係る認定地域再生計画1,756計画)から、17年度から26年度までの間における地域再生法に基づく事業の実施状況等に係る資料や調書の提出を受けるなどして、地域再生計画の作成及び認定状況、事業の実施状況等について検査及び調査を実施した。

なお、東日本大震災により特に甚大な被害を受けた岩手、宮城、福島各県(管内127市町村。認定地方公共団体86団体。86団体に係る認定地域再生計画114計画)については、内閣府から資料の提出を受けるとともに公表されている資料により分析した。

(注2)
13道県  北海道、秋田、山形、茨城、長野、愛知、三重、島根、岡山、愛媛、高知、福岡、宮崎各県
(注3)
31都府県  東京都、京都、大阪両府、青森、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、新潟、富山、石川、福井、山梨、岐阜、静岡、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、広島、山口、徳島、香川、佐賀、長崎、熊本、大分、鹿児島、沖縄各県

3 検査の状況

(1) 地域再生計画の作成及び認定状況等

認定地域再生計画に係る26年度末の状況をみると、1,870計画のうち、計画期間が終了したものは1,425計画、実施中のものは425計画、認定を取り消されたものは20計画となっていた。年度別の認定数をみると、17年度が703計画(1,870計画の37.5%)、21年度は256計画(同13.6%)、26年度は204計画(同10.9%)となっていた。

全国の市町村について、人口規模が小さい市町村及び財政力指数が低い市町村は、地域再生計画を作成している割合が低くなっていて、地域再生計画を作成していない主な理由は、人口規模が小さいほど、また、財政力指数が低いほど、人員等が不足しているためとしている割合が高くなっていた。

地域のニーズの把握状況をみると、地域のニーズを把握していないとしているものが157計画(調書の対象とした1,756計画の8.9%)となっており、地域のニーズを把握していない地域再生計画に基づく事業の実施については、地域のニーズを反映した自主的かつ自立的な取組を推進することとはならないことが懸念される。

地域再生計画の対象区域に作成主体以外の地方公共団体が含まれているものは102計画となっており、対象区域に含まれている地方公共団体が作成主体となっていない主な理由をみると、作成主体が、地域再生計画の作成段階において、該当する地方公共団体と調整を行わなかったためとしたものが16計画(102計画の15.6%)等となっていた。

1,756計画から26年度末に認定を受けて間もない169計画を除いた1,587計画について、認定地方公共団体における認定地域再生計画の公表状況をみると、自らは公表していないとしているものは761計画(1,587計画の47.9%)となっていた。認定地域再生計画を自らは公表していない主な理由をみると、認定地域再生計画の実施内容について公表する必要がないと考えたためとしているものが260計画(761計画の34.1%)等となっていた。

(2) 支援措置の適用を受けた事業の実施状況等

支援措置112件は、①予算措置を伴うもの(92件)、②財政上の優遇措置(9件)、③規制の緩和(4件)、④その他(7件)に分類できる。予算措置を伴う支援措置の適用を受けて実施した事業に係る国の支出額をみると、総額8524億余円となっていた。支援措置別にみると、農林水産省、国土交通省及び環境省所管の交付金が計8089億余円(8524億余円の94.8%)と最も多くなっていた。

支援措置数の推移をみると、地域再生制度が創設された17年度当初は16件となっていて、19年度末では52件、20年度末では56件と増加したものの、26年度末現在では34件まで減少している。

所管府省庁において、地域再生計画と支援措置との関係及び配慮の内容を周知していない支援措置が見受けられたり、配慮の内容を具体的に定めていない支援措置が見受けられたりしており、これらについては、地方公共団体が支援措置を一つ又は複数選択して自主的に地域再生計画を作成する際の選択の幅を広げることに資する状況とはなっていない。

支援措置の中には、認定地域再生計画に1回も記載されていないものが49件(112件の43.7%)となっていた。また、49件の中には地方公共団体が地域再生計画を作成し、その認定を受けた時期には既に事業の公募期間が終了していて、認定地域再生計画に記載しても支援措置の適用を受けることが不可能であったものが5件見受けられた。

認定地方公共団体における提案制度等の活用状況をみると、提案制度等を活用したことがないものは623団体(925団体の67.3%)となっていた。地方公共団体が提案制度等を活用していない理由をみると、提案制度等を知らなかったためとしているものが45団体(623団体の7.2%)、提案制度等を十分理解していなかったためとしているものが205団体(同32.9%)等となっていて、認定地方公共団体であっても、提案制度等を知らなかったり、理解が十分でなかったりする団体が多く見受けられた。

(3) 交付金事業の実施状況等

農林水産省、国土交通省及び環境省が所管している交付金の予算額は、18年度から22年度までの間は1000億円を超える規模となっていたが、22年度以降は減少傾向となっていた。認定地方公共団体において、交付金以外の国庫補助金等を活用することによって交付金の対象施設を整備していることも交付金の予算額が減少している要因の一つとなっていた。

調書の対象とした都道府県44団体のうち、交付金の活用がない沖縄県を除く43団体におけるワンストップ窓口の活用状況をみると、42団体がワンストップ窓口を活用していないとしている状況となっていた。活用していないとしている理由をみると、都道府県において交付金の対象施設を所管している部署が異なっており、部署間で連携を図ることができないためとしている都道府県が18団体等となっていた。

年度間融通の活用状況をみると、26年度末までに計画期間が終了していて、交付金を記載していた816計画のうち、年度間融通を活用していないものは84計画(816計画の10.2%)となっていた。年度間融通を活用していない理由をみると、年度間融通を活用することを検討しなかったためとしているものが42計画(84計画の50.0%)となっていた。また、17年度から26年度までの間に年度間融通の対象となった2,062施設の初年度の年度間融通の活用状況をみると、交付決定の段階で年度間融通を活用することとして単年度交付額を超える交付金の交付を受けているものは100施設(2,062施設の4.8%)となっていた。施設別にみると、汚水処理施設整備交付金の対象施設に対して、交付決定の段階で年度間融通を活用することとして単年度交付額を超える交付金を交付している事態が多く見受けられた。

他施設充当の活用状況をみると、他施設充当を活用していないものは296計画(816計画の36.2%)となっていた。他施設充当を活用していない理由をみると、他施設充当を活用することを検討しなかったためとしているものが49計画(296計画の16.5%)となっていた。

816計画の計画変更の認定申請の状況をみると、計画変更の認定申請を行わなければならないのにしていないものは14計画となっていた。14計画の計画変更の認定申請を行わなかった理由をみると、計画変更に関する基準を知らなかったためとしているものが5計画(14計画の35.7%)、計画変更の認定申請を失念したためとしているものが7計画(同50.0%)となっていた。また、認定地域再生計画の軽微な変更の報告の状況をみると、軽微な変更の報告を行わなければならないのにしていないものは計240計画となっていた。240計画の変更の報告を行わなかった理由をみると、軽微な変更に関する基準を知らなかったためとしているものが59計画(240計画の24.5%)、軽微な変更の報告を行うことを失念したためとしているものが94計画(同39.1%)となっていた。

(4) 認定地域再生計画における目標の設定状況及び達成状況等

1,756計画のうち、認定地域再生計画の計画期間が終了している1,332計画における目標の設定状況をみると、設定された目標数は計3,514目標となっており、このうち、定量的な目標は3,428目標となっていた。3,428目標をアウトプット指標又はアウトカム指標に分類すると、アウトプット指標は355目標、アウトカム指標は3,073目標となっていた。また、1,311計画に設定された定量的な目標3,428目標の達成状況をみると、達成したとしているものは1,749目標(3,428目標の51.0%)にとどまっていた。そして、交付金を記載していた816計画に設定された2,227目標のうち、達成したとしているものは1,171目標(2,227目標の52.5%)、交付金以外の支援措置を記載していた495計画に設定された1,201目標のうち、目標を達成したとしているのは578目標(1,201目標の48.1%)となっており、交付金以外の支援措置を記載していた計画に設定された目標の達成率は50%を下回る状況となっていた。目標を達成していない理由をみると、関係者との調整に時間を要しているためとしているものなどとなっていた。

地域再生制度における国と地方公共団体との連携に関する課題等について地方公共団体に対して調査したところ、回答された課題等は様々な内容となっていた。このうち、地域再生制度に関する課題が数多く挙げられており、中でも「簡素化した使いやすい制度にしてほしい。」等の手続の効率化等に関する意見等が計47件となっていた。また、「活用したい支援措置が少ないので支援措置数を増やしてほしい。」等の支援措置の充実に関する意見等が計28件となっていた。

4 所見

(1) 検査の状況の概要

ア 地域再生計画の作成及び認定状況等

地域のニーズの把握状況をみると、地域のニーズを把握していないとしているものが157計画(調書の対象とした1,756計画の8.9%)となっていた。

対象区域に含まれている地方公共団体が作成主体となっていない主な理由をみると、作成主体が、地域再生計画の作成段階において、該当する地方公共団体と調整を行わなかったためとしたものが16計画(102計画の15.6%)等となっていた。

1,756計画から26年度末に認定を受けて間もない169計画を除いた1,587計画について、認定地方公共団体における認定地域再生計画の公表状況をみると、自らは公表していないとしているものは761計画(1,587計画の47.9%)となっていた。公表していない主な理由をみると、認定地域再生計画の実施内容について公表する必要がないと考えたためとしているものが260計画(761計画の34.1%)等となっていた。

イ 支援措置の適用を受けた事業の実施状況等

支援措置数の推移をみると、19年度末では52件、20年度末では56件と増加したものの、26年度末現在では34件まで減少している。

所管府省庁において、地域再生計画と支援措置との関係及び配慮の内容を周知していない支援措置が見受けられたり、配慮の内容を具体的に定めていない支援措置が見受けられたりした。また、支援措置の中には、認定地域再生計画に1回も記載されていないものが49件(112件の43.7%)となっていた。

認定地方公共団体における提案制度等の活用状況をみると、活用したことがないものは623団体(925団体の67.3%)となっていた。活用していない理由をみると、提案制度等を十分理解していなかったためとしているものが205団体(623団体の32.9%)等となっていて、提案制度等の理解が十分でない団体が多く見受けられた。

ウ 交付金事業の実施状況等

調書の対象とした都道府県44団体のうち、交付金の活用がない沖縄県を除く43団体におけるワンストップ窓口の活用状況をみると、42団体がワンストップ窓口を活用していないとしている状況となっていた。活用していないとしている理由をみると、都道府県において交付金の対象施設を所管している部署が異なっており、部署間で連携を図ることができないためとしている都道府県が18団体等となっていた。

年度間融通の活用状況をみると、26年度末までに計画期間が終了していて、交付金を記載していた816計画のうち、年度間融通を活用していないものは84計画(816計画の10.2%)となっていた。活用していない理由をみると、年度間融通を活用することを検討しなかったためとしているものが42計画(84計画の50.0%)となっていた。また、年度間融通の対象となった2,062施設の初年度の年度間融通の活用状況をみると、交付決定の段階で年度間融通を活用することとして単年度交付額を超える交付金の交付を受けているものは100施設(2,062施設の4.8%)となっていた。

他施設充当の活用状況をみると、他施設充当を活用していないものは296計画(816計画の36.2%)となっていた。活用していない理由をみると、活用することを検討しなかったためとしているものが49計画(296計画の16.5%)となっていた。

816計画の計画変更の認定申請の状況をみると、計画変更の認定申請を行わなければならないのにしていないものは14計画となっていた。計画変更の認定申請を行わなかった理由をみると、計画変更に関する基準を知らなかったためとしているものが5計画(14計画の35.7%)等となっていた。また、認定地域再生計画の軽微な変更の報告の状況をみると、軽微な変更の報告を行わなければならないのにしていないものは240計画となっていた。変更の報告を行わなかった理由をみると、軽微な変更に関する基準を知らなかったためとしているものが59計画(240計画の24.5%)等となっていた。

エ 認定地域再生計画における目標の設定状況及び達成状況等

認定地域再生計画の計画期間が終了している1,332計画における定量的な目標は3,428目標、このうち達成したとしている目標は1,749目標(3,428目標の51.0%)にとどまっていた。

地域再生制度における国と地方公共団体との連携に関する課題等について地方公共団体に対して調査したところ、地域再生制度に関する課題が数多く挙げられており、中でも「簡素化した使いやすい制度にしてほしい。」等の手続の効率化等に関する意見等が計47件、「活用したい支援措置が少ないので支援措置数を増やしてほしい。」等の支援措置の充実に関する意見等が計28件となっていた。

(2) 所見

地域再生法によれば、国は、地方公共団体の自主性及び自立性を尊重しつつ、地域再生に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有するとされており、内閣府及び関係省庁は、認定地方公共団体が認定地域再生計画に基づき行う事業に対して、支援措置を適用するなどして地域が行う自主的かつ自立的な取組を支援している。

また、国は、26年11月の創生法の制定及び地域再生法の改正に伴い変更した基本方針において、「地方創生においては、地方が自ら考え、責任をもって取り組むことが何より重要であることから、都道府県及び市町村は、総合戦略を勘案して、地方版総合戦略を定め、推進することが強く期待されている」等としており、内閣府は、全ての地方公共団体が、27年度中に地方版総合戦略を策定することを期待するとしている。そして、地方版総合戦略は、地域の実情に応じた施策全般にわたる戦略を定めるものであり、地域再生計画は、個別の事業等について具体的に定める実施計画であるとしていることから、27年度以降実施される地域再生法に基づく事業は、地方公共団体における地方版総合戦略の着実な遂行においても重要なものとなる。

一方、「3 検査の状況」に記述したとおり、地域再生計画の認定数や支援措置数が減少傾向となっている事態や、認定地方公共団体において、地域再生計画の作成、認定地域再生計画に基づく事業の実施等の各段階において、地域再生制度を活用する上で留意すべき事態が見受けられた。さらに、地域再生計画を作成していない市町村を含め、地方公共団体は、地域再生制度の活用に関する様々な課題を抱えており、これに対する国への意見や要望を挙げている。他方、地域再生法において、国の責務は定められているものの、地方公共団体の責務については、地域再生が地方公共団体が行う自主的かつ自立的な取組を前提としていることから、定められていない。

したがって、内閣府及び関係省庁においては、地方公共団体が積極的に地域再生制度を活用して地方版総合戦略を着実に遂行できるよう、次の点に留意して、地域再生に関する施策の総合的な策定、及び実施をより一層推進して、地方公共団体における地域再生の総合的かつ効果的な推進に更に取り組むとともに、必要に応じて地域再生制度や交付金制度の見直しを検討することが必要である。

ア 内閣府は、地方公共団体に対して、地域のニーズを十分把握するとともに、地方公共団体間の調整及び連携を十分に図った上で地域再生計画の認定を申請するよう助言する。また、認定地方公共団体に対して、認定地域再生計画については、適時に公表することが望ましいことを助言する。

イ 内閣府及び関係省庁は、連携を一層強化して、地方公共団体が地域再生計画に記載して適用を受けることができる支援措置の充実を図ることを検討する。

ウ 内閣府並びに農林水産省、国土交通省及び環境省は、地方公共団体に対して、交付金の特徴を定期的に周知するなどして交付金のより一層の活用を促すとともに、国土交通省及び環境省は、各年度の交付額が単年度交付額を超えていないことを確認する。また、内閣府は、認定地方公共団体に対して、認定地域再生計画について変更認定等を伴う事態が生じた場合は、変更認定を適時適切に申請することなどについて周知徹底を図るとともに、農林水産省、国土交通省及び環境省は、認定地方公共団体における変更認定を申請する必要がある事態を認めた場合は、内閣府と連携して速やかに変更認定を申請するよう助言する。

エ 内閣府は、地域再生計画の認定に当たり、地域再生計画に設定された目標が認定基準に適合しているか十分確認するとともに、認定地方公共団体の認定地域再生計画に基づく事業の実施に当たり、認定地域再生計画に設定された目標の達成状況を把握し、必要に応じて目標を達成できるよう助言する。また、内閣府及び関係省庁は、地方公共団体に対して、地域再生制度、支援措置に関する情報、提案制度等について定期的に周知するなどして、地方公共団体等との連携を強化することにより地域再生制度の更なる活用を促す。

本院としては、今後とも地域再生法に基づく事業の実施状況等について引き続き注視していくこととする。