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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成27年3月

東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について

第2 検査の結果

1 東日本大震災に伴う被災等の状況

(2) 国の復旧・復興への取組

国は、東日本大震災が地震、津波及び原子力発電施設の事故による複合的なものであるとともに、これらによる被害が甚大で極めて大規模であることから、23年6月24日に復興基本法を施行し、同年7月29日には、基本的な考え方、復興期間、実施する施策、事業規模及び復興財源の確保等を定めた復興基本方針を決定して、国による復興のための取組の全体像を明らかにした(24年報告リンク参照)。そして、国は、復興基本法の基本理念にのっとり、復興に関する内閣の事務を内閣官房と共に助けること及び主体的かつ一体的に行うべき東日本大震災からの復興に関する行政事務の円滑かつ迅速な遂行を図ることを任務とする復興庁を24年2月10日に設置した。同庁には、復興のための施策の実施を推進することなどを目的とする復興推進会議が設置されている(同リンク参照)。

復興基本方針では、「4 あらゆる力を合わせた復興支援」において、復興特別区域制度の創設、集中復興期間に実施すると見込まれる施策・事業の事業規模及び財源確保の道筋等が、「6 原子力災害からの復興」において、放射性物質の除去等の応急対策、復旧対策等がそれぞれ掲げられている。

上記の復興特別区域制度による復興交付金事業計画は、相当数の住宅、公共施設その他の施設の滅失又は損壊等の著しい被害を受けた地域の市町村が単独で又は市町村と道県が共同で作成する計画であり、市町村又は道県は、目標を実現するために必要となる事業として復興交付金事業を同計画に記載し、内閣総理大臣に提出するなどして、復興交付金の交付を受けることができる。復興交付金事業には、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省及び環境省が所管する40の基幹事業と、基幹事業と一体となってその効果を増大させるために実施する効果促進事業とがあり、これらについては、特定被災自治体からの要望を踏まえて見直しが行われている(25年報告リンク参照)。

また、東日本大震災からの復興に係る国の資金の流れの透明化を図るとともに復興債の償還を適切に管理するために、復興事業に関する経理を明確にすることを目的として、24年度に、特別会計に関する法律(平成19年法律第23号。以下「特会法」という。)が改正され、復興特会が設置されている(同リンク参照)。

福島第一原発の事故による原子力災害に関しては、復興基本方針のほかに、福島復興再生特別措置法(平成24年法律第25号。以下「福島特措法」という。)が24年3月31日に施行され、原子力災害からの福島の復興及び再生に関する施策の総合的な推進を図るために、福島特措法に基づく福島復興再生基本方針(以下「福島基本方針」という。)が同年7月13日に閣議決定された(同リンク参照)。

このように、国は被災地の復興に対して様々な取組を行っているが、集中復興期間の4年目に当たる26年度においてもなお、被災地の住民は、住まいと暮らしの再建、復興まちづくりなどに関する困難に直面している。これらの取組のうち、「住宅再建・復興まちづくりの加速化措置」、「東日本大震災の復旧・復興に係る事業規模及び復興財源フレーム」、「原子力災害に対する国の復旧・復興への取組」は、次のとおりである。

ア 住宅再建・復興まちづくりの加速化措置

25年1月10日に開かれた第5回復興推進会議において、住宅再建や復興まちづくりなどについて、工程や目標を示すとともに加速策を具体化し、強力に推進することとされた。これを受けて、復興庁は、同年2月22日に復興大臣や関係省庁の局長等で構成する「住宅再建・復興まちづくりの加速化のためのタスクフォース」を設置した。そして、このタスクフォースにおいて、復興事業の円滑な推進に当たって、所有者不明の土地の存在、技術者・技能者の確保、資材の円滑な確保、入札不調等に関して関係省庁において住宅再建・復興まちづくりの加速化に向けた対応等を具体的に検討し、速やかに対策を実現することとされた。

「住宅再建・復興まちづくりの加速化のためのタスクフォース」は、26年1月までに、住宅再建・復興まちづくりの加速化措置(以下「加速化措置」という。)を公表していて、これまでに、用地取得に関して所有者が不明となっている土地等の取得手続の迅速化、技術者・技能者の確保、資材の円滑な確保、入札不調等に関して市場実態を的確に反映した予定価格の設定、被災者が住まいの確保について見通しを持てるようにするための災害公営住宅及び民間住宅の宅地等の整備に関する工程の四半期ごとの開示等が、加速化措置として公表されている。

イ 東日本大震災の復旧・復興に係る事業規模及び復興財源フレーム
(ア) 19兆円フレーム

国は、東日本大震災の発生後、早期復旧に向けて、4兆0153億余円を計上した平成23年度一般会計第1次補正予算(以下「23年度1次補正」という。)を23年5月2日に成立させ、これに係る財源は、国債市場の信認確保の観点から追加の国債を発行せず、既定経費の削減等の歳出の見直しなどにより確保することとした。続いて、原子力損害賠償、被災者支援等に係る経費として1兆8106億余円を計上した平成23年度一般会計第2次補正予算(以下「23年度2次補正」という。)を同年7月25日に成立させ、これに係る財源は、22年度の決算剰余金を充てて確保することとした。

そして、国は、同年7月29日に決定した復興基本方針に基づき、集中復興期間に係る事業費と財源の見込みを19兆円程度の規模とする復興財源フレーム(以下「19兆円フレーム」という。)を示した。

19兆円フレームの事業規模及び財源のそれぞれの内訳は、図3のとおりである。

図3 19兆円フレームの事業規模及び財源の内訳

図3 19兆円フレームの事業規模及び財源の内訳 画像

事業規模については、復興基本方針によれば、27年度末までの5年間の集中復興期間に実施すると見込まれる施策・事業(23年度1次補正、23年度2次補正等を含む。)の規模として、国・地方(公費分)合わせて少なくとも19兆円程度を見込み、10年間の復旧・復興対策の規模として、少なくとも23兆円程度を見込むとされている。

19兆円フレームの事業規模は、事業費の積み上げによる救助・復旧事業に係る費用と、阪神・淡路大震災の際の復旧・復興に要した費用を踏まえつつ、東日本大震災との被害総額の規模の違いを勘案するなどして見込んだ復興に向けた事業に係る費用とに分けられる。

19兆円フレームの事業規模のうち救助・復旧事業に係る費用10兆円程度は、23年度1次補正及び23年度2次補正の予算額にその後必要となる費用を積み上げて算出している。このうち災害救助、生活再建等に係る費用は4兆円程度、がれき処理、インフラの復旧等に係る費用は6兆円程度となっている。

また、復興に向けた事業に係る費用9兆円程度は、「地域づくり」等のインフラ投資・ソフト事業に係る費用8兆円程度と、全国的な緊急防災・減災事業に係る費用1兆円程度とに分けられる。

なお、事業規模の見込みには、原則として、原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号。以下「原賠法」という。)、放射性物質汚染対処特措法等に基づき電力事業者が負担すべき経費は含まれていない。

一方、復興財源の確保については、復興基本方針によれば、「次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うことを基本とする」との基本的な考え方が示されており、その方法として、歳出の削減、税外収入、時限的な税制措置等により財源を確保することとされている。さらに、財源確保の道筋として、先行する復旧・復興需要を賄う一時的なつなぎとして復興債を発行することが示されており、時限的な税制措置による税収は、全て復興債の償還を含む復旧・復興費用に充て、他の経費には充てないことを明確化することとされている。

そして、19兆円フレームの財源は、時限的な税制措置である復興特別税(復興特別所得税、復興特別法人税等)の収入見込額計10.5兆円程度と、歳出削減・税外収入等の8.5兆円程度とに分けられる。

復興特別税の税収見込みは、復興特別所得税が各年度0.29兆円で25年間の課税期間により7.3兆円程度、復興特別法人税が各年度0.8兆円で3年間の課税期間により2.4兆円程度等となっている。また、歳出削減・税外収入等では、子ども手当の見直しなどの歳出削減、東京地下鉄株式会社(以下「東京地下鉄」という。)の政府保有株式の売却収入等が見込まれている。なお、23年度1次補正において震災に対処するための必要な財源を確保するために減額された年金臨時財源2.5兆円程度については、平成23年度一般会計第3次補正予算(以下「23年度3次補正」という。)で当該年金に係る経費が改めて計上されたが、この経費は復興財源確保法の規定により復興費用とみなすこととされたため、復興財源である歳出削減・税外収入等が充当されている。

復興基本方針によれば、19兆円フレームの事業規模及び財源については、一定期間経過後に事業の進捗等を踏まえて必要な見直しを行うこととされている。

(イ) 19兆円フレームの見直し

国は、復興基本方針及び19兆円フレームを定めた後、復興基本方針に基づく東日本大震災からの本格的な復興のための予算として、9兆0095億余円(年金臨時財源の補塡分2兆4896億余円を除く。)を計上した23年度3次補正を成立させた。

これにより、23年度補正予算における東日本大震災関係経費に係る予算額は計14兆8354億余円となり、23年度予算における予算現額は計14兆8243億余円となっている(23年度予算の歳出予算額及び執行状況はリンク参照)。このうち、23年度3次補正に係る経費は、あらかじめ償還の道筋を定めた復興債の発行等により賄うこととされた。

なお、国は、復興財源確保法に基づき、23年度3次補正及び24年度から27年度までの各年度において実施される復興施策の経費に充てるために、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲で復興債を発行することができることとなっている。復興債は、短期的に不足する財源を賄う一時的なつなぎであり、この償還財源として復興特別税収入、政府保有株式の売却収入等が措置されている(復興債の発行及び償還の状況はリンク参照)。

復興債の発行・償還期間及び復興特別税の課税期間は、図4のとおりである。

図4 復興債の発行・償還期間及び復興特別税の課税期間

図4 復興債の発行・償還期間及び復興特別税の課税期間 画像

そして、国は、平成24年度東日本大震災復興特別会計当初予算(以下「24年度当初予算」という。)を成立させた後、平成24年度東日本大震災復興特別会計補正予算(以下「24年度補正予算」という。)及び平成25年度東日本大震災復興特別会計当初予算(以下「25年度当初予算」という。)の編成過程において、「今後の復旧・復興事業の規模と財源について」(平成25年1月29日復興推進会議決定)により19兆円フレームを見直し、集中復興期間に係る事業費と財源の見込みを25兆円程度の規模とする復興財源フレーム(以下「25兆円フレーム」という。)を示した。

25兆円フレームの事業規模及び財源のそれぞれの内訳は、図5のとおりである。

図5 25兆円フレームの事業規模及び財源の内訳

図5 25兆円フレームの事業規模及び財源の内訳 画像

上記の見直しでは、事業規模については、23、24両年度の事業費が計17.5兆円、25年度概算決定での事業費が計3.3兆円程度、26、27両年度に確実に実施が見込まれる施策・事業の規模が計2.7兆円程度であることから、集中復興期間に実施する施策・事業の規模の見込みを少なくとも23.5兆円程度とした。このうち23年度から25年度までの額は、復興債の元本償還に係る費用等を除いた事業費から、東京電力への求償が想定される額及び23年度の不用額を控除して算出している。

26、27両年度に確実に実施が見込まれる施策・事業及びその規模は、復興交付金0.9兆円、災害復旧事業0.8兆円、インフラ復興事業0.5兆円、震災復興特別交付税0.5兆円等となっている。復興庁によれば、19兆円フレームの見直しの時点で災害査定等が終わっていなかった復旧・復興事業、工事を伴う公共事業以外の分野の復興事業等に係る費用は、これらの額の積算に含まれていないとしている。

また、財源については、既に確保されている19兆円程度に加えて、税外収入として、日本郵政の株式売却による収入見込額の4兆円程度及び23年度の決算剰余金等の2兆円程度を確保し、集中復興期間の財源の全体額として25兆円程度を確保することとした。

(ウ) 事業規模及び財源の26年9月末現在の状況

国は、25兆円フレームを示した後、平成25年度東日本大震災復興特別会計補正予算(以下「25年度補正予算」という。)及び平成26年度東日本大震災復興特別会計当初予算(以下「26年度当初予算」という。)を成立させた。図5で示した25兆円フレームの事業規模及び財源のそれぞれの内訳について、26年9月末現在の状況を示すと、図6のとおりである。

なお、上記の状況を示すに当たって、事業費及び財源については、23年度から25年度までは補正後予算額等、26年度は当初予算額等、27年度以降は25兆円フレームでの見込額を用いている。また、金額については、千億円単位の概数(単位未満を四捨五入)としている。

図6 25兆円フレーム並びに事業規模及び財源の平成26年9月末現在の状況

図6 25兆円フレーム並びに事業規模及び財源の平成26年9月末現在の状況 画像

事業規模をみると、23年度から25年度までの事業費は、25兆円フレームでは計20.8兆円となっていたが、26年9月末現在の状況では、25兆円フレームが示された後に確定した25年度の事業費が追加される一方、24、25両年度の復興特会に不用額が生じたことなどのため、計20.0兆円となっている。26、27両年度の事業費の見込みは、25兆円フレームでは計2.7兆円となっていたが、26年9月末現在の26年度の事業規模には、同フレームが示された時点で災害査定等が終わっていなかった復旧・復興事業、工事を伴う公共事業以外の分野の復興事業等に係る費用が含まれていることなどのため、26年度のみで2.6兆円に達している。このように、26年9月末現在の事業規模は、26年度までで計22.6兆円となり、25兆円フレームとの差額は2.4兆円程度となっている。

一方、財源をみると、復興特別税収については、25兆円フレームでは10.5兆円程度となっていたが、26年9月末現在の状況では、24、25両年度が計2.0兆円、26年度当初予算の額が0.8兆円、25兆円フレームにおける27年度から課税期間の最終年度である49年度までの復興特別所得税収の見込額が計6.7兆円で、全体見込額は計9.5兆円程度となっている。これは、復興特別法人税の廃止を1年前倒ししたため、25兆円フレームで見込んでいた当該税収1年度分の0.8兆円が減収となることなどのためである。

歳出削減・税外収入等については、25兆円フレームでは計10.5兆円程度が見込まれていたが、26年9月末現在の状況では、23年度から25年度までの計9.3兆円、26年度当初予算の0.8兆円、合計10.1兆円が既に財源として確保されている。

なお、税外収入のうち日本郵政の株式売却収入は、今後の財源として見込まれているため、26年9月末現在の状況としては、25兆円フレームの見込額の4兆円と同額としている。

ウ 原子力災害に対する国の復旧・復興への取組

福島第一原発の事故による原子力災害については、25年8月に福島県内の全ての避難指示対象市町村(田村市、南相馬市、伊達郡川俣町、双葉郡楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、川内村、葛尾村及び相馬郡飯舘村)において、避難指示区域の見直しが完了し、その後、26年4月に田村市、同年10月に川内村の一部において避難指示が解除された(避難指示区域の見直しの状況はリンク参照)。国は、引き続き放射線の健康影響等に関する不安、賠償、帰還支援、廃炉、汚染水問題等、多くの課題への対応が必要とされることから、様々な取組を実施することとしている。原子力災害による被害が著しい福島県における原子力災害に対する国の主な体制は、図7のとおりとなっている。

図7 福島県における原子力災害に対する国の主な体制

図7 福島県における原子力災害に対する国の主な体制 画像

(ア) 福島の復興の加速に向けての取組

国は、原子力災害からの福島の復興・再生を一層加速させるための指針として、25年12月20日に「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」(原子力災害対策本部決定。以下「福島復興の加速指針」という。)を策定し、同日付けで閣議決定した。そして、この指針において、①「早期帰還支援と新生活支援の両面で福島を支える」、②「福島第一原発の事故収束に向けた取組を強化する」、③「国が前面に立って原子力災害からの福島の再生を加速する(国と東京電力の役割分担の明確化)」の3項目を示している。

上記3項目の具体的な取組は、次のとおりとなっている。

① 「早期帰還支援と新生活支援の両面で福島を支える」における取組として、25年度補正予算及び26年度当初予算から福島再生加速化交付金(以下「福島交付金」という。)を創設するなどとされている。この交付金は、放射線不安を払拭する生活環境の向上、町内復興拠点の整備等の新たな施策と、これまで個別に実施していた長期避難者支援から早期帰還までの対応策とを一括して支援するものである。福島交付金等により、長期避難者の生活拠点を形成するための災害公営住宅の整備等が実施されており、26年9月末現在、福島県の全体計画戸数4,890戸のうち約9割の事業計画に対し交付可能額が通知されている(実施状況はリンク参照)。

② 「福島第一原発の事故収束に向けた取組を強化する」における取組として、廃炉支援業務と賠償支援業務の連携の強化に向けて、原子力損害賠償支援機構の活用も含めて検討するなどとされている。そして、原子力損害賠償支援機構法の一部を改正する法律(平成26年法律第40号。以下、改正前の法律を含めて「機構法」という。)が26年5月に成立し、同年8月に施行された。これにより、原子力損害賠償支援機構は原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下、その前身である原子力損害賠償支援機構を含めて「機構」という。)に改められ、機構の従来の賠償支援業務に廃炉支援業務を追加するなどの措置が講じられた。

③ 「国が前面に立って原子力災害からの福島の再生を加速する」における取組として、被災者・被災企業への賠償は、引き続き東京電力の責任において適切に行うこととし、実施済み又は現在計画されている除染・中間貯蔵施設事業の費用は、放射性物質汚染対処特措法に基づき、復興予算として計上した上で、事業実施後に環境省等から東京電力に求償すること、東京電力において必要となる資金繰りは、機構法に基づき、機構への交付国債の交付・償還により国が支援することなどとされている(図8参照)。このため、国は、26年度のエネルギー対策特別会計原子力損害賠償支援勘定の予算において、交付国債の発行限度額を5兆円から9兆円に引き上げた。また、中間貯蔵施設費用相当分についても、事業期間(30年以内)にわたり資金交付を行うこととして、同特別会計電源開発促進勘定において、26年度分の350億円を計上した。

なお、環境省は、放射性物質汚染対処特措法に基づき、放射性物質により汚染された土壌等の除染の実施(以下「汚染土壌等の除染」という。)、放射性物質汚染廃棄物処理事業(以下「汚染廃棄物処理事業」という。)及び中間貯蔵施設検討・整備事業(以下「中間貯蔵施設事業」といい、これらの3事業を合わせて「除染等の事業」という。)を実施しており、当該事業に要した費用については、福島復興の加速指針に基づき、事業実施後に東京電力に求償することとしている(図8参照除染等の事業の実施状況はリンク求償等の状況はリンク参照)。

図8 国による東京電力の資金繰り支援

図8 国による東京電力の資金繰り支援 画像

(イ) 避難指示区域の見直しの状況

避難指示区域の解除の決定は、「ステップ2の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題について」(平成23年12月原子力災害対策本部決定)に基づき行われることとなっている。これによれば、国は、年間積算線量20mSv(注6)以下となることが確実であると確認された地域を避難指示解除準備区域に設定した上で、電気、ガス、上下水道、主要交通網、通信等の日常生活に必須なインフラや医療、介護、郵便等の生活関連サービスがおおむね復旧し、子どもの生活環境を中心とする除染作業が十分に進捗した段階で、県、市町村及び住民との十分な協議を踏まえて、避難指示を解除することとされている。

(注6)
Sv(シーベルト) 人体の被ばくによる生物学的影響の大きさ(線量当量)を表す単位

国は、緊急時避難準備区域を23年9月30日に解除し(25年報告リンク参照)、警戒区域及び避難指示区域を上記の原子力災害対策本部決定に基づき新たな避難指示区域へ見直した結果、図9[25年8月8日現在の状況]のとおり、25年8月8日までに、2市6町3村の一部を避難指示解除準備区域に、1市4町3村の一部を居住制限区域(年間積算線量が20mSvを超えるおそれがあり、住民の被ばく線量を低減する観点から、引き続き避難の継続を求める地域)に、1市4町2村の一部を帰還困難区域(事故後6年間を経過してもなお年間積算線量が20mSvを下回らないおそれがある年間積算線量が50mSv超の地域)にそれぞれ再編した。

その後、国は、図9[26年10月1日現在の状況]のとおり、26年4月1日に田村市の一部に設定していた避難指示解除準備区域における避難指示を解除し、同年10月1日に川内村の一部に設定していた避難指示解除準備区域における避難指示を解除するととともに、同村の一部に設定していた居住制限区域を避難指示解除準備区域に再編した。その結果、26年10月1日現在、10市町村に避難指示区域が設定されている。

図9 避難指示区域等の設定状況(概念図)

図9 避難指示区域等の設定状況(概念図) 画像

上記避難指示区域の市町村別の人口、世帯数及び面積は、表10のとおり、26年10月1日現在、7万9260人、2万8332世帯、約1,000km2となっており、10市町村全体のそれぞれ53.9%、52.6%、66.4%を占めている。特に、富岡町等6町村は全域が、楢葉町は面積の83.4%が避難指示区域に設定されている。

表10 避難指示区域の人口、世帯数及び面積(平成26年10月1日現在)

市町村名 区分 全体 避難指示区域 区域対象外
    帰還困難区域 居住制限区域 避難指示解除準備区域
割合 (%)   割合 (%)   割合 (%)   割合 (%)   割合 (%)
楢葉町 人口 (人) 7,523 7,474 99.3 - - - - 7,474 99.3 49 0.6
世帯数 (世帯) 2,736 2,718 99.3 - - - - 2,718 99.3 18 0.6
面積 (km2) 103 86 83.4 - - - - 86 83.4 17 16.5
富岡町 人口 (人) 14,136 14,136 100.0 4,141 29.2 8,630 61.0 1,365 9.6 - -
世帯数 (世帯) 5,632 5,632 100.0 1,684 29.9 3,456 61.3 492 8.7 - -
面積 (km2) 68 68 100.0 8 11.7 35 51.4 25 36.7 - -
大熊町 人口 (人) 10,878 10,878 100.0 10,485 96.3 370 3.4 23 0.2 - -
世帯数 (世帯) 3,954 3,954 100.0 3,812 96.4 130 3.2 12 0.3 - -
面積 (km2) 79 79 100.0 49 62.0 12 15.1 18 22.7 - -
双葉町 人口 (人) 6,358 6,358 100.0 6,113 96.1 - - 245 3.8 - -
世帯数 (世帯) 2,391 2,391 100.0 2,314 96.7 - - 77 3.2 - -
面積 (km2) 51 51 100.0 49 96.0 - - 2 3.9 - -
浪江町 人口 (人) 19,089 19,089 100.0 3,279 17.1 8,097 42.4 7,713 40.4 - -
世帯数 (世帯) 7,124 7,124 100.0 1,168 16.3 3,000 42.1 2,956 41.4 - -
面積 (km2) 224 224 100.0 180 80.3 23 10.2 21 9.3 - -
葛尾村 人口 (人) 1,499 1,499 100.0 116 7.7 62 4.1 1,321 88.1 - -
世帯数 (世帯) 457 457 100.0 33 7.2 21 4.5 403 88.1 - -
面積 (km2) 85 85 100.0 16 18.8 5 5.8 64 75.2 - -
飯舘村 人口 (人) 6,321 6,321 100.0 271 4.2 5,266 83.3 784 12.4 - -
世帯数 (世帯) 1,879 1,879 100.0 76 4.0 1,597 84.9 206 10.9 - -
面積 (km2) 230 230 100.0 11 4.7 157 68.2 62 26.9 - -
南相馬市 人口 (人) 63,700 12,271 19.2 2 0.0 495 0.7 11,774 18.4 51,429 80.7
世帯数 (世帯) 22,903 3,802 16.6 1 0.0 129 0.5 3,672 16.0 19,101 83.3
面積 (km2) 399 171 42.8 24 6.0 56 14.0 91 22.8 228 57.1
川俣町 人口 (人) 14,781 1,180 7.9 - - 126 0.8 1,054 7.1 13,601 92.0
世帯数 (世帯) 5,548 356 6.4 - - 42 0.7 314 5.6 5,192 93.5
面積 (km2) 127 32 25.1 - - 3 2.3 29 22.8 95 74.8
川内村 人口 (人) 2,758 54 1.9 - - - - 54 1.9 2,704 98.0
世帯数 (世帯) 1,161 19 1.6 - - - - 19 1.6 1,142 98.3
面積 (km2) 197 12 6.1 - - - - 12 6.1 185 93.8
人口 (人) 147,043 79,260 53.9 24,407 16.5 23,046 15.6 31,807 21.6 67,783 46.0
世帯数 (世帯) 53,785 28,332 52.6 9,088 16.8 8,375 15.5 10,869 20.2 25,453 47.3
面積 (km2) 1,563 1,038 66.4 337 21.5 291 18.6 410 26.2 525 33.5
注(1)
人口及び世帯数は、市町村から聞き取った情報(平成26年10月1日時点の住民登録数)を基に内閣府原子力被災者生活支援チームが集計したものである。
注(2)
割合は、全体に対する割合を示す。

また、図9[平成23年4月22日現在の状況]のとおり、5市町村に23年4月22日現在設定されていた緊急時避難準備区域は同年9月30日に解除されている。内閣府によれば、同区域に設定されていた地域における避難者の帰還状況について、東日本大震災発生前の人口約6万人のうち、26年10月1日現在約4万人が帰還し、推計約2万人が避難を続けているとしている。

避難生活が長期化する中、住民の意向等にも変化が見られている。復興庁等は、24年度から避難期間中の生活環境の改善や支援策等の具体化を進めることなどを目的に、避難指示区域が設定されるなどしている市町村の住民を対象として、今後の生活再建に向けた住民意向調査を実施している。そして、24、25両年度に調査を実施した7町村の住民の意向の変化についてみると、6町村において、帰還について「戻らない」とする回答の割合が増加している。

特に、福島第一原発が所在する双葉町及び大熊町では、25年度の調査で60%以上の住民が「戻らない」と回答している。その理由は、放射線量や原子力発電所の安全性等に対する不安、商業施設・医療機関等のインフラの整備の遅れ、雇用問題、コミュニティの形成に対する不安等となっており、多岐にわたっている。