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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成27年9月

医療費の適正化に向けた取組の実施状況について


2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

前記のとおり、我が国の国民医療費は、21年度に35兆円を超えて以降、毎年度増加している。そして、今後の我が国の一層の高齢化の進行等に伴いますます増大することが予想されており、これに伴い国庫負担もますます増大することが予想されている。

このような状況を踏まえ、厚生労働省は、第1期基本方針を定め、これに即して各都道府県が都道府県医療費適正化計画を策定し、医療費の急増を抑えていくための重要な政策として、生活習慣病予防対策としての特定健診等の実施率等に関する目標や入院期間の短縮対策としての療養病床の削減及び平均在院日数の短縮に関する目標を定めるなどして、これらの目標を達成するために必要な施策を総合的かつ計画的に推進することにより、我が国全体の医療費適正化を推進することとしている。

また、厚生労働省は、こうした取組と並行して、従来、レセプトの内容等の審査及び点検を行う審査支払機関及び保険者等に対する指導等を通じ、医療機関等に対する個々の診療報酬等の支払の適正化を図るとともに、医療機関等に対する指導及び監査の実施を通じ、診療報酬等の請求等の総体的な適正化を図ることとしている。

そして、前記のとおり、会計検査院は、26年10月に厚生労働大臣に対して、基本方針に基づき療養病床の削減を推進するために実施されている病床転換助成事業の実施が極めて低調となっているため、病床転換支援金の大部分が支払基金における剰余金となっているなどしている事態について、会計検査院法第36条の規定により、その見直しなどを行うよう意見を表示するとともに、会計検査院法第34条の規定により、支払基金における病床転換支援金の経理について、国庫補助金相当額の返還を含む見直しを行うよう支払基金を指導するなどの是正改善の処置を求めている。また、会計検査院は、昭和61年度以降、診療報酬等の支払が適正に行われているかについて検査した結果を毎年度の検査報告に不当事項(医療費に係る国の負担が不当と認められるもの)として掲記するとともに、その発生原因として、審査支払機関等において、医療機関等の不適正な診療報酬等の請求に対する審査・点検が十分でなかったこと、地方厚生(支)局等において、医療機関等に対する指導が十分でなかったことなどを挙げている。さらに、会計検査院は、平成26年10月に厚生労働大臣に対して、医療費の支払の一環である国民健康保険等における海外療養費の支給について、制度の適正かつ公平な運用を図る必要があるとして、その支給に当たっては適切な審査等が行われるよう改善の処置を要求している。

そこで、これらの検査結果等も踏まえて、厚生労働省における前記の医療費の適正化に向けた取組の実施状況について、合規性、有効性等の観点から、次のような点に着眼して検査した。

ア 医療費適正化計画における医療費適正化のための各種の施策(生活習慣病予防対策としての特定健診等の実施の推進、入院期間の短縮対策としての療養病床の削減及び平均在院日数の短縮の取組等)は着実に実施されており、また、その実績に関する評価は適切に行われているか、特に、生活習慣病予防対策として実施されている特定健診等が医療費適正化に及ぼす効果について評価することを一つの重要な目的として構築されたNDBシステムは、システム構築の所期の目的どおり運用されているか、特に、第2期医療費適正化計画の実績に関する評価において、生活習慣病予防対策として実施されている特定健診等が医療費適正化に及ぼす効果について、NDBシステムに収集・保存されているデータの突合・分析等により得られる詳細な分析データに基づき適切な評価を行うことができる運用状況となっているか

イ 審査支払機関及び助成対象保険者等におけるレセプト1次審査及びレセプト2次点検は、効率的かつ効果的に行われているかウ 医療機関等に対する指導及び監査は、指導大綱、監査要綱等に即して適切に実施されているか

ウ 医療機関等に対する指導及び監査は、指導大綱、監査要綱等に即して適切に実施されているか

(2) 検査の対象及び方法

厚生労働本省、8厚生(支)局の管轄区域内に所在する24事務所等、22都県及び管内の155市区町(155保険者)、22広域連合及び22国保連合会、2国民健康保険組合、全国健康保険協会本部及び同協会の22支部、2健康保険組合並びに支払基金本部において、関係書類の提出を受けるとともに、関係者から説明等を徴取するなどして会計実地検査を行った。