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  • 平成27年9月

土砂災害対策に係る事業の実施状況について


3 検査の状況

(1) 土砂災害対策に係る事業費

都道府県は、土砂災害危険箇所等において、砂防関係施設を整備するなどのハード対策を実施したり、基礎調査を行い警戒区域等に指定するなどのソフト対策を実施したりしている。そして、27都道府県が実施した21年度から25年度までの間のハード対策及びソフト対策に係る事業費についてみると、表4のとおり、毎年度多額に上っており、これらのうち、ハード対策に係る事業費については、砂防事業に係るものが他の事業区分のものと比べて高額になっている。

表4 土砂災害対策に係る事業費(平成21年度から25年度まで)

(単位:千円)
事業区分 平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
ハード対策に係る事業費 砂防事業 71,328,918 68,292,790 62,234,593 65,997,882 46,056,634
36,962,538 36,109,260 33,342,863 34,351,423 24,165,327
地すべり対策事業 12,829,533 10,479,205 12,220,530 13,299,034 8,928,894
6,614,466 5,445,927 6,662,960 6,997,505 4,653,514
急傾斜地崩壊対策事業 32,055,216 28,823,599 27,005,807 29,626,813 23,514,248
14,611,691 13,357,227 12,485,227 13,735,331 10,940,333
その他 154,399 152,910 54,546 534,986 503,350
77,200 76,456 27,273 267,493 251,675
116,368,066 107,748,504 101,515,476 109,458,715 79,003,126
58,265,895 54,988,870 52,518,323 55,351,752 40,010,849
ソフト対策に係る事業費計 8,438,544 8,578,199 7,735,537 10,048,121 9,624,097
3,121,449 3,238,238 2,898,682 4,034,399 3,602,075
合計 124,806,610 116,326,703 109,251,013 119,506,836 88,627,223
61,387,344 58,227,108 55,417,005 59,386,151 43,612,924
注(1)
上段:事業費、下段:国庫補助金(交付金を含む。事業費の内数)
注(2)
「その他」には、砂防事業、地すべり対策事業又は急傾斜地崩壊対策事業に区分することが困難なものを計上している。
注(3)
平成24、25両年度については、事業が完了していないものがあることから26年度へ繰り越した額を除いている。

(2) 警戒区域等における砂防関係施設の整備状況等

ア 警戒区域等の指定の状況

土砂災害危険箇所と基礎調査の結果をもとに指定する警戒区域は、調査の対象となる地域の要件が異なるものの、土砂災害危険箇所の大半が基礎調査を行う対象に含まれていることなどから、土砂災害危険箇所数に対する警戒区域の指定区域数の割合により、警戒区域の指定の進捗状況がある程度把握できると考えられる。そこで、26年12月末現在の27都道府県の土砂災害危険箇所数に対する警戒区域の指定区域数の割合等についてみると、表5のとおりとなっていた。

すなわち、警戒区域の指定状況についてみると、基礎調査の対象となる区域数が土砂災害危険箇所数より多いことから、警戒区域の指定区域数が土砂災害危険箇所数よりも多くなる場合もあるが、警戒区域の指定区域数が土砂災害危険箇所数を上回っていて、指定が比較的進んでいる都府県がある一方で、土砂災害危険箇所数に対する警戒区域の指定区域数の割合が30%以下となっているなどしていて、指定が進んでいない道県もあり、都道府県によって進捗状況に大きな差が生じていた。

さらに、特別警戒区域の指定状況について災害区分別でみると、27都道府県の警戒区域数のうち土石流では40.9%、急傾斜地の崩壊では53.8%の区域において、特別警戒区域にも指定された区域があり、警戒区域の約半数の区域に、土砂災害が発生した場合に住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがある区域が含まれている状況となっていた。なお、地すべりでは、特別警戒区域は1区域のみ指定されているが、当該区域は、現在、地すべりの事象が発生している区域である。

表5 警戒区域等の指定状況

都道府県名 土石流 地すべり 急傾斜地の崩壊
土砂災害
危険箇所
警戒区域の指定区域 左のうち特別警戒区域
の指定区域
土砂災害
危険箇所
警戒区域の指定区域 左のうち特別警戒区域
の指定区域
土砂災害
危険箇所
警戒区域の指定区域 左のうち特別警戒区域
の指定区域
割合 割合 割合 割合 割合 割合
A B B/A C C/B D E E/D F F/E G H H/G I I/H
箇所 区域 % 区域 % 箇所 区域 % 区域 % 箇所 区域 % 区域 %
北海道 4,995 402 8.0 196 48.7 437 - - - 6,466 1,177 18.2 1,107 94.0
秋田県 4,187 825 19.7 309 37.4 262 - - - 3,236 799 24.6 374 46.8
山形県 2,216 2,080 93.8 1,311 63.0 230 481 209.1 - - 1,325 1,975 149.0 1,910 96.7
茨城県 1,665 706 42.4 598 84.7 105 22 20.9 - - 2,309 1,564 67.7 1,503 96.0
群馬県 3,015 2,826 93.7 2,311 81.7 213 342 160.5 - - 4,188 5,799 138.4 5,717 98.5
埼玉県 1,202 1,070 89.0 834 77.9 110 17 15.4 - - 2,907 2,153 74.0 1,698 78.8
千葉県 641 - - - 52 - - - 9,071 2,730 30.0 2,680 98.1
東京都 703 1,379 196.1 843 61.1 43 19 44.1 - - 2,972 5,595 188.2 3,143 56.1
富山県 1,430 1,383 96.7 885 63.9 194 657 338.6 1 0.1 2,835 2,843 100.2 2,781 97.8
福井県 3,111 4,525 145.4 3,412 75.4 146 132 90.4 - - 3,601 7,003 194.4 6,072 86.7
愛知県 5,181 1,768 34.1 1,350 76.3 75 1 1.3 - - 12,527 4,145 33.0 3,948 95.2
三重県 5,648 1,499 26.5 1,225 81.7 85 - - - 10,473 2,399 22.9 2,331 97.1
京都府 5,024 5,025 100.0 3,289 65.4 58 23 39.6 - - 3,765 7,136 189.5 7,028 98.4
兵庫県 6,912 6,868 99.3 1 0.0 286 207 72.3 - - 13,550 13,326 98.3 45 0.3
奈良県 3,136 2,770 88.3 9 0.3 106 51 48.1 - - 4,944 5,040 101.9 24 0.4
和歌山県 5,745 1,815 31.5 898 49.4 495 139 28.0 - - 12,247 3,973 32.4 2,310 58.1
鳥取県 2,593 2,596 100.1 1,448 55.7 94 110 117.0 - - 3,481 3,432 98.5 2,665 77.6
島根県 8,120 13,191 162.4 240 1.8 264 621 235.2 - - 13,912 18,211 130.9 672 3.6
山口県 7,532 9,801 130.1 2,942 30.0 285 328 115.0 - - 14,431 14,550 100.8 4,086 28.0
徳島県 2,244 803 35.7 637 79.3 591 26 4.3 - - 10,166 2,079 20.4 2,032 97.7
香川県 2,902 2,277 78.4 1,325 58.1 117 - - - 3,953 3,480 88.0 2,973 85.4
愛媛県 5,877 1,700 28.9 1,465 86.1 506 - - - 8,807 566 6.4 565 99.8
長崎県 6,196 1,539 24.8 1,432 93.0 1,169 - - - 8,866 8,652 97.5 8,233 95.1
大分県 5,125 1,359 26.5 1,086 79.9 222 - - - 14,293 2,693 18.8 2,647 98.2
宮崎県 3,239 858 26.4 379 44.1 273 7 2.5 - - 8,314 2,172 26.1 1,440 66.2
鹿児島県 4,301 4,337 100.8 1,706 39.3 85 - - - 11,818 9,312 78.7 3,866 41.5
沖縄県 236 128 54.2 - - 88 62 70.4 - - 708 686 96.8 - -
103,176 73,530 71.2 30,131 40.9 6,591 3,245 49.2 1 0.0 195,165 133,490 68.3 71,850 53.8
注(1)
基礎調査の対象となる区域数が土砂災害危険箇所数より多いことから、土砂災害危険箇所数に対する警戒区域の指定区域数の割合が100%を超える都府県がある。
注(2)
警戒区域の指定をした区域の中には、調査が実施途中であることなどから、特別警戒区域の指定にまで至っていない区域がある。

イ 砂防関係施設が未整備の特別警戒区域における保全対象の状況等

26年12月末現在、基礎調査が行われ特別警戒区域に指定されている区域のうち、砂防関係施設が未整備である区域についてみると、表6のとおり、土石流では26,344区域、急傾斜地の崩壊では61,657区域と多数に上っていた。そして、これらの区域において、人家、公共施設等の保全対象が多数所在している都道府県が見受けられた。

また、調査報告書によれば、人的被害が大きかった広島県の緑井、八木両地区は、市街化地域の拡大に伴い人口集中地区(注3)(以下「DID」という。)となっており、更に両地区の一部には特別警戒区域が含まれていた。

このように、DID等の人家が密集している区域を含む警戒区域等においては、土砂災害が発生した場合には甚大な被害を被ることが想定される。そこで、砂防関係施設が未整備である特別警戒区域を含む警戒区域の一部等がDIDとなっている警戒区域についてみると、表6のとおり、土石流では692区域、急傾斜地の崩壊では6,882区域となっており、27都道府県の中にはこのような警戒区域が多く存在している都道府県も見受けられた。

(注3)
人口集中地区 Densely Inhabited District(DID) 市町村の境域内で人口密度が原則として4,000人/㎢以上の国勢調査の基本単位区が隣接して、その人口が5,000人以上となる地域

表6 砂防関係施設が未整備の特別警戒区域における保全対象の状況等

都道府県名 土石流 急傾斜地の崩壊
  砂防関係施設が
未整備である特
別警戒区域を含
む警戒区域の一部
等がDIDとなっ
ている警戒区域数
  砂防関係施設が
未整備である特
別警戒区域を含
む警戒区域の一部
等がDIDとなっ
ている警戒区域数
特別警戒区域数 うち砂防関係施設が
未整備である区域数
保全対象 特別警戒区域数 うち砂防関係施設が
未整備である区域数
保全対象
人家 公共施設 人家 公共施設
区域 区域 区域 区域 区域 区域
北海道 196 187 104 13 34 1,107 996 3,499 142 401
秋田県 309 271 103 1 - 374 287 327 7 3
山形県 1,311 1,237 352 4 5 1,910 1,496 1,644 43 46
茨城県 598 551 686 142 - 1,503 1,158 3,417 110 199
群馬県 2,311 2,133 325 958 - 5,717 5,101 3,468 1,248 -
埼玉県 834 748 195 13 - 1,698 1,594 2,588 133 14
千葉県 - - - - - 2,680 2,550 4,836 157 236
東京都 843 831 202 14 148 3,143 3,126 2,660 267 602
富山県 885 790 151 5 2 2,781 2,196 2,132 23 23
福井県 3,412 3,123 462 - 15 6,072 5,562 3,614 24 131
愛知県 1,350 1,188 1,037 46 5 3,948 3,581 5,720 363 101
三重県 1,225 1,074 126 9 3 2,331 2,169 1,666 77 31
京都府 3,289 3,054 1,298 43 42 7,028 6,274 10,176 450 147
兵庫県 1 1 - - - 45 45 - - -
奈良県 9 8 35 2 - 24 7 7 - -
和歌山県 898 838 1,295 63 58 2,310 2,009 5,114 158 35
鳥取県 1,448 1,217 1,026 1 - 2,665 2,366 5,398 21 -
島根県 240 234 156 6 - 672 653 1,272 29 -
山口県 2,942 1,708 520 37 23 4,086 1,737 4,420 95 40
徳島県 637 539 377 19 1 2,032 1,814 3,502 197 15
香川県 1,325 1,197 188 - 1 2,973 2,795 2,892 51 31
愛媛県 1,465 1,340 1,008 103 59 565 512 449 126 21
長崎県 1,432 1,361 1,978 3 281 8,233 7,866 9,738 437 4,632
大分県 1,086 941 113 4 4 2,647 2,394 2,999 172 103
宮崎県 379 344 120 13 - 1,440 1,209 2,365 131 66
鹿児島県 1,706 1,429 16,598 15 11 3,866 2,160 8,371 61 5
沖縄県 - - - - - - - - - -
30,131 26,344 28,455 1,514 692 71,850 61,657 92,274 4,522 6,882
(注)
公共施設とは、官公署、学校、病院、社会福祉施設等である(以下、表において同じ。)。

このようなことから、警戒区域の一部等がDIDとなっている警戒区域については、優先的に砂防関係施設を整備するよう優先順位を検討することが重要である。

ウ 土砂災害の発生箇所におけるソフト対策及びハード対策の実施状況等

前記のとおり、調査報告書によれば、人的被害が最も大きかった八木地区の八木ヶ丘団地及び阿武の里団地においては、過去にも土石流が発生したと推定できるとされている。

このように、土砂災害は、同じ箇所で繰り返し発生する可能性もあることから、再び同じ被害を生じさせないためにも、土砂災害が発生した箇所においてソフト対策及びハード対策を実施することを検討したり、過去に土砂災害が発生した箇所をできるだけ把握したりしておくことが重要であると考えられる。

そして、土砂災害防止法が制定された12年から26年までの間に人的被害が生じた土砂災害の発生箇所78か所についてみると、26年12月末現在におけるソフト対策及びハード対策の実施状況は、表7のとおり、警戒区域等に指定され、かつ、砂防関係施設等が整備されている箇所は46か所(58.9%)となっていた。なお、警戒区域等に指定されているが砂防関係施設等が整備されていない3か所は、土砂災害発生後、人家等の保全対象がなくなったとして、砂防関係施設等が整備されていなかった箇所である。

表7 人的被害が生じた土砂災害の発生箇所における土砂災害対策の実施状況

(単位:箇所)
都道府県名 災害区分 警戒区域等に指定されている 警戒区域等に指定されていない
土石流 地すべり 急傾斜地の崩壊 砂防関係施設等が
整備されている
砂防関係施設等が
整備されていない
砂防関係施設等が
整備されている
砂防関係施設等が
整備されていない
北海道 - - 1 - - 1 -
秋田県 1 - - - - 1 -
千葉県 - - 1 - - 1 -
東京都 1 - - - - 1 -
福井県 1 - - 1 - - -
三重県 1 - 1 1 - 1 -
京都府 3 1 - 4 - - -
兵庫県 1 1 3 5 - - -
奈良県 1 3 1 1 - 4 -
和歌山県 6 1 1 5 1 2 -
島根県 - 2 1 3 - - -
山口県 5 - 1 6 - - -
徳島県 1 - 1 - 1 1 -
香川県 3 - 2 4 1 - -
愛媛県 6 - 4 5 - 5 -
長崎県 - - 1 - - 1 -
大分県 4 - 1 1 - 4 -
宮崎県 1 2 3 2 - 4 -
鹿児島県 4 - 7 8 - 3 -
39 10 29 46 3 29 -
(注)
「砂防関係施設等が整備されている」欄の箇所数には、整備中の箇所も含まれている。

また、これらの土砂災害の発生箇所の中には、過去にも土石流が発生したこん跡があるとされているものも見受けられ、その事例を示すと次のとおりである。

<参考事例1>過去にも土石流が発生したこん跡があるとされている事例

山口県は、平成21年に防府市において土石流が発生し、警戒区域で人的被害が生じたことから、当該箇所において、再度土砂災害が発生しないよう、砂防えん堤等を整備した。また、当該土砂災害を契機として、防府市内全域を対象に、25年度に特別警戒区域に関する基礎調査を実施した後、26年度に特別警戒区域を指定している。

そして、公益社団法人土木学会等の調査によれば、地元住民の聞き取りなどにより、当 該箇所では約60年前と約100年前にも土石流が発生したことが判明し、過去の土石流堆積物も確認された。

(3) 土砂災害対策事業採択後の工事の実施状況

ア 土砂災害対策事業の実施手順

都道府県は、土砂災害対策事業を実施するに当たっては、おおむね以下の①から④までの手順を経た上で工事に着手することとなる。

① 都道府県において、危険度、事業の必要性、整備内容、保全対象、全体事業概要等について協議した上で事業化の検討を行う。

② 流域図、位置図、平面図、写真等を整備し、事業実施箇所における施設配置計画等の全体計画(以下「全体計画」という。)等を策定するなどして国庫補助事業等として申請を行う。

③ 事業の必要性や概要について、地元住民との調整を行い、地形測量、地質調査、用地測量、詳細設計等を実施した後に事業用地の地権者等への説明を行う。

④ 地権者と用地交渉を行った上で、用地取得・補償契約の締結を行う。そして、①及び②の業務については都道府県の単独事業で実施されることとなり、事業が採択された場合、③及び④の業務については国庫補助事業等により実施されることとなる。

イ 事業採択後の工事の実施状況等

事業の採択要件については、今後の豪雨等により多量の土砂が流下するおそれのある渓流で公共施設、市街地及び集落を保護するものであることなどとなっており、事業が採択された場合には、土砂災害を防止するなどのため速やかに工事を実施する必要がある。

(ア) 事業採択後の工事の実施状況

事業採択後5年以上が経過し、26年12月末現在において工事が未着手となっている事業についてみると、表8のとおり、8府県で砂防事業等の34事業となっており、このうち特別警戒区域において工事を実施することとしているものが15事業となっていた。そして、事業採択後10年以上が経過し、工事が未着手となっている事態が10事業において見受けられた。

表8 事業採択後5年以上が経過し工事が未着手の事業の状況

都道府県名 事業区分 事業採択後5年以上工
事未着手の事業数
工事未着手の期間 工事未着手の理由
5年以上
10年未満
10年以上
15年未満
15年以上 用地測量
未了のため
用地交渉
未了のため
用地取得
未了のため
その他
千葉県 砂防事業 1 1 - - - - - 1
愛知県 砂防事業 5 (4) 4 (3) 1 (1) - 1 4 - -
京都府 砂防事業 2 (1) 1 (1) 1 - 1 1 - -
鳥取県 砂防事業 5 (3) 5 (3) - - 1 3 - 1
徳島県 砂防事業 9 (4) 2 (1) 2 5 (3) 3 3 - 3
愛媛県 砂防事業 3 3 - - - 3 - -
長崎県 砂防事業 1 1 - - - 1 - -
鹿児島県 砂防事業 4 (2) 3 (1) 1 (1) - 1 3 - -
地すべり対策事業 3 3 - - - 1 1 1
急傾斜地崩壊対策事業 1 (1) 1 (1) - - - 1 - -
34 (15) 24 (10) 5 (2) 5 (3) 7 20 1 6
(注)
 ( )書きは、特別警戒区域において工事を実施することとしている事業数で内数である。

そして、事業採択後5年以上が経過し、工事が未着手となっている理由についてみると、地権者等の同意が得られなかったり、地権者が特定できなかったりなどしていることから、表8のとおり、用地交渉未了のためが最も多くなっていた。また、既に事業用地は取得しているが、近隣で実施される他事業と調整中であるためなどの理由も見受けられた。

その事例を示すと次のとおりである。

<事例1>事業採択後10年以上が経過し、工事が未着手となっている事例

徳島県は、管内における砂防事業について、平成11年度に事業採択を受け、当該事業を実施するため、詳細設計等を国庫補助事業により実施している。当該事業は特別警戒区域に砂防えん堤等を整備するものであり、その保全対象は人家97戸となっていた。

しかし、当該砂防えん堤を設置するために必要となる工事進入路の用地を取得するに当たり、地元住民の同意が得られないことから、長期間にわたり工事が未着手となっている。

このようなことから、都道府県が事業採択後、工事に速やかに着手するためには、事業用地の地権者等の同意が速やかに得られることが必要であり、そのためには、土砂災害危険箇所等の地元住民に対して、日頃から土砂災害の危険性等について十分説明し理解を得ておくことなどが重要である。

<参考事例2>土砂災害の危険性や事業の必要性を十分周知している事例

山口県は、砂防事業について、重点施策として各種土砂災害情報の周知を行っている。

そして、同県は、土砂災害危険箇所について、同箇所内の地元住民に対して、土砂災害の危険性や土砂災害対策事業の必要性を周知するダイレクトメールを送付したり、県内各地で土砂災害の危険性等の理解と関心を深めるため、砂防出前授業を実施(平成25年度は13回)するなどの啓発活動を実施したりしていた。

(イ) 工事が未着手の事業に要した事業費

都道府県は、前記のとおり、事業採択後は国庫補助事業等により用地測量、詳細設計等を行うことになる。そこで、前記の工事が未着手の34事業について、21年度以前に実施した用地測量、詳細設計等の業務に要した事業費のうち、判明した事業費についてみると、表9のとおり、計6億4991万余円(国庫補助金3億7845万余円)となっていた。

表9 事業採択後5年以上が経過し工事が未着手の事業における21年度以前の業務に要した事業費等

都道府県名 事業区分 既に国庫補助事業により実施した業務
地形 地質 用地 詳細 環境・物
測量 調査 測量 設計 件調査他 事業費 うち国庫補助金
(件) (件) (件) (件) (件) (千円) (千円)
千葉県 砂防事業 - 1 1 1 1 36,204 18,102
愛知県 砂防事業 2 3 3 5 3 138,352 69,176
京都府 砂防事業 - - - - - - -
鳥取県 砂防事業 3 3 - 3 - 41,570 20,785
徳島県 砂防事業 - 1 1 1 - 21,300 10,650
愛媛県 砂防事業 - - - - - 24,415 12,207
長崎県 砂防事業 1 1 - 1 - 32,000 17,600
鹿児島県 砂防事業 4 4 3 4 3 333,950 219,351
地すべり対策事業 - 3 - - - 12,515 6,257
急傾斜地崩壊対策事業 1 1 1 1 - 9,610 4,324
11 17 9 16 7 649,916 378,453
注(1)
本表は、判明した事業費及び件数について計上している。
注(2)
同一の工事未着手箇所において、同一の業務を複数実施している場合には、件数を1件として計上している。

また、これらの中には、事業採択後に一度、詳細設計等を実施していたが、工事着手までに地元住民との調整のため長期間が経過したため、工事着手前に再度、国庫補助事業により詳細設計等を実施している事態も見受けられた。

その事例を示すと次のとおりである。

<事例2>事業採択後、長期間が経過したため再度詳細設計を実施している事例

鹿児島県は、管内における砂防事業について、平成12年度に事業採択を受け、同年度に用地・地形測量及び詳細設計の業務を事業費10,350,000円、国庫補助金6,900,000円で実施している。当該砂防事業は、特別警戒区域に砂防えん堤等を整備するものであり、その保全対象は人家183戸、公共施設2棟等となっていた。

しかし、当該砂防えん堤を整備する箇所の一部の地権者との用地交渉が難航したことから、事業用地が取得できず、砂防えん堤の工事に着手できないままとなっていた。

その後、15年度には、地元住民との調整により、砂防えん堤を整備することによる環境への影響対策を考慮する必要が生じたことから、同対策に係る部分の設計の修正を事業費1,879,000円、国庫補助金1,252,666円で実施し、16年度には、同県の技術基準の改訂に伴い設計を修正する必要が生じたことから、当該部分に係る設計の修正を同1,575,000円、同1,050,000円で実施していた。さらに、17年度には地元住民との調整の結果、砂防えん堤を整備する箇所を変更する必要が生じたことから、当該部分に係る設計の修正を事業費5,170,000円、国庫補助金3,446,666円で実施するなど、事業実施のために数度にわたり詳細設計を実施していた。

土砂災害は、ひとたび発生すれば多くの生命や財産が失われる可能性がある。都道府県は、土砂災害対策事業を実施する場合には、土砂災害を防止することはもとより、国費をより効率的に使用するため、砂防関係施設を整備する箇所の地権者等に土砂災害の危険性や事業の重要性等を十分説明することなどにより、事業採択後に速やかに工事に着手できるよう努める必要がある。

(4) 砂防関係施設の維持管理

ア 砂防関係施設の緊急点検の実施状況

国土交通省は、中央自動車道笹子トンネルで24年12月に発生した天井板落下事故を受けて、公共土木施設の維持管理の重要性に鑑み、25年2月に「砂防関係事業に係る施設の緊急点検の実施について」(平成25年国水保第43号。国土交通省水管理・国土保全局砂防部保全課長通知)を発して、都道府県に対して、砂防関係施設のうち基礎調査と併せて点検を実施した施設等を除いた施設を対象に、緊急点検を実施するように依頼している(以下、これに基づき実施した点検を「25年緊急点検」という。)。

そして、都道府県は、基礎調査と併せて実施した点検や、25年緊急点検の結果等を受けるなどして、①砂防設備及び地すべり防止施設については、昭和52年以前の技術基準により設計されていることから、土石流に対して構造物の安全性・安定性が確保されていないなどの施設等を対象とした砂防設備等緊急改築事業において、また、②急傾斜地崩壊防止施設については、地盤条件の変化等により明らかに施設の災害防止機能が不足しているなどの施設を対象とした急傾斜地崩壊防止施設緊急改築事業(以下、これらの事業を合わせて「緊急改築事業」という。)において、改築等の対策を実施している。また、緊急改築事業の対象とならない施設についても都道府県の単独事業において対策を実施している。

そこで、27都道府県において25年緊急点検等の実施結果についてみると、安全性が確保されていないため、緊急改築事業又は緊急改築事業以外の都道府県の単独事業の対象として改築等の対策が必要とされた砂防関係施設は、表10のとおり543施設となっていた。

表10 27都道府県における25年緊急点検等の実施結果

(内訳は別表1参照)
砂防関係施設 砂防設備 地すべり防止施設 急傾斜地崩壊防止施設
25年緊急点検等対象施設数 44,541 530 7,997 53,068
対策が必要とされた施設数 207 14 322 543
(注)
「対策が必要とされた施設数」は、緊急改築事業又は都道府県の単独事業の対象とされた施設数である。

緊急改築事業の対象として、改築等の対策を実施した事例を示すと次のとおりである。

<参考事例3>施設の機能が低下しているため、緊急改築事業の対象とした事例

秋田県は、管内の斉内川において、昭和26年に、砂防えん堤(高さ7.6m、幅80.0m)を整備している。

そして、同県が、砂防えん堤の老朽化対策として、平成22年度から調査したところ、当該砂防えん堤は、洗掘による根入れ不足が生じていたり、老朽化により破損・漏水が生じていたりしていた。そこで、その状況を反映して安定計算を行ったところ、転倒、滑動及び地盤反力の全ての項目において所要の安全度が確保されていない状態になっていた。

このため、同県は、当該砂防えん堤について、至急改築を実施する必要があるとして、緊急改築事業の対象として、26年度までに対策を実施した。

イ 砂防関係施設の定期点検の実施状況

(ア) 定期点検に関する通知等

砂防設備の定期点検については、「砂防設備の定期巡視点検の実施について」(平成16年国河保第88号。国土交通省河川局砂防部保全課長通知)において、定期巡視点検実施計画を策定し、砂防設備の本体等の漏水、ひび割れ、破損等の有無について、原則として年1回以上、出水期前に巡視点検を行うこととされている。また、地すべり防止施設の定期点検については、「「地すべり防止技術指針」の適用について」(平成20年国河砂第61号・国河保第65号。国土交通省河川局砂防部砂防計画課長・保全課長通知。以下、「砂防設備の定期巡視点検の実施について」と合わせて「定期点検通知」という。)において、地表排水路の状況、地下水排除施設の状況等について、年1回程度、視認可能な範囲を現地踏査により点検を行うこととされている。さらに、急傾斜地崩壊防止施設の定期点検については、「急傾斜地崩壊防止工事技術指針」(全国治水砂防協会作成)において、具体的な点検方法は示されていないものの、約5年に1回行う急傾斜地崩壊危険箇所の総点検の際に施設の点検を行うなど、効率的に実施することが望ましいとされている。

(イ) 砂防関係施設の定期点検の実施状況

国土交通省は、砂防関係施設の機能維持を目的として、定期点検を行うよう各都道府県に対して定期点検通知を発するなどしてきたところである。そして、27都道府県における砂防関係施設の平成26年度(26年12月末現在)における定期点検の実施状況についてみると、表11のとおりとなっている。

すなわち、定期点検通知を受けるなどして、定期点検の実施方法、実施時期等を定めた点検要領等を作成しているのは、砂防設備では15都道府県、地すべり防止施設では12道府県、急傾斜地崩壊防止施設では14道府県となっていた。そして、北海道のように点検要領等を作成し、26年度において全ての砂防関係施設の定期点検を実施しているところがある一方で、点検割合が10%未満となっているなど定期点検を十分に実施していない県も見受けられた。また、砂防関係施設の中でも、砂防設備については定期点検を実施しているものの他の砂防関係施設については点検していないなど、砂防関係施設の一部しか定期点検を実施していない都県も見受けられた。さらに、27都道府県全体の点検割合についてみると、砂防設備では27.7%、地すべり防止施設では29.2%、急傾斜地崩壊防止施設では26.7%となっていた。

表11 平成26年度における定期点検の実施状況

都道府県名 砂防設備 地すべり防止施設 急傾斜地崩壊防止施設
施設数 点検実施施設数 点検要領
等の有無
施設数 点検実施施設数 点検要領
等の有無
施設数 点検実施施設数 点検要領
等の有無
点検割合 点検割合 点検割合
A B B/A C D D/C E F F/E
% % %
北海道 1,148 1,148 100.0 64 64 100.0 568 568 100.0
秋田県 1,081 92 8.5 82 8 9.7 545 111 20.3
山形県 1,109 237 21.3 93 - - 300 7 2.3
茨城県 113 25 22.1 23 3 13.0 276 62 22.4
群馬県 1,662 317 19.0 67 18 26.8 627 215 34.2
埼玉県 627 572 91.2 23 23 100.0 60 60 100.0
千葉県 108 - - 32 - - 521 118 22.6
東京都 223 116 52.0 11 - - 40 - -
富山県 1,080 165 15.2 144 43 29.8 368 128 34.7
福井県 2,143 1,206 56.2 29 29 100.0 460 460 100.0
愛知県 924 - - 22 - - 550 31 5.6
三重県 1,217 853 70.0 17 - - 685 - -
京都府 1,215 26 2.1 21 5 23.8 315 25 7.9
兵庫県 2,412 117 4.8 87 1 1.1 822 1 0.1
奈良県 536 15 2.7 49 - - 384 39 10.1
和歌山県 982 168 17.1 108 22 20.3 1,112 280 25.1
鳥取県 785 28 3.5 25 - - 354 24 6.7
島根県 1,567 1,140 72.7 123 99 80.4 901 800 88.7
山口県 1,308 82 6.2 65 27 41.5 847 159 18.7
徳島県 1,198 285 23.7 297 110 37.0 414 191 46.1
香川県 885 25 2.8 18 - - 172 10 5.8
愛媛県 1,938 69 3.5 143 15 10.4 895 66 7.3
長崎県 699 42 6.0 68 30 44.1 478 154 32.2
大分県 1,297 933 71.9 81 5 6.1 1,239 247 19.9
宮崎県 1,414 96 6.7 50 18 36.0 1,202 116 9.6
鹿児島県 1,688 411 24.3 45 10 22.2 1,081 199 18.4
沖縄県 109 5 4.5 27 - - 67 14 20.8
計(要領有) 29,468 8,173 27.7 (15) 1,814 530 29.2 (12) 15,283 4,085 26.7 (14)
注(1)
「点検実施施設数」は、平成26年度(26年12月末現在)において定期点検を実施した施設数である。
注(2)
本表に記載した定期点検のほかに、25年緊急点検を実施している場合もある。
注(3)
「点検要領等の有無」欄の( )書きは、点検要領等を作成している都道府県の数である。

以上のとおり、定期点検については、必ずしも十分に行われているとは認められない状況となっている。そして、国土交通省は、前記のとおり、砂防関係施設について長寿命化を図るなどのため、26年9月に26年点検要領を策定している。26年点検要領によれば、点検計画に基づく定期点検等により、施設の変状レベルや施設の健全度を評価することとされていることから、今後は26年点検要領等に従って、土砂災害を防止又は軽減させる砂防関係施設の機能を維持するため、適切に定期点検等を実施していく必要がある。

ウ 砂防設備台帳の有無と定期点検等の実施

(ア) 砂防設備台帳等の作成

国土交通省は、都道府県が砂防事業を実施するに当たり、砂防指定地を指定することとされている。

そして、砂防法第11条の2において、都道府県は、砂防指定地台帳及び砂防設備台帳を調製してこれを保管することとされている。また、砂防指定地台帳等整備規則(昭和36年建設省令第7号)において、砂防指定地台帳には指定年月日、砂防指定地の区域等を、砂防設備台帳には砂防設備の位置、種類等をそれぞれ記載することとされている。

(イ) 砂防設備の位置の把握と定期点検等の実施

都道府県は、定期点検等を点検要領等に従って適切に実施していくため、砂防設備の位置を把握しておく必要がある。そして、上記のとおり、砂防法等により、砂防設備の位置等を記載した砂防設備台帳を作成することとされている。

そこで、会計実地検査時において、砂防設備台帳の作成状況等について確認したところ、一部の砂防設備について現地には存在していたが砂防設備台帳が作成されていないなどの事態が11都府県(注4)において見受けられた。

その事例を示すと次のとおりである。

<事例3>砂防設備台帳が作成されておらず、砂防設備の位置が確認できない事例

茨城県は、砂防指定地520か所の砂防指定地台帳を作成している。そして、これらの砂防指定地には、土砂災害を防止等するため、砂防設備が整備されている箇所がある。

しかし、同県に所在する砂防設備のうち、土砂の流出を防ぐことなどを目的とする砂防えん堤113基の砂防設備台帳は作成されているものの、下流での土砂の堆積を防ぐことなどを目的とする渓流保全工等の砂防設備台帳は作成されておらず、砂防指定地における砂防設備の整備状況を一部確認できない状況となっていた。

このため、これらの砂防設備の位置が確認できないことから、渓流保全工等の定期点検等が実施されていなかった。

(注4)
11都府県 東京都、京都府、秋田、茨城、福井、愛知、奈良、島根、徳島、大分、鹿児島各県

また、25年緊急点検の結果を確認したところ、砂防設備台帳は作成され砂防設備の位置が記載されているものの、一部の砂防設備台帳に不備があり、砂防設備台帳に記載されている位置に砂防設備が確認できないため25年緊急点検が実施できていないとしているなどの事態が、7県(注5)における計43基の砂防えん堤等において見受けられた。

その事例を示すと次のとおりである。

<事例4>砂防設備台帳に不備があり、砂防設備の位置が確認できなかった事例

富山県は、平成25年度に、委託業務により砂防関係施設の25年緊急点検を実施している。

同県は、業務を受託した業者に、砂防設備台帳によって点検対象とする砂防えん堤を示していた。しかし、その位置が確認できないため業者が点検を実施できていないとしていた砂防えん堤が、27年4月の会計実地検査時において18基見受けられた。

なお、同県は、その後、これら18基の砂防えん堤について改めて確認したところ、6基については位置が確認できたが、8基については砂防えん堤を改築して地すべり防止施設として管理しているものを誤って砂防えん堤として点検対象としていたこと、4基については整備予定であったものの整備を行わなかったため実際には存在していないことが判明した。

(注5)
7県 秋田、山形、富山、愛知、徳島、大分、宮崎各県

(5) 土石流対策砂防えん堤により被害を軽減するための方策

前記のとおり、毎年、土砂災害が発生して物的・人的被害が生じているところであり、中でも被害額の大きい土石流による被害を軽減させるため、砂防事業には毎年度多額の費用が投入されている。そして、砂防事業においては、土石流が発生した場合に、土砂等の流出を抑制したり土石流の威力を弱めたりすることなどを目的として、主に土石流対策砂防えん堤が整備されている。

ア 砂防えん堤の概要

(ア) 砂防えん堤の類型

砂防えん堤は、その背後の空間(以下「堆砂空間」という。)において、土砂等を堆積させたり、土石流を捕捉したりする構造になっていて、その型式によって不透過型、透過型及び部分透過型(以下、透過型及び部分透過型を合わせて「透過型等」という。)に分類される。

不透過型については、土砂等をコンクリート構造等の砂防えん堤で捕捉して、堆砂空間において土砂等が平常時堆砂勾配(注6)まで堆積した後は(以下、堆砂空間において土砂等が平常時堆砂勾配まで堆積した状態を「満砂状態」という。)、平常時堆砂勾配と計画堆砂勾配(注7)の間の空間で土石流を減勢させて捕捉するなどの構造になっている(図2及び図3参照)。

(注6)
平常時堆砂勾配 平常時に土砂等が砂防えん堤の高さまで堆積した際に生じる勾配
(注7)
計画堆砂勾配 計画規模の土石流を捕捉した際に生じる勾配
図2 不透過型の砂防えん堤の概念図
図2 不透過型の砂防えん堤の概念図画像

透過型等については、砂防えん堤に開口部を設けることにより砂防えん堤の上下流で渓床の連続性を確保しており、開口部に鋼材等を配置することなどにより、通常の流水や中小の出水時には下流に土砂等を流下させ、土石流の発生時には土砂等を堆砂空間において捕捉する構造になっている(図3参照)。

図3 砂防えん堤の概念図
図3 砂防えん堤の概念図画像

また、砂防えん堤は、計画上、土石流の捕捉に必要な容量を確保するため定期的に、又は土石流が発生した場合等に必要に応じて、堆砂空間の除石を行うこととしているもの(以下「除石管理型砂防えん堤」という。)と、平常時堆砂勾配を超えて堆積した土砂等は通常の流水や中小の出水時に徐々に流出した後、再び平常時堆砂勾配に復元されるとして、除石を行わないこととしているもの(以下「非除石管理型砂防えん堤」という。)に分類される。そして、これらを選定するに当たっては、対象とする流域の特性を現地調査により十分把握した上で、除石を行うことの可能性、経済性、地域環境等に配慮することとされている。

(イ) 砂防えん堤の型式別等の整備状況

砂防えん堤は、前記のとおり、その目的等により型式や堆積した土砂等の管理の有無が決定される。そして、型式別等の整備状況についてみると、表12のとおり、不透過型の非除石管理型砂防えん堤が9割強を占めているが、新規に整備する場合は、透過型等の除石管理型砂防えん堤も整備されるようになってきている。そして、既に最下流に不透過型の砂防えん堤が整備されている渓流においては、それより上流側に透過型等の砂防えん堤を整備する場合や、砂防えん堤が整備されていない渓流においては、人家や緊急輸送道路(地震直後に必要となる緊急輸送を確保するための道路。以下同じ。)等の保全対象が近い渓流の最下流に透過型等の砂防えん堤を整備する場合がある。

表12 砂防えん堤数の型識別式別等の整備状況

(内訳は別表2参照)
砂防えん堤数 除石管理型砂防えん堤 非除石管理型砂防えん堤
不透過型 透過型等 合計 不透過型 透過型 合計
割合 割合 割合 割合
A B B/A C C/A B+C D D/A E E/A D+E
29,122 117 0.4 1,216 4.1 1,333 27,584 94.7 205 0.7 27,789
(注)
平成26年12月31日以前に国庫補助事業等により整備し、又は国土交通省(平成13年1月5日以前は建設省)から移管を受けた砂防えん堤について記載している(以下、表において同じ。)。
(ウ) 土石流対策砂防えん堤の設計等

a 土石流対策砂防えん堤の設計

土石流対策砂防えん堤は、土石流による土砂災害から人家、公共施設等を守ることなどを目的として整備されるものである。

砂防えん堤の設計に当たっては、「砂防基本計画策定指針(土石流・流木対策編)」(平成19年3月国土交通省河川局策定。以下「砂防計画策定指針」という。)によれば、土石流が発生した場合等に渓流から流出することが想定される土砂量(以下「計画流出土砂量」という。)について、現地調査を行った上で、地形図、過去の土石流の記録等により総合的に決定することとされている。

そして、除石管理型砂防えん堤については、堆砂空間に土砂等が堆積していないとして土石流を捕捉するための容量(計画捕捉量と計画堆積量を合わせた容量。以下「捕捉容量」という。)を確保することとされており、また、非除石管理型砂防えん堤については、満砂状態になっているとして、平常時堆砂勾配と計画堆砂勾配の間の空間で、捕捉容量を確保することとされている(図4参照)。

図4 砂防えん堤の設計の概念図
図4 砂防えん堤の設計の概念図画像

b 警戒区域等の指定の範囲等

(a) 警戒区域等の指定の範囲

前記のとおり、土砂災害防止法により、警戒区域等を指定することとされている。そして、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律施行令(平成13年政令第84号)によれば、土石流による警戒区域の範囲は、その流水が山麓における扇状の地形の地域に流入する地点より上流の部分の勾配が急な河川(渓流)のうち当該地点より下流の部分及び当該下流の部分に隣接する一定の土地の区域であって、国土交通大臣が定める方法により計測した土地の勾配が2度以上のものとされている。また、特別警戒区域の範囲は、その土地の区域内に建築物が存するとした場合に土石流により当該建築物に作用すると想定される力の大きさが、通常の建築物が土石流に対して住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれのある損壊を生ずることなく耐えることのできる力の大きさを上回る土地の区域とされている。

このように、警戒区域の範囲が砂防えん堤の有無にかかわらず地形の形状によって決定されるのに対して、特別警戒区域については、砂防えん堤が整備されている場合には土石流を捕捉したり、土石流の全てを捕捉できなくてもその威力を弱めたりすることにより、土石流による被害が生じる範囲が小さくなるため、砂防えん堤の有無が指定される範囲に影響することになる。

(b) 特別警戒区域の範囲の決定方法

特別警戒区域の指定に当たり、都道府県は、おおむね、除石管理型砂防えん堤については、堆砂空間に土砂等が堆積していない状態になっていることを前提に、捕捉容量の土石流を捕捉した上で、土石流が捕捉容量を超えた場合に土砂等が流出するとして特別警戒区域の範囲を決定しているのに対して、非除石管理型砂防えん堤については、堆砂空間が満砂状態になっていることを前提に、土石流が捕捉容量を超えた場合に土砂等が流出するとして特別警戒区域の範囲を決定している(図4参照)。

イ 土石流対策砂防えん堤について

近年の地球温暖化に伴い各地で大雨が多発しており、土石流の発生により多大な人的被害が生じていることから、土石流が発生した場合には、既存の砂防えん堤が有効に機能することが重要である。

そこで、27都道府県が管理している砂防えん堤29,122基(除石管理型砂防えん堤1,333基、非除石管理型砂防えん堤27,789基)のうち、土石流対策砂防えん堤として整備された除石管理型砂防えん堤1,157基、土石流対策砂防えん堤として整備され満砂状態となっている非除石管理型砂防えん堤4,114基についてみると、以下のとおりとなっていた。

(ア) 砂防えん堤の整備箇所における特別警戒区域の指定状況

特別警戒区域は、砂防えん堤が整備されている箇所であっても、指定される場合がある。これは、砂防えん堤を整備する際の全体計画において複数の砂防えん堤等を整備するとしていたものの、その全ての整備が完了していない場合は、一部の砂防えん堤では、計画流出土砂量の全量を捕捉することができないことなどによるものである。

そこで、砂防えん堤の下流における特別警戒区域の指定状況についてみると、表13のとおり、除石管理型砂防えん堤では基礎調査が実施済みの615基のうち155基、非除石管理型砂防えん堤では基礎調査が実施済みの1,683基のうち764基、計919基(基礎調査が実施済みの砂防えん堤2,298基の39.9%)で特別警戒区域が指定されていた。

表13 砂防えん堤の下流における特別警戒区域の指定状況

(内訳は別表3参照)
(単位:基)
砂防えん堤の区分 除石管理型砂防えん堤 非除石管理型砂防えん堤
砂防えん堤数 1,157 4,114 5,271
         
うち基礎調査実施数 うち特別警戒区域の指定 615 155 1,683 764 2,298 919
460 919 1,379

全体計画において複数の砂防えん堤で土砂を捕捉するとされているのに、現時点で未整備の砂防えん堤があるため、計画流出土砂量の全量を捕捉できず、特別警戒区域に指定されている事例を示すと次のとおりである。

<参考事例4>計画している砂防えん堤のうち未整備の砂防えん堤があるため、特別警戒区域に指定されている事例

福井県は、南越前町内において、昭和44年度に、非除石管理型砂防えん堤(高さ10.0m、幅40.5m)を整備している。そして、全体計画において、土石流が発生する流域面積を0.52k㎡ 、計画流出土砂量を11,710㎥としており、当該砂防えん堤の捕捉容量等6,345㎥だけでは土石流を全て捕捉することができないことから、当該砂防えん堤以外にも、平成29年度までに砂防えん堤1基(計画事業費1億8600万円)を整備することとしている。

このため、現時点では、土石流が発生した場合に計画流出土砂量の全量を捕捉す ることができないことから、当該砂防えん堤が整備されている箇所の下流は特別警戒区域に指定されていた。

(イ) 砂防えん堤における保全対象等

前記のとおり、全体計画において計画されている複数の砂防えん堤等が現時点では一部整備されていないことなどにより、特別警戒区域が指定されている場合もあるが、計画されている全ての砂防えん堤等を整備するには相当の時間と費用を要する。

このため、土石流による被害を軽減させるためには、保全対象を考慮するなどして、既存の砂防えん堤が有効に機能するよう除石を行ったり、計画されている砂防えん堤を効率的に整備したりする必要がある。

a 除石管理型砂防えん堤について

(a) 除石を行う際の土砂等の搬出方法等

前記のとおり、土石流対策指針によれば、土石流・流木対策施設において、除石を前提とした施設の効果量を見込む場合は、捕捉あるいは堆積した土砂等を速やかに除石することとされており、また、堆砂後の除石のため、管理用道路を含めあらかじめ搬出方法を検討しておくものとされている。さらに、砂防計画策定指針の解説によれば、土砂等の搬出方法や搬出土砂等の受入先、除石の実施頻度等の除石計画を検討する必要があるとされている。

そこで、除石管理型砂防えん堤のうち土石流対策砂防えん堤として整備された1,157基について、管理用道路の整備状況についてみると、表14のとおり、533基(46.0%)においては整備されていなかった。また、管理用道路が整備されていない砂防えん堤533基について、除石計画における搬出方法の記載の有無についてみると、約6割が記載されていなかった。

そして、堆砂状況と管理用道路の整備状況との関係についてみると、満砂状態となっている砂防えん堤又は満砂状態には至らないものの、透過部に土砂等が堆積している砂防えん堤の中には、管理用道路が整備されておらず、かつ、除石計画において搬出方法が記載されていないものが見受けられた。

また、除石の実績がある34基の砂防えん堤についてみると、土石流が発生し満砂状態となったり、土石流は発生していないが中小の出水時の土砂流出で満砂状態となったりなどしたため、今後発生する土石流に備えて、管理用道路を使用して除石を行っているものが28基となっていた。

その事例を示すと次のとおりである。

<参考事例5>管理用道路を整備していたため、除石を行うことができた事例

福井県は、管内の鍋谷川における砂防事業において、平成16年度に除石管理型砂防えん堤(透過型、高さ10.0m、幅47.0m)を整備している。当該砂防えん堤の下流は警戒区域に指定されており、当該区域には人家15戸及び公共施設1棟が所在していた。また、同県は、当該砂防えん堤については、管理用道路を整備し、除石計画を作成していた。

そして、16年7月に当該区域で豪雨があり、当該砂防えん堤と上流一帯に土砂等が堆積した。そこで、同県は、流域の状況を確認したところ除石を行うことが必要と判断して、管理用道路を使用して17年8月に除石を完了していた。

表14 除石管理型砂防えん堤における管理用道路の整備状況等

(単位:基)
都道府県名 除石管理型砂防えん堤数 管理用道路の整備状況 除石実績有
         
除石計画における搬出方法の記載
道路の新設 ケーブル その他
北海道 36 35 1 1 1 - - - -
秋田県 14 10 4 - - - - 4 -
山形県 51 2 49 - - - - 49 -
茨城県 - - - - - - - - -
群馬県 - - - - - - - - -
埼玉県 8 1 7 - - - - 7 -
千葉県 2 2 - - - - - - -
東京都 70 50 (3) 20 20 19 1 - - 12
富山県 21 12 9 9 - - 9 - 3
福井県 120 74 [1] 46 - - - - 46 3
愛知県 27 8 19 - - - - 19 -
三重県 40 10 30 (1) 1(1) 1(1) - - 29 9
京都府 29 18 11 11 8 1 2 - -
兵庫県 103 28 75 75 9 5 61 - 2
奈良県 51 13 38 [7] - - - - 38 [7] -
和歌山県 7 6 1 1 1 - - - -
鳥取県 35 5 30 30 1 - 29 - -
島根県 34 - 34 34 - - 34 - -
山口県 44 44 (1) - - - - - - 2
徳島県 55 8 47 (1) [1] 4 2 2 - 43 (1) [1] 1
香川県 24 18 6 - - - - 6 -
愛媛県 125 83 [4] 42 - - - - 42 1
長崎県 9 6 3 3 3 - - - -
大分県 64 33 31 - - - - 31 -
宮崎県 23 8 15 2 1 1 - 13 -
鹿児島県 163 149 14 11 9 2 - 3 1
沖縄県 2 1 1 1 - - 1 - -
1,157 624 (4) [5] 533 (2) [8] 203(1) 55(1) 12 136 330 (1) [8] 34
注(1)
「道路の新設」には、砂防えん堤設置時に工事用道路として使用していた道路を再び借地して使用するなどして、除石を行うこととしているものを計上している。
注(2)
「ケーブル」には、管理用道路を整備できない箇所において、ケーブルを利用して除石を行うこととしているものを計上している。
注(3)
「その他」には、市町村道や林道等を代用して除石を行うことなどとしているものを計上している。
注(4)
除石計画において搬出方法が記載されていないものの中には、市町村道や林道等を搬出路として使用できるものも含まれている。
注(5)
( )書きの数字は、25年緊急点検を実施した時点において、満砂状態となっていた砂防えん堤の基数で内数である。
注(6)
[ ]書きの数字は、25年緊急点検を実施した時点において、満砂状態には至らないものの、透過部に土砂等が堆積していた砂防えん堤の基数で内数である。

(b) 保全対象と土砂等の搬出方法

除石管理型砂防えん堤のうち大半は透過型等となっているが、透過型等の砂防えん堤については、前記のとおり、渓流の最下流に整備されていて、その近くに人家や緊急輸送道路等の保全対象が所在する場合がある。

そこで、除石管理型砂防えん堤のうち土石流対策砂防えん堤として整備された1,157基において、基礎調査が実施されている615基(53.1%)の保全対象についてみると、表15のとおり、人家が10戸以上所在していたり、公共施設等が所在していたりするものが見受けられた。そして、これらのうち、管理用道路が整備されておらず、かつ、除石計画において搬出方法が記載されていない除石管理型砂防えん堤は、人家が10戸以上所在しているもので71基、公共施設が所在しているもので62基となっていた。

表15 除石管理型砂防えん堤における保全対象の状況等

(単位:基)
都道府県名 基礎調査
済の砂防
えん堤数
保全対象
人家 公共施設 緊急輸送道路等 DID
0戸 1~9戸 10~49戸 50戸~
北海道 26 3 9 13 1 16 - -
秋田県 3 2 - 1 - 2 - -
山形県 44 3 (3) 13 (13) 26(26) 2 (2) 18 (18) 10 (10) -
茨城県 - - - - - - - -
群馬県 - - - - - - - -
埼玉県 7 2 (2) 1 (1) 4 (3) - 2 (1) 1 -
千葉県 - - - - - - - -
東京都 1 1 - - - - - -
富山県 21 3 10 8 - 7 9 -
福井県 65 15 20 (8) 18 (4) 12 (3) 31 (10) 5 -
愛知県 14 4 (4) 7 (5) 3 (3) - 6 (6) 3 (3) -
三重県 10 - 7 (7) 3 (3) - 2 (2) 3 (3) -
京都府 28 - 12 12 4 13 3 2
兵庫県 88 3 28 53 4 13 10 1
奈良県 24 5 (1) 12 (9) 4 (2) 3 (3) 8 (7) 8 (4) -
和歌山県 6 - 3 3 - - 1 -
鳥取県 30 4 14 11 1 7 6 -
島根県 30 6 13 9 2 7 - -
山口県 17 4 9 4 - 1 1 -
徳島県 22 3 (2) 9 (6) 10 (6) - 10 (7) 11 (8) -
香川県 24 2 (2) 6 (2) 15 (2) 1 12 (2) 3 -
愛媛県 42 1 (1) 11 (1) 16 (8) 14 (5) 24 (6) 25 (9) 2
長崎県 2 - - - 2 2 - -
大分県 8 1 4 (3) 2 1 (1) 5 (2) 1 -
宮崎県 5 1 (1) 4 (3) - - 3 (1) 1 -
鹿児島県 96 41 (1) 24 22 9 27 32 (1) -
沖縄県 2 - - 1 1 - 1 -
615 104 (17) 216 (58) 238 (57) 57 (14) 216 (62) 134 (38) 5
注(1)
「保全対象」には、基礎調査を実施した時点の砂防えん堤数を計上している。
注(2)
( )内の数字は、管理用道路が整備されておらず、かつ、除石計画において搬出方法が記載されていない砂防えん堤の基数で内数である。

(c) 特別警戒区域と除石の必要性

前記のとおり、特別警戒区域の範囲を決定するに当たり、除石管理型砂防えん堤については、おおむね、その堆砂空間に土砂等が堆積していない状態となっていることが前提とされている。そして、堆砂空間における土砂等の堆積の状況や他の砂防えん堤の整備状況等によっては、土石流が発生した際に、前提とした捕捉容量を確保することができない場合があり、その場合には、特別警戒区域に指定されている範囲を超えて、特別警戒区域外の人家や公共施設等に危害を及ぼすおそれがある。このため、除石管理型砂防えん堤については、必要に応じて除石を行うことが重要であり、実際にも、土石流が発生した場合等に備えて満砂状態になる前に除石を行っているものも見受けられた。

その事例を示すと次のとおりである。

<参考事例6>特別警戒区域に指定されている区域に整備されている砂防えん堤について堆砂の状況に応じて除石を行うこととしていた事例

愛媛県は、西条市内において、平成18年度に基礎調査を実施し、その結果を受けて19年度に警戒区域及び特別警戒区域を指定しているが、警戒区域には人家27戸等が所在していた。そして、同県は、20年度に、当該区域に除石管理型砂防えん堤(不透過型、高さ8.0m、幅87.0m)を整備している。

そして、当該砂防えん堤の堆砂空間は一定程度土砂等が堆積している状態となっていることから、同県は土石流が発生した場合等に備えて、当該砂防えん堤において除石の必要があるとして、27年7月に除石を行うこととしていた。

b 非除石管理型砂防えん堤について

非除石管理型砂防えん堤の中には、渓流の最下流に整備されており、その直下に人家や公共施設等が所在している場合がある。

そこで、満砂状態となっている非除石管理型砂防えん堤4,114基のうち渓流の最下流に整備されている1,608基についてみると、表16のとおり、基礎調査が実施されているのは906基(56.3%)となっていた。そして、当該砂防えん堤の保全対象についてみると、人家が50戸以上所在していたり、警戒区域の一部等がDIDとなっていたりなどしていた。

表16 最下流に整備されている非除石管理型砂防えん堤における保全対象

(単位:基)
都道府県名 砂防えん堤数 基礎調査済の砂防えん堤数 保全対象
人家 公共施設 緊急輸送道路等 DID
0戸 1~9戸 10~49戸 50戸~
北海道 5 1 - 1 - - - - -
秋田県 1 1 1 - - - 1 - -
山形県 26 26 5 11 10 - 8 7 -
茨城県 11 11 - 4 5 2 3 1 1
群馬県 258 243 52 122 65 4 77 90 3
埼玉県 46 43 3 27 12 1 12 4 -
千葉県 4 - - - - - - - -
東京都 15 8 5 3 - - 6 1 -
富山県 51 51 17 26 8 - 11 11 -
福井県 59 57 8 21 22 6 26 10 -
愛知県 - - - - - - - - -
三重県 231 109 18 40 42 9 44 24 -
京都府 8 7 1 4 1 1 3 2 1
兵庫県 18 18 - 6 11 1 6 4 -
奈良県 63 25 4 10 9 2 13 6 -
和歌山県 7 3 1 1 1 - - - -
鳥取県 11 11 - 5 5 1 7 1 -
島根県 14 14 3 10 1 - 2 - -
山口県 169 96 36 34 22 4 2 9 -
徳島県 59 8 - 6 1 1 3 7 -
香川県 27 27 1 18 4 4 14 5 -
愛媛県 243 39 2 8 16 13 23 20 3
長崎県 22 7 1 1 1 4 5 1 4
大分県 122 28 3 16 6 3 11 9 4
宮崎県 36 11 2 7 2 - - - 2
鹿児島県 77 43 17 10 14 2 7 24 -
沖縄県 25 19 - - 9 10 2 7 -
1,608 906 180 391 267 68 286 243 18
(注)
「保全対象」には、基礎調査を実施した時点の砂防えん堤数を計上している。

さらに、この1,608基の砂防えん堤のうち、保全対象に人家が10戸以上所在し かつ、特別警戒区域が指定されているものについてみると、表17のとおり、特別警戒区域の中に人家が10戸以上所在しているものも見受けられた。

表17 特別警戒区域における人家の戸数別の状況

(単位:基)
県名 砂防えん堤数 人家数
0戸 1~9戸 10~49戸 50戸~
茨城県 7 2 - 5 -
群馬県 40 38 2 - -
埼玉県 9 6 2 1 -
富山県 4 3 1 - -
福井県 11 10 1 - -
三重県 28 22 5 1 -
鳥取県 3 - 1 2 -
徳島県 1 - 1 - -
香川県 2 1 1 - -
愛媛県 19 11 6 2 -
長崎県 4 3 1 - -
大分県 5 3 1 1 -
宮崎県 1 - 1 - -
鹿児島県 11 5 1 5 -
145 104 24 17 -

特別警戒区域に多数の人家等が所在している事例を示すと次のとおりである。

<参考事例7>特別警戒区域に多数の人家等が所在している事例

鹿児島県は、昭和45年に、南大隅町内において土石流による被害を防止等するため非除石管理型砂防えん堤(不透過型、高さ5.0m、幅35.0m)を渓流の最下流に整備した。

同県は、平成20年度に基礎調査を実施しており、その結果、計画流出土砂量11,800㎥に対して当該砂防えん堤の捕捉容量等は1,100㎥となっていた。そして、同基礎調査の結果を基に警戒区域及び特別警戒区域を指定しているが、警戒区域には人家36戸、公民館等が所在しており、また、特別警戒区域には人家27戸、避難路等が所在していた。

このように、渓流の最下流に整備されている非除石管理型砂防えん堤直下の人家戸数等の状況をみると、特別警戒区域に多数の人家が所在していたり、警戒区域の一部等がDIDとなっていたりしている区域もあったことから、安全性の向上のため引き続き、全体計画に基づき、効率的に施設整備を進めるなど土砂災害対策を推進していく必要がある。